尖った犬歯、黄ばんだ歯、動物じみた口臭が漂った。
「……」
男は黙って、浄化魔法を3倍くらいの力で、そこにぶち込んだ。
バクテリアだらけの沼の水を飲用にできる程の滅菌魔法だ。
ジュワジュワと音を立てながら、ゴブリンの口内細菌が殺菌されていく。
魔法が収まったら、ゴブリンの口に歯が一本も無くなっていた。
「……やっちまった」
明らかに浄化魔法が強力過ぎた。
欠損は中級治癒では治らない。
歯無しの顔は入れ歯を無くした婆さんみたいに、口がクシャッと潰れた。
何か、歯の代用になるものを探して詰め込むしかなかった。