男装少女萌え【11】
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領地の端の砦は、国境を監視するため常に兵が置かれている。
この地を守る一家の末弟、ルーシアスにとっても、その愛馬にとっても、この森は慣れ親しんだ庭だった。
四角柱の砦は今なお使われ、駐留の兵が絶えることはない。門に近づくと、若様、と親しみを込めて呼ぶ兵が、銃を足元に立てて姿勢を正す。
彼らの、舟形の帽子に飾られた黒い羽飾りが、その動きに揺れる。まだ18歳の、年若いルーシアスにとって兵は師でもあり、部下であった。
白い息が、晩秋の晴れ間に消えていく。林道にまだらに溜まった雪は、山肌を滑ってくる風に既に凍み始めていた。
門扉を兵が開け、ルーシアスを城壁の内側へと迎え入れる。
広間では休憩中の兵たちが暖炉を囲んでおり、ルーシアスを認めた兵長が気をつけの号令をかけた。
壁にかけられた外套や、炉の近くに干されている手袋からは臭いそうな蒸気が上がっている。
兵たちに応えながら、ルーシアスは目的の人物を探した。
「タイロン先生はどこに」
「“上の階”にいらっしゃってますよ」
祖父の代からの付き合いの、気心知れた兵が答える。とある理由で、特に結びつきと忠誠心が強い者が集められたこの砦は、一族にとっても心強い存在だった。
年少であり、上の四人の兄たちとは母親が違うルーシアスにとっては屋敷よりも居心地がよく、泊まることもしばしばある。
黒髪でどちらかというと細身の兄たちとは見た目からしても違い、赤毛でがっちりとした体躯のルーシアスはどう見ても異物だった。
兄たちやその母親から無碍に扱われたことはなかったが、それはお互い上手く距離をおいて付き合っているからだ。
一方、医者のタイロンも、親子2代でこの砦のかかりつけであり、特に2代目は兄たちよりも気さくに付き合える。
階段を上がると、人の気配と暖気が失せ、窓や石壁から冷気が染み出してくる。
規律強しといえど、この環境で兵たちが風邪を引くのは致し方のないことであり、医者は砦の維持には不可欠だった。
砦の最上階、奥の部屋――兵たちに“上の階”と呼ばれている部屋の前に立つと、中からタイロンの話し声が漏れてくる。
砦の中で、この部屋の扉だけが丈夫な一枚板で作られ、控えめながら装飾も施されていた。その扉には不似合いな外づけの閂が後付されている。
鷲を象ったドアノッカーを鳴らし、脱帽して扉を開けた。
「ルーシアス君」
「先生、どうも」 白いシャツにベストを着たタイロンが、こちらを振り向く。砦の中で、本棚や寝台、カウチが設えられる程度には広い部屋だった。
だが、身を清めるのに必要な最低限の水回りがカーテンで仕切られているさま、そしてなによりわずかしか開けることのできない窓が、本質的にこの部屋が牢であることを示している。
そんな部屋でも、タイロンがいるだけで空気がまともになった気がした。
肩口までの金髪を、ひとつにまとめたその姿は気に障るほどさまになっている。均整のとれた身体に、上等な深緑の生地のベストがよく似合っていた。
仕事上の都合で男を装っているタイロンは、上背なこともあり本物の男よりも理想的な男を演じている。
仕方ないなといった風情で肩をすくめるタイロンの向こうで、この牢のあるじは上着に袖を通していた。
「いつも言ってるじゃないか。返事があるまで扉を開けないでくれたまえ」
「虜囚になにを気遣うことがあるのです」
その言葉に、当の牢のあるじは動じなかった。ただ、淡い翡翠色の詰め襟のボタンを、無表情のまま留めている。
その白い顎には、癒えた傷の跡がひとすじ残っていた。タイロンをしても色褪せるほどの、ことさらに美しい青年だが、ルーシアスとは目を合わせない。
「君はご婦人に嫌われるタイプだね」
「それはどうも」
「ねぇルーシアス君?君が、この子が虜囚として囚われてるのが気に食わないのは知ってるよ。
でもどうしようもないんだ。お兄さんに頼んで、当面この砦に出入りできないようにしてもいいんだからね」
ため息混じりに往診用のかばんを持ち上げて、タイロンはまっすぐルーシアスを見た。その目には意味深に何かを言いたげだった。
みっつ歳上のタイロン――タイロン家の長女は幼馴染の姉のような存在で、昔からルーシアスの面倒を見てきた。
そのせいで、強く言われると口応えできない。
「ルーク、心配ないよ。それじゃ、身体を冷やさないようにね」 牢のあるじ、ルークは無言でタイロンを見上げて頷いた。伏しがちなその目に、ルーシアスはわずかな不安と困惑の色を読み取った。
幽閉されてから2年、まだ少年であったルークの顔は日に日に大人びていく。横長の物憂げな目と、重たそうな長い睫毛がその細面の整ったさまを際立てていた。
部屋を辞したタイロンを心なしか惜しむようなルークに、ルーシアスはわずかに苛立ちを覚えた。
***
使命のために、自ら命を断とうとした少年と聞いて、その忠誠に驚いた。数日に及ぶ不眠の尋問にも口を割らなかったと聞いて、その強さに驚いた。
それが“牢のあるじ”だった。
最初はその存在さえ知らなかった。父の不在の間、偽の密使を捕えた長兄は、帰ってきた父とごく一部の者たち以外にその存在を知らせなかった。
ルーシアスは砦に出入りするうちに、幽閉された“牢のあるじ”の存在を知り、やがてそれに関わるようになった。
そして、ルークが尋問に対して喋らなかったのではなく、喋るべき言葉を教えられなかったのだと知ったとき、ルーシアスは苦い諦念を覚えた。
ルークは最初から、切り捨てられるために作られた精度のよい模倣品でしかなかった。
身を守る術も、王子の模倣以外の言葉も与えられなかったことは容易に想像がつく。
どの国も似たようなことをしていて、模倣品の多くが理不尽に死んでいくことくらいは知っている。
その境遇を憐れむ気持ちと、血族がルークに尋問を行った負い目が、彼を気にかける理由になった。本を持ち込んで読ませ、言葉を教え、ときにはこっそりと散歩に連れ出したこともある。
自責の念を差し引いても、自分が度を越してルークに関心を抱いている自覚はあった。 16歳に差し掛かったルークの首筋は、相変わらず細い。所在なさげにカウチに凭れる姿は、美しいが強靭さとは無縁だった。
事実、この数週間は熱が出ているとかでしばらく対面すらできない有様だった。
武の家に相応しい荒々しい外見を自覚しているルーシアスは、毎回本当に同じ人間なのかと疑いたくなる。
「偽王子、熱はもう下がったのか」
上衣を脱ぎながら、努めて平坦な口調で投げかけると、ルークは目を合わせないまま頷く。
その動きに合わせて、短髪に整えられた、ふわりとした癖毛が揺れた。淡い緑色の瞳は、相変わらずどこか下の方を向いている。
床の、青色のタイル細工が、窓から差し込む陽光に反射してルークの髪の毛を光で濡らしている。
隣に腰を下ろすと、冷たそうな手がぎゅっとカウチの縁を掴むのが目に入った。背けた首筋の産毛も逆立っている。
分かりやすい緊張のサインだ。最初に会った頃のほうが、むしろ今より平静だったと言えるくらいだった。
すっと立ち上がろうとしたルークの腕を、思わず掴んで引き止める。
「ルーシアスはこわい」
白い手が、腕を掴んだルーシアスの手を引き剥がそうとする。明らかにかじかんでいる指は力なく、むしろ妙に冷たくて気持ちがいい。
あからさまに眉根を寄せたルークと、視線がかち合った。こわい、という言葉を咀嚼して、顔をつい顰めてしまう。
「お前に怖いものなんてあるのかよ」
「分からないものはこわい」
無意識のうちに、腕を強く掴んでいた。砦の中に閉じ込められた可哀想なルークは、抗うこともできないまま身を竦ませている。
白いズボンに淡い翡翠色の詰め襟が、ひどくアンバランスに思えるほど非力だった。
怒っているのか、心なしか涙目で、首筋から頬、耳元にかけて赤みが差している。 「ルーシアスは、王子の僕を変えて、壊そうとしてくるから」
淡いハシバミ色の瞳をわずかに見開いて、ルーシアスは一瞬呼気を止めた。
それは予想外の答えで、すぐには理解できない言葉だ。
ただ、王子の模倣をすることだけを求められて生きてきたルークにとって、それ以外を求めてくるルーシアスが想定外の存在であることだけは分かる。
「僕はただのルーク。王子の城塞」
祈るようにルークが溢した言葉に、ルーシアスは自らの頬が紅潮するのを感じた。それは真新しい、血の色をした純粋な怒りの感情だった。
十余年をかけて、ひとりの子供を空っぽに仕立て上げた何者かを殺してやりたいと思った。
ルークを身代わりとして殺させるためだけに仕立てられた、上等で窮屈な詰め襟の上着に憎悪を抱いた。
「それを脱げ」
衝動的にルークをカウチに引き倒し、上から抑えつけ、詰め襟を力任せに引っ張る。
目を見開いたルークが真っ直ぐにルーシアスを見上げていた。上着の生地が軋む。
植物を象った金縁で彩られたボタンが、ぶつっと音を立てて弾けた。
ルークの掌がルーシアスの顎を押し返そうとするが、それにも構わず詰め襟を脱がせ続けた。
いくつかボタンがとび、転がる音が聞こえる。暗い色のカウチに飛び散った淡い色の髪がやけに目に眩しい。
こんなものがあるからだ。
こんなものは壊して二度と着られないようにしてやればいい。ルーシアスはその一念に駆られていた。
「ルーシアスやめて」
「お前は王子じゃない」 身をよじらせるルークは、それでも詰め襟の内側を隠すかのように襟元を閉めようとした。
殻を壊すかのように、その上着を脱がせようと尚も手をかける。肌蹴た上着と、シャツの白色、昼の光に浮かび上がる首筋の無垢の色。
ルークの手を抑えようとした手が滑り、シャツの胸元に手をつく。
その瞬間、ルーシアスは動きを止めた。己の五感を疑った。
指が食い込むほど柔らかい。胸についた掌には、僅かながらも、あるはずのない感触が伝わっていた。
「お前…」
肺が膨らみ、縮む。それに合わせて上下する肋骨の上に、うっすらと、しかし男とは違う脂肪の感触があった。
「僕を殺してもいい。だけど僕を壊さないで、おねがい」
そう言って、ルーシアスの頬を撫でたルークに、はっと我に返る。
ルークが詰め襟の上着を脱げなかったのは、身体は心より先に、王子の模倣を逸脱していたからだと悟った。
ふっと力が抜けたルーシアスを突き飛ばし、ルークが床に這い出す。
それでも上着で身を守ろうとする彼女を、呆然と見下ろしていた。意味深なタイロンの態度を思い出す。
直接尋問に関わった長兄や父親、そして医師であるタイロンがこのことを知らないはずがない。
「ルーシアスはこわい」
そう繰り返したルークは、冷たいタイルのうえに座り込んで自らの腕を抱いていた。
耳まで赤らませながら、潤んだ大粒の瞳でルーシアスを見返している。
――こわいんだ。ルーシアスがいると、ルーシアスが僕の中に入り込んできて、王子でいられなくなってしまう。
お腹の奥がツンとして頭が熱っぽくなってしまう。
ルーシアスがいなくなると、肺の奥が冷たくなって息ができなくなってしまう。
ルーシアスに、酷いことをしてほしいって思ってしまうんだ
「僕を変えないで。僕の胸を嵐にしないで」 それはあまりにも哀れな懇願だった。情事を「酷いこと」と表現したルークが、宮殿でなにを見てきたのか、想像に難くなかった。
ルーシアスの体の芯は熱いのに、脳は冬のように冷え切っている。
ルークにとって、その感情は原因不明の病に等しいものだったのだろう。熱が出たと思い込んでいたのも不思議はない。
「んっ…あっ…」
腹を守るように身体を丸めたルークが、わずかに湿った声を漏らす。項垂れた首筋は血色が差し、呼吸に合わせて肩が上下した。
内股を擦り合わせる仕草が、やけにはっきりと目に映る。
ルークにとってルーシアスが嵐であったように、いまルーシアスは嵐に飲まれようとしていた。
ルークは多分、本能的にこうなると解っていたのだと、ルーシアスは悟る。
一度こうなってしまったら、ルークの箍が外れてしまうことも、二度と元の関係には戻れなくなることも、全てを予期していた、と。
「ルークを見せて」
ルーシアスは吸い寄せられるように、ルークの側にしゃがみこんだ。心と身体が花開いていくのを、抑え込むように抱いたルークの姿を憐んだ。
膝をつき、顎を引き寄せ、柔らかく淡い色の唇に、唇を重ねる。
驚いたように目を見開いたルークが、硬直した。
その行為の意味を分からずとも、それが何か特別であること自体は本能的に理解していた。
身体を抱き寄せて、唇を甘く噛み、濡れた2枚の唇をこじ開ける。粘膜に侵入され、苦しそうに息をするルークが、ルーシアスの腕に縋った。
唾液が絡まり、揉み合う唇を更に濡らしていく。
ルークの中身が女だったからこうしているのか、それを知るより前から身体は熱を帯びていたのか、ルーシアスには判然としなかった。
ただ息が、肺が、血管が痺れるように熱く、下腹部には熱が溜まっている。 シャツの下に手を滑り込ませ、滑らかで明るい肌をなぞった。
交わっていた唇を放し、その顎の下に浮かんだ傷跡を啄むと、ウッと声をあげてルークがのけぞる。
封を切るように、前開きのシャツのボタンを開けていく。
剥き終わると、忙しなくそのシャツを投げ捨てた。鎖骨にはシミの無い皮膚に血の色が浮かび上がり、わずかな胸の膨らみが晒されてふるふると震えていた。
胸のてっぺんには、血潮の色のしこりがぴんと立っている。
いつの間にか、男の種を招き入れるように成長した身体は、薄く華奢ではあるが確かに女のそれだった。
魚のように、冷たそうな腹の下にあるものを想像して、ルーシアスの下半身の熱がよりはっきりと形をとる。
押さえつけて、手酷く、獣じみたやり方で、ルークを腹の奥まで汚したい。
美しい模倣品を粉々に壊し、ただルーシアスの体の下で喘ぐだけの獣にしたい。そんな後ろ暗い願望が頭をよぎる。
ルークを膝立ちにさせ、ズボンに手をかける。丸くて白い尻、滑らかな太腿が昼の日に晒された。
一緒に引き下ろした下着には、はっきりと湿り気のシミが残っている。
ほとんど剥き出しの白い身体を唇でなぞり、指で尻の丸みを掴む。好き、と表現するにはあまりにも生々しい感情が脳の奥深くに根を張っていた。
「…ルーシアスのおなか、苦しそう」
厚手のズボンを強く押し上げる屹立を見て、ルークが呟く。
白い手がベルトを外し、下穿きをずらして赤黒い男根を取り出す。血の圧で膨らみ、女の中に入ろうと脈打つそれを見下ろして、ルークの喉がごくりと動くのが見えた。 冷たくて柔らかい掌が、ソレを大切そうに包んでいる。
地に手をついて許しを乞うように、銀色の頭がルーシアスの下腹部に下げられた。
「ルークっ…」
つるりとしたてっぺんに、女の唇が接吻する感触があった。
唇が形をなぞるようにゆっくりと男の形を包み込み、柔らかな舌が表面をぬるぬると滑る。
いつの間にか腰に抱きついたルークの、口蓋、喉奥まで熱い肉が侵入していく。
顎が外れるのではないかと思うほどルーシアスを飲み込み、赤毛の陰毛に顔を埋めるその姿は一心不乱だった。
じゅるり、と湿った音を立てて、吸いながら唇を雁首まで戻すと、ルーシアスの下半身に痺れるような快感が走る。
舌で亀頭を迎え入れるように飲み込み、小刻みに頭を前後してくびれを責め立てる手管は、とても何もしらない乙女のものではなかった。
「何処でそんなことを…」
「これは…んっ、侍女が、いつも、やら、されてた、の、みた、から、っ」
切なさそうに腰を揺らしながら、ルークは切れ切れに答える。肉が屹立を責めるその触感に、うめき声が漏れた。
潮が満ちるように、快楽が腰の方まで侵食してくる。浅く波打ったかと思うと深く飲み込まれ、先走りが口の中に漏れるのを我慢することができない。
ぐちゅ、じゅぽ、と卑猥な水音を立てて男を口の中に迎え入れるそのさまは性の交わりそのものもで、腰に抱きついて尻を振りながらそれをするルークはメスの獣だった。
呼吸に合わせ、背中が上下する。いつの間にか、ひれ伏したルークの踵には卵白のような愛液が垂れている。 「ルーク、で、そう、口、放せ」
そう唸ったルーシアスを、しかしルークは無視していっそう深く奥まで飲み込んだ。
限界まで高まっていたところを、喉奥で強く吸われたルーシアスは腰で何かが爆ぜるのを感じ、なすすべもなく熱の塊を迸らせた。
腹の底から唸り声が漏れる。数秒、精が喉の奥に当たり続けた。
細い喉が、粘度の高い塊を飲下す音がした。
すべてが出切ると、ルークは愛おしそうに口の性器から引き抜く。
最後に残ったぶんを口づけで吸い出し、予期せぬ追い打ちでルーシアスをのけぞらせた。
「生臭くて…ルーシアスの味がする…」
顔を上げたルークの赤い唇には、精液の残滓がついていた。
酔ったように赤い顔に、重たそうな睫毛の奥の潤んだ瞳が、まだルーシアスを求めてやまぬ肉体をありありと代弁していた。
「寝台に行こう」
出して少し冷静になった頭で、ルーシアスは促した。冷えた床に座り込んだルークは、その場で頭を振る。
「ここでして…今すぐに僕の孔をルーシアスで埋めてほしいんだ…身体が熱くて、冷たいほうが気持ちいいから…」
三角座りになって、足に絡まっていたズボンを引き抜いたルークは、後ろに片手をついて両の足を招き入れるように開いた。
なにもまとわない、ルークのすべてに、ルーシアスは頬が熱くなるのを感じる。
血色の増した四肢は相変わらず清冽な造形で、ただ脚の間の陰唇だけが春のように泥濘んでいる。 ルークの表情は、夢を見ているかのようにとろんとして、その唇は半分開いていた。
自ら、空いた片手をその秘部に添え、くちゅっと音を立てて押し開くと、まるで咲き始めた花のように花芯が現れる。
そこから、目を離す事ができない。
シャツも脱がぬまま、ズボンも下ろしただけのまま、重力に引かれるように、ルーシアスはルークに覆い被さり、床に押し付けていた。
両足を開いて迎え入れる姿勢のままのルークの湿ったところが、腰のあたりに触れた。
「いつの間に、こんなに」
「ルーシアスが僕の手を冷たいっていって触るから…僕の頭を撫でて額をぶつけるから…僕は…」
長い間、そうとは知らずルークの中の熱の源を育ててきた迂闊を、初めてルーシアスは自覚した。
孕ませる本能のままに、再び熱を取り戻してくる己の下半身のそれを、強く意識する。
男根の先端で探るように秘部をなぞると、淫らな粘液がくちゅくちゅと音を立てた。
恋人結びで手を繋ぎ、男の根源で蕾の割れ目を軽く、幾度もノックする。
「…僕は…王子殿下の模倣品でいることは、ンッ、嫌じゃなかった。あの人はぁ、…本物の王族だった。模、倣品のまま、壊れたくないと思った」
「僕は、冷たいまま、何も変わらず、何も変えず死にたかった」
その独白は、所々息で途切れて、震えていた。
獣のオスがメスの周りをうろつくように、男根は幾度も滑りながらその入り口を探っていた。蜜で溢れた花弁を男のもので押し開き、女の肉の孔にあてがう。 「ルーシアスが、ほんものの僕を、見つけて責めて壊してくれることを、心の奥で願ってた。
でも、ほんものの僕を見ないまま、優しいルーシアスでいて欲しいとも思ってた。
どれもほんものの気持ちだった。苦しかった」
恋人繋ぎを、どちらからともなく、ぎゅっと強く握る。
とうとう、肉の孔を、熱を帯びた硬い肉がこじ開ける。あっ、と顔を背けたルークが、息を止めて思わず痛そうにする。
あたま2つ分は身の丈が違うし、体格の差はそれ以上だ。無理がないはずがなかった。
「ごめん、ルーク、優しく擦るから、息、をして」
自分の指で慰めるのとは違う圧迫感に、ルークは上手に息もできずにいた。
ゆっくりと押し入ってくる男の根源が、奥へと続く道を満たしてくる。
種を求めて収縮しだしたルークの中が、圧迫感を伴った痛みと充足感を同時に脳に伝えてくる。
見た目とは裏腹な優しい声が、汗ばんだ額を撫でる手が、どこか遠く感じる。
意識的に息を深く吐いて吸うルークを待って、きつい圧迫のなかをルーシアスは進んだ。
肉の隘路はしごくように、熱源にぴったりと吸いついてくる。小さな抵抗感に当たり、その正体に思い至る。
2、3度ゆっくりと浅瀬を擦ると、意を決してその奥に入った。女の、悲鳴まじりの嬌声が、肺の奥から絞り出されてくる。
「痛、くして、ごめん…ルーク、お前、すごく、締め付けてくるっ…全然、冷たくなんか、ない、奥、まで、イヤらしいな」 ルーシアスの劣情にあてられるように、ルークが湿った息を漏らした。
自ら腰を持ち上げて、自分を犯す男の腰を脚で巻きつけようとする。睾丸と入り口が密着し、男根の付け根が快楽を感じるための女の突起を擦る。
中から押し出された血液混じりの愛液が、まだ着たままのルーシアスのシャツを汚した。
「あっ、痛いのに、気持ち、いい、もっと、ここ、いじめて、ルーシアス」
陰核の鋭い快感と、体の芯が痺れるような奥の快楽に耽溺して、ルークの口の端から涎が垂れた。
ルーシアス、好き、好きぃ、と無意識に喘ぎながら、ルークは男根を貪っている。
「お前、感じ、やす、いん、だな」
できるだけゆっくりと抽送する。その都度、向き合ったルークからは甘い声が漏れて、男根が締め付けられる。
好いた男を求めて密着してくる姿は、詰め襟を着ていたときのルークと対面していたときには、全く想像もつかなかった。
「お腹の、奥が、気、持、ち、いいよぉ…お、ちん、ちん、で苛めて、欲しいんッ…」
男根が奥まで届くたび、ぱちゅ、ぱちゅ、と外の性器がぶつかる音が響く。
生々しいにおい、陰毛を濡らす粘液、腰を掴む長い脚の感触、繋いだ手の柔らかさ、ルークの媚びる声、そのすべてが、広くはない牢の中で渾然一体となって淫靡な空気と化している。
冷たい床に押し倒されたルークは、犯されているようでいてルーシアスを貪欲に求めていた。 「ルーシアスぅ…すきぃ…ちゅってしてぇ…」
呂律が回らないルークが、子供のように懇願する。
その甘ったるい声が、わずかに残っていたルーシアスの理性を完全に崩壊させた。
ルークの手首を床に押さえつけて、唇を唇でこじ開け、舌を絡ませる。
自分の精液のほんのり塩みのある後味がした。この肉体に、この喉に、男の劣情を流し込んだ証だった。下半身の接合部をかきまわし、わざと大きく音を立てる。唇で唇を啄み、舌を舐め、下唇を吸われ、そしてまた舌を絡めた。
唾液の味が混ざり合い、あらゆる粘膜の境目が消えていく。
強く、腰を押し当てた。ぱん、と音を立てて、衝撃と共に強い稲妻がルーシアスの背骨を走る。
中性的な肢体の、しかし紛れもなく女の、その女の奥の部分を征服している実感があった。
何度も何度も男根を引き抜いては押し入れ、肉の壺はそれに応えるようにキツく絡まってきた。
ルークはずっと前から発情していて、身体を春へと変えながらルーシアスを求めていたのだと、今なら分かる。
そして、自分は無意識のうちにそれにあてられていたのだと、今なら分かる。
腰を、自らルーシアスに合わせながら、ルークは掠れた喘ぎ声を何度も上げた。
ルーシアスは、求められるまま、男の根源的な力で、奥を何度も突き上げた。声の帯びる熱が、蕩けるまで温度を上げていく。
「こんなに、乱暴に、されて、歓び、やがって」
「ルーシアス、飛ぶ、飛んじゃう、おちんちんでぼくを殺してっ!」 指の腹で、胸の蕾を弾いた。雷に撃たれたように仰け反ったルークの中が、強くルーシアスを求めた。
尿道を熱い液体が走った。今度こそ、女の胎の中に種が吐き出される。 ルーシアスは本能的に、最奥に命の根源を押し当てた。
男根から、背骨、脳まで快感の乱反射が通り抜けた。掴んでいた手首の脈が止まるほどに、強い力が入る。
男の種を奥へと送るように、隘路が男根を締め付けて蠕動した。
びくっ、びくっと痙攣したルークの身体を、精液の最後の一滴が吐き出されるまで、ルーシアスは強く結合したままでいた。
***
全てを脱いで獣のように何度も、ベッドで、カウチで姿勢を変えて交わった。
出したあとの男根をルークがねっとりと口で清める度に、劣情を催した。ルークの秘部は指先や唇でいじめ尽くされ、ルーシアスの男根は何度も唇によって達せられた。
そうして、全てが飽和し、劣情がその熱量を失うまで、青年と、青年だったものは抱き合い続けた。
ルークが3度目の失神をする頃には、夜の帳が砦を覆っていた。 ***
辺境を守る一族の長兄、マーカスはその日、部屋に入るなり自分の目を疑った。牢のあるじは、使用人が着るのと同じ、オリーブ色のローブを羽織ってカウチに座っていた。
先に部屋に入っていたタイロンは、ルークの前に膝をつき、諭すように手と手をとっている。
「マーカスさま」
ルークは、澄み切った目で長兄マーカスをまっすぐに見て、そう呼んだ。
以前は死んだようだった瞳が、いきいきと潤いに満ちている。大人びた顔立ちは清い光の線で描かれ、唇には赤みが差していた。
それは以前とは全く違うもので、もはや「王子の模倣品」ではなかった。
そしてその顔立ちは、記憶の中にだけ残る女性の面影によく似ていた。
まだ、10歳位の頃、末弟が生まれる前、都で側に仕えた“橄欖(かんらん)の姫殿下”と同じ眼差し、同じ瞳の色が、いまマーカスの目の前にある。
政略結婚で嫁いでいき、その後不遇の中で身罷った、美しい方だった。
王子の模倣品は、王子に似ていなければならない。順位の低く、産後すぐに身罷った橄欖の妃殿下の子は、きっと好都合だっただろう。
まさかこんな形で、巡り合うとは思わなかったが。
「僕が誘惑したのです。どうかルーシアスをせめないでください」
「貴方を尋問し、処遇が決められず、砦に閉じ込めた。これ以上貴方を罰してなんになりましょう。…貴方は本当に、あの愚かな弟が欲しいのですか」
「僕が王子の城塞であったことも、僕がそうではなくなってしまったことも、どちらも愛してくれたのはルーシアスだけです」 静かに応えるその目は、ルークを虜囚として捕らえて以来、初めて橄欖の姫殿下を思い起こさせるものだった。
尋問している最中でさえ気づかず、密偵からの報告を受けて初めて気づくほどだった。
今までは、似ていてもどこか決定的に違った。
貴方の母君は美しく、優しい方だった。どんなルークでも、きっと愛してくれた。
そう喉元まで出かかる言葉を、マーカスは飲下す。言ってはならない。
今はまだ、不穏な状況ゆえ、余計なことは知らないほうが安全なのだった。
マーカスは余計なことを言ってしまう前に部屋を辞した。何か大切なものを二度失ったような喪失感の中で、ぼんやりとあの末弟を10発殴ったろうと考えた。 ***
首の包帯の下で、傷が膿んで熱が出ていた。もう何日も寝ていて、幾度か金髪の医者が来たのをぼんやり覚えている。
身の回りを片付けて、面倒を見てくれる屋敷からの通いのメイドが、憐れむようにルークを見ていたのも何となく覚えていた。
その日来たのは、メイドでもマーカスでも医者でもなかった。まだ年の若い、短髪の赤毛の男子だった。
周囲を伺うように、こっそりと入ってきたのを見ると、どうやら侵入者らしい。マーカスと同じ黒色の服ということは、一族の者なのだろう。
熱でぼんやりとしたままそちらを見ると、偽王子、苦しいのか、と声をかけられた。
「くるしくない。王子殿下のために、賜ったものだから」
わずかに笑ってそう答えると、赤毛は少し驚いたように目を見開いた。
ややあって、そうだな、と呟くようにいうと、汗で湿ったルークの額を撫でた。
「お前は王子の模倣品として、このまま死ぬのかもしれない。だけどもし、死ななかったら、お前はもうそれを続けなくていい」
その言葉は、ぼやけた意識の中にゆっくりと染み込んで消えていった。赤毛が、しぼりたての、濡れた布巾で頬の汗を拭き取る。
それはとても冷たく、気持ちが良かった。
《終》 長文投下失礼しました。長さの都合で段落と改行がごっちゃになってスンマセンした
あとやっぱりナサニエルの人の影響受けててちょいちょい似てしまったところありました。
作者の人まだいらっしゃってたらごめんなさい ええやん好きな感じや
振る舞いを捨てた剥き出しの感情に支配される獣やな お幸せにと願わずにはいられない、素敵なヒロインでした。ありがとうありがとう…… 猫又ぬこは、講談社ラノベ文庫から
「こいつらの正体が女だと俺だけが知っている」や「妹よ、落ち着いて聞け。お前のカレシ、ボクっ娘だぞ。」
と男装ものを2作出してて、余程この題材が好きなんだなと思わざるを得ない。 少女漫画だしエロはないけど「王の獣」は主人公が男装の獣人でなかなかいい >>536
タイトルだけは両方見てたが、どっちも作者は猫又ぬこだったのは気づかんかったわw
そういや片方はマンガ版も出てたね 「転校先の清楚可憐な美少女が、昔男子と思って一緒に遊んだ幼馴染だった件」も
そういえば、なろう発の作品だったな。 双葉文庫から「おんな与力 花房英之介」というラノベ調の時代物が出てたけど
その主人公が男装少女でこんなストーリーだった。
”江戸中の町娘を美貌で虜にする総髪の新米与力、花房英之介。剣も達者で才気煥発、北町奉行所の期待を
一身に背負う英之介には口が裂けても明かせぬ秘密があった――真の名は花房志乃、花も恥じらう十八歳の
乙女なのである。五年前、暴れ馬に蹴られて死んだ双子の兄に成り代わり、その遺志を継ぎ男として生きる
道を選んだのだ。女心を押し隠し、凛として悪に立ち向かう!! おんな与力の痛快裁きが冴え渡る新シリーズ
第一弾。” ブロッコリーってメーカーから出てる「ジャックジャンヌ」は
男子しか入れない歌劇学校に性別を偽り入学し未来のスターを目指す少女が主人公の
シミュレーションゲームだった。 うんこなんだようんこなんだようんこなんだようんこなんだよ自演終わり 半妖の夜叉姫の日暮とわ
もう数年前の過疎る前に出てきてたらスレ盛り上がってたろうな 名字は「ひぐらし」って読むのかてっきり「ひぐれ」だと思ってたw お前ら半脱ぎは好きか?
俺は好きだ
男装なら男装の雰囲気が残ってた方がぐっとくる
サラシを全部解かずに片方だけとか乳首だけとか露出させるのが好きだ
男物の下着を足に引っ掻けたままとろとろのおまんこ曝すのも好きだ
器用にサラシだけ解いて学ランと白シャツのままおっぱいこねくりまわすのもすきだ
でもまぁ最終的には全裸も楽しむし可愛い格好もさせたいんだけどな そういえば一時期流行った海パン一枚だけでプールや海に行く「男水着チャレンジ」は男装の内にはいるのかな? 銀魂の第7代ED「SIGNAL」の九兵衛ちゃんのとこエロくて好きすぎるわ。
男性陣の半裸やケツばかり出てくるやつなんだけどね。 古典にとりかへばや物語って姉が男、弟が女として過ごすってのがあるが、
これが元にした漫画とかがあったりします。 ダンボール戦機Wってアニメに見た目も名前も男っぽい子がいたな。 映画「翔んで埼玉〜琵琶湖より愛をこめて〜」で
女優の杏が演じてた関西のレジスタンスリーダーが、設定上は男ということは分かるんだけど
どう見ても宝塚の男役にしか見えなかった。 アンデットアンラックの出雲風子
組織加入後の、ワイシャツ赤ネクタイ黒スラックスのときが男装に見えなくもない。 ジュイスさんは男装の麗人だな
性別ルール追加前の過去回想では軍服ショタだったが ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています