【電波的な彼女】片山憲太郎作品【紅】 5冊目
0001名無しさん@自治スレで設定変更議論中2011/06/17(金) 14:46:24.70ID:H74FFvWz
我が身はあなたの領土。我が心はあなたの奴隷。
ここは片山憲太郎氏の著作についてのエロパロスレです。
 
■過去スレ
【電波的な彼女】片山憲太郎作品【紅】
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1150541908/
【電波的な彼女】片山憲太郎作品【紅】 2冊目
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1171037946/
【電波的な彼女】片山憲太郎作品【紅】 3冊目
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1207406903/
【電波的な彼女】片山憲太郎作品【紅】 4冊目
http://pele.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1242246725/

■保管庫
ttp://www35.atwiki.jp/katayama/
0003名無しさん@自治スレで設定変更議論中2011/06/17(金) 20:31:54.60ID:nprHAmWx
おおおおおおおおお!!!!!
早くも新しい掲示板が!!
ちょいと早い気もするがGJ!!
しかし、もう5冊目か。なんか感慨深いな。(^o^)丿
0006名無しさん@自治スレで設定変更議論中2011/06/18(土) 18:48:09.90ID:YHiS+OjV
祝!スレ5冊目&単行本7巻発売!!
スイマセン、紅の単行本は少し前にもう既に発売されてたのですね。知らんかった。
誰かリン×真九郎書いて下さらんかな(←最新刊の影響)
0009名無しさん@自治スレで設定変更議論中2011/06/19(日) 07:53:03.42ID:PkjnlaMe
980レスだったと思うけど、それを超えた場合、こまめに保守しないとdat落ちする
だから、あそこでスレ立てておかないと保守で埋まるかdat落ちかの二択
0012 忍法帖【Lv=5,xxxP】 2011/06/21(火) 10:20:34.98ID:n1fh3vrh
「…………」

「んー……」

「……切彦ちゃん?」

「ん…………どうしました、おにーさん」

「くすぐったいよ」

「しょうがありません。斬り傷は鋭く深い分バイキンが入ったら大変ですから……消毒しないと」

「だからって舐めなくても……それに斬り傷は切彦ちゃんがつけたんじゃないか」

「…………ん〜……」

「…………」

「…………きもちよくないですか?」

「いや、くすぐったいよ」

「……そうですか……ん……」

「…………」

「ん〜……」

「…………ねえ、切彦ちゃん」

「…………」

「なんで俺と喧嘩したがるの?」

「…………」

「…………」

「……これしか……」

「え?」

「これしか……知りませんから……」

「…………」

「こんなのしか……」

「…………切彦ちゃん」

「…………」

「服でも、買いに行こうか」

「…………?」

「俺たち友達だし、一緒に買い物とか……ね?」

「…………はい」
0013 忍法帖【Lv=5,xxxP】 2011/06/21(火) 10:21:51.55ID:n1fh3vrh
続かないと思う
とりあえず新スレというコトで一発
0015名無しさん@自治スレで設定変更議論中2011/06/22(水) 04:06:02.34ID:RtFnZomD
GJ!!切彦可愛い!
0018名無しさん@自治スレで設定変更議論中2011/07/01(金) 02:51:46.49ID:DDS+h00u
紫様になんて言おう。紫様になんて言おう。紫様になんて言おう…
とりあえず、事の重大さに気付かない紅を睨む。
「うっ」とかひるんでいる。
所詮は高校生の若造、まあ私と年齢がそう違うわけでもないが。しかし、そんな紅と『不本意』ながらも一夜を共にしてしまった。

ま、まあ不覚だが、わ、悪くなかったか。

い、いや、別に敵に媚薬を盛られたのが悪いのであって、
ふと気が付くと、五月雨荘の紅の部屋に来ていたりとか。
いきなり部屋に押しかけられて、狼狽えていた紅がちょっと可愛くみえたりとか。
私のことを心配して熱を測ろうと、私のおでこに手を当てられてどきりとしたりとか。
具合の悪い振りして倒れ掛かったら、意外にガッチリした肩に驚いたりとか。
私を布団に寝かせようと抱きかかえてくれた時の、紅の汗の臭いに胸が苦しくなったりとか。
布団に寝かせてくれた時に、キスをしたくなったりとか。
結局我慢できずに、キスして舌まで入れてしまったりとか。
慌てる紅がしっかり勃起しているのをみて、ちょっと安心したりとか。
ズボン越しに膨らんだ一物を撫でてやったら、反応してますます大きくなって嬉しくなったりとか。
なんだか勢いでフェラチオっていうのをやってやったら、直ぐ射精して頭がぼーっとなったりとか。
紅のザーメンを飲んだら、女の部分が「じゅんっ」ってなったりとか。
体が熱くなって服を脱ぎだして裸身を見せつけてやったりとか。
あまつさえ「私の体は綺麗か?」なんて聞いてみたりとか。
「き、綺麗です」なんていわれて、布団に引きずり込んでだりとか。
抵抗する紅の服を脱がして、無理やりにセックスしたり、
処女だったから痛そうにしていたら、優しくされて嬉しくて痛くなくなったりとか。
途中から気持ちよくなったり、途中で紅が私を押さえつけて激しくなったりとか。
それがむしろいやじゃなくて、喘ぎ声とか出しちゃったりとか。
絶頂の直前に「好きだ」とか言っちゃったりとか。
手を恋人つなぎにしたまま、朝まで抱き合って眠ったりとか。
朝になって紅を起こすために、しっかりお掃除フェラをしたのも……

そ、そう、全部媚薬が悪かったんだ!!
だから私は悪くない…悪くないはず…

悪くないなら…もう一回だけしてもいい…はず。

だから紅、も、もう一回だけしないか?
0019名無しさん@自治スレで設定変更議論中2011/07/01(金) 02:52:51.45ID:DDS+h00u
事後ですね。

多分続けない。
0021名無しさん@ピンキー2011/07/02(土) 03:16:28.40ID:M5H6KxVG
GJ!リンさん可愛い!
またお願いします!
0023名無しさん@ピンキー2011/07/11(月) 02:59:29.41ID:vMHVfJC8
19←乙!!!続きじゃなくてイイから、リンと真九郎でまたお願いします!
002419です ◆64HuzSqtB2 2011/07/11(月) 14:08:59.64ID:Ebvn9FSa
思ったより好評でよかった。

いまかなり長いの書いてるんだけど、大学のレポートあるからちょっと待ってね。
リンと真九朗のリクエスト多いけど、全キャラ出てくるやつ書き始めちゃったから、そっち先あげるつもり。
0025名無しさん@ピンキー2011/07/11(月) 16:23:50.50ID:vMHVfJC8
19の御方←マジでか!大いに期待してるわ!気長に待ってるから!
0026名無しさん@ピンキー2011/07/11(月) 16:24:11.54ID:vMHVfJC8
19の御方←マジでか!大いに期待してるわ!
0030名無しさん@ピンキー2011/07/29(金) 20:36:18.98ID:hAFlMZ6t
保守
0031名無しさん@ピンキー2011/08/01(月) 15:37:06.35ID:rgEzUsaW
保管庫は何処に??
0033名無しさん@ピンキー2011/08/02(火) 12:48:30.77ID:l+sMK5XT
あ、本当だ。(゜o゜)
スマン、よく見てなかった…m(__)m
0034名無しさん@ピンキー2011/08/13(土) 15:28:38.60ID:8D4evUmC
保守〜♪
0035名無しさん@ピンキー2011/08/20(土) 20:55:32.44ID:wiERMooJ
ジュウと雨がいちゃいちゃ(?)してるところがみたい・・・
0036名無しさん@ピンキー2011/08/21(日) 02:46:01.84ID:jNhuhXlX
>いちゃいちゃ
前スレに幾つかあったから、保管庫にあるんじゃね?
0039名無しさん@ピンキー2011/09/02(金) 08:43:35.48ID:27NKzvoU
紫のntrが見たいです・・・
0042名無しさん@ピンキー2011/09/17(土) 18:44:42.22ID:zhucmrBb
切彦ちゃんの手足縛って程よく引き締まった太ももに頬擦りしたい
0043雨の日2011/09/20(火) 13:31:22.37ID:NRr1NcPY
今日の天気は曇り後雨。
午前中、授業が始まってから降り始め、ついには放課後まで止むことはなかった。
柔沢ジュウは傘を持っておらず、仕方がないから雨に濡れながら帰宅しようかと考えていた。
体は丈夫なほうだし、帰ってすぐにシャワーを浴びれば風邪も引かないだろう。
「ジュウ様」
丁度昇降口から外へ踏み出そうとした時、後ろから声がかかった。
それはここ最近とても聞き慣れた声で、しかし意外な声だった。
「雨か」
「はい」
ジュウの後ろに立つ小柄な少女は堕花雨という。
鬱陶しいほどに伸びた前髪は目を覆い、ジュウとは頭一つ以上身長に差があるが、
ジュウと同じ学年を示す色のスカーフをセーラー服につけている。
前世からの絆やらなんやらで、ジュウのことを王と崇め、時には奴隷、時には従者、時には騎士としてジュウに付き纏い、ジュウと共にいくつかの事件に巻き込まれてきた。
ちなみに雨は特進クラスで、夏休み明けは補講に追われると雨の妹の光が言っていたのだが、何故ここにいるのだろう?
「どうした? 補講があるんじゃなかったのか?」
「はい。ですが、ジュウ様は傘をお持ちではないのではと思い、馳せ参じました」
「そうか。いや、そうじゃない。補講はどうした? 終わったのか」
「いえ、抜け出してきました」
さっきも言ったが堕花雨は特進クラスに在籍している。以前はまさに品行方正な雨だったが、ジュウと行動を共にし出した頃から見られる、そのある種奇行とも取れる言動から、教師や生徒の間では、ジュウが雨をおかしくさせているという噂もある。
今も然り、雨は大事%
0044雨の日2011/09/20(火) 13:32:18.33ID:NRr1NcPY
ジュウは感謝すればいいのか文句を言えばいいのかわからなくなった。
まあ、感謝をいうところなのだろうが、雨には自分のようになって欲しくない。せっかく出来がいいのだから、勉強はしておくべきだと思う。
逆に言えば自分のような出来損ないは、教師にどう思われようと勉強をしなかろうと、どうでもいいと思う。
「では、帰りましょうか」
雨は少し大きめの傘を開いて、外へ踏み出した。
「は? おい、傘を貸してくれるんじゃないのか?」
「? はい」
「いや、貸してくれよ。帰れないだろ」
雨脚はさっきよりもひどくなっており、傘無しで帰るのは少し苦痛だ。
「はい。ですから、どうぞお入り下さい」
どうやらジュウと雨の間には、意思の齟齬が生まれているようだった。
それを正すべく、ジュウは雨に質問する。
「……雨、なんて言って補講を抜け出してきたんだ?」
「ジュウ様のお供をしなければいけないので失礼します、と、そう担当の教員に断って出てきました」
ジュウは溜息をつく。
ジュウはてっきり、雨は傘を二本持っていて、その片方を今から下校するジュウに貸し、雨自身が帰る時にもう一本を使うのだと思っていた。
しかし雨は、雨が降ってきたから、一本しかない傘でジュウと共に帰ろうと考えていたらしい。
つまり、相合傘で。
そんな小学生かバカップルみたいなことできるか!
こうなったら口からでまかせを言って雨を追い返してから、一人で濡れて帰ろう。
「……やっぱり置き傘があるのを思い出した。お前は今からでも補講に戻れ」
「いえ、ジュウ様の置き傘はありませんでした。すでに確認済みです」
「…………」
抜け目のない従僕だった。
0045雨の日2011/09/20(火) 13:33:25.37ID:NRr1NcPY
〜〜〜〜〜

結局、雨とジュウは相合傘で帰ることになった。
ジュウは昇降口で雨の申し出を断ろうと、忘れ物をしたとか用事があるとかなんだかんだ言ったのだが、雨はジュウが一人で帰ることを頑なに拒み、そろそろ周囲の目が痛くなってきたジュウは諦め、渋々雨と同じ傘に入った。
雨が持っていたのは少し大きめの傘ではあったが、やはり二人では狭い。身長の高いジュウのほうが傘を持っているが、極力隣の少女を濡らさないように気をつけていると、自然と自分の肩は濡れてしまう。
普段の無駄に察しの良い雨ならば気づきそうなものだが、雨の歩き方は何だかぎこちなく、幸いと言うかなんと言うか、雨は気付いていないようだった。
「そういえば」
ぎこちなく歩く雨は昇降口を出てから全く口を開かず、かと言って特に話すこともないジュウも黙っていたが、以前の会話を思い出して、雨に話しかけた。
「お前は雨が苦手なんだったか」
「は? あ、いえ。苦手と言いますか、昔のことを思い出すと、少しやるせなくなるというか」
「つまり苦手ってことだろ」
「そ、そうかもしれません。ところでジュウ様。失礼ですが、あの、こちらはジュウ様の家では……」
「ん? ああ、そりゃそうだ。お前のウチに向かってるからな」
「え?」
雨は本当に驚いているようだった。
あまり表情が変わらない雨だが、最近はジュウも表情の変化が読み取れるようになっていた。
無表情ではなく、表情が薄いだけ。
雨だって怒る時は怒るし、落ち込む時は落ち込むし、笑う時は笑うし。
そして、泣く時は泣くのだ。
ジュウは、ジュウが刺された時の雨の泣き顔を、幸福潰しの時にジュウが車に轢かれかけた時の雨の泣き顔を、ずっと忘れない、忘れられない。
0046雨の日2011/09/20(火) 13:34:14.49ID:NRr1NcPY
その時の雨は、いつもの超然とした、あるいはただの電波な女でもなく。
か弱い一人の少女のようで。
「ジュウ様?」
雨の呼び声で意識が戻る。
「あ? ああ、なんだ?」
「ですから、何故私の家へ向かうのですか?」
「なんでって、お前を家まで送るためだろ」
「え?」
雨はまた心底驚いた顔をして、しかしすぐさま我に返ったのか「それはいけません」と言ってきた。
「それではジュウ様が私の家から帰宅なさる際に、濡れてしまうことになります」
「この傘かしてくれよ、明日返すから」
「ですが」
「いいだろ、傘かしてもらってるし、普段も世話になってるし、そんぐらいさせろよ」
「命令ですか?」
「そうだ、おれに借りを返させろ」
「……わかりました」
それきり雨は黙り、ジュウもそれに倣った。
雨の少しぎこちなかった歩き方はいつも通りになり、心なしか嬉しそうに微笑んでいた。
0047雨の日2011/09/20(火) 13:35:17.20ID:NRr1NcPY
〜〜〜〜〜

「着いたな」
「はい」
雨の家に到着した。
雨は傘から出て軒先にはいるとこちらを向いて、深く頭を下げた。
「ありがとうございました、ジュウ様。お心遣い、感謝いたします」
「俺が好きでやったことだ。気にすんな」
「ですが……あ……」
「どうした?」
「ジュウ様、肩が濡れて……」
「ん? ああ、そうだな」
流石に向かい合っては気づかない訳はなかった。雨の前髪に隠れた瞳は、おそらくジュウの濡れた肩に釘付けになっているのだろう。
「これも俺が好きでやったことだ、気にすんな」
「今すぐ乾かしましょう。ついでにシャワーも浴びて下さい。そのままでは風邪を」
「大丈夫だ。ゆっくり歩いてたから結構いい時間だしな、このまま帰るよ」
「ですが……」
これ以上粘られても困るので、「傘、借りてくぜ」と言って、ジュウは歩き出した。
しかし、すぐに小さな手にワイシャツの裾をつかまれて、立ち止まった。
小柄な少女は、濡れることも厭わずに。
そのせいで張り付いた前髪から目が覗いていて、ジュウを見上げている。
「ジュウ様」
「なんだ?」
0048雨の日2011/09/20(火) 13:37:01.63ID:NRr1NcPY


「雨の日も、好きになれた気がします」


ジュウは本当に嬉しそうなその顔に一瞬詰まったが、「そうか」とだけ返した。
そして。
濡れたせいだろうか。
いつもより綺麗に見える、その少女の頭を、ジュウは優しく撫でた。
少女は少しだけ顔を赤らめて、静かに、綺麗に、微笑んでいた。
0049雨の日2011/09/20(火) 13:37:28.41ID:NRr1NcPY
終わり
エロはないよ
だって昼間だもの
0050雨の日2011/09/20(火) 13:38:47.19ID:NRr1NcPY
もうすぐ秋だから切彦ちゃんか円姉さんのターンがくると期待してます
0051雨の日2011/09/20(火) 13:41:19.68ID:NRr1NcPY
>>43の最後ミス

今も然り、雨は大事な補講を投げ出してジュウの元へやってきている。

にしてください%ってなんだよごめんなさい
0055名無しさん@ピンキー2011/10/04(火) 13:21:50.75ID:m0xM3VzQ
「……くしゅっ……」
あまりの寒さにくしゃみが出る。
私が歩く歩道の上は、休日だからか、親子連れやカップルでごった返していて、夏場はこんなに人が多くなると、ものすごい熱気で歩けなくなってしまうほどなのに、冬場はむしろ風が吹いて寒く感じる。
地球と人間は私の敵です。
少し歩くとゲームセンターを見つけました。冷たい風をしのぐために、ちょっと遊んで行こう。
手頃な格闘ゲームの筐体に座り、百円を入れて、キャラクターを選んで、ゲームスタート。
CPUよりはやりがいがあるけど、やっぱり弱い。画面に広がる、『YOU WIN!』の文字。
筐体の向こう側の人が、こっちを覗いてから帰って行きました。入れ替わりに、別の人が挑戦してくる。
どうせ暇つぶしだし、負けるまでやって行こう。

0056名無しさん@ピンキー2011/10/04(火) 13:22:28.47ID:m0xM3VzQ

結局負けずに50人抜き。
筐体のこちら側も向こう側も、ギャラリーで満杯だ。
そういえば、あの時もこんな感じだった。
筐体の向こうから、いかにもガラの悪いおじさんが、何か悪態をつきながら迫ってきて、私の胸ぐらを掴み、汚い顔を寄せてくる。上着のボタンが千切れる音がする。
ポケットの中には、自転車の鍵。
この程度の人間なら、一瞬で殺すこともできる。
でも、私は何かを待っていた。
おじさんが拳を振りかぶって、私の顔面に向けて放つ。
見える。避けることもできる。振り払うことも、切り落とすことも、殺すことだって。
でも、待ってる。
何かを。
誰かを。
そして、当たる直前で、拳が止まる。
いや、止められた。
中肉中背、大人しそうな顔で、あまり目立たなそうな顔をしている少年。
そんな力がどこにあるのか、おじさんを投げ飛ばして、私の手を取って走り出す。
ああ、来てくれた。
待っていた、彼。
おじさんの怒声が、後ろから飛んでくる。
少年に手を引かれ、建物の陰に隠れて、おじさんが諦めるのをやり過ごす。
やがて、おじさんの声が聴こえなくなって、少年がこちらを振り向く。
「大丈夫? 切彦ちゃん」
優しい声、優しい表情、優しい手。
前と一緒だ。
前もこんな風に、助けてくれた。あの時は、ナンパされたのだと思って、変なカミングアウトをしてしまったけど。
だから、今度はこう言ってやろうと決めていた。
「おにーさん」
「なに?」
0058名無しさん@ピンキー2011/10/04(火) 13:23:19.76ID:m0xM3VzQ
おしまい
小説読み直さないとキャラ崩壊がそろそろやばい
0060名無しさん@ピンキー2011/10/11(火) 10:32:01.25ID:wuZUxtUQ
>>58
GJ
最近人の出入りがないな 前スレは中盤から結構盛り上がってたのに
0067名無しさん@ピンキー2011/11/27(日) 06:14:57.88ID:JOaFUxPv
保守!
0068名無しさん@ピンキー2011/11/30(水) 09:00:42.02ID:84kSDGuT
保守〜♪

0069名無しさん@ピンキー2011/12/01(木) 00:26:22.61ID:+qf2p/+J
好きとか嫌いとか、最初に言い出したのは雨なのかしら?
0070名無しさん@ピンキー2011/12/01(木) 11:30:48.37ID:sD1HmwOU
さぁ?
0071名無しさん@ピンキー2011/12/02(金) 10:38:23.26ID:x/Wmawo3
ぬるぽ
0072名無しさん@ピンキー2011/12/07(水) 10:33:09.84ID:WsIT7sIa
\(゜ロ\)ココハドコ? (/ロ゜)/アタシハダアレ?
0075名無しさん@ピンキー2012/01/08(日) 01:13:18.86ID:JgsjLCAs
雑談は本スレで間に合うところあるからね……。
適当に妄想したシチュあげるだけでも盛り上がるかも知れんが。
0077名無しさん@ピンキー2012/01/08(日) 13:51:45.85ID:W+KtUVjG
雑談もないから誰も居ないと思われて余計投下されなくなってさらに寂れるという負のスパイラル
まあしゃーないけどこのままじゃスレ落ちも近いかも ほんと新刊が出れば違うだろうになあ
0078名無しさん@ピンキー2012/01/08(日) 16:21:51.55ID:tflYyfSE
一応こういう話を振ると人がわくってことは新着あれば
スレを見に行くやつはいるんだよな
0079名無しさん@ピンキー2012/01/08(日) 21:21:51.16ID:JgsjLCAs
絶奈ってどういうセッ○スするんだろうね。やっぱり激しいのがお好みかね。
0082名無しさん@ピンキー2012/01/09(月) 01:34:56.84ID:i64NwyqI
保守♪
0083名無しさん@ピンキー2012/01/09(月) 21:04:45.50ID:Ch+gnEZl
個人的に真九郎の初体験は銀子だと思います。
そんで夕乃がぶちぎれると思います。
でも真九郎は初体験最中に紫の顔がよぎってたりすると思います。
0084名無しさん@ピンキー2012/01/10(火) 10:14:42.16ID:NFQVKJ5j
雨 ジュウ様
ヒカル 柔沢
雪姫 柔沢くん
円 柔沢くん
でおk?
0087名無しさん@ピンキー2012/01/12(木) 23:08:38.60ID:Vr9yGNGb
>>83
個人的な解釈では、その初体験は失敗するパターンだなぁ。

何だか紫を裏切ってる気がしてしまって、真九朗が思い切れず失敗。結局お流れになって、二人が
微妙な距離で背中を向けあいながら服を着てる時、銀子がポツリと「…誰のこと、考えてたの?」

みたいな。
0088名無しさん@ピンキー2012/01/13(金) 03:47:45.08ID:q6MQEXtb
ここはやはり夕乃さんしかないな
傷心の真九郎を崩月家に連れ帰って
お風呂に入るように進めて
その浴室にバスタオル一枚で「お背中流しますね」と乱入し
いつのまにか身体で身体を洗っていて
「いいんですよ。好きに出しちゃってください」と甘くささやかれながら真九郎は放出する
そしてそのまま浴室えっちになだれ込む
0090名無しさん@ピンキー2012/01/13(金) 16:28:48.08ID:bqYWDTVD
時系列は京都編が終わって帰ってきた夜です。

「……切彦ちゃん」
「なんですか?」
「ここ俺の部屋だよね」
「はい」
「なんでいるの?」
「以前は悪宇商会が借りていた部屋に住んでいたんですけど、今回の件で商会を裏切ったという形なので……」
「……追い出されたの?」
「はい」
「だからって……」
「……他に行くところがないんです」
「………」
「お願いします」
「……明日になったら一緒に部屋を探そう」
「私は別にここ「だめ」……」


「とりあえず、今日は俺の布団で寝といて」
「……お兄さんはどうするんですか?」
「この前、破れてた布団捨てちゃったから、座布団でも敷いて寝るよ」


「……なにしてるの?」
「お兄さんの寝るスペースを作ってます」
「だから俺は座「だめです」……」
「でも「お兄さんが寝ないなら、私も布団で寝ません」」
0091名無しさん@ピンキー2012/01/13(金) 16:29:52.20ID:bqYWDTVD
「……(結局こうなったか)」
「……お兄さん」
「………」
「起きてますか?」
「……どうしたの?」
「……来てくれてありがとうございました」
「………」
「……わたし、あんなことした後だから、正直皆さんに会うの、怖かったです」
「………」
「でも、それと同時に皆さんが来てくれて、とても嬉しかったです」
「………」
「……図々しいとは思いますけど、……また皆さんと一緒にいたいです」


「……切彦ちゃん」
「はい」
「……明日、部屋探す前に、病院に行ってリンさんに謝りにいこう」
「……はい」
0092名無しさん@ピンキー2012/01/13(金) 16:30:45.22ID:bqYWDTVD
2週間後 真九郎の部屋
「………それで、なんで切彦さんは、まだ真九郎さんの部屋にいるんですか?」
「それが、切彦ちゃんの年齢だと、まだ一人で部屋を借りられないみたいで……」
「………」

「事情はよく分かりました。住むところは崩月の力でどうにかしますので、とりあえずは当家の部屋をお貸しします」
「よかったね、切彦ちゃん」
「………るーむ」

「………なんで真九郎さんにくっつくんですか?」
「……切彦ちゃん?」
「でぃすいず あうあるーむ」

その後、崩月家当主代行と斬島家当主による、壮絶な戦いが勃発しかけたが、不戦の約定と崩月家戦鬼による命懸けの仲裁により、五月雨

荘の別の部屋に住むことを条件に事なきを得たという。
0093名無しさん@ピンキー2012/01/13(金) 16:32:48.80ID:bqYWDTVD
投下終了
とりあえず、切彦ちゃんは、五月雨荘に住んだらいいと思う
0094名無しさん@ピンキー2012/01/13(金) 16:52:48.30ID:WaIpan0U
    〃〃∩  _, ,_
     ⊂⌒( `Д´) < 切彦ちゃん可愛いお
       `ヽ_つ ⊂ノ
              ジタバタ
         _, ,_
     〃〃(`Д´ ∩ < 切彦ちゃん萌え萌えだお
        ⊂   (
          ヽ∩ つ  ジタバタ

    〃〃∩  _, ,_
     ⊂⌒( つД´) < 切彦ちゃんギュっとしたお
       `ヽ_ ノ ⊂ノ
              ジタバタ
       ∩
     ⊂⌒(  _, ,_) < 切彦ちゃん似の妹が欲しいお
       `ヽ_つ ⊂ノ
              ヒック...ヒック...
       ∩
     ⊂⌒(  _, ,_)
       `ヽ_つ ⊂ノ  ……うちの家系じゃ鉄腕似の妹しか無理だったお
0096名無しさん@ピンキー2012/01/14(土) 04:41:23.75ID:EdD3e7wE
黙れ♪(-_-)/~~~ピシー!ピシー!
0097名無しさん@ピンキー2012/01/14(土) 13:16:43.35ID:KJMIDgwD
そこな>>95よ。
お前が湖に落としたのは、原作の切彦か?それとも漫画の切彦か?
0098名無しさん@ピンキー2012/01/14(土) 15:10:44.35ID:N88XULJg
>>93
乙。切彦が五月雨荘に住んだら、環さんからあれやこれやの歪んだ知識を植え付けられそうだな。
0099名無しさん@ピンキー2012/01/14(土) 19:51:37.60ID:+wdpQitU
>>98
それいいな


斬島切彦の前には、大量のDVD、漫画、雑誌が並んでいる。
顔を真っ赤に染めた少女は、いつもは眠た気にしているその目を見開き、それらから目を逸らせない。
「年頃だし、こういうのにも興味あるでしょー?」
その大量のアダルトグッズを挟んだ向かい側で胡座をかいているのは武藤環。
彼女もまた顔を赤くしているが、それは羞恥のためではなく、そこら中に転がっている『お酒』とかかれた空き缶のせいである。
「わたし……こういうのは……」
少女は環の声で我に返り、咄嗟に顔を背けたが、視線は未だに離せない様子。
「これなーんだ?」
環が切彦の目の前にぶら下げたそれは、ピンク色で、卵のような形をしている。
知識がない者なら一見、何に使うものなのかわからないだろうが、切彦はそれがなんなのか瞬時に理解したようで、赤い顔をさらに赤くして顔を背ける。
「んふふー、やーい切彦ちゃんのえっちー」
「ち、違います」
酔っ払いと、少女の夜は長い……
0101名無しさん@ピンキー2012/01/15(日) 00:18:56.82ID:nNddUtt+
まぁ漫画ですでに崩壊気味だと思いますけどね。
おかげか漫画の切彦は三割増し可愛い。
0102名無しさん@ピンキー2012/01/15(日) 00:42:36.44ID:Qd1JK6qd
個人的には漫画版キャラは色々と甘々過ぎて、逆に受け付けないんだけどな。
本スレも、漫画ファンの占領傾向になってから行かなくなったよ。

誰のせいと言えば、まあ原作者が悪いのだが。
0103名無しさん@ピンキー2012/01/15(日) 00:52:52.99ID:z46wew22
まぁ温くはなってるな、一線を超えないというか。

リン・チェンシン生きてるしw
0104名無しさん@ピンキー2012/01/15(日) 01:00:14.90ID:nNddUtt+
確かに漫画版紅は甘いな。なんていうかエグさが足りない。
そこは死んどけよってところで生きてたり、真九郎が狂い足りない気がする。
0105名無しさん@ピンキー2012/01/15(日) 02:23:30.32ID:sOElBrU7
たしかに真九郎はもっとエグい性格してるよな
敵に対してはもっと非常な感じでもいいと思う
0106名無しさん@ピンキー2012/01/15(日) 15:55:36.47ID:kGRX1haE
新刊が出て、それがグロ祭りだったら漫画から入ったファンが減りそう
0107名無しさん@ピンキー2012/01/15(日) 16:10:52.30ID:Qd1JK6qd
あと夕乃はじめ崩月家や、斬島切彦の底知れなさが無くなったのがツラい。
夕乃は只のツンデレ、切彦は斬島の刺客と言うより「切彦ちゃん♪」。
萌え成分は増えたろうけど、反面怖さや闇の部分が(設定だけ残って)綺麗
さっぱり無くなったと思う。

漫画ファンには悪いが正直、これは嬉しいトレードじゃないんだよな。
0108名無しさん@ピンキー2012/01/15(日) 19:02:21.46ID:nNddUtt+
原作読み直してるけど、やっぱり真九郎の黒さはモノローグがないと表現しきれないと思いました。
0109名無しさん@ピンキー2012/01/16(月) 01:55:12.78ID:Iz/dBwVB
本スレでも書かれてたけど、次巻があるなら雨のために頑張るジュウの話を見てみたいね。
雨が誘拐されたとか、超しつこいストーカーに狙われたとかならジュウも活躍できるかな?
01102012/01/16(月) 02:01:46.37ID:j0C+5tvz
実はそれに近いネタのSS取り掛かってたのだけど、長くなりそげ過ぎて現在停滞中・・・
0111名無しさん@ピンキー2012/01/16(月) 02:04:44.21ID:Iz/dBwVB
>>110
俺待つのには慣れてるよ!電波で鍛えられてるからね!
楽しみにしてます。
01122012/01/16(月) 02:37:54.82ID:j0C+5tvz
>>111
どもです!

ちょっと短いですが、一部を抜粋してプレ版を作ってみました。ご笑覧下さい。
01132012/01/16(月) 02:39:13.74ID:j0C+5tvz


 ジュウの前に立ち塞がった小さな体が、不自然な方向に弾け飛んだ。遅れて、赤い軌跡が弧を描く。

 撃たれた。雨が―――撃たれたのだ。自分を庇って。




  ■ ビーストキング ■ (プレVer.)




 「聞いたぞ、ジュウ。悪宇商会の戦闘屋とやりあったって?」

 「?何の話だ」

 「とぼけるなよ。妙な黒人とじゃれたらしいじゃないか」

 ここは柔沢家のマンション。昨夜、半年振りに帰宅した紅香が、リビングでテレビを見ながら唐突に切り出した。

 ジュウは二ヶ月前の事件を思い出す。変な女が自分の誘拐を目論み、失敗した―――多くの人間を巻き込んで大事
に発展しながら、結局は新聞沙汰になる事すらなく、うやむやに終わったあの事件。

 「ああ、あれか」

 そういえば、あの眼鏡の女は「悪宇商会のルーシー・メイ」と名乗っていた気がする。


 ジュウは懸念事項を思い出した。そう。あの時、眼鏡の女の口から母親の名前が飛び出した理由を、まだ母親に
問うていなかったのだ。

 「そういや、訊きたい事が―――」

 突然視界が白く染まり、鼻腔に突き刺さる様な香りが充満する。強いタバコの煙だ。それを変なタイミングで
吸い込んでしまったジュウは、激しくむせた。

 息子の問いを文字通り煙に巻くと、紅香は軽い調子で言う。

 「お前、今から私の仕事を手伝え」

 「あん?」

 「学校の退学手続きは私がやっておく。お前は直ぐに荷物をまとめろ」

 「・・・何言ってんだ?」

 「シリアに行く」
01142012/01/16(月) 02:39:48.05ID:j0C+5tvz


 ジュウは―――表情には出さなかったが、混乱した。紅香は今何と言った? 退学? シリアだと?

 暫く話の続きを待ったが、ガキ大将の様な母はタバコを吹かすだけ。そのまま無為に十数秒を経た頃、チラリと
ジュウを顧みた紅香はさも呆れた様に言う。

 「何だ、まだ居たのか。さっさと部屋へ行って荷物をまとめてこい」

 彼女に話をする気がない場合、大抵は何を訊いてもどうにもならない。だから何時もは無視するか、従うかの
二者択一を迫られ、結局は暴力沙汰に発展するのだが・・・流石に今回は、訊き返さざるを得なかった。

 「待てよ、一体何の話だ」

 「うるさいやつだな。黙って親のいう事をきけ」

 「ふざけんな!」

 思わず椅子を蹴って立ち上がる。その顔を、紅香の眇めた視線が捉えた。

 「そりゃ、こっちのセリフだ。馬鹿が」

 相手の目を見たジュウは、僅かに息を呑む。その表情が、どこか今まで見てきた不機嫌面とは一線を隔す、深刻な
ものに感じられたのだ。紅香は明らかに――――――激怒している。


 悪い予感がする。半ば搾り出す様に、ジュウは尋ねた。

 「・・・その外国行きってのは、どのぐらいの期間だ?」

 相手は冷たい視線を向けたまま、何も答えない。つまり―――

 「どのぐらいだ!!」

 紅香は紫煙を吐き出すと、穏やかで、冷たい言葉を発した。

 「お前が選んだ事だろ?人が散々、普通の青春を謳歌させてやろうとしてやったのに」


 胸の辺りで何かが綻ぶ音がする。自分が立っている足元が、実は底なしの穴だったと告げられる直前―――
そんな不確かな感覚。鼓動が早鐘を打ち始め、ジュウは動揺を隠せなくなった。間違いない。これは何かが一変する、
その瞬間だ。

 事実を突きつける様に、紅香が告げた。


 「アウトだよ、ジュウ。腹を括れ」

01152012/01/16(月) 02:41:06.44ID:j0C+5tvz
以上です。続きは遥か先の事になりそうですが、またその折には宜しく。
0116名無しさん@ピンキー2012/01/17(火) 01:05:25.60ID:Fz+V0wO8
>>115
激しく期待

ただ、いちいち行間は開けなくていいと思う
まぁそこらへんは書き手さんの好みだけれども
0117名無しさん@ピンキー2012/01/17(火) 01:54:07.09ID:DGg7tnNg
>>115
まってるよ

>>116
パソコンだと関係ないけどスマホやケータイだとこっちの方が見やすいってのはある
01192012/01/17(火) 22:08:34.50ID:Mp89c7/S
どもです。

ちょっといきなりな話の展開で何が何やらと思われた方も居られるかと思いますが、
原作のキャラクターや世界観のベースを傷付ける事のない様、注意しながら書く積
もりでいます。投下の際には宜しくお付き合いの程を。
0120名無しさん@ピンキー2012/01/17(火) 22:16:02.69ID:pwPqbkGr
激しく期待して待ってる!
でも、そんな気張らなくていいからねー。
0122名無しさん@ピンキー2012/01/23(月) 17:29:55.32ID:iYXUJJgT
なんとなく思いついたので投下

キャラ崩壊
口調適当
エロなし

大丈夫ならどうぞ
0123名無しさん@ピンキー2012/01/23(月) 17:30:27.71ID:iYXUJJgT
「あら、柔沢くん」
「円堂か」
休日ということで、柔沢ジュウは街をぶらぶらしていた。
本当は雨を誘ったのだが、雨は雪姫と出かけるとのことで、都合が合わなかったのだ。
かと言って家で一人でやることもなく、なにかいい暇つぶしはないかとふらふらしていたところで、雨の友人、円堂円と遭遇したのだった。
「今日は雨は一緒じゃないのね」
「こっちのセリフだ。今日は一人なのか?」
「ええ、まあ。用事をちょっと片付けたところ」
円はそこで嘆息した。少しお疲れのようだ。
円は空手の道場に通っており、さらに学校でも女子空手部に所属しているため体力がないはずはないが、おそらく精神的な疲れなのだろう。
ジュウはなんとなく、その原因を知りたくなった。
「用事って?」
「レディの行動を詮索するなんて感心しないわね」
間髪いれずに睨まれ、ジュウは確かにその通りだと思った。
そもそも暇つぶし程度の興味だし、円に反感を買うのは拙い気がする。
「そうだな、悪かった」
素直に謝るジュウの様子を見て、円は再び嘆息した。
「ま、貴方にも関係ない話でもないし……ちょうどいいから、そこの喫茶店に入りましょう。ここは寒いわ」
0124名無しさん@ピンキー2012/01/23(月) 17:30:47.65ID:iYXUJJgT


「コーヒー、ブラックで」
「スペシャルサンデーデラックスパフェ一つ」
「…………」
「……なに?」
「……なんでも」
円は男とブロッコリーが死ぬほど嫌いだと公言しており、ジュウもそれを聞かされていたため、正直この展開はジュウにとっては意外だった。
円はジュウにとって、今まで二人で出かけたこともなければそこまで話したことはない。
えぐり魔や光と伊吹の件で世話にはなったが、要は友達の友達程度の関係であり、それは円にとっても変わらないはずだ。
ジュウがそんな風に考えを巡らせていると、円は四人席の対角側から、先程までの疲れたというより、不機嫌そうな顔でジュウに話しかけた。
「私、こういうのキャラじゃないのよ」
「は?」
「だから、普段もこういうのを食べて見たいんだけど、雨や雪姫の手前なかなか注文なくて。だから今日はちょうどいい機会だし、食べようと思ったのよ」
「ああ……パフェのことか」
「パフェのことよ」
そんな話をしていると、丁度店員がこちらへ向かって来た。
「お待たせいたしました。ご注文のコーヒーと、スペシャルサンデーデラックスパフェです。以上でご注文宜しいでしょうか」
「はい」
「では、ごゆっくりどうぞ」
爽やかな笑顔の男性店員はジュウの方を一瞥し、その後軽く会釈をすると、そのまま別のテーブルへと歩いて行った。
「……なんか睨まれたんだが」
「大方、私と貴方が釣り合わないとでも思ったのでしょうね。馬鹿馬鹿しい、全くどうして男っていうのは低俗で下劣なな思考しかできないのかしら」
不機嫌そうに、しかしどこかソワソワしながら、円は毒吐いた。
視線は目の前に置かれた、高さ30センチはあろうかという特大パフェに釘付けだ。
「……早く食べればいいじゃねえかよ」
「……言われなくても」
言うが早いか、円は早速パフェ用の細長いスプーンを手に取り、巨大パフェに取り掛かった。
0125名無しさん@ピンキー2012/01/23(月) 17:30:57.81ID:iYXUJJgT


「…………」
「ま、そんだけデカけりゃ飽きも来るだろうな」
「……五月蝿いわね、男の癖に」
円はパフェを半分ぐらいまで食べると、急にペースが落ち始め、残り三分の一程度まで食べ進めたところで、完全に手が止まった。
ジュウは既に三回もコーヒーのお代わりを頼んでおり、口の中がコーヒー一色になっている。
「ところで本題だけど」
もう一度コーヒーを頼もうか別の飲み物を頼もうかジュウが悩んでいると、パフェとにらめっこしたままの円が口を開いた。
「私の用事はね、この前の事故の後始末よ」
「事故?」
「ええ。別に話す必要もないのだけど、黙ってる理由もないし、話すことにする」
事故といえば、ジュウとしては思い当たる節は一つしか無い。
先日、一人の女子高生が交通事故で死亡した。歩道に乗り上げたトラックが、女子高生と共に店のショーウィンドウに突っ込んだ。運転手は軽傷だったがその女子高生は即死。帰らぬ人となった。
その女子高生はジュウや雨が通う高校の生徒会長だった人で、名前は白石香里。生徒からの人望もあり、教師からの信頼も厚かった。
しかし、円や雪姫が通う光雲高校で夜な夜な行われていた『幸福クラブ』なる組織による被害者にして最後の加害者。
トラックの事故も、ジュウを殺して幸福値とかいうものを奪おうとした白石の(雪姫曰く)因果応報によるものだった。
「アレの後処理がね、結構面倒だったのよ。貴方はあの女に殺されかけた被害者だけど、向こうの親なんかからすれば、貴方が飛び出さなければ娘は死ななかった、って具合になるわけ」
「言いがかりだ」
「そうね。でも事実、その光景を見た人はいないんだもの。貴方の背中に彼女の指紋が残っていたから事無きを得たけれど、それでも向こうの親は断固として裁判を起こす勢いだったわ」
「…………」
「最終的にいろいろと借りを作ってまであちこちに手を回して……そしてついさっきようやく、借りを全部返し終わったところなのよ」
円はいつの間にかパフェから目を離し、ジュウをまっすぐと見て話をしていた。
ジュウはそれを逸らすことなく、口を開いた。
「ありがとう、悪かったな」
「いいのよ、貴方は雨の友人だもの。それに、友人のの頼みとあらば、断るわけにもいかないでしょ」
「……またあいつ、俺の知らないところで……」
ジュウは円に感謝するとともに、いつも陰ながら自分の為に動いてくれる雨にも感謝した。
たとえ勘違いや妄想からの忠誠心による行動だとしても、ありがたいことには変わらない。
「丸くなったわね」
「は?」
「私と雪姫が始めて貴方に会った時、貴方はもうちょっと怖い顔をしていたわ」
「そんなことねえよ。変わってないさ」
「そうかしら? 取り敢えずそろそろ出ましょうか」
円が席を立つ。ジュウもつられてそれに習う。
パフェが盛られていた器を見るといつの間にか空になっており、ジュウは驚いた。
と同時に、器と机の間に小さくメモが挟まっているのを見つけた。上には小銭が乗っており、どうやらパフェの代金のようだ。
初めから奢るつもりだったジュウは振り返ったが既に円の姿は店内に無く、その手際の良さにジュウはまた驚いた。
支払いを済ませて店内を出る。
メモを見ると、こう書いてあった。
『借りは残さないけど、貸しは残しておくのが社会の基本よ』
「……流石、雨の友達だな」
携帯で時間を確認すると、既に五時を回っていた。
冬の陽は短い。
ジュウはその短い時間を少しだけ有意義に使えたことを感謝しながら、家路に着いた。
0126名無しさん@ピンキー2012/01/23(月) 17:31:47.92ID:iYXUJJgT
おわり
iPhone辛い
家に帰って円さんに美脚で膝枕して欲しい
0127名無しさん@ピンキー2012/01/23(月) 21:42:06.52ID:LgbTixil
>>126
乙。円さんはファンブックでもサブキャラ扱いだったからこういうの読めてうれしい。
0129名無しさん@ピンキー2012/01/24(火) 23:47:39.79ID:gssErigJ
円さんは日常の絡み少ないから書きにくいんだよな
雨はメインだし雪姫もデートしてるし光はツンデレだから書きやすいし
男嫌いってのもどうやってデレにつなげるか考えなきゃいけないし
0130名無しさん@ピンキー2012/01/25(水) 00:51:03.80ID:Xa85lLPK
円って三巻終了時点でジュウにどんな印象もってるん?
悪い奴ではないくらいの好感はあるんだろうが。
0132名無しさん@ピンキー2012/01/27(金) 06:21:35.46ID:glBAj7mG
ブロッコリーおいしいよブロッコリー。
マヨネーズがいいよ
0136名無しさん@ピンキー2012/01/29(日) 01:13:02.54ID:vn18VrEO
紅香>>>>>(越えられない壁)>>>>>美夜>雪姫≧光>円≧雨
のイメージ
0137名無しさん@ピンキー2012/01/31(火) 00:43:28.68ID:/kho0Y16
なに、胸の大きさくらい雨とジュウの前では些細なことさ
0138名無しさん@ピンキー2012/02/01(水) 00:48:22.21ID:iKHGWvRj
>>126の続きっぽいもの(雪姫編)
・キャラ崩壊気味
・口調割と適当
などなど
大丈夫ならどうぞ
0139名無しさん@ピンキー2012/02/01(水) 00:48:44.06ID:iKHGWvRj
「これ美味しいよ! 柔沢くんもいる?」
「いらん」
駅前のファミレス。現時刻は昼の12:40。
楽しげに白いリボンを揺らす少女斬島雪姫と、強面の金髪不良少年柔沢ジュウ。
この二人がなぜこんな平日の昼間からこんなところにいるのかというと、それには訳があった。

昨夜はどうにも夢見が悪く、寝覚めも最悪だったため、ジュウは学校をサボって出かけることにした。
シャワーを浴びて軽く頭を覚醒させてから、トーストを焼いて適当に朝食を済ませ、私服で街へと繰り出しす。
そこで、不幸にもというかなんというか、白いリボンに捕まった。
以前も見た『I♡VIOLENCE』のロゴの帽子に、ホットパンツとブーツ。Tシャツの上にGジャンを重ね、首には『FUCK OFF!!』と言う過激な文字の入ったマフラーを巻いている。
「おっす、柔沢くん」
「……なんでこんなところにいやがる。学校はどうした?」
「そっくりそのままお返しするぜ」
ジュウが睨みつけると、雪姫は肩を竦めて、「ウチは創立記念日なんだよね。そっちはサボりでしょ?」
「ウチも創立記念日だ」
ジュウは咄嗟に嘘を吐いたが、雪姫はにまっと意地悪く笑って、ケータイの画面を突きつけて来た。
0140名無しさん@ピンキー2012/02/01(水) 00:49:26.55ID:iKHGWvRj
「うーそ。雨からメールが来てるもん」
そのメールは確かに雨からのものらしく、内容は、以下の通り。

ジュウ様に連絡がつきません
学校にもいらしていないようです
何か知りませんか?

「あいつは俺の保護者か何かなのか……?」
「下僕じゃないの?」と言う雪姫の言葉に、ジュウは大きくため息を吐いた。
「ていうか、柔沢くん、ケータイ持ってないの?」
雪姫に尋ねられ、ジュウは昨夜充電がきれたままのケータイを部屋に置いて来てしまったことに気が付いた。
携帯電話なのだから携帯しなければ意味がないだろうに。
ジュウがそれを話すと雪姫は、「携帯電話なのに携帯しない……不携帯電話! なんつって!」
「言ってろ、じゃあな」
下らないギャグを聞くのはジュウの趣味ではない。
それに今日はなんとなく一人になりたくて学校をサボったのだ。わざわざこんな元気な女と一緒にいる意味はない。
ジュウは早々に雪姫に背を向け、今来た方向とは逆方向に歩き出した。
「私、そこの喫茶店に行きたい」
「は?」
突然後ろから声をかけられたものだから反応してしまったが、ジュウは雪姫を振り返ってから、自分の失敗に気がついた。
雪姫はまた、先程のような、否、先程よりも意地悪いにんまりとした笑みを浮かべ、ケータイを突きつけながら言った。
「今すぐ雨に柔沢くんの居場所を連絡するのと、私とデートするの……どっちがいい?」
0141名無しさん@ピンキー2012/02/01(水) 00:49:53.59ID:iKHGWvRj


そして、冒頭に至る。
「……お前は、普段からそれを食べてるのか?」
雪姫の目の前には、30センチはあろうかというほどの巨大なパフェ。
先日円が食べていた、スペシャルサンデーデラックスパフェではなく、グッドチューズデーエキサイトパフェと言うらしい。雪姫曰く、サンデーの方とは少し異なり、フルーツが多めに盛られているとのこと。
なぜ平日にスペシャルサンデーなのかはわからないが、ジュウはよくもそんなに甘い物が食べられる物だと思っていた。
円は、雪姫や雨と来る時は食べれないとか言っていたが、逆に、雪姫や雨は普段から食べているのだろうか?
雪姫はキョトンとして、「いや、無理でしょ?」と答えた。
「無理?」
確かに物量的にはかなりきついかもしれないが、女は甘い物は別腹と言うし、実際、円は完食していた。
「だってほら、ここに書いてあるじゃん」
雪姫が机を指差す。
そこには限定メニューと大きく書いてあり、その下に、それらのメニューの名前が並んでいた。

限定メニュー!
ご家族限定! 親子プレート!
兄弟・姉妹限定! 仲良しフルーツ盛り合わせ!
カップル限定! 日替わりパフェ!
(曜日によってそれぞれ盛り付けが違います!)

「……いつの間に俺とお前はカップルになったんだ……?」
「まあまあ、細かいことはいいじゃん!」
雪姫のあっけらかんとした態度に、ジュウは大きく溜息を吐いた。
「溜息吐くと、幸せが逃げて行くんだよー」
「知るか」
「自分のだけじゃないよ。周りの人のも逃げて行くんだよ?」
「知るか」
「ひっどーい」
雪姫は喋りながらもペースを落とすことなくスプーンを動かして行く。
円は後半きつそうにしていたが、普段からこういう物を食べている雪姫は余裕なのだろうか。
「なに? 私の顔になんかついてる?」
「嫌、よく食えるなと思ってな」
ジュウが言うと、雪姫はなぜかふんぞり返りながら、
「甘い物は別腹なのです!」
「……そうか」
ジュウは今日もコーヒーを頼んでおり、既に3杯目。
しかし、雪姫は円より食べるペースが早いので、先日のように口の中がコーヒー一色になることは避けられそうだった。
その3杯目が空になろうかという時、雪姫が唐突に質問して来た。
0142名無しさん@ピンキー2012/02/01(水) 00:50:17.35ID:iKHGWvRj
「そういえばさ、柔沢くんは、雨とエロいことしてんの?」
「ぶっ!?」
「汚っ!?」
突然のことにジュウは口に含んだコーヒーを吹き出してしまった。
テーブルに飛び散ったコーヒーを拭きながらジュウは謝る。
「わ、悪い……っていうか、いきなりなに言ってんだ!?」
「友人として気になるところだけどー」
雪姫の言い分は尤もだが、こんな場所で、昼間からするような話ではないだろうに。
コーヒーを拭き終わると、ジュウはまた溜息を吐き、
「ったく……そんなことするかよ」
「ふーん……」
雪姫はそっぽを向き、さして興味もないような素振りで止まっていた手を再び動かし始め、みるみるうちにパフェを完食した。
「ごちそうさまっ。美味しかったー」
「よし、じゃあ出るか」
会計を済ませて店を出る二人。
ジュウは奢ろうかと言ってはみたものの、案の定、雪姫は自分の分は自分で払うと言い、むしろジュウの分まで払おうとしていた。
レジの前で問答を続けた結果、割り勘と言うことで決着がついた。
とはいってもジュウはコーヒーしか飲んでいないので、雪姫が半分おごられる形になった。
「さて、そろそろ帰るか」
「何言ってんの? まだまだお昼を過ぎたばっかりじゃん!」
ジュウはさり気なく解散を促そうとしたが雪姫によって一蹴されてしまった。
雪姫は、「次はゲーセンとか行きたいなー」などと言いながらジュウの腕をとり、ジュウの帰り道とは逆方向に歩き出した。
雨と出会い、少しばかり知り合いが増え、こういう時間も悪くない、と、ジュウは思う。
円に言われたとおり、確かに丸くなった自分を自覚しつつ、雪姫に聞こえないよう、幸せを逃さない様に、ジュウはそっと溜息を吐いた。
0147名無しさん@ピンキー2012/02/02(木) 01:33:02.73ID:L9ahzQ2u
雪姫は料理で餌付け出来る、問題は興味をもってもらえるかだがw
0148名無しさん@ピンキー2012/02/07(火) 01:05:11.12ID:8TFPUUsa
雪姫に興味持ってもらいたかったらどうすればいいんや。
0149名無しさん@ピンキー2012/02/08(水) 02:23:26.58ID:TyQ7+tBD
柔沢雨、柔沢雪姫、柔沢光、柔沢円。ふむ、このなかじゃ雪姫が一番いい気がするぜ。
斬島ジュウ、堕花ジュウ、円堂ジュウ。この中では堕花ジュウが一番な気がする。
0150名無しさん@ピンキー2012/02/10(金) 01:30:47.05ID:OGsuaT+M
語呂で言うなら雪姫はイマイチじゃね?
音的には光や円の3文字のが収まりがいい。
0152名無しさん@ピンキー2012/02/12(日) 20:24:04.44ID:EBhVVsk7
絶奈って、浮気しても最後に自分のところに帰ってくればいいとかいいそう。
0155名無しさん@ピンキー2012/02/13(月) 15:52:34.43ID:14ztXep5
紅キャラで浮気されて一番怒りそうなのは夕乃さんだな。
すぐ気付きそうでもある。
0157名無しさん@ピンキー2012/02/14(火) 19:42:57.59ID:fCiInQ4v
真九郎は泣きながら迫られたら断り切れないんじゃないだろうか
0158名無しさん@ピンキー2012/02/14(火) 22:27:41.89ID:f+YEpvod
二人きりでそういう状況に陥らないように、
各々ヒロイン同士が牽制しあわねばならん訳だな
0160名無しさん@ピンキー2012/02/17(金) 18:38:49.41ID:ues2r9kz
ペの段階に入ろうとしたところで、弥生にサックリ刺されるぞ
0161名無しさん@ピンキー2012/02/17(金) 21:31:26.32ID:CO4vnywE
弥生はスマブラXならやはりシークをメインに使うのでしょうか。
0162名無しさん@ピンキー2012/02/19(日) 22:09:06.93ID:NtMv/ROC
紫が大人になるまで揉め事処理屋続けられればいいけど、そうでなかったら銀子とラーメン作ってるよね真九郎。
0167名無しさん@ピンキー2012/03/04(日) 15:07:43.35ID:y7coWa5u
真九郎入浴中に銀子が入ってくるイベント見れたから漫画版はもう満足。
0168名無しさん@ピンキー2012/03/07(水) 00:46:55.65ID:KpdQpDA1
原作で仕事がなくクリスマスを崩月家で過ごしていたら真九郎は一皮むけていたのだろうか。
0170名無しさん@ピンキー2012/03/13(火) 22:03:37.20ID:ckVeutWj
夕乃さんが卒業したら学校において銀子に敵はいなくなるな。
0171名無しさん@ピンキー2012/03/15(木) 13:29:54.89ID:dvL50PYv
いや真九郎はなんだかんだ無駄に人助けとかしてそうだから
夕乃さんがいなくなってアピールしてくる女子が増えるかも
0172名無しさん@ピンキー2012/03/19(月) 02:44:43.59ID:QOkCthla
学校で敵がどうとか以前に学校に夕乃、銀子しかキャラの立ってる奴いないっていうね。
0174名無しさん@ピンキー2012/03/25(日) 23:44:16.46ID:OhC2mpI1
崩月流抜きならなぁ
0175名無しさん@ピンキー2012/03/26(月) 02:30:07.97ID:zkIXZGZR
あんなんいらん!!!
紫みたいな妹は欲しいぃいいいいい!!!
0176名無しさん@ピンキー2012/03/26(月) 03:50:51.93ID:w0nt9D8m
漫画版の夕乃なら箒やイラクサで叩き出した後で塩を撒く
しかし原作版の方なら金の草鞋を履いてもいい
0178名無しさん@ピンキー2012/03/31(土) 21:41:07.19ID:jvVXHZiy
材料を口に放り込んで腹のハッチを開けたら料理が出てくる
0179名無しさん@ピンキー2012/04/02(月) 05:14:11.24ID:lyM0su+2
保守ぅううううううううううううううううううううう♪
0181名無しさん@ピンキー2012/04/02(月) 14:41:16.28ID:qUsrQYmT
「たすけてー、ゼナえもーん!」
「もーしょうがないなあ。『ひっさつパンチー』」
0183名無しさん@ピンキー2012/04/15(日) 00:11:38.27ID:S5p+SrqA
投下します。環ヤンデレ?小ネタですので、苦手な方はスルーお願いします。
0184名無しさん@ピンキー2012/04/15(日) 00:16:36.86ID:S5p+SrqA
ヤッホー!! 真九郎くんっ!!
……やだな〜、そんな驚かないでよ
ただ彼女が彼氏に声掛けただけじゃないの〜
もう、照れちゃって、可愛いんだから♪

あっ、銀子ちゃんいたんだ
ごめんねー、気がつかなくてー
悪いんだけどさー、これから真九郎くんと、男と女の話ってやつがあるから、ちょっと遠慮してもらえるかな?
……そう? アリガトッ
ごめんね、また今度ね、バイバーイ!!


さてと――

0185名無しさん@ピンキー2012/04/15(日) 00:17:59.75ID:S5p+SrqA
あー、真九郎くん、大丈夫?ちょっと力入れすぎちゃったかな?
まぁ、まだ自分で立てるよね?
さーて、真九郎くん、どうして殴られたか分かるかな?
……環さん以外の女性と仲良くしたからです?そう――

大っ正っ解っ!!

ごめんねー、また、つい手が出ちゃったわ
でもさー、分かってんだったらさ、なんで他の子と仲良くするかな?
……仕事の話?へぇーー、そうなんだぁ
でもさー、仕事の話だったら、あんなに楽しそうに話す必要ないよね?
それに、仕事だったら、あたしと一緒に道場をやっていこうって言ったじゃない
真九郎くん、強いし、優しいし、きっと道場の子供達にも人気出るよ
そうしたら、もう、あのうざい眼鏡や音痴にも関わらなくて済むしね♪

それにしても、あの眼鏡も音痴も鈍いとゆうか、空気が読めないというか、ねー
真九郎くんは、私の彼氏になったのにいつまでも関わってきてさー、一体何を考えているやら
もう「みんな」の真九郎くんじゃなくて「私」の真九郎くんなのにねー

……二人のことを悪く言わないでくださいって?

へぇー、そうなんだー、真九郎君は彼女より、あの二人のことを庇うんだ、ふ〜ん


ふっざけんじゃないわよ!!

真九郎くん、言ったよね、「俺は環さんが好きです」って、初めてを捧げ合った日に確かに言ったよね!?
「環さんを悲しませるようなことはしません」って言ったよね!?
なのにさぁ〜、これはどうゆうことなのかな〜
あたし、今すっごーーく悲しんでるよ、彼氏に自分のことより、他の女を優先されて、すごく悲しんでる
これ、どう責任とってくれるのかな ねぇ! ねぇ!! ねぇー!!!


もぉ〜 そんなに震えないでよ、ちょっと真九郎くんが、だらしないから怒っただけじゃない
ただ……大事な彼女との約束を破る彼氏には、軽く「おしおき」しないといけないかなーー
大丈夫!!ちょっと空手の練習台になってもらうだけだから
0186名無しさん@ピンキー2012/04/15(日) 00:19:32.08ID:S5p+SrqA
あれっ?もしもーし、真九郎くん?
あー、気絶しちゃったかー、ちょっとやりすぎちゃったかなー
さすがに、巻き藁の代わりにするのは、不味かったかー

まっ、いいかっ! とりあえず彼氏への「おしおき」は、これくらいにして……
あの眼鏡と音痴にはきちんと「教育」してあげないとね……
……さっきのこともあるし、まずは眼鏡かな

「もしもーしー、銀子ちゃん?さっきはゴメンネ〜 ところでさ〜真九郎君のことで、ちょこっと話したいことがあるから、後から五月雨
荘まで来てくれるかな〜 ……うんっ お願いね! じゃっ、また後で」
0187名無しさん@ピンキー2012/04/15(日) 00:23:24.40ID:S5p+SrqA
投下終了
環さんは、いつもはあんな感じだけど、
「彼氏」というふうにカテゴリー化すると独占欲が強くなるのではないか、というのを妄想してみた
0190名無しさん@ピンキー2012/04/26(木) 19:28:00.25ID:Vyh/y6Ux
なぜか真紅郎の部屋にある環さんのジャージが夕乃さんに見つかって問い詰められてほしい。
0191名無しさん@ピンキー2012/05/01(火) 20:54:30.16ID:Ue89mauz
狩りぐらしの電波っ娘の再販出てて嬉しい
またなんか書いてくれないかな
0192名無しさん@ピンキー2012/05/02(水) 10:45:07.06ID:YwqmBHJX
電波も紅も原作小説ってもう出てないよね。
0193名無しさん@ピンキー2012/05/03(木) 22:44:30.38ID:dflfchtf
出てほしい!!でも厳しいでしょうね
0195名無しさん@ピンキー2012/05/22(火) 20:38:21.59ID:IMbMeX2B
〉194
つ珍譜堂『降伏ゲーム』

このサークル、他にもいくつか出してるよ。
0196名無しさん@ピンキー2012/06/05(火) 15:11:34.55ID:OTbE74qi
漫画も終わっちゃったし、もうここしか補給できるところないな。
0198名無しさん@ピンキー2012/06/19(火) 22:28:20.59ID:dz9mM2jF
ジュウと雨の初体験とか、凄く甘酸っぱいんだろうな
0199名無しさん@ピンキー2012/06/20(水) 01:35:55.47ID:BDzEl5yJ
電波連載するかもと淡い期待があったけど別の人原作の話山本さん作画でやるのね
残念
0200名無しさん@ピンキー2012/06/20(水) 04:49:18.00ID:IE5kVrQH
うーむ…山本ヤマトはオリジナルをやらんのかね
もうコンテの切り方とかもマスターしてるだろうに
0201名無しさん@ピンキー2012/07/02(月) 00:19:02.27ID:vGAC3xPy
真九郎って女に好かれやすいよな
銀子という幼馴染の事を鑑みれば
子供の頃から女に好かれやすいってことだよな
子供の頃からってことは
もしかしたら真九郎の姉も…
0202名無しさん@ピンキー2012/07/03(火) 19:26:10.84ID:/sJbNpRv
生まれついての天然女たらし
熟女から幼女までなんでもござれ
0204名無しさん@ピンキー2012/07/06(金) 22:13:11.90ID:utzt3h0z
ジュウの場合は、自分のことを卑下していて好意に気づかない。
真九郎の場合は、鈍感半分、薄々は気づいているけれど、
過去や現状のことでいっぱいいっぱいで気づいていない振りをしてるってのが半分って印象がする。
0205名無しさん@ピンキー2012/07/07(土) 02:01:32.95ID:JE7bpcwG
紫と真九郎は
キスまでしたよな
あそこで真九郎からの好意がガッと上がったよな
って言っても相手は幼女なんだよな
手を出したら社会的に死ぬんだよな
もっというと蓮杖とかに知られたら身体的にも死ぬんだよな、じゃあ
真九郎ってさ
夕乃さんと結婚したら
ラブラブで
薔薇色人生じゃね?
0206名無しさん@ピンキー2012/07/07(土) 09:51:46.55ID:GEZPU6Z4
ラーメン屋で幼馴染とイチャイチャするのも吝かではない
0207名無しさん@ピンキー2012/07/14(土) 03:28:19.37ID:e0RlPBSC
最近、男「○○」みたいなセリフがタイトルになってる
会話文形式のssをよく見るようになったけど、
紅とか電波のは全然見たことないんだけどなんでだろう。
紅と電波って人気ないの?
0208名無しさん@ピンキー2012/07/14(土) 05:11:29.68ID:fme2lKox
VIPあたりでよく立つタイプの台本形式SSスレなら
よほどのタイトルでもないと、アニメ作品の放送期間くらいしか立たない
で、紅も電波もアニメ化ナンテサレテマセン、なのでほとんど立ってない
0209名無しさん@ピンキー2012/07/14(土) 19:35:12.71ID:C92Xn3PD
暇だし原作読むか
0210名無しさん@ピンキー2012/07/15(日) 00:26:28.23ID:t6pKqMuM
>>208
なるほど
立つ立たないはよく分からんけど事情は分かったよ
サンクス
0213名無しさん@ピンキー2012/07/20(金) 12:19:35.61ID:0W8eYVJb
裏稼業は止めてるとこも多いみたいなことを俺の夕乃さんが言ってたから
話が続いてても出てくるとこは少なかったんじゃないかな
0214名無しさん@ピンキー2012/07/23(月) 21:22:26.18ID:L9qbbGvo
断絶した家もあるとか言ってたしあの十三家のうちどれが残ってるんだろ
堕花斬島円堂星噛あとなんだっけ
0215名無しさん@ピンキー2012/07/23(月) 21:37:35.21ID:mlv5Oqyr
墜花、斬島、円堂、崩月、星噛、歪空、虚村、豪我、師水、戒園、御巫、病葉、亞城
書いてて気付いたが、裏十三家は全部漢字二文字なのな
0216名無しさん@ピンキー2012/07/24(火) 23:50:22.76ID:8w6YTsM2
そろそろ真九郎は複数の夕乃さんに囲まれてクリムゾンな目に会えばいい
02172012/07/27(金) 07:37:55.99ID:Kf+8THPb

 ■真九朗イール■


 当初は単に「たまには贅沢しよう」と真九朗が思い立ち、夕飯に鰻を食べるというだけの話だった。
スーパーに寄って買い物をする話のついでに、紫にその事を告げると彼女は目を輝かせ

 「おお、暑い時期に鰻を食べて精力を付けるというあれか! 私も食べたい!」

 「んー・・・よし。じゃあ騎馬さんに話して、今日は一緒に食べるか」

 「何を食べるんですか、真九朗さん」

 突然背後から声。真九朗が振り向くと、何時から居たのか夕乃が立っていた。

 「ゆ、夕乃さん・・・」

 「真九朗さん、紫ちゃんとお買い物ですか?楽しそうですね。」

 にこやかに微笑む夕乃。しかし真九朗は強烈に居ずまいを正す必要を感じ、直ぐさまそれを実行。
改めて正対したところで、不満げな紫が言い放った。

 「夕乃。真九朗と私は、これから二人で精を付ける算段をしているのだ。邪魔をするな。」

 真九朗は思わず頭を抱える。説明のしようなら他に幾らでもありそうなものなのに、何故何時も
こうなるのか。とにかく早めに説明しようと夕乃の方を振り返ったが・・・既に手遅れだった。青ざめた
夕乃は、唇をわななかせ

 「あ、あああああ・・・だから・・・だから、私はあれほど反対したのです!!」

 「あ、あの夕乃さ・・・」

 「真九朗さん!!そこに正座!!!」


 こんなベタベタ展開が繰り広げられた、土用の丑の日。

 < Fin. >
0220名無しさん@ピンキー2012/08/03(金) 12:03:33.26ID:ully03Nm
夕乃さんに真九郎とどっかの女のハメ撮り画像見せたらどうなるのっと
0221名無しさん@ピンキー2012/08/12(日) 23:59:30.03ID:eSUGAGdF
夕乃さんと絶奈に性的な意味で責められたいです><
0222名無しさん@ピンキー2012/08/13(月) 02:54:14.14ID:reO1H4IM
紅香は真九郎の事そろそろ食べごろとか思ってんのかな
0223名無しさん@ピンキー2012/08/13(月) 11:32:35.10ID:uhsB3nsU
\(゜ロ\)ココハドコ? (/ロ゜)/アタシハダアレ?
0224名無しさん@ピンキー2012/08/13(月) 11:50:25.53ID:pduWhPN8
紅10巻購入。
1コマだけだが、幼少期のジュウ(らしき)後姿が見れただけでも幸せ。
0226名無しさん@ピンキー2012/08/19(日) 19:08:10.79ID:v/Up4zTh
やっぱり真九郎の妻になるのは銀子しいかいないな
0227名無しさん@ピンキー2012/08/19(日) 23:39:42.07ID:lfJYGGkr
漫画版の銀子くらいストレートなキャラなら、真九朗との関係に何らかのアクションを
起こしそうだが、原作の銀子は特にアクションを起こさないまま、真九朗の行く道とは
異なった人生を選択しかねん冷静さがある…気がするのは俺だけだろか
0228名無しさん@ピンキー2012/08/20(月) 18:25:14.79ID:/llN4set
いや、銀子ならそうなりそうになったら冷静に真九郎を監禁するはず
0229名無しさん@ピンキー2012/08/22(水) 01:04:59.47ID:f2kB+90u
ほう 冷静な思考力と客観性を持ち、沈着で常識的な振る舞いをしながらも病んでると
0231名無しさん@ピンキー2012/08/23(木) 11:00:29.99ID:YGe/TWhT
銀子「だってあんたはほっといら死んじゃうじゃない」

とか言いそう
0232名無しさん@ピンキー2012/08/26(日) 02:29:58.87ID:Av2vo1qY
 もっと冷たく理詰めな感じで

「常識とは言わば“大勢の合意が得やすい判断”の事よ。でも、この場には私とあんたしかいない。
 そうした場合、少なくとも私は自分の判断が正しいと信じてるわ」
「それがこの拉致監禁かよ!」
「“保護”よ。間違えないで」

 …みたいな
0234名無しさん@ピンキー2012/08/26(日) 14:53:13.34ID:cZw3LwN3
でも常に夕乃さんの影が付きまとうから気が抜けないな
ゲームで言うと銀子がどう行動するかちょっとでも選択肢を間違えたら
夕乃さんに背後から貫かれて子宮引きずり出されるBADENDルートに入りそうな
0235名無しさん@ピンキー2012/09/01(土) 20:24:29.66ID:rt7LayFK
紫が完全にメインヒロインなのに
紫を選んだ時点で
死亡が確定する真九郎
さて誰が一番に殺すのか
0236名無しさん@ピンキー2012/09/01(土) 21:28:18.78ID:H2Qd/Eeo
>>235
殺しはせずに強奪するんじゃないだろうか

真九郎が紫と婚約する

五月雨荘の住人の耳に入る
環闇絵「「まあ仕方ないか」」

真九郎「銀子と夕乃さんには俺から話しますよ」
環「それはあんまりお勧めしないけどな〜」
真九郎「大丈夫ですって、心配いりませんよ」
フラグが立つ


崩月夕乃の場合
「夕乃さん、俺紫と結婚する事になったよ」
「認めません」<●><●>

一生監禁end

村上銀子の場合
「銀子、俺紫とけk「知ってるわ。だけどあんたはそんなこと気にしなくていいのよ」
睡眠薬で眠らされてるうちに記憶を操作されて銀子以外の事がどうでもよくなる

洗脳end
0238名無しさん@ピンキー2012/09/02(日) 00:50:09.98ID:0wIVnM88
実際、なんだかんだで病みそうじゃない
0239名無しさん@ピンキー2012/09/02(日) 01:10:36.70ID:Fufo/SGa
原作じゃあ特に夕乃さんはストーカー寸前みたいな感じだから病まないのが想像しづらい
0240名無しさん@ピンキー2012/09/02(日) 14:46:43.38ID:ibCenvTQ
あいつは馬鹿だから私があいつの分まで考えなくちゃいけない。
私があいつの「情報屋」で、あいつの「銀子ちゃん」だから。
ここは簡単には見つからない筈だけど、九鳳院と崩月の情報網は脅威だ。
消してしまうのが一番手っ取り早いけど、相手が悪い。
撹乱の為にありったけの偽情報を流し続けてるけど、長くは持たないはず。
周りの動向は逐一監視している。逃亡先は国内36箇所、国外12箇所。
逃亡ルートは238通り。問題ない。
結局、あいつは楓味亭に居るべき。
でも馬鹿だからそれが分からない。だから私があいつを導いてやる。
強い薬を使ったからいろいろトンじゃってるけど問題ない。
私さえ認識できたら、そしたら私があいつを幸せに導いてやれる。
私が、私だけが、私の真九郎を…。
0241名無しさん@ピンキー2012/09/02(日) 14:49:47.93ID:ibCenvTQ
銀子が病んだらこんなじゃないかなと思い勢いで書いた
0243名無しさん@ピンキー2012/09/05(水) 03:41:00.23ID:kBBYIuXO
この殺伐としたヒロイン'sの中でまさかのルーシーが!

真面目な話、真苦労くんと絶奈ちゃんの絡みもありだと思うんですよね。
0244名無しさん@ピンキー2012/09/05(水) 06:40:20.23ID:kmu5XD8w
絶奈やルーシーは手に入れるまでは熱心でも、一旦得てしまうと興味を無くすタイプって気がする。

絶奈辺りが手に入れた真九朗をぞんざいに扱い、悪宇商会の仕事や薬でボロ雑巾の様にした挙句、ゴミ
でも捨てるように放り出した雨の日の夜。通りかかった銀子が、半死半生で精神的にもやられてた
状態の真九朗を保護する(勿論偶然ではなく、絶奈的には「壊れたから返すわ」てな積もり)。

病室で日に日に弱って行く、壊れた真九朗。その世話を黙々と続ける銀子。

数ヶ月後、いよいよ体の状態が限界に差し掛かった真九朗が散々苦しんだ末に、少しだけ昔の自分を
取り戻し「銀子ちゃん…」とつぶやいて微かな笑みを浮かべる。直後に容態が悪化、そのまま他界。

フラッシュバックする真九朗との思い出。静かに燃え上がる復讐心。後で事情を知らされた夕乃は…?

みたいな話、作者は書かないだろーなー…そもそもシリーズの続きすら書く気があるかどうか。
0245名無しさん@ピンキー2012/09/05(水) 11:08:28.48ID:kBBYIuXO
>>244
真九郎が壊されていく様子(エロい意味限定)で薄い本が厚くなりますね。俺得。
作者はなんだかんだで真九郎大好きだからそういう方面の欝展開はしそうにないかな。
紅は漫画版で完結したから時系列の違う作品を書いて欲しいんだけど、紫の短命な寿命を考えると未来の話は切ないものがあるんだよなあ……。

作者はさっさと電波的な彼女の続編を書け!買うから!
0246名無しさん@ピンキー2012/09/05(水) 11:13:52.73ID:puh9RAvT
漫画版うざかったからレッドキャップのあたりで読むのやめたんだけど
最後どうなったの?
「紅真九郎が覚えているのはそこまでだ」で終わったの?
0247名無しさん@ピンキー2012/09/05(水) 19:12:53.30ID:kBBYIuXO
>>246
ネタバレになるけど、その直後に覚醒した真九郎が絶奈になんとか勝利。
遅れてやってきた紅香に真九郎が腕時計を渡してその日は終わり。次の日にクリスマスパーティをやっている真九郎宅に紅香がその時計をつけた子供と一緒(おそらくジュウ)とやってくる描写がある。
最終話は紫の授業参観に真九郎が行く約束をしてたんだけど久しぶりにちゃんとした仕事が入ったから授業参観の約束は反故に。
あとは紅によくあるすれ違いからの仲直りで全員集合ENDだった。
漫画も絵が好きだったけど片山先生の作品は小説じゃないと味が活かしきれないと思ったわ。
0248名無しさん@ピンキー2012/09/05(水) 19:16:46.08ID:ZZdZ4T9L
綺麗にまとめた
ジュウの腕時計を真九郎が紅香に返して
めでたしめでたし。みたいな
0249名無しさん@ピンキー2012/09/05(水) 21:06:31.71ID:puh9RAvT
>>247>>248
サンクス

何かもやもやする
0250名無しさん@ピンキー2012/09/09(日) 04:44:26.15ID:+1FxcZ15
真九郎が銀子に電話で「愛してる」とか「キスしていいか」とか言うシーンがあるけど、それはどういう気持ちから言ってるんだろうか
銀子に対して真九郎に明確な恋愛感情があるとは思えないし(無自覚なものならあるかも)、会話の締めの冗談か銀子を楽しもうとして言ってるのか・・・
夕乃や紫に対しては言わないってところがポイントかもしれないな
まああの二人にそんなこと言ったら結婚ルート一直線だろうけど、銀子にだけ言うってのが他ヒロインとの線引きなのかね
0251名無しさん@ピンキー2012/09/09(日) 11:05:35.26ID:ZH60MWS0
まあ、そこが銀子と真九郎の関係の魅力だよな
0252名無しさん@ピンキー2012/09/09(日) 13:21:13.67ID:8XTNlrpc
二人にだけ通じる意味で「やらないか」って言ってたらいいのになあ
02532012/09/10(月) 06:47:12.20ID:w6+b/Tup
>>244
を書いてチラッと思いついたので、あの路線の終わり部分だけ製作中。
アップの際には宜しくです。
0254名無しさん@ピンキー2012/09/10(月) 11:34:39.10ID:OYaOOYlM
待つ
0256名無しさん@ピンキー2012/09/11(火) 00:13:42.06ID:whL4jcV5
>>255
どこの先生だw
02572012/09/11(火) 02:33:28.28ID:2kfcEye+
 どもです。

 ここ暫く、病み銀子の話が続いていた事もあって、>>244で書いたあらすじの続きをSSでデッチ上げて
みました。

 また主人公が死亡しているというタブーを前提にしている事から、番外で当たり前のSSながら敢えて
「番外編」としています。ほんの思いつきという事で、軽くお付き合い頂ければ幸いです。

 手早く上げた為、粗も目立つ文章と内容ですがご寛恕の程を。
02582012/09/11(火) 02:34:39.36ID:2kfcEye+

 ■if番外編:『クローバー』■


 -------------------------------------------------------------------------------------------
 <ここまでのあらすじ>
 銀子が復讐を誓った時から7年の歳月が経過していた。その間に彼女は持ち前の情報収集能力と、それ
 まで貯めていた高校生離れした金額の貯金を元手に投資事業や企業買収などで多額の資金集めに成功。
 相当な資産家になるも代理人を立てて正体を隠し通し、その裏で有能な人材を掻き集めてコンパクト
 で強力な組織を形成する。準備が整ったその時、絶奈個人に的を絞った復讐が始まった。

 銀子の策でおびき出された絶奈は放棄された国外の教会建造物内に追い込められるが、反撃で散々に
 暴れまわり、人体など砕け散ってしまう強烈な攻撃で辛くも銀子を退けた。しかし彼女自身も、自ら
 壊した建物の瓦礫の下で動けなくなってしまう。
 -------------------------------------------------------------------------------------------


 「チッ…こんな建物を考えた奴らも造った奴らも、一匹残らずブッ殺してやりたいなーもう」

 絶奈は誰にともなく毒づいた。全く。いくら頑丈で傷一つ負わない体でも、何トンもある瓦礫に抑えられ
ていてはどうしようもない。彼女は空いた手を懐に突っ込むと、通信機を取り出して部下に連絡を取る。

 「マーカーで位置は分るでしょ、さっさとヘリを寄越して!ジャッキがあれば自力で出るから」

 埃っぽい地面に押さえつけられ、窮屈で仕方ないが…動けない以上、出来る事はない。ブツブツ不平を漏
らしながらも、大人しく救援を待つ。

 そんな絶奈の目の前を、見慣れない甲虫が這い横切って行く。軽く馬鹿にされている感じがして、舌を打
った。

 退屈しのぎに自由な方の手で小石を投げつける。絶奈としては傍に石をぶつけて虫を驚かせる積もりだった
のだが、不自然な姿勢からのモーションが災いしたか、石は虫に直撃。薄い殻が押し潰され、内部の臓器が
圧迫される音を立てた後、石はバウンドして転がり、後には無残な死骸が残された。

 こと殺すことに関しては手馴れた感性の絶奈だったが、この長い退屈を紛らわす相手として暫く弄ぶ積もり
だった甲虫の、やけにあっさりとした死は彼女の神経を更に逆撫でした。

 再び舌を打つ。苛立って舌を打っても消えない虫の死骸に、また馬鹿にされている様な気分が湧く。良く
ない連鎖だ。どうにもならない現状と、この一月程の間に生じた事態がストレスになっているらしい。落ち
着こう。

 そう思いながらも、絶奈は後でここを脱したら虫の死骸を踏み消してやる積もりだった。

 暫くそうしていると静寂に慣れた耳が、何かが這いずる様な音を拾った。ただ、退屈が長時間に亘ると幻聴
を生む場合もある。絶奈はより注意深く、周囲を検め直した。続いてカツッという鋭い、硬質な音。間違いない。
生きた何者かが立てた音だ。そう気付いて音源を辿ろうと向けた視線の先に、重い音と共に何かが落ちてきた。
落下物の柔らかい部分と堅い部分が、各々異なる音を上げる。
02592012/09/11(火) 02:35:18.73ID:2kfcEye+

 それは先程仕留めた筈の女だった。両足は膝から下が失われ、額からは多量の出血。左目が潰れているのか、
前髪が赤黒い血で皮膚に張り付いている。だが、その手には携帯対戦車兵器がしっかりと握られていた。

 驚愕する絶奈。動けない標的に、銀子は獲物を向ける。

 「何で生きてんのよ、お前……普通の人間が、そんだけやられて動けるワケないじゃない!」

 「種明かしするとね」

 荒い息を漏らしつつも、静かに語る銀子。その顔は能面の様に滑らかで―――異様な無表情だった。

 「これは星噛の技術よ。悪宇の構成員にも何人かいるけど、私もお金を積んで改造されたクチ」

 「…ッ!!」

 真九朗の復讐を誓った日から、銀子はあらゆる手段を用いて資金集めと組織構築に奔走した。最大の懸案は、
彼女自身の体の脆弱さ。これを越えるにはどんな手段が有り得るか―――選択肢は元より限られていたのだ。

 星噛の技術は取引される市場が極端に狭く、そこにアクセスできるコネクションを築くだけでも至難の業。
価格に至っては殆ど天文学的単位だ。おまけに星噛直系の絶奈は、その体の全てを最高級品で鎧った言わば
ワークスマシンなのに対し、銀子が利用できるのは公開範囲に留まる程度のカスタムでしかない。彼我の
能力差には依然、埋め難いものがあった。しかし、銀子はその溝の補填を自らの知能と組織力に求め、ついには
現状の構築に至らしめたのだ。

 「貴方も体が頑丈で重い攻撃が出来るだけで、馬力自体はそれ程じゃないみたいね」

 瓦礫の下で動けない絶奈を評する、冷静な結論。標的は悪宇商会の最高級幹部。ガードが厚く、接触回数が
限られる以上、今のこの戦いすら貴重なデータサンプリングの機会だ。それを怠る銀子ではない。このフィー
ルドには数多くのデータ収集機器が仕込まれており、個々に取得したデータは対電子戦用無線で遠隔地にある
戦闘指揮車両に転送される。送られたデータは車内に詰めている選び抜かれたスタッフの手で集積と解析が行
われ、その分析結果がリアルタイムで銀子に届く仕組みだ。絶奈の仕様は、既に丸裸同然。製造技術は分らなく
とも、どうやれば破壊出来るかは分る。

 それを暴くためのミッション。取り纏めているのは二人の女性だった。絶奈が覚えてもいない、例の祭に
参加した姉とその妹―――瀬川姉妹は、悪宇商会と絶奈のした事を忘れたりしない。彼女達にとって、この
7年の歳月は全てこの日の為にあったのだ。
02602012/09/11(火) 02:35:58.74ID:2kfcEye+


 「…そんなものをここでぶっ放して、あたしと心中する積もり?」

 今にも崩れそうな建物。だが銀子は睨んでくる相手の敵意も知らぬげに、武器を構えなおす。

 「これはHVAP。貴方の装甲でも絶対に防げない弾頭」

 潰れた両足を見やり

 「私も逃げられないけど、貴方は跡形も残らない。有利な賭けでしょ」

 そう、有利な賭けだろう。銀子が培った組織は有能な者の集まりとはいえ、悪宇のそれに比べれば規模も
構成人員も比較にならない。逆転の一撃以外に勝つ手はないのだ。

 そうした思惑を絶奈は瞬時に察したが…己の犠牲を前提とするその結論を前に、小揺るぎもしない銀子の
姿はやはり不可解なものだった。殉教者ともプロ戦闘員とも異なる静かな判断、それが齎す結果を一顧だに
しない眼前の存在。その光景が放つ異様なコントラストは、周囲を仄かに照らす割れ残ったステンドグラス
越しの光とも相俟って狂気にも似たモザイクを描き出す。この女―――

 「…あんた、やっぱ壊れてんじゃない?」

 「そうかも知れない」

 これは例の祭の歪な続きだ。主催者は他のあらゆる可能性を捨て去り、復讐だけを目指してきた自分自身。
その為に肉体を改造し、他人の人生までも巻き込んで専従の組織をも作った。今の自分は到底、普通の人間
とは言えないだろう。怪物を殺す為に特化した化物。そんな生き方に躊躇もしない人間は、確かにどこかが
壊れている。

 そう思いつつも、銀子には確信があった。客観的で理性的で冷静な思考など、犬にでも喰わせるがいい。
そんなものは自分にとって自問自答の材料にもならない。己の中心、核たる心にはかすりもしないのだ。

 血。憎くて止まぬ怨敵の血。ただそれだけが求めるもの。砂漠に乾く者が見る水の様に、酷寒の中で見出
した炎の様に、飢え乾く情念は血を求めていた。そして今、自分を遮る障害は何もない。

 逃れられぬ結末を悟りでもしたか、燃える目で銀子を睨むもう一匹の怪物。裏社会の汚濁に営々と巣食う
家系の血を、悪宇商会という闇で濾し取って生まれた純粋な悪意“孤人要塞”。その貌に、狂喜が踊る。

 「最高…!最高だわ!!イイ感じよ、このクソ女ァアアアアアア―――ッ!!!」

 「潰れなさい」
02612012/09/11(火) 02:36:35.39ID:2kfcEye+

 銀子は動けぬ悪宇の幹部に鉄槌を振り下ろす。放たれた金属の魔物は主の意に従い、情け容赦なく標的の
体を噛み砕いた。その代償は、崩れかけの建物に加えられる致命的な一撃。小さく始まった振動が、徐々に
大きくなってくる。

 『村上さん!!』

 通信機の向うで悲鳴が上がった。データは届いてくるのに遠隔地にあって手が出せず、深刻な焦燥に駆ら
れているであろう仲間達。そんな彼等に、銀子は静かに告げる。

 「目標の撃破を確認―――ミッションは終了です。離脱しなさい」

 『ダメです!今そちらに向かっています!だから村上さんは』

 「ここにはもうすぐ悪宇の部隊が来る。それに私は両足が潰れていて離脱不能よ。通信後に自爆するから、
 どうせ間に合わないわ」

 『―――!!』

 やはり言うべきか。もう告げる機会はないだろうから。

 「…皆、ありがとう」

 通信機のスイッチを切ると、銀子は標的だったモノを見遣る。瓦礫を彩る紅―――紅黒いペンキをぶち撒
けた様な模様。それが全てだった。終わったのだ、何もかも。

 銀子は溜息をつくと、床に大の字になって寝転んだ。センサーが張り巡らされたこの空間だから、遠からず
バレてしまうだろうが…自爆云々は嘘だ。本当はこのミッションと自分という存在をより完全に消す為にも
言葉通りにしたいところだが、肝心の爆弾が手元にない。ただ自爆以前に、この建物が崩壊する。全ての事柄
に完璧を期する銀子としては些か締まらない幕引きではあるが、仲間達の安全には怠りないから…良しとしよう。
それはスタッフを集めたその時から、定められていたプログラム。今回の作戦が失敗していれば次回以降に繰
り越されていた手続きだが、もうその必要はない。

 スタッフがこの場で捕まりさえしなければ良いのだ。撤収が無事に終われば、全員の関りを完璧に消す処置
を施してある。彼らは数ヶ月前に我侭な経営者から突然解雇を告げられ、放逐された民間人。当の経営者は海外
に高飛びし、残された者は各々再就職先を探していたか、新しい職場で各地に散っていた―――そういう筋書き
になっている。退職金の方には些か色が付いているが、その殆どは海外の口座に納められ、日本の税務署に睨ま
れる事も先ずないだろう。それに自分の集めた優秀なメンバーは、その気になれば海外に国籍を求める事など
造作もない。
02622012/09/11(火) 02:37:28.40ID:2kfcEye+


 壊れた両足からゆっくりと鈍い痛みが上ってくる。星噛の技術で痛覚は遮断できても体は自らの状態を知って
いて、それを自分に伝えようと余計な努力を続けていた。その苦痛に耐えているのだ。床に大の字なんてだらし
ない格好も、今この瞬間くらい許して欲しい。大体、それもこれも全部、あのバカのせいなのだから。

 ようやく終わったわ、真九朗。不出来なあんたの後始末、キッチリやり遂げた。

 銀子は心の奥の少年に語りかける。17年で時を止めた幼馴染。全てが終わった今だからだろうか。その笑顔
が心なしか幼く思えた。バカね、そんなに子供のくせに揉め事処理屋なんてするからよ。

 この後のスケジュールは、7年ぶりに空っぽ。だからあんたが天国に居ようと、地獄に居ようと探しに行けるわ。
見つけたら、今度こそ情報屋も揉め事処理屋もナシ。私達、ラーメン屋を開くんだからね。


 数瞬の静寂の後、建物が崩壊を始めた。雨の様に降り注ぐ瓦礫の中で、銀子は祈る。どうか私に協力してく
れた人達、彼等の今後の人生が豊かなものであります様に。真九朗と両親が、この復讐で果てる自分を許して
くれます様に。

 そして―――こんな不幸が地上から消え去るその日の到来を、銀子は何かに祈ったのだった。


02632012/09/11(火) 02:37:59.94ID:2kfcEye+

 ■if番外編:『クローバー』■ Ep.



 「あなた、馬鹿でしょう」

 見舞い客から最初に浴びせられたのは、酷い叱責。

 ここは病室。あの事件の後、数日を経て目覚めた銀子は、周囲を取り囲む仲間たちの喜びと怒りの奔流に滅茶
苦茶にされた。その止めが、先の一言だ。

 「そんな身勝手を許す筈がありますか!天国に行っちゃった真九朗さんだって、同じです!!」

 本気で激怒している筈なのに何故かこうなる崩月の現頭首は、彼女なりの激情を表明しているらしかった。

 「大体、私だって紫ちゃんと組んで悪宇をやっつける算段を付けてたのに、また先を越されるだなんて…!」


 あの後、銀子は救出された。いくら過疎地の出来事とはいえ爆発音が何度も響き渡り、ついには大きな石材建
造物が崩壊する様な騒ぎだったのだ。地元住民が通報しない訳がない。銀子と絶奈の決着が着く以前のタイミング
で市民の通報を受けた地元の治安当局は、現地に警戒線を設置。その為か、絶奈の救出部隊は現着する基点を逸
した様だ。お陰で近いロケーションにあり、早い段階で動けた銀子スタッフ達の予定外で無茶な行動が通ってし
まった。

 救出を決行する判断の決め手になったのは、やはり爆発が確認されなかった事。センサーが捉えた建造物の崩落
の振動と爆発のそれを間違える様な間抜けは、銀子の集めたスタッフにはいない。それに銀子の肉体強度が星噛
の技術で底上げされている事を考え併せれば、生存の可能性は低くなかった。問題は瓦礫の撤去の可不可だが、現地
を見なければ下せない判断を離れた場所でしても仕方がない―――瀬川姉妹の姉・早紀はそう決断し、スタッフを
指揮して現場に急行した。半ば以上結果ありきではあるものの、成程、こうしてみれば無謀なばかりの行動でもない。

 そして大量の出血とダメージと疲労で気絶していた身には分らない事だったが…銀子の周囲に落ちた瓦礫はどう
いう偶然かドーム状に積みあがり、その中で彼女は眠る様に横たわっていたらしい。体には絶奈との戦闘で受けた
以外の外傷はなかった。

 そんな彼女を更に驚かせたのは、夕乃の一言だった。

 「今回の件、悪宇商会側の報復は恐らくないでしょう。貴方の情報操作で皆の素性が攪乱されているのが効いて
 いる事もありますが、何よりも先月、星噛家が組織から放逐されましたから」
02642012/09/11(火) 02:39:22.93ID:2kfcEye+

 それが銀子の知らなかった、夕乃の復讐。有望な跡取り候補だった内弟子を遊び半分に潰した星噛家に対し、
崩月家は本格的な報復に乗り出したのだ。悪宇商会自体を根絶する事を最終的な目標と定めつつ、先ずは星噛を
分離せざるを得ない状況に追い込み、孤立した一家を完膚なきまで叩き潰す。今度の件では夕乃は勿論、冥理や
ほぼ引退を決め込んでいた筈の法泉までもが寸暇もなく動いていた。そこに紫率いる九鳳院の一部と柔沢紅香の
組織が協力。自他組織への公式の餌は星噛家の持つ技術と、それが生み出す莫大な利益だが、核たる面々の思惑
は別にある。三者の利害は一致していた。

 絶奈が銀子の策にかかった原因の一つは、こうした状況が生んだものだったのだ。今に残る裏十三家の内、一部
の家系の互助組織として機能してきた悪宇商会からの保護を失い、星噛家だけで凌がなくてはならない状態が彼女
の防備を薄くした。

 「なのに貴方ときたら…いいですか?!イチゴの無いショートケーキなんか、ショートケーキじゃないんです!」

 稼業としての殺人からは手を引いていても、自衛の為となれば話は別。恐らくは凄惨な手段で始末を付ける積も
りであったろう標的たる絶奈の事を、イチゴと称する辺りが崩月家の現当主だ。その感性が底なしに恐ろしい。

 そんな銀子やスタッフが抱いた寒気を知らぬ気に、夕乃は続けた。

 「大体、悪宇商会の事は裏世界の問題です。あなたは自分の社会に戻るべきよ」

 銀子は溜息をつく。難しい事をあっさり言ってくれるものだ。戸籍上の銀子は2年前、大学卒業時の海外研修先
で事故に巻き込まれて死んだ事になっている。以来、一度も実家には戻っていない。残された両親の気持ちを思う
と心が痛んだが、自分の復讐に家族を巻き込まない為には避けられない処置だった。

 「それは、無理です。私は死んだ事になっていますから」

 「そのくらい、得意な情報操作で何とかなるんじゃないのか?」

 口を挟んだのは、とんでもない美少女だ。抜けるように白い肌。勝気に輝く大きな瞳。腰まで伸びた黒髪は、
極上の絹の様な輝きを放っている。九鳳院という家系に於いて、女性としては極めて特異な“例外”になりつつ
ある紫の身には、未だ中学生ながら既に巨大家系の一角を担う貫禄が漂い始めていた。

 「何だったら協力してやるぞ。真九朗の生前、銀子には世話になったからな」

 ニヤリと笑い、「それに銀子なら見返りも期待できる」と結ぶ。どうやらタダという訳ではないらしい。真九朗
を失った直後の彼女からは、想像も出来ない変貌振りだ。何だか…何とはなく、柔沢紅香の影を感じる。
02652012/09/11(火) 02:44:04.07ID:2kfcEye+


 銀子は戸惑っていた。助かってしまった事も意外なら、彼女等に今後の事を干渉される事態も意外。何故、彼等
は自分を放っておいてくれないのか。銀子は柄にもなく、論理的でない言い訳に終始する。

 「私の体は、こんな有様だから…もう、出来る事はありません」

 「解体された星噛から出た技術の一部が、医療分野に限って近々公開されます。その左目や足も、貴方が買った
 時より遥かに安く手に入ると思いますよ」

 おイタは無理なものですけどね、と夕乃は微笑んだ。車椅子に座る瀬川早紀と妹の静之、周囲のスタッフ達も
大きく頷く。

 「お姉ちゃんも手術を受ける事になってるんです!村上さんが用意してくれてた退職金で!」

 中学生ながら、義姉を支えて逞しくなった静之。何時も思い詰めた様な表情を浮かべていた彼女が、久しく
無邪気な笑顔を浮かべている。本当に嬉しそうだ。車椅子の姉も微笑みながら銀子に告げた。

 「一緒に入院ですね」

 銀子は息苦しくなる。まるで…皆を騙している様な感じがするのだ。いや事実、騙してきたのかも知れない。
何故なら自分には、真九朗の仇を討った後のプランは何もないのだから。皆の事後処理までは何とかしたが、
今後どうするかを求められて応じられるものではない。

 「私には、何もありません」

 瞑い告白。もうこれ以上、有耶無耶にする事はできないだろう。話したところで何にもならないが、言わない
訳にもいかなかった。

 「真九朗も、仇も居なくなってしまった。彼が死んだ後の7年間、私は復讐だけを考えて生きてきました。それ
 を終えた今…私には何もない」

 周囲に沈黙が降りる。特に銀子の傍で、彼女の無限とも思える能動性を見続けてきたスタッフ達にとって、今
の魂が抜けた様な彼女の姿は衝撃的ですらあった。

 その重い空気を破ったのは、紫。

 「それは違うぞ、銀子」
02662012/09/11(火) 02:44:54.12ID:2kfcEye+

 銀子は半ばぼんやりと紫を見遣り―――はっと目を見張った。彼女の大きな瞳には苦悩とも怒りとも悲しみ
ともつかない、強い光があったからだ。

 「私も7年前にお前と同じ様に思った。そして今回は、お前に仇まで取られてしまったのだ。そういう意味
なら、私の方がなんにもないぞ!」

 更に紫は言い募る。

 「だが、私は『自分に何もない』なんて絶対に言わん!真九朗が命懸けで救い出してくれた、この身だ!
 それが無駄だったなどと絶対に言わんし、誰にも言わせはせん!」

 「…紫ちゃん……」

 「お前は7年前の私と同じだ。真九朗が居なくなって自分がどうしたらいいか分からなくなった、只それ
 だけだ!」

 そう。復讐を遂げようとする間、銀子は孤独ではなかった。そんな風に感じる暇もなかったが、決してそれ
だけが理由ではない。明確な動機と目的は日々を濃くし、確かに銀子は生きる意味を与えられてもいたのだ。

 「私達の真価が問われるのはこれからだ。私は逃げないぞ、銀子。それにお前を逃がしもしない。何時までも
 真九朗に甘えているな!」

 これが今の九鳳院紫。彼女の瞳には確かなもの―――真九朗の残した核がある。そして、それは自分の中にも
あった筈のものなのだ。銀子の脳裏に再び彼の笑みが浮かぶ。今の自分より7年も若い、少年の顔。

 「村上さんに仇は取られちゃうわ、紫ちゃんに見せ場を持って行かれてしまうわで不満が爆発寸前ですが、私も
 概ね同じ意見です。…ただまあ、時間は必要かも知れないわね」

 夕乃の漏らした溜息が、場の空気を和ませた。その中で銀子は再び俯いたが…深いところで心の切り替わりを
感じ始めてもいた。真九朗を支えにしていたのは自分だけではない。皆、それぞれに大切なものを預けてきたのだ。
それを失った時、彼女らは変わらざるを得なかった。自分も夕乃も紫も各々に身と心を鎧い、彼の居ない世界に備えた。

 真九朗はもう歳をとる事が出来ない。それに比べて自分はもう24にもなる。彼と一緒に抱いた夢。それが如何
に大切なものであっても、事実を認める事が身を引き裂かれる程に辛くとも―――受け止めなければ。目の前に
居る、紫の様に。

 長い間、枯れていたもの。自分からは失われたとさえ思っていたものが、数滴落ちてシーツを濡らす。誰にも
聞かれない様に浮かびかけた嗚咽を飲み込むと、銀子は心の中で呟いた。

 (真九朗ぉ…)


 7年前に停止した時が、再び動き出す。

 もう一度起き上がるには、今はまだ力が足りない。だが時間をかければ回復出来る…回復出来てしまう自分を
銀子は自覚していた。もし真九朗が傍に居れば、それを喜んでくれるだろう事もまた。

 同じ男の子を愛した三人の乙女は額を寄せ合う。

 「先ずは体を直すことだ。止って考えず、動いて考えろ。私はずっとそうしてきた」

 「動ける様になったら、ご両親のお店だって手伝えますね…美味しい食べ物は幸せを作るんですよ?」

 村上銀子は、今ようやく自分が自身の人生に立ち返った事を納得した。鋭い痛みを伴う独立―――だが、その
傍らには二度と会えない幼馴染が残してくれた、二つの縁が寄り添っている。


 <Fin.>
02672012/09/11(火) 02:46:15.73ID:2kfcEye+
 以上、終わりです。お付き合い頂き、どもでした〜。
0268名無しさん@ピンキー2012/09/11(火) 13:25:42.58ID:whL4jcV5
乙!
おもしろかった!

真九朗にしてるのはなんかのこだわり?
0269名無しさん@ピンキー2012/09/11(火) 20:31:29.30ID:hBP4uWFX
0270名無しさん@ピンキー2012/09/11(火) 20:41:46.02ID:GV/NNu3g
良かった
また、機会があれば書いて下さいな
02712012/09/11(火) 21:21:44.82ID:2kfcEye+
どもです。宜しければまたお付き合い下さい^^。

>>268
>真九朗にしてるのはなんかのこだわり?
キャラ名の字の事ですか?紅真九朗であってる筈なのですが。
0273名無しさん@ピンキー2012/09/11(火) 23:09:37.60ID:whL4jcV5
>>271
正しくは紅真九郎ですよ。
02742012/09/11(火) 23:23:05.23ID:2kfcEye+
>>272 >>273
ぎゃぁ、本当だ…僕が書いたSSは全部「朗」になっちゃってました。
次回以降は直しますね。ご指摘どうもでした!
0276名無しさん@ピンキー2012/09/13(木) 20:18:51.76ID:DCBU3gqp
ロボ銀子
ウハウハだな
0277名無しさん@ピンキー2012/09/14(金) 00:16:12.31ID:KFrOZTML
無愛想でレイキャシみたいなロボ銀子可愛いかも知らんね
真っ先に思いついたのはこれだったが
ttp://freedeai.silk.to/up/src/up3286.jpg
0279名無しさん@ピンキー2012/09/15(土) 22:33:39.53ID:ZwOPdMnl
「おい、シンクロウ!シンクロウはいるカ?」「はいお嬢様」
 これだとロボ紫だな
0282名無しさん@ピンキー2012/09/17(月) 00:59:12.48ID:KoQEig/O
電波と紅の続編でも想像してレスするか…


なんか気付いたら紅香が真九郎の部屋に住みついてたw
0283名無しさん@ピンキー2012/09/17(月) 18:55:08.15ID:a3E5BwAK
そんな事になったら
きっと真九郎は甲斐甲斐しく世話するんだろうな
0285名無しさん@ピンキー2012/09/17(月) 21:35:47.36ID:a3E5BwAK
結局、ルーシーは男でおk?
0286名無しさん@ピンキー2012/09/18(火) 15:15:23.90ID:5fVYPvHE
電波のOVA見たけど、何回ろいろさらっとすませられてたな
40分使ってるのにそれなら1時間ぐらい使ってガッとやってほしかったな
ていうか幸福ゲームあんのに愚か者の選択なしかい



あと十の声の人鑢七花と同じ人なんだな
0287名無しさん@ピンキー2012/09/19(水) 16:24:22.61ID:QlRxKwfZ
ルーシー「私が脱いだら紅さんがすごいと思うかどうか賭けますか?」
0288名無しさん@ピンキー2012/09/19(水) 19:15:55.11ID:ezrF+vQg
さあ、その調子でssを書いてしまうんだ
0289名無しさん@ピンキー2012/09/20(木) 02:57:38.83ID:P1zkOjJp
>>287
お前は銀子に毛が生えた程度だろうが!
夕乃さんか絶奈クラスになってから出直してこい



待ってますから
02902012/09/22(土) 23:51:19.09ID:L0bpsUu8
>>282
ちょっと即興でデッチ上げました。
02912012/09/22(土) 23:53:31.36ID:L0bpsUu8
 レスSS ■紅香's モーニング・カフェ■


 グツグツグツ…

 朝。真九郎を起こしたのは誰かの気配と布団の中では聞き慣れていない音、それから食欲をそそる香りのコラ
ボレーションだった。

 「……?」

 寝ぼけ眼を擦って台所を見遣ると、何処かで見た様な後姿が台所を占拠している。え、まさか。

 「起きたか、真九郎」

 「…べ、紅香さん?!」

 紅いスーツ姿にエプロンを纏ったその長身の女性は、火の点いていない煙草を咥えた口元に勝気な笑みを浮か
べ、面白がる様にこちらを眺めている。真九郎は動揺した。

 何者かが部屋に入り込み、食材と調理器具を取り出して加工。更にはガステーブルに火を点けて湯を沸かす行
為に至っても尚、全く異変に気付けなかった事もショックだったが……何より、紅香が身に着けているエプロン
が自分のものであるという、その状況と光景がやたらと衝撃的だった。

 背筋に電流を流された様な感覚に駆られ、真九郎はバネ仕掛けの人形の様に跳ね起きる。

 「おっおおおおはようございます!」

 「ん、おはよう」

 紅香はそう返すと、再び背を向けて調理に戻った。

 「あ、あの〜…紅香さん?これは…」

 「この香りか? コリアンダーだ。今、フォーを作っている」

 フォーって…ベトナムのうどんみたいなやつか、と考えかけて頭を振る。いやいやいや。

 「いえ、そういう事ではなくて…」

 「三日ほど泊めてもらうぞ、真九郎」

 事もなげに言う紅香。当然何らかの説明が続くものと思って真九郎が黙っていると、再び彼女から声がかかった。

 「さっさと布団を仕舞って、卓袱台を出せよ」

 「は、はあ」
02922012/09/22(土) 23:54:22.35ID:L0bpsUu8

 仕方なく真九郎は布団を畳み、押入れの襖を開けて仕舞い込む。さて卓袱台を…と思って振り返った視界に、
既に卓袱台と座布団二つが並べられた部屋の様子が映る。真九郎が視線を外したのはほんの一瞬。音も気配も
まったくしなかった。まるで、インド系アメリカ人監督が撮った幽霊映画のワンシーンの様だ。

 「ご無沙汰しています、紅さん」

 座布団の一つに着座していた幽霊―――否、知り合いの女性が軽く会釈する。後ろで束ねた長髪。どこか狐面
を思わせる、細く切れ長な一重瞼の瞳。柔沢紅香に付き従う影の様な女性、犬塚弥生だった。

 「……」

 突然の状況について行けない真九郎が呆然としていると、元から細い弥生の目がスッと眇められる。その様子
を見た真九郎は、慌てて会釈を返した。

 「お、おひゃっ…ようございます…」

 噛んだ。台所で笑いが起こる。どうやら紅香にはウケたらしいが、こういうのは全く嬉しくない。弥生は視線
を前に戻すと彫像の様に沈黙した。

 「出来たぞ」

 かけられた声に真九郎が振り返ると、紅香が煙草に火を点けながら親指でコンロ上の鍋を指していた。どうやら
運べという事らしい。そして確かに今、卓袱台前に座っていた筈の弥生が、三人分の茶碗と箸を携えてこちらに
向かってきているのだが…真九郎はもう気にしない事にする。

 「さて。食うか」

 どっかと座布団に座る紅香。続いて弥生が音も無く着座する。この部屋には座布団が二つしかないから必然、
真九郎は床に直座りだ。

 「丼が足りないから、鍋方式だ。適当に取って食え」

 紅香がそう言う間にも、弥生が彼女の器に麺とスープをよそっている。おかしい。心密かに紅香に憧れる真九郎
なのだ。通常であれば手料理を振舞われるなど高揚して然るべき場面の筈だが…全くそういう感じがしない。しかも
我知らず正座で畏まっている有様だ。家主なのに。

 煙草を“何時の間にか卓袱台の上に現れていた”ブリキの灰皿の上に置き、弥生から差し出された器を受け取
った紅香は豪快に中身を啜り始める。清々しい程のリラックス振りだ。次いで自分の器に料理をよそい、蓮華で
スープを飲む弥生はここでもやはり無音。上品と言うより見ている者の耳がおかしくなった様に思わせる彼女の
振る舞いは、その志向性も徹底している。些かの温度も感じない、その静かな横顔が真九郎に「自分の分は自分で
よそう様に」と告げていた。
02932012/09/22(土) 23:57:33.84ID:L0bpsUu8
本当はこの後、夕乃が来て一騒動。後に紫と銀子も混じって…というベタな流れに
続く訳ですが、正直そこまでやると大変なので終わりです。

ではまた。
0294名無しさん@ピンキー2012/09/23(日) 01:50:01.13ID:MkM1lA7N
そんないけずなこと言わないで書いて下さいな
とりあえず乙
0295名無しさん@ピンキー2012/09/23(日) 16:19:05.65ID:sGQsraxK
おもしろい乙
02962012/09/24(月) 15:36:10.12ID:RO7hGaGK
どもです!

>>293
今回は>>282のネタ振りへのレスでしたので短くなりましたが、ちゃんと書く時
には、省略は避ける積もりで居ります。その際には宜しくお付き合い下さい。
0297名無しさん@ピンキー2012/09/24(月) 23:14:37.00ID:qcZJw1M3
十「そしてーかーがやく ウルトラソウッ!!」

雨雪円「「「ハァイッ!!」」」
0298名無しさん@ピンキー2012/09/25(火) 01:37:45.11ID:O5fP4Whu
天の原 ふりさけ見れば春日なる そして輝く ウルトラソウル
0299名無しさん@ピンキー2012/09/26(水) 14:17:50.11ID:xttvhIZS
「弥生」
「はい」
「アイドルマスターというものが流行っているらしいな」
「そのようでございますね」
「弥生はかわいいなあ」
「……ハァ、うっうーうれしいですー」
「ぷっくくくくくくくくくくくくくくく」
0302名無しさん@ピンキー2012/09/30(日) 13:58:52.26ID:lfXY40Nj
絶奈を…やっぱりいいです
0304名無しさん@ピンキー2012/10/02(火) 20:45:20.28ID:evQRo5fV
それか娘に
0305名無しさん@ピンキー2012/10/03(水) 23:49:20.88ID:k4lQORaK
切彦ちゃんをペットにほしい
0306名無しさん@ピンキー2012/10/04(木) 12:27:16.65ID:m+3frNWT
銀子を奥さんに下さい
0308名無しさん@ピンキー2012/10/05(金) 13:58:01.21ID:2sZO1AqE
ルーシーをヤり捨てしたい
0309名無しさん@ピンキー2012/10/06(土) 00:33:07.24ID:08bZL7E4
雨を相方にほしい
0310名無しさん@ピンキー2012/10/06(土) 10:59:46.93ID:QCrPVGp/
どうもー!柔沢十です!堕花雨です。二人合わせて、「美女と野獣」ってコンビ名でやらせてもろてますー!みなさん今日は僕らの名前だけでも覚えて帰ってくださいねー!
0311名無しさん@ピンキー2012/10/08(月) 11:24:12.05ID:IkTQszVc
じゃあ夕乃さんは姉姑だなあ
0312名無しさん@ピンキー2012/10/10(水) 00:29:51.49ID:yyYXqSGw
夕乃さんといえば夕乃さんの幸せ日記って何が書いてあっていつから書いてるんだろう
0313名無しさん@ピンキー2012/10/15(月) 08:38:35.95ID:TXJY2u7q
真九郎が崩月家に来て以降、10分毎に更新される“愛の”幸せ日記
0314名無しさん@ピンキー2012/10/16(火) 03:04:25.38ID:d3SzIAWz
してその中身は
0316名無しさん@ピンキー2012/10/17(水) 11:06:00.21ID:CljkfuHU
ハンパないね
0317名無しさん@ピンキー2012/10/17(水) 16:59:38.67ID:o8LEvm2s
素敵だ
0319名無しさん@ピンキー2012/10/23(火) 16:53:44.12ID:8bR/1D3F
だれか夕乃さんの幸せ日記の話書いてくんねえかなあ…(チラッ
0320名無しさん@ピンキー2012/10/29(月) 01:02:32.26ID:oQDClFdd
銀子ぉ〜
0322名無しさん@ピンキー2012/10/29(月) 18:22:46.61ID:oQDClFdd
どこの銀子だw
0323名無しさん@ピンキー2012/10/31(水) 16:03:42.54ID:70Q88H7P
環さ〜ん
0325名無しさん@ピンキー2012/10/31(水) 20:40:48.98ID:70Q88H7P
お前何人だよ!!
0326名無しさん@ピンキー2012/11/01(木) 23:01:17.78ID:It7EETyR
じゃあ、紫〜
0328名無しさん@ピンキー2012/11/02(金) 20:57:53.83ID:i8oOsjJ0
何のネタだよ!!
0329名無しさん@ピンキー2012/11/03(土) 13:38:26.91ID:gUqL+uXr
ええいこうなったら…夕乃さ〜ん
0331名無しさん@ピンキー2012/11/03(土) 23:06:58.31ID:gUqL+uXr
理不尽!?
0332名無しさん@ピンキー2012/11/04(日) 13:54:55.74ID:dx7PxJ87
くそうっくそうっ…切彦ちゃ〜ん
0334名無しさん@ピンキー2012/11/04(日) 21:32:13.17ID:dx7PxJ87
雄々しいわ!!
0335名無しさん@ピンキー2012/11/05(月) 11:09:05.71ID:eZrlwJWP
チィッ…!や、闇絵さ〜ん
0337名無しさん@ピンキー2012/11/06(火) 00:15:29.74ID:Ta9wQWbl
>>336
君も呼んでみるといい
さあ、せーのっ闇絵さ〜ん
0339名無しさん@ピンキー2012/11/07(水) 17:22:44.94ID:OfsAmm9B
体育会系の先輩かっ!!
0341名無しさん@ピンキー2012/11/08(木) 11:30:55.79ID:BB+7m45Z
>>340
スマン
0342名無しさん@ピンキー2012/11/08(木) 13:22:41.25ID:tq7FH3CM
今就職活動中で迷ってるんだけど悪宇商会って正直どうなの?
0343名無しさん@ピンキー2012/11/08(木) 23:19:58.65ID:BB+7m45Z
殺人職は福利厚生はしっかりしてるっていう噂があるけど
0344名無しさん@ピンキー2012/11/09(金) 01:02:40.52ID:wqbEtOBJ
試験が殺人な上に社員じゃなくて人材派遣契約だから、俺なら嫌かなあ
0346名無しさん@ピンキー2012/11/11(日) 22:20:07.14ID:Da7eTNSh
俺一応派遣で雇われてるけど、あまり仕事来ないなあ
一回一回の仕事は良い金になるけど、副業しないとやっていけないよ
0347名無しさん@ピンキー2012/11/12(月) 11:40:25.56ID:AvMCstdU
会社説明会で社員の人が言ってたけど、両腕が鉄の義手の人がいてその人がどっかのお偉いさんの護衛の仕事請け負ったら
高層ビルから義手両方とももがれて落ちてきたんだって。プロジェクターでその時の写真映し出しながら
「失敗するとこういうことにもなります」って淡々と説明してたよ

こわっ
0349名無しさん@ピンキー2012/11/14(水) 16:55:45.61ID:w958snBd
さーてとあしたも銀子とキスしてから学校行くか
0350名無しさん@ピンキー2012/11/18(日) 16:11:48.98ID:ZGapIeKb
種牡真九郎
0351名無しさん@ピンキー2012/11/21(水) 23:51:32.21ID:R5lxIPrA
今でも片山先生の復活を待ってる人ってどのぐらいいるの?
0354名無しさん@ピンキー2012/11/25(日) 23:40:02.20ID:o37E5QMP
はっはっは!遥かニューギニアの火力発電所より、100万本の電線をひた走りやってきた
日本の皆さん、私がカタヤマンです!
0355名無しさん@ピンキー2012/11/26(月) 18:56:02.84ID:bm3DHidH
どこからツッコんだらいいか分からんわ!!!!
0357名無しさん@ピンキー2012/11/28(水) 16:55:39.83ID:XGfIvSPT
裏の世界の人たちの性生活が気になる
浮気や売春は普通にありそう、というか結婚して役所に届け出すとか想像できない
子供の名前も人名用っぽくないし
0358名無しさん@ピンキー2012/11/28(水) 21:19:09.29ID:FYwqNUrR
っ柔沢紅香
0359名無しさん@ピンキー2012/11/29(木) 00:45:24.97ID:0DJwgJ1l
紅香は婚姻届は出してないっぽい気がするな
ジュウに他の姓があったという感じもないし
0360名無しさん@ピンキー2012/11/29(木) 22:34:31.11ID:6TuUcjTL
裏世界の住人が役所で住所や親族がわかるとかないだろ
身分偽造、パスポート偽造とかも多そう
悪宇商会に逃がし屋、護衛屋などもいるみたいだし

売春目的の入国や偽装結婚とかもあるだろうな
0361名無しさん@ピンキー2012/12/03(月) 18:11:31.45ID:ojj25tKi
じゃあ真九郎はいつか気がついたら偽造身分で夕乃さんと結婚してることになってるのか
0362名無しさん@ピンキー2012/12/03(月) 18:39:54.81ID:6mKyXwID
確か真九郎の開業にあたって見せたテロ事件の対応で、紅香の介入をCIA局員が了承
する場面があったから、現状の彼女が超法規的スタンスにあるのは間違いない。

こうして平易に書くと何だかめっさ偉いさん・・・てか、紅ってファンタジー度高いね。
だから、電波は好きだが紅はイマイチみたいな意見も出るんだろうな。
0363名無しさん@ピンキー2012/12/04(火) 15:45:41.09ID:N9GGNL3i
俺は紅好きだけどなあ…
ちょっとぐらいファンタジー入った方が話広げやすいような気がするから面白いと思うし…

紅香の介入場面があるのって漫画版じゃないの?
0364名無しさん@ピンキー2012/12/04(火) 21:50:02.10ID:xBd3beDp
俺は紅も好きだよ。度合いで言うと、電波の方が好きだけど。
あと、362で書いた場面は原作の「醜悪祭」。上下どちらかは忘れたけど・・・多分上。
0365名無しさん@ピンキー2012/12/04(火) 23:30:15.22ID:N9GGNL3i
あーはいはいあれねなんか介入してたの思い出したわ
0368名無しさん@ピンキー2012/12/06(木) 09:50:11.56ID:2zzi8t4p
関係性から生まれるキャラの振る舞いの違いという事なら「ジュウ&雨」と「紅香&弥生」
の組み合わせの違いは、寧ろジュウと紅香の違いじゃね?と思えてきてさ

例えば弥生の場合、仕える相手の紅香がジュウと違って優秀なので、雨程には主を助ける
為の活躍の機会が少ないのでは?みたいな あとジュウは男だしね
0369名無しさん@ピンキー2012/12/06(木) 16:07:21.97ID:noiw/i7z
なるほどな
でも弥生さんは雨ほどに頭は回るんだろうか
俺の中で弥生さんが頭の回転は良さそうに見えて普通っていうイメージがなんでかあるから、
幸福ゲームの綾瀬一子と白石香里のうわあああなシーンでも、弥生さんならジュウに終わらせてこいって命令されて
分かりましたって言った割には二人ともフルボッコにして終わらせそうな気がするんだよ
0370名無しさん@ピンキー2012/12/06(木) 19:32:52.79ID:2zzi8t4p
勿論、解釈は十人十色だと思うよ 比較対照が正ヒロインとサブキャラだしね

いや、単に雨と弥生が顔を突き合せて、互いの主自慢大会を始めたら鏡写しみたいに
なって面白そうだなーとか思ってw
0371名無しさん@ピンキー2012/12/07(金) 17:51:16.18ID:T8yoTBfz
二人ともだんだん涙目になってくるんじゃないかなw
0372名無しさん@ピンキー2012/12/10(月) 14:37:00.77ID:wzs9mHtX
ジュウと雨は本人達がそんなに変わってないと思ってても周りの人間が砂糖吐くような関係になればいいw
0373名無しさん@ピンキー2012/12/10(月) 23:10:46.72ID:kpg98YQa
ジュウは雨から王だし
紅香も漫画のおまけページの動物化でライオンだったな
0374名無しさん@ピンキー2012/12/11(火) 00:30:55.54ID:A/KZDLHC
何でジャンプの新連載は新米婦警切彦ちゃんじゃないんだ!!!!(ドンッ
03752012/12/11(火) 03:56:55.44ID:XDi0nc6b
>>372
 ちょっとネタが世界観的に厳しいかなと思ったのですが、無理やり書いてみました。

>>原作ファン
 正直、今回のは若干キャラがズレてる気がします。その意味では些か不本意なのですが・・・
“別枠”の小ネタという事でご寛恕頂けると幸いです。
03762012/12/11(火) 03:58:34.72ID:XDi0nc6b
 レスSS ■堕花シュガー■


 つい、ぼうっとしていた。どうやら呆けていただけではなく、折からの疲労で少し眠ってしまったらしい。
雨は自分が先日の約束から、繁華街の改札前で主の到来を待っていた事を思い出す。それにしても、ふんわり
と幸せな夢だった。何時もの血沸き肉踊る前世譚とは違い、心地よく―――少し甘い。自分の身に起こる事とは
思えないが、何時かああいう日が来るのもいい。

 雨は、夢の中で繰り返し口にしていた名前を呟いた。

 「・・・ジュウ様」

 「何だ?」

 「・・・ッ?!」

 声の方角を見上げた視線の先には、逆光を透過して光る金色の髪。睡眠不足なのだろうか。少し眠そうな瞳。
腕を組んで立つ、自分の主・柔沢ジュウその人だった。

 改めて周囲を見渡す。自分は何時の間にか改札口正面の四角柱にもたれていたらしく、傍らに立つジュウは
柱の側面にもたれている形だ。弾かれた様に直立する雨。びょんっと音が出そうな動作。

 対するジュウは雨の珍しいまでの動揺を見て、目を丸くしている。

 「どうした?」

 「・・・いえ、その」

 「俺の遅刻を怒ってる・・・って訳でもないみたいだな」

 雨はかぶりを振った。白昼夢の内容がまだ少しダブっている。あ、あんな夢の・・・!

 「何なんだ?」

 一瞬で頬が赤く染まる。だが主の言葉に応じないなど、従者失格だ。何か言わなければ、何か。

 その焦燥が未だ混乱覚めやらぬ思考を突き抜けた為だろう。雨が飛びついた答えは二人の普段の関係の遥か
上空の、更に斜め上を行っていた。

 「よ、呼んでみただけなのです・・・」

 ジュウは不審な表情。どうやらよく聞こえなかったらしい。という事は、改めて言い直さなければならない
のだろうか。あ、あんな返事を?

 雨としても失敗した言葉選びではあったので、仕切り直したいのは山々なのだが・・・ジュウの様子を見る限り、
その不審顔は返事をよく聞き取れなかっただけが理由ではなく、耳慣れない言葉を咀嚼し損ねた為のものでも
ある様だ。今更違う返事を返せば、余計にややこしい事態に陥りかねない。
03772012/12/11(火) 03:59:06.31ID:XDi0nc6b
 未だ動揺の渦中に捕らわれたまま、雨は糸にも縋る思いで先の返事を繰り返す。なのにどうした事か、咽から
搾り出された声は意図しない内容を妙なハイトーンで告げていた。

 「・・・ジュウ様のお名前を、呼んでみたかったのです!」

 今度は聞き取れたのか、ジュウの表情が変わった。傍目にも明らかな動揺。半開きの口に、赤く染まる頬。
盛大に泳ぎだす視線。

 「なっ何言ってんだ、お前・・・」

 声にもキレがない。当たり前だ。この事態を前に雨は真っ赤に染まった顔をあわあわとさせ、不審な挙動を
加速中。それに、よく誤解されがちなのだがジュウは所謂男女交際は未経験。基本的に無関心のエキスが濃厚
であるとはいえ、免疫となると無いに等しい。大体、この種の突発状況に対して冷静な対処を取るには、二人
の距離は違う意味で近すぎた。

 結局、わたわたと無駄に互いの動揺を高めた末、一旦仕切り直す事となる。


 ところで。当事者の与り知らぬところで、その光景を見ている者達がいた。

 白いリボンで長い髪をポニーテールに結わえた少女と、大きなスポーツバッグを背負った短髪の少女。共に
光雲高校の制服を着ている。今日合流する事になっていた、雨の友人二人だ。

 傍目からはまことに異様な事に、遅刻を詫びる様に片手を上げ、笑みを浮かべた長髪の少女の顔が―――その
ままの形で凍りついている。やがて上げられていた片手が軋みをたてつつ、短髪の少女の眼前に差し出された。
凍った笑顔は変わらない。

 「・・・円、ナイフ」

 「ダメよ」

 「円、ナイフ」

 「ダメ」

 尚も言い募る友人を冷たくあしらいつつ、男嫌いの短髪少女は黙考する。成程、天下の往来でこの所業。雪姫
ではないが、これは不愉快だ。こういうのは・・・そう、許されざる罪とでも言うのだろうか。神ならぬ身が許せよう
筈もない。ブロッコリーが必ず熱湯責めに遭う様に、罪人もまた責めを受けるのが世の倣い。

 『天網恢々租にして漏らさず』 恐らく、あの男には天罰が下る事になるだろう。近い内に。100%の確率で。


 <Fin.>
0379名無しさん@ピンキー2012/12/11(火) 18:06:14.40ID:A/KZDLHC
乙ウフフフフフフフフフフフフ
0380名無しさん@ピンキー2012/12/20(木) 01:00:53.35ID:J7v+/Sxc
書き込みがないから小ネタでも投下するか…
0381名無しさん@ピンキー2012/12/20(木) 01:02:55.10ID:J7v+/Sxc
ジュウ「俺は友達が少ない…」
雨「ジュウ様、王とは孤独にも耐えねばならぬものなのです」
円「少ないんじゃなくていないの間違いじゃないかしら」
雨「円、ジュウ様への侮辱は許しませんよ」
円「あら、ごめんなさい」
雪姫「ジュウ君私なら友達じゃなくてもっと深い関係になれるよ!」
雨「雪姫、私はあなたと敵対したくはないですよ」
雪姫「んふふ♪雨ったら妬いちゃって」
雨「妬いてません」
光「あ、ああ、あんたがどどどうしてもって言うなら私がとも友逹になってあげてmゴニョゴニョ///」
  ボソボソ「そうすれば二人の仲は縮まっていずれは恋b 雨[光ちゃん]ひいっおっお姉ちゃん… 雨「…」…うう」ショボン
0383名無しさん@ピンキー2012/12/21(金) 10:29:15.00ID:13d3nfvO
何だか、この雨はジュウを孤立させといて囲う気の様な・・・w
03852012/12/23(日) 21:59:30.60ID:31WpRaUZ
>381を読んでピピっと来たので書いてみました。
何だかここ暫く連投気味で何なのですが、楽しんで頂ければ幸いです。
03862012/12/23(日) 22:00:20.94ID:31WpRaUZ
 □カルテット□


 小学校低学年と思しき年代の男の子を囲み、三人の少女達は小首を傾げていた。

 皆、状況が掴めないまま無言でいたが・・・沈黙に耐えかねたのか、長髪を白いリボンで束ねた少女が口火
を切る。

 「えーっと。これって、どういう状況かな?」

 勝気を装う大きな瞳。泥塗れの靴。どうやら少年は子供の間でありがちな、激しく辛い交流を強いられた
様だった。冷たい視線で値踏みする様に彼を見つめていた、短髪の少女が呟く様に言う。

 「この子・・・柔沢君、よね?」

 声音に少し苛つきの色があるのは、少年の擦り剥いた膝小僧に気付いたからだろうか。もっとも、そこは
目立つ度合いが高いだけで、彼の体には他にも細かな傷が沢山あるのだが。

 鞄からウェットティッシュを取り出しながら、小柄な少女が応じた。顔の上半分を前髪で覆っている為に
表情は読めないが、立ち上る感情の気配は隠しきれていない。

 「間違いありません」

 言いつつ彼女は傷口を拭こうとして、男の子に手を弾かれる。

 「どいてくれ、家に帰れないだろ」

 「お家で誰か待ってるの?」

 つい、といった様子で雪姫が訊ねたが少年は答えない。雨は彼の前から身を引く事なく片膝をつくと、胸
の前に両手を重ねて置いた。

 「我が王、柔沢ジュウ様」

 それは何時でも、どんな時でも変わらぬ臣下の礼。

 「私が参りましたからには、あなたをお独りになど致しません。そのお怪我、是非私に診させて下さい」
03872012/12/23(日) 22:01:10.10ID:31WpRaUZ
 小柄な体つきとは言え、10歳程も年上の女性から妙な申し出を受けた上に名前まで口にされて戸惑ったのか、
幼いジュウは沈黙した。だが数瞬後、再び彼は言い放つ。精一杯胸を張り、拳を握って。

 「変な同情で訳の分らないこというな。俺は平気だ!」

 見知らぬ人間の安っぽい同情など要らない。それを哀しいとも思うまい。そう。自分の両親は近所の無責任
な大人達が言う様な、子供に辛い思いをさせて放っておく様な人間なんかじゃない。小さな男の子は独り戦っ
ているのだ。彼自身の誇りと、大切な両親のために。

 雨の頬が真っ赤に染まり、唇が何かを言いたげにわなないた。雪姫の潤んだ瞳が爛々と輝きを増し、その
手は幼子相手に何をする積もりなのか、ぐーぱーを繰り返している。

 「ジュウ様・・・そんな痛ましくも雄々しいお言葉を、こんな幼少の頃から・・・」

 やはり、あの自称母親は許し難い。次に相見えたその時こそ、ギッタギタのメッタメタに・・・っ!!

 「・・・か、かわ可愛格好いなあ・・・ちっちゃい柔沢くん・・・」

 もう辛抱堪らんとばかりに、ふらふらと前進する雪姫。その正体不明の欲望に塗れた指先が少年の身に達
する直前、雨は主から視線を逸らさないまま親友の関節を決めて抑え込みにかかる。そこで空気を読まない
発言が時空を揺るがした。

 「つまらない意地に何の意味があるの? 大体、全然平気な様に見えないのだけど」

 ゆらり、と円をターゲットする二組の視線。その光は夜のサバンナを徘徊する野獣の目の様だ。只事では
ない親友達の視線に、短髪の少女はあっさりと前言を撤回&謝罪。

 「・・・言い過ぎたわ。ごめんなさい」

 そんな辛辣な大人の客観性にもめげず、強い光を宿す少年の瞳。しかして、そこにごく微量の潤いが増す
様を見た雪姫は、もう人としてどうかという視線を彼の姿から逸らせない。弾む息、高鳴る鼓動。

 「はあはあ・・・団地妻・・・団地・・・母・・・?・・・もういいや何でも・・・この子お持ち帰りできれば」

 突然、小さなジュウが彼女らの目前から掻き消えた。否、彼の背後側から掠め取られたのだ、と気付いた時
には勇敢な子供は細い両腕に強く抱き締められていた。
03882012/12/23(日) 22:02:10.83ID:31WpRaUZ
 雨たちから奪う様に彼を攫ったのは、ある女子中学生だ。彼女は目を瞑り、強い何かを秘めた表情でもがく
男の子の両肩を抱きすくめると、その柔らかい黒髪に唇を埋めて呟いた。

 「あんた、ずっとそうやってきたんだ・・・あのマンションで、たった一人で」

 雨の日。自棄になった自分を正気付かせてくれた、あいつの部屋。不思議に生活感や人の気配が希薄なあの
空間の静けさに、思わず光は訊ねてしまったのだ。多分にプライバシーに関るであろう事柄について。

 『ろくでなしの母親がいる。滅多に帰ってこないけどな』

 あの時の、あいつの顔。何てことない。そういう表情をしていた。でもその奥には、こんな・・・こんなに小さな
頃からの―――

 「ご免・・・あたし、何も分ってなかったみたい」

 揺れる想いを抑え、光は告げる。普段は仏頂面がトレードマークの顔を綻ばせて、自分の頭を撫でてきたアイツ。
その微笑みは昔から鎧過ぎて強張り、もはや麻痺してしまった孤独な心から漏れた―――僅かな滴だったに違い
ない。考えてみれば分ることだ。何しろ答えは自分の発した問いの中にあったのだから。

 『どうしてここまでしてくれるの?』
 『理由は、それだけ?』

 今の光は例の件に関する、ジュウの行動の全てを知っている。空手部との諍いや、幸福クラブ会員が起こした
火事場での出来事、それから犯人を捕まえた後の事も。わたしのしたこと、彼がしてくれたこと。その中身と
量が他人目にどう映ろうとも、恐らくは充分だったのだろう・・・柔沢ジュウという人にとっては。

 いけない。このままにしていては、いけない。光はもがく少年の頭を優しく抱き寄せる。

 「大丈夫・・・大丈夫だよ。これからは、あたしが傍にいる。あんたを独りにしたりしない」

 そう言いながら小さな男の子に微笑みかける光の貌は、いつぞやの姉ととてもよく似ていた。そんな二人の
姿に影が差す。
03892012/12/23(日) 22:03:07.82ID:31WpRaUZ
 「光ちゃん、ジュウ様をこちらに」

 「光、ちび柔沢を返すんだ」

 光は妙に厳しい表情を浮かべた姉と、何時の間にかカッターを手にしていた雪姫を見返す。

 「駄目だよ。この子は渡せない。大体・・・」

 柔沢少年を肩で守る様に抱き寄せると、光は主張する。姉にだって、そうそう何時も負けてはいられないのだ。

 「大体、お姉ちゃんも雪姫先輩もお料理とかできないでしょ!!子供の世話なんて無理よ!」

 空気が凍りついた。その一瞬後。

 「お姉ちゃんだって、スパゲティをふやかす事くらいできます!」

 「あ、あたしも切るのは得意だぞ!」

 「コックを雇えば済む話だわ」

 何故かセレブな一言が加わっていたが、光は負けない。だって柔らかくて暖かいのだ。それにつむじから子供
特有の、いい匂いがしている。何より―――可愛い!!この柔らかいほっぺも、紅葉みたいな小さな手も絶対に
手放すもんか。これは、あたしのだ!

 強く抱き締められていた光の胸から、ようやく顔を出す事が出来た小さなジュウは、自分の意見を無視して盛り
上がる年上の娘達に抗議の主張をする。

 「ば、バカにすんな!自分のごはんくらい自分で作れるんだぞ!」

 それを聞いた面々がまた顔を赤く染めて、目を潤ませた。こんなに幼い子が誰も居ないマンションの一室で
自炊する姿を思えば無理もない。彼女達は直接、或いは間接的にジュウの生活を知っている。先の言葉に嘘が
ないのは明らかだった。

 肩を震わせる雨、何故か鼻を押さえる雪姫、涙ながらに頷く光は再びジュウの顔を胸に埋め、円は皆から顔を
反らすと携帯電話を取り出してどこぞに連絡を取り始める。
03902012/12/23(日) 22:03:53.50ID:31WpRaUZ
 数分後。連絡を終えたらしい円が振り返り、その場の全員に告げた。

 「一先ず現在の柔沢家の状況をネグレクトと判断するわ。彼の身柄は然るべき手続きを施した後、公的な処遇
 が定まるまで円藤家が保護します」

 三組の微妙な視線が円堂家の子女に集中する。全員が同じ疑念を抱いているのだ。有体に言えば処遇とやらの
内容と期間についての疑念。確かに円堂家は公的機関に影響力の強い家柄で、円の主張は血縁でない人間が採る
処置としては常識的なものに聞こえる。当人も如何にも手早く状況を整理しているだけ、という表情だ。

 しかし、それもこれも中身こそが問題。一口に公的な処遇と言っても児童保護施設に預ける方法もあれば、血縁
関係の捜索、里親や後見人を見繕う事も含まれる。つまり当の円堂家が小さなジュウを養子に迎えたり・・・極端な
話、入り婿候補として後見を買って出る事も公的な処遇に含まれる。そんな風に考え出すと、疑念は深まる一方
だった。

 それに取って付けた様な円の反応も気にかかる。表情こそ普段と変わりないが、耳に差した赤みも怪しい。大体、
先程のおよそ児童に向けるには冷た過ぎる発言もおかしいと言えば、おかしかった。普段の円、強さを信条に皆の
中ではまだしも常識的に振舞う彼女が、一人の孤独な少年を相手にあんな言葉をぶつけたりするものだろうか?

 しかし仮に、あれがある種の個人的な感情の発露だとすればどうだ。今の提案に違った意図がある様に感じられ
るのは・・・・・・本当に、気のせいなのだろうか。

 遠くで何かの音が響いている。重く低い音。サイレンの音も混じっている様だ。何か事故でもあったのか。

 「光、その子を渡しなさい。何時も言っているでしょう?男を信用してはいけないと。小さくても、それは男よ」

 「・・・何となく、今の円堂先輩の方が信用できない気がします」

 重低音が近づいてくる。これは、ヘリの音だ。それもこの切り裂く様な高周波音から察するに、相当な高出力。
そう、例えば―――

 ゴゴドゴドゴドドドドドドドド・・・ッ!

 空を圧して迫る、黒い影。発する音はもはや聴覚だけでは済まされず、人間の肉体を構成する水分を直接揺らす
衝撃そのものと化している。何処かサメを思わせる細身のシルエットは、しかし厚く防弾された装甲殻。広げた
胸鰭の下にはミサイルポッドが吊り下げられ、機首の下部に据付けられたガトリングガンは、前席を占める機銃手
の視線と連動して常に獲物の姿を照準している。

 そう。例えば、この自衛隊所属の兵器《AH-64D アパッチ・ロングボウ》攻撃ヘリの様な。
03912012/12/23(日) 22:04:36.05ID:31WpRaUZ
 「・・・本気なのですね、円」

 慎重に、抑えた声で確認する雨。その言葉は圧倒的なエンジン音に霞んだが、親友には伝わっている筈。しかし
当の短髪少女は何も応えず、静かに微笑むばかりだ。

 油断無く周囲を見渡した雪姫の視線が、数百メートル離れたビルの屋上に一瞬閃いた何者かの視線を捉えた。
おやおや狙撃手まで配置済みとは。斬島の血が戦場の匂いにざわめき始める。視界の端には堕花光が抱くトロ
フィー・・・否、可愛いあの子の姿。クク、勝った者の総取りという訳だ。上等じゃないか。

 遅れて到着する警察庁の大型車両。降りて素早く展開したのは屈強な体を防護服とポリカーボネート製の盾で
鎧った、機動隊員達だ。パトライトの光が周囲を照らしては遠ざかり、一瞬、渦中の人間達を血の様に紅く染め
上げる。

 緊張が一気に飽和状態となる中、開幕のベルが鳴り響いた。


 ―――実際は目覚まし時計の音だったのだが。

 「な・・・何よ!今の夢?!」

 ベッドから転がり落ちた光が叫び声を上げ、

 「・・・・・・朝から不快なものを見た気がするわ」

 低血圧気味の円がしかめつらしく呟き、

 「こっ、こっから楽しいトコっぽかったのにっ!」

 半纏姿で炬燵に臥せっていた雪姫がゲームパッドを握り締めたまま、寝ぼけ眼で呻いた。

 少女3人が、それぞれの寝床で己の性癖や人生について苦々しく思い返していた朝6時。そんな中で一人だけ、
例外的な状況に浸っている者がいた。

 朝毎に生まれ変わる眠り姫は今現在、幸福の最中にある。幼い主を守りつつ、迫り来る敵をちぎっては投げ
ちぎっては投げ。この夜毎繰り広げられる大活劇こそ、本来の世界。主と自分のあるべき姿がそこにあった。

 彼女の幸福な時間はその後、中学生の妹に起こされるまでの15分間に亘って続いた。また大騒動の中、最終的
に栄冠を手にしたのは誰なのか―――それは雨のみぞ知る。


 <Fin.>
03922012/12/23(日) 22:06:18.10ID:31WpRaUZ
 □おまけ□

 「あんた、小っさくなりなさいよ!!」

 「何言ってんだ、お前?!」

 「うるさい!あの子返せーっ!この金髪外道魔人!!」
03932012/12/23(日) 22:09:10.86ID:31WpRaUZ
 以上です。どもでした。
03952012/12/23(日) 23:03:07.27ID:31WpRaUZ
ども(^^)、受けた様なら幸いです。
0396名無しさん@ピンキー2012/12/24(月) 00:12:37.66ID:N0P/swpV
面白かったよGJ!
円の権力は卑怯だw
でも夢の続き見てた雨の一人勝ちだな
03972012/12/24(月) 18:33:50.93ID:Kf3H8gqD
雨には「感情のこもってない音は心に届かない」ので目覚ましでは起きれないという
妙な設定があったので、今回はこういうオチになりました(笑。

・・・しかし、カタヤマン復活して欲しいなぁ。
0401名無しさん@ピンキー2012/12/26(水) 21:42:33.21ID:l1XZGAJ1
クリスマスだったか…
0402名無しさん@ピンキー2012/12/27(木) 15:30:31.13ID:CqU5tDB3
自分で自分のプレゼントを調達した俺様が語ってやろうじゃないか

・・・いや、別に普段の日と変わらなかったよ・・・
0403名無しさん@ピンキー2012/12/27(木) 17:11:13.58ID:4Y+Kmj3l
クリスマスの日には夕乃さんに自室に拉致られて出してもらえない真九郎
0405名無しさん@ピンキー2012/12/27(木) 21:13:03.50ID:T9w12iFt
夕乃さんは遠巻きにやるイメージ
真九郎の方から告白されたい、みたいな
それか事実上付き合ってるような状態になってなし崩し的に結婚まで行くとか
0406名無しさん@ピンキー2012/12/27(木) 21:27:24.22ID:CqU5tDB3
真九郎さんの方から告白して下さるまで、私、何年でも何十年でも待ちます
・・・この部屋の前で

↑こう?
0407名無しさん@ピンキー2012/12/28(金) 13:55:30.21ID:IopzlJHe
そして独身へ
0409名無しさん@ピンキー2012/12/29(土) 15:13:44.36ID:8Wmosr30
ジュウ「♪クーリスマスは一人で過ごします 楽しくない 出来事は クソ喰らいやがれ」
0410名無しさん@ピンキー2013/01/01(火) 00:56:23.69ID:m/b5Eff2
雨「ジュウ様、今年も果てまでお供致します」
0411名無しさん@ピンキー2013/01/07(月) 00:51:20.30ID:eljEk4O+
真九郎は嫌いなルーシーでも泣きながら縋りついて好きって言われたら受け入れてしまうんだろうな…
0414名無しさん@ピンキー2013/01/08(火) 23:30:03.16ID:xClrHOzf
>>411
お付き合いや結婚はしなくても健全な方向に誘導しそう
自分と悪事どっちが大事、と
0415名無しさん@ピンキー2013/01/09(水) 02:24:11.55ID:GhZnz1J/
ルーシー「そんなの、紅さんの方が大事に決まっているじゃないですかっ!」
紫「お前はうそばかりだな」
0416名無しさん@ピンキー2013/01/11(金) 14:24:28.45ID:9k2a7OjO
ルーシー「私だって女ですよ!」
紫「何だ嘘か」
0417名無しさん@ピンキー2013/01/11(金) 17:40:32.84ID:WWMMZxph
ルーシー 「・・・・・・」
紫    「・・・・・・」

ルーシー 「・・・・・・ほ、本当は紅さんなんて、大っ嫌いなんですからね!?」
紫    「アホか」
ルーシー 「どうしろってんですかっ!!!」
紫    「妙な小細工せず、普通に話せばよかろう」
ルーシー 「普通に話すって、どうやって?」
紫    「思った事を、そのまま話せ」
ルーシー 「じゃ、じゃあ・・・紅さんは頭が悪くてヘタレだから適当にこちらに堕ちて頂いて、本丸の
      崩月家を取り込む材料にしますので、ロリとかまじキモいけど悪宇商会に入って下さい?」
真九郎  「嫌です」
ルーシー 「・・・・・・」
紫    「まあ、うそは言ってないな。その調子だ」
真九郎  「・・・あ〜余計なお世話かも知れませんが、ルーシーさんは嘘ばっかり話してた方が、摩擦
      少なくていいと思いますよ。本音がだいぶアレなんで」
ルーシー 「嘘でも本音でも駄目じゃないですか!!!」
紫    「そういう場合もある。故にこそ、堂々と己に正直で居ればよいのだ」
ルーシー 「・・・何で私、7歳児に説教されてるんでしょう?」

銀子   「中身がその程度だからでしょ」
0418名無しさん@ピンキー2013/01/11(金) 18:17:42.65ID:0U5YMbTI
身近に感じるキャラになってしまっているw
0419名無しさん@ピンキー2013/01/12(土) 01:45:58.02ID:TENXAxbQ
原作でも、ルーシーは紫とセットだとネタキャラになりそうな感じあるよね
0420名無しさん@ピンキー2013/01/13(日) 23:20:49.53ID:dElSOwSB
崩月散鶴(16)「大きくなったら結婚してくれるって言ったじゃない!!!
0421名無しさん@ピンキー2013/01/14(月) 00:52:42.98ID:IpKKP3Up
真九郎「ああ、いいぜ ただしその頃には、あんたは八つ裂きになっているだろうけどな」
0422名無しさん@ピンキー2013/01/14(月) 14:47:51.25ID:HRELCxl8
真九郎「夕乃さんによってなあ!」
0423名無しさん@ピンキー2013/01/15(火) 00:07:59.99ID:8x16ql6R
夕乃「二人が納得してくれるまで、何度でもして差し上げます。 わたし得意なんですよ、半殺し♪」
0424名無しさん@ピンキー2013/01/15(火) 23:57:30.36ID:u601N0MV
兎吊木該輔「君は崩月夕乃の事が本当は嫌いなんじゃないのかな?」

真九郎「えええ?!」ギクギクビクーン
0425名無しさん@ピンキー2013/01/16(水) 02:42:38.74ID:++ngD/BA
忍野「紅君。君はいつも違う女の子を連れているねぇ。全くご同慶の至りだよ」
真九郎「危な怖いこと言わないで下さい」
忍野「ところで紅君。彼女、ヤンデレちゃんは日記をつける習慣はなかったかい?」
真九郎「そう言えば夕乃さん、つけてるみたいですね。聞いた事あります」
忍野「はははぁ、そりゃ剣呑だ」
真九郎「…個人的な幸せを記録しているだけみたいですけど。何が危ないんですか?」
忍野「幸せ、幸せねえ。君はその中身を読んだことはないのかい?紅君」
真九郎「他人の日記なんて読みませんよ、普通」
忍野「そりゃそうなんだけどさ。 やれやれ、どうも今回は当りを引いちゃったみたいだね」
真九郎「何なんですか!?」

忍野「夢日記。夢に就き―――夢に憑く鬼さ。ヤンデレちゃん、鬼と縁が深いみたいだからね」
0426名無しさん@ピンキー2013/01/16(水) 11:20:40.28ID:4z1hx0nw
よし、ネタはうれしいけど板違いになっちゃうからクロスは本腰入れて書くならSSスレでも立てて書くかふと思いついたネタを書くスレにでも書こう、ぶっちゃけ読みたいし(提案)
0427名無しさん@ピンキー2013/01/16(水) 19:34:50.69ID:/2oXORYS
ルーシーは裏十三家マニアらしいけど
裏十三家は女キャラばかりだな
法泉や雨パパを寝取る、というのも無さそう

真九郎は一応、裏十三家の崩月の手の者だが遺伝的には普通人だしな
0428名無しさん@ピンキー2013/01/17(木) 01:51:41.02ID:l0MQ+A/4
堕花家は現役か家名だけか微妙だね
いつかルーシーが近づいてきたりして
0429名無しさん@ピンキー2013/01/19(土) 20:42:32.16ID:wRB8D65p
近くにジュウがいるからジュウになんかしたらダメな悪宇商会は手を出せないんじゃないの?
0430名無しさん@ピンキー2013/01/19(土) 23:10:19.14ID:9rjZ5tSG
醜悪祭の取り決めで手を引いてしまったがためにかえって
ジュウのことを知らないまま堕花に近づくことはあるかもよ
0431名無しさん@ピンキー2013/01/20(日) 00:35:53.15ID:M8WU9Bc3
企業の形態をとってるくせにホウ・レン・ソウもできないとか…
上司が無能なせいで困るのは下っ端だってのに何考えてんだ
0432名無しさん@ピンキー2013/01/21(月) 17:47:54.77ID:cWQ6xJK3
友達が少ないネタの紅版が出来たから投下でもするか


真九郎「俺って友達少ないよなあ」
銀子「急に何言ってるのよ」
真九郎「いやあ、改めて考えてみたらちょっとまずいかなあって」
銀子「あんたみたいな不器用なタイプは裏事情があると誤魔化しきれないでしょうからね。
    あたしだって友達少ないけど、誤魔化すのがめんどくさいだけだから普段部室に引き込もってるだけだし」
真九郎「ははは、でも銀子みたいに理解してくれてる人がいると助かるよ」
銀子「…そんなの当たり前でしょ」
真九郎「ありがとう、銀子」
銀子「そうやってすぐに女をたぶらかそうとする癖もどうにかしなさい」
真九郎「誤解だって言ってるだろう?」
銀子「どうだか。その発言も怪しいものね。あんたを見かけるたびに、いっつも紫ちゃんとか崩月先輩がくっついてたりするじゃない」
真九郎「夕乃さんとちーちゃんは家族、紫は妹みたいなもの、闇絵さんと環さんはお隣さん銀子は妻ってだけだから普通にご近所付き合いしてるよ」
銀子「あんたがそう思ってるだけで周りがどう思ってるかは分からな…」
真九郎「銀子?どうかしたか?」
銀子「真九郎あんた今なんか変なこと言わなかった?」
真九郎「変なこと?変なことって何だよ」
銀子「今ちょっとものすごいことがさらっと言われた気がしたんだけど。あまりにもさらっと言うもんだからいま本当にあたしの耳を疑ってるわ」
真九郎「へぇー、銀子にもそんなことがあるんだな」
銀子「ちょっと誤魔化さないでちょうだい。さっきのあんたの発言をもう一回ふりかえりなさい」
真九郎「なんだよ急に、ちょっと銀子は妻って言っただけじゃないか」
銀子「つっ…!そ…!あ…!」ガタタッ
真九郎「言葉になってないぞ銀子」ニコニコ
銀子「ばっ…!あ、あんた…!あんた確信犯じゃないのよ!何言ってんのよ!!バカ!!///」カーッ
真九郎「銀子」
銀子「…っ、なによ」
真九郎「俺、ラーメン屋やるよ。そんでさ、友達いっぱい作って結婚式に呼んで祝ってもらおうぜ」
銀子「…真九郎…うっ…うぅ…」ポロポロ
真九郎「ああ、大事なこと言い忘れてた。銀子」
銀子「?」グスッ
真九郎「結婚してくれ」
銀子「…うんっ!」ニコッ

それは紅真九郎が幼い頃によく見ていた彼女の眩いほどの、しかし真九郎が大好きな笑顔だったという



友達少ない発言からこうなるとどの俺が想像し得ただろうか(・ω・)
0436名無しさん@ピンキー2013/01/22(火) 23:51:41.35ID:Ax8qB6S7
調子こいて小ネタがもう一個出来たので投下する
0437名無しさん@ピンキー2013/01/22(火) 23:57:32.18ID:Ax8qB6S7
「真九郎さん起きてますかー?」


この朝五月雨荘の5号室の住人である紅真九郎は布団の中でぐっすりと眠っていた。
ここ最近とある仕事により、数日間自室を開けていた真九郎であったが、昨日ようやく片が付いたのだ。
しかし体力的にも精神的にも疲れていた真九郎はやっとの思いでここ五月雨荘に帰り付き、
とにかく眠りたかったので部屋に着くなり布団を敷き乱雑に服を脱ぎ捨て寝間着に着換え、布団に突っ込むように潜り込んだ後に眠りこけたのである。
そして翌日。その日は月に何度かある、早朝の五月雨荘に崩月夕乃が訪れる日だった。
最近仕事により学校で見かけなかった彼女の思い人である紅真九郎の様子を甲斐甲斐しくもこの少女は心配して見に来たのであった。
しかし、真九郎は夕乃の呼びかけにも気付かずに眠り続けた。トントン、と真九郎の部屋の扉がノックされる。

「真九郎さん起きてますかー」

別段扉に鍵をかけているわけでもない。入るもの拒まずな状態なのだから素直に入ってくればいいものを、律儀にも夕乃は真九郎に呼びかけ続けるのだった。
さすがに呼びかけ続ければ誰だって意識が覚醒してくる。真九郎の意識も段々と眠りの底から浮上してきていた。

(ん…、夕乃さんの…声。今日は…来る日…か)

真九郎は布団の中でそんな事を思っていたがまだ起きられるような状態ではなかった。そして再びの夕乃が呼びかける。

「入っちゃいますよー?」

部屋の主である真九郎はまだ眠っている。だから返事は返せるはずがない。しかし、返事をした者がいた。

「ああ、すまないが少年は疲れているようなのでね。もう少し寝かせてやってくれないか、少女よ」

紅真九郎は、自分が誰かに、そう、真九郎があまり好きではないはずの煙草の匂いをいい香りに変えてしまう誰かに、抱き締められている事に気がついた。

扉の向う側が、沈黙した。

扉が、ゆっくりと、開いた。
0440名無しさん@ピンキー2013/01/27(日) 14:14:40.04ID:z5JqTZN9
続かないので皆どんどんムフフ話したり投下したりしちゃってください
0442名無しさん@ピンキー2013/01/29(火) 07:09:54.89ID:t2KwYND/

にしても意外と人いるんだなここ
0445名無しさん@ピンキー2013/02/04(月) 02:22:00.43ID:KtpHwGjo
闇絵さんっておっぱいどのぐらい大きいのかなあ
0447名無しさん@ピンキー2013/02/05(火) 11:50:45.10ID:lxefjSjq
環さんは…いいや、どうでも
0448名無しさん@ピンキー2013/02/06(水) 10:40:18.27ID:6yJ1wkRC
闇絵さんはEカップあったらいいなあ
0449名無しさん@ピンキー2013/02/07(木) 23:52:08.33ID:ALj3MrxA
もうすぐ“ばれんたいん”とかいうやつらしいな
0450名無しさん@ピンキー2013/02/08(金) 11:08:17.57ID:28pl3K0y
悪宇商会にチョコを頼める
非合法な変態セックスとか依頼できるんだろうか?
悪宇は入社試験で全員殺人してるが性関係は不明か
0451名無しさん@ピンキー2013/02/08(金) 12:11:58.69ID:e3Yhng8X
ヒント:切彦ちゃんは処女
0452名無しさん@ピンキー2013/02/11(月) 05:16:58.76ID:ret27O3I
スカウトのルーシーは実はいい人材をスカウトするために枕営業……
いや、あんな服装だし無いか

そもそも密着して肌を触れ合わせるとか裏世界では危険すぎる
そういう暗殺者もいそう
0453名無しさん@ピンキー2013/02/11(月) 17:05:19.07ID:ZteNE7Pb
ルーシー「紅さんのちんぽなんかに負けたりしませんよフフフ」

ってか
0454名無しさん@ピンキー2013/02/14(木) 01:13:45.94ID:719ykjov
最近投下がないけどこれはスレの皆が年末やバレンタインなど目白押しだったイベントをネタにssを書いてると見た
0455名無しさん@ピンキー2013/02/14(木) 01:28:35.13ID:c2ArWNF4
チャーリーブラウンのAAを張りたくなるほど公式で動きが無いから
0456名無しさん@ピンキー2013/02/14(木) 21:04:14.31ID:719ykjov
oh…
0457名無しさん@ピンキー2013/02/16(土) 08:28:11.55ID:P5Lm4haG
投下のペースは割と前からゆっくりだったよ
むしろ雑談の方が減った気がするけどな
0458名無しさん@ピンキー2013/02/16(土) 11:57:57.96ID:Yp4xyaXk
久々に電波のほう読み返し中
やっぱおもしれーな
0460名無しさん@ピンキー2013/02/20(水) 17:09:31.52ID:ZuJggchI
マイナーラノベのスレが立っては消えてるがここは残ってるな
0461名無しさん@ピンキー2013/02/20(水) 18:21:25.14ID:HNGBSuoW
まあまだ二作品とも終わってないで寿司
0463名無しさん@ピンキー2013/02/28(木) 16:32:48.35ID:8I+xQuHy
井原「ジュウ…///」
0464名無しさん@ピンキー2013/03/02(土) 04:01:40.79ID:znFhDCf9
ジュウは割と男にもモテそう
真九郎は母性本能が無いと無理
0466名無しさん@ピンキー2013/03/04(月) 12:00:15.54ID:A+NBCLVk
ウウウウウオオオオアアアアアアアアアア夕乃さんはまだかああああああああああああああああああああああああ!!!
0468名無しさん@ピンキー2013/03/08(金) 21:29:52.59ID:cyXCsQYX
夕乃さんなら素面で真九郎食える
0469名無しさん@ピンキー2013/03/09(土) 19:11:37.27ID:xoHk7OXE
ちょっと聞きたいんだけどドラマCDってどんな話なの?誰か買った人いる?
買う価値ある?
0471名無しさん@ピンキー2013/03/09(土) 23:19:43.52ID:xoHk7OXE
>>470
意味はない、か?
0472名無しさん@ピンキー2013/03/11(月) 05:05:10.15ID:OT5LrZZP
夕乃さんは真九郎が寝てる間とかしごきで気絶してる間に少しはエロいことやってそう
あくまで真九郎の心が大事でも体もどうせ妻になるんだし、と
0474名無しさん@ピンキー2013/03/13(水) 16:11:59.42ID:XqqxHIFn
しかし真九郎の布団の中には銀子が
0475名無しさん@ピンキー2013/03/14(木) 01:02:11.49ID:86/BZp+z
小さい頃に裸を見せたから見る権利があるとか勢いで出来そう
漫画版の京都編も2人きりならマジで怪しかったかも
0476名無しさん@ピンキー2013/03/14(木) 02:23:04.02ID:zGaN+Pqt
ラノベ版と漫画版ではキャラが違い過ぎて同一人物に見えん
0477名無しさん@ピンキー2013/03/14(木) 02:47:05.17ID:an/1/31T
漫画版…?
0478名無しさん@ピンキー2013/03/14(木) 20:05:42.31ID:U5MEiVc+
銀子は真九郎の愛してるに対して返したけど
そこで真九郎が深く突っ込んだら冗談、と返すかそのままいくか
0479名無しさん@ピンキー2013/03/14(木) 23:33:48.92ID:zGaN+Pqt
原作の銀子だと先ず、強く意思確認をする過程がある気がする
その返答内容によって互いの人生設計の修正とか干渉の強弱が定まりそう

紫と夕乃は自分以外の女性との関係を全く認めないし想定もしない構えだけど
銀子は紫への態度とかから見てもそういう感じじゃないっぽいからね
0480名無しさん@ピンキー2013/03/16(土) 00:34:01.05ID:EEHv58D0
正妻の余裕だろ
0482名無しさん@ピンキー2013/03/18(月) 10:25:31.63ID:4I82Itrb
>>479
夕乃が他の女性との関係を想定しないなら
共学の高校には行かせたがらないのでは?

まあ真九郎は学校でのフラグは全く無いけど
0484名無しさん@ピンキー2013/03/19(火) 01:29:23.12ID:oRbuOoPn
>>482
学校でのフラグが全くない?
おいおい真九郎の職業をもう一回良く考えてみな
それにこの作品じゃあ揉め事なんてそこらへんに転がってるんだからクラスメイトだって巻き込まれたりするだろう
それが女子だったりして心底困っているかもしれない
そんな時にどうだ?真九郎がさっと出てきて
「お待たせしました。揉め事処理屋です」
なんて言ってその同級生の女子の揉め事をあれやこれや手を回して解決してしまうかもしれない
真九郎の真摯な態度に揉め事が終わる頃にはもうメロメロよ
0485名無しさん@ピンキー2013/03/19(火) 05:20:09.90ID:ZFOda1Sz
真九郎の天職の「天性」によって気付かずに救われて惚れても
銀子が弱みを握ったり
夕乃の高根の花っぷりに圧倒されるとか?
0487名無しさん@ピンキー2013/03/19(火) 07:38:26.88ID:sS5AciLI
真九郎は学校では極力目立たないようにしてるんじゃなかったっけ?
どうしても見過ごせない時だけ銀子の力とかを借りて秘密裏に解決してそう
関係を持ち過ぎて裏の事件に巻き込まれたりしたらそれこそ耐えられないだろうし
0489名無しさん@ピンキー2013/03/20(水) 20:56:04.42ID:OEWgTNFS
世間の歪みはどこにでもあります
0490名無しさん@ピンキー2013/03/24(日) 15:01:56.08ID:LLgGhpPJ
きーりーひこ!
きーりーひこ!
きーりーひこ!
きーりーひこ!
0493名無しさん@ピンキー2013/03/25(月) 13:58:05.54ID:id755HFF
保管庫にジュウが女で切彦が男のやつあるよ
0494名無しさん@ピンキー2013/03/25(月) 13:59:41.31ID:id755HFF
間違えた雪姫だ
0495名無しさん@ピンキー2013/03/27(水) 22:08:51.14ID:1LgJA2ey
雪姫はわりと美少女だから許されてる部分も多いよな
まあ団地妻なら男だったら公務員とか?
0496名無しさん@ピンキー2013/03/28(木) 16:43:14.36ID:tr2aV1EK
町工場工員とか?
0497名無しさん@ピンキー2013/03/29(金) 15:48:35.59ID:CAG0IoEF
ジュウが女なら主婦で全く問題ないな
それだと紅香さんとの関係が気になる

まあ詳しくやるのは>>492の通り他所でかな
0498名無しさん@ピンキー2013/04/03(水) 14:43:20.29ID:vATvoiIx
危ノーマル系女子っていう漫画の女の子の一人が雨にしか見えない。
0500名無しさん@ピンキー2013/04/04(木) 10:10:03.06ID:GhHsss5R
パッツン前髪で目を隠してる病キャラってかなり古典的な記号だし
しかしカトウハルアキ、何でペンネーム変えたんだろ
0501名無しさん@ピンキー2013/04/19(金) 14:19:20.15ID:4dJ/Meam
疲れてる時に紅読んでて紫って書いてあんの見て孫って読んだことがある
0503名無しさん@ピンキー2013/05/11(土) 00:47:27.96ID:Tif1JsaZ
銀子おやすみ
0504名無しさん@ピンキー2013/05/29(水) 14:44:34.34ID:14DPcecw
真九郎「zzz」
紫「zzz…む、朝か…」
紫「真九郎、朝だ…ぞ…?なんだこの固いのは?おい真九郎、これは何だ。股に何を隠している」
0506名無しさん@ピンキー2013/06/17(月) 23:18:18.33ID:qxnrGreV
夕乃さん
0509名無しさん@ピンキー2013/07/25(木) NY:AN:NY.ANID:hF7noG8g
このSSどころでない過疎状態を見てると漫画連載がスレの続いた大きな理由だったんだなあ
改変されてたとはいえ続いてるってのはやっぱ大事なのね
0510名無しさん@ピンキー2013/08/04(日) NY:AN:NY.ANID:/CK3CDsb
夕乃さん!
0511名無しさん@ピンキー2013/08/12(月) NY:AN:NY.ANID:/oWqYWhP
夕乃さん!
0515名無しさん@ピンキー2013/08/31(土) NY:AN:NY.ANID:XVJCaOJ7
闇絵さん!
0517名無しさん@ピンキー2013/09/02(月) 18:39:08.92ID:KlaQqEky
あの『タイタニア』だって続きが出るらしいから、作者が生きている限り可能性は有るんじゃないか
0518名無しさん@ピンキー2013/09/04(水) 22:55:00.00ID:VJsBE6L8
>>516
半年ごとに出てるじゃんお前しらねーのお前知らねーの?
0519名無しさん@ピンキー2013/09/07(土) 16:37:21.23ID:LZERoNaa
 



            夕             乃            さ           ん



 
0520名無しさん@ピンキー2013/09/12(木) 07:16:31.50ID:0XsPYlzs
>>518
8巻あたりが最高だったな
開花した柔と真九郎が共闘するとはな
あつかったぜー
0521名無しさん@ピンキー2013/09/16(月) 18:26:19.93ID:NTBJx3PW
 



          闇          絵          さ          ん



 
0522名無しさん@ピンキー2013/09/23(月) 22:30:41.24ID:J+BcZEBA
 
 


            環        さ         ん



 
0523名無しさん@ピンキー2013/09/28(土) 17:54:49.02ID:kCJNXB1A
 



          紅          香          さ          ん



 
0524名無しさん@ピンキー2013/10/02(水) 23:15:40.79ID:qGmaynMw
亀山「右京さん!事件ですよ事件!」
右京「はい?・・・おや,えぐり魔事件ですか・・・」
0525名無しさん@ピンキー2013/10/04(金) 19:05:06.95ID:Eg3Q9+8s
ジュウと雨も相棒だし、いいかも知れんw
主従の役割は右京&亀山とは逆だが…
0526名無しさん@ピンキー2013/10/05(土) 23:05:21.74ID:G33iLJAT
 





                      銀                            子






 
0527名無しさん@ピンキー2013/10/12(土) 14:47:53.30ID:TG3aH3DF
 



                                  紫



 
0528名無しさん@ピンキー2013/10/27(日) 22:34:19.15ID:i8HJTNHu



 
0529名無しさん@ピンキー2013/10/27(日) 22:36:36.65ID:i8HJTNHu
 


うそぉ!?出来てへん!?



 
0530あれ?出来てる…2013/10/27(日) 22:37:19.49ID:i8HJTNHu
 


                      雨


 
0531名無しさん@ピンキー2013/11/21(木) 23:21:56.48ID:dzpqUsYe
真九郎が女装させられた時の写真を環さんが真九郎の部屋に置いておいてそれを夕乃さんが見つけて
真九郎が「誰ですかこの女は」って問い詰められて結局ばれるんだけど散々に辱められる話下さい
0532名無しさん@ピンキー2013/12/18(水) 22:44:39.68ID:/ZaT3LfQ
夕乃さん
0533名無しさん@ピンキー2013/12/24(火) 22:53:37.34ID:XHPb3DV1
メリクリ銀子おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!
0535名無しさん@ピンキー2014/01/02(木) 17:24:43.80ID:qkUjFU9t
あけおめ銀子おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!
0536名無しさん@ピンキー2014/02/13(木) 20:24:44.23ID:YsVgs3BS
ルーシーにビキビキちんぽ扱かせたいよお
0538名無しさん@ピンキー2014/05/03(土) 18:21:36.11ID:GWhOak7f
夕乃
0539名無しさん@ピンキー2014/05/07(水) 23:00:06.96ID:nxybj3uq
ルーシー「紅さんですか?あの人ベッドの中では外道どころじゃないですよ?あんなもん悪鬼羅刹ですよ」
紫「嘘…じゃない…だと…」
銀子「…っ」
夕乃「」血涙
0540名無しさん@ピンキー2014/08/15(金) 17:09:38.93ID:2es6AMny
ぎ、銀子!
0541名無しさん@ピンキー2014/08/15(金) 21:42:44.41ID:Wd/mSyj6
紅の新刊or新装版キター!!
0542名無しさん@ピンキー2014/08/17(日) 15:49:48.00ID:aUQ1TCP8
キタアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!
0544名無しさん@ピンキー2014/10/31(金) 06:56:07.72ID:E72hBGZW
見られた!見られた!!見られた!!!
よりにもよってあの紅に!!
誰も来ないと思って服を着替えようとしたのが間違いだった
汗を吸った下着を取り替えようと、脱いだ所であの男が入ってくるとは!!!
あの男め……紫様が横にいるにもかかわらず、じっくりと私の裸を見おって……


……しかし…顔を赤くした奴の反応も…少し…可愛かったかな……
いや、何を考えている!!奴はあれでも紫様の婿になる男だ
一介の護衛である私がなにを考えているんだ
恥を知れ!!リン・チュンシン!!

……待てよ………
そもそもあの男は、九鳳院のご息女である紫様の婿としてふさわしい男だろうか……
家柄は勿論のこと、揉め事処理屋としての腕も未熟 ろくに蓄えもなく、まともな生活もしてなさそうだ
付け加えて紫様がいらっしゃるにもかかわらず、あの女関係のだらしなさ
あの男は本当に紫様を幸せにすることが出来るのだろうか

「……ふさわしくない」
自然と口から言葉がこぼれた。
あんな男が日本屈指の名家である九鳳院家にふさわしいわけがない
いや、それだけではない、あの男のことだ
たとえ、紫様と一緒になったとしても、他の女のところに構いにいくだろう
つまりそれは紫様を悲しませることになる 
そんなこと、絶対に許されない


そうと決まれば不本意ながら紫様の護衛はしばらくお休みさせていただいて、あの男の調kyもとい指導に取り掛からねば
もし万が一、そう万が一、奴が紫様にふさわしくなかった場合は……
しょうがないから、奴の面倒は私が見てやろう 
紫様、ご安心ください、あなた様の御身はこのリン・チェンシンが身命にかけてお守りいたします。

「あぁ、紅 今から少し用事があるから私が指定する場所に来るんだ……いいから、すぐ来い!!」
0545名無しさん@ピンキー2014/10/31(金) 06:58:38.55ID:E72hBGZW
新装版&新刊記念小ネタ
新装版でリンさん生き残ったりしないかな
0547名無しさん@ピンキー2014/11/01(土) 00:31:13.76ID:UoKsNv+k
ほう…

ちらっとしか見たことないがリンは漫画版と小説版でイメージが異なるな
漫画版は少女だが小説版は20歳ぐらいクールな人のイメージなんだな俺は
0550名無しさん@ピンキー2014/11/23(日) 20:29:21.35ID:8sN1LYyH
「どうしたの紅くん?遠慮しないで食べていいのよ?」
「………結構です。」

目の前に並べられている、とても豪勢で煌びやかな料理の数々。
駆け出しの揉め事処理屋である真九郎にとって、めったに口に出来ない品々だ。
そんな料理を間に挟んで真九郎と向かい合って座っている女性もまた、まず街中ではめったにお目にかかれない程の美女であると思う。
幼さを残した、しかし何処か妖艶な整った顔立ちに、艶やかな薄紫のパーティードレスに深く食いこんだスリット。
そのスリットから除く白磁のような素肌、なによりもキュっと締まった腰のくびれの上から強烈に自己主張している豊かな膨らみが女性のスタイルの良さを表していた。
豪華な料理に見目麗しい女性とのディナー。普通なら、これに心躍らない男はいないだろう。
実際、真九郎も彼女相手でなければ食事を楽しめたはずだ。

「切彦ちゃんは、無事なんですか?」
「こんな美人の前で、他の女のことを話すなんて無粋じゃない。」

彼女が悪宇商会 最高顧問 星噛絶奈でさえなければ
0551名無しさん@ピンキー2014/11/23(日) 20:30:08.20ID:8sN1LYyH
街中で、ルーシーに呼び止められたのは突然だった。
以前と同じように、馴れ馴れしそうに話しかけてくるルーシーを怪訝に思いながらも足を止めた。
たわいもない世間話から始まったが、要するに星噛絶奈が自分に話があるようなので、一緒に来て欲しいという。
会うつもりはありません、と横を通り過ぎようとしたが、まぁまぁ待ってください、と道を塞がれる。
それでも無視して行こうとすると、これに見覚えありませんか、とルーシーは懐からあるものを取り出した。

それは何の変哲も無いもの、ただのマフラー

しかし真九郎はそれに見覚えがあった。

「………切彦ちゃん?」
「詳しいことは星噛さんの所に着いたら、お話します。」

ルーシーは真九郎の反応に満足そうに微笑むと、そばに停車していた車のドアを開けた。
来てくれますよね、と笑いながらマフラーをくるくると指で回すルーシーを見て断るわけにはいかなかった。
言われるままに車に乗ると、突然のアイマスクによる目隠し。
抵抗しないでください、と言われ、そのまま数時間ほど車に揺られて、今に至る。
0552名無しさん@ピンキー2014/11/23(日) 20:31:15.36ID:8sN1LYyH
「それにしてもさっきから切彦切彦………いったい何のことかしら?」
「とぼけないでください、あなた達が切彦ちゃんに何かしたんでしょう!!」
「………あー、ルーシー、あんたそんな手使ったんだ。」

絶奈は一人納得したような表情を浮かべると部屋の隅で控えていたルーシーに声を掛けた。

「紅さん、安心してください。今回私達は切彦くんには何もしていませんから。」
「だって、そのマフラー………」
「マフラーなんて、幾らでも同じのがあるんだから。だめよ、紅くん、そんな簡単に騙されちゃ。」
「っ!?帰らせてもらいます。」

切彦ちゃんが無事なら用はない。席を立ち部屋から出て行こうとすると、扉の前にルーシーが立ちふさがった。

「どいてください。」
「帰ってもいいですが、ここは深〜い樹海のような森林地帯ですから、散々迷って餓死するのがオチだと思いますけどね。」

それでよけでば、どうぞ、と、ドアを開けられる。
ドアの外に見えるのは、どんよりとした薄暗い空と、うっそうと茂る森林。
一応外に出てみたが、見渡す限り民家も近くにはなさそうだ。

「………用件はなんですか?」

とりあえず、意地を張って餓死するよりは、話だけでも聞いてみることにする。

「そんなことより食事を楽しみましょうよ♪」

お腹空いてるんでしょ、と料理を差し出される。
確かに空いてはいる、ここ数日揉め事処理屋としての仕事はなく、昨日お昼を食べたのを最後に水しか口にしていない。
しかしだからといって、外道の情けを受ける筋合いはない。それに―――
0553名無しさん@ピンキー2014/11/23(日) 20:32:25.68ID:8sN1LYyH
「もしかして、毒が入ってると思ってる?」

いつまでたっても料理に手を付けようとしない真九郎の態度に、ようやく理由に辿りついたようだ。
なんといっても、あの星噛絶奈のこと、どんな罠を仕掛けてくるか分からない。
まして、彼女から差し出された料理など、怪しくて食べられたものではない。

「せっかく紅くんのために、頑張って用意したのになー、まっ、いいわ、本題に入りましょ♪」

彼女が合図すると、部屋の外で控えていたのか、数人の男達が並べられた料理を外に運び出すと、代わりにスーツケースをテーブルに上に置いていった。
怪訝に思う真九郎を余所に、絶奈が機嫌よさそうにスーツケースを開けると、そこには札束がぎっしりと敷き詰められていた。

「どう、紅くん?」
「……何の真似ですか?」
「これで君を買いたいのよ――ウチに来なよ。」
「……お断りします。」
「なぜかしら?キミはこの札束の一つでもあれば、今の惨めな生活から抜け出せるのよ?」
「……俺は金のために、揉め事処理屋をしているわけではありません。」
「じゃあ、なんのために?憧れの柔沢紅香のようになるため?だったら余計ウチに来た方がいいわね。はっきり言って、キミ、今のままじゃ一生うだつが上がらないわよ。」

彼女は真九郎に見せつけるように札束の一つを手に取ると、まるで嘲るような視線を向けた。
確かに彼女の言う通りかもしれない。ルーシー・メイにも言われたことだが、小さな仕事を幾らこなしても、たいした経験にはならないだろう。
数年後には路頭に迷っている―――幼馴染と話していた情景が脳裏に浮かんだ。 だが――

「俺は確かに紅香さんのように強くなりたいと思っています。あなたの言う通り、悪宇商会に入ることで、大きな経験を積めるようになるかもしれない。だけど――」

一呼吸を入れる。誘惑を断ち切るために、自らの意思を示すために。

「俺が欲しい強さは、あなたの会社で身につけることが出来る強さとは違うと思います。それに―――俺はあんたのことが大嫌いなんでね。」
0554名無しさん@ピンキー2014/11/23(日) 20:33:52.87ID:8sN1LYyH
「あぁ、そっかー 残念だな〜 まぁ最初から君の意思なんで、どうでもいいんだけどね♪」

こちらに入る意思が、ないと分かるや否や、表情は変わらないままも彼女から発せられる威圧感は倍増した。

(………戦うか。)

絶奈と戦うのは、キリングフロアーの一件以来だが、あの全てを蹂躙する、破壊的な力は変わっていないだろう、むしろ強くなっているかもしれない。
しかしこちらも、あれから自分なりに経験を積んで成長している。彼女に遅れをとる気はない、やってやる。
戦う覚悟を決め、相対する相手を睨みつける真九郎だったが、当の絶奈は、挑みかかろうとする真九郎の様子を見て取ると、急にプレッシャーを消した。

「何を勘違いしてるか分からないけど、私は別にキミとここでやり合う気はないわよ?」

この格好みれば分かるでしょ、と彼女はドレスの一端を摘んでみせる。
どうやら見たところ絶奈は、キリングフロアーの時に装着していた戦闘用の義手は付けてはいないようだ。
だからといって安心できるわけではないが、無駄な戦闘をしないで済むなら、こちらはその方がありがたい。

「俺への用事はそれだけですか。でしたら帰ります。」

確かに、外に出ても道に迷うかもしれないが、こいつらと一緒にいるのと比べたら、その方がマシだ。


「まぁ、待ちなさいよ。 私は会社のことを抜きにしても、君のこと気に入ってるんだ。」

そういいながら、絶奈は席を立つと、向かい側に座っている真九郎の席にまで、近づいてきた。
0555名無しさん@ピンキー2014/11/23(日) 20:34:58.73ID:8sN1LYyH
「何を言ってるんですか。」
「……こういうことよ。」

そう言うと絶奈は、真九郎の頭の後ろに素早く手を回すと、ぎゅっと引き寄せ自らの胸に押し付けてきた。

「なっ!?」

人工物で出来ているとは思えないほどの柔らかい感触が、真九郎の頭部を包んでいた。
あまりにも柔らかく、そして温かい。

「どうかしら、紅くん、結構これには自信あるんだけど。」
「っ!?離せっ!!」

突然の行動に固まる真九郎だったが、すぐに我に返ると、力づくで振りほどいた。

「……そんな嫌がらなくてもいいのに。まったく傷つくわね。」
「いったい何の真似だ!!」
「まっ、いいからいいから、そろそろ効いてくる頃だと思うしね。」
「何を言って……!?」

絶奈の思わぬ行動に席を立とうとした真九郎だったが、今になって両足の感覚がおかしいことに気付いた。
足がガタガタと震える。立ち上がろうとしても、どうしても足に力が入らない。気づくといつのまにか手も震えてきている。
自分の身体の異常に戸惑う真九郎を見て、絶奈はさも面白い物を見るようにこちらを見ていた。

「………何をした?」
「紅くん、薬っていうのはね、別に口から入るものだけじゃないのよ。その気になれば空気混ぜて、呼吸で取り込ませることも出来るんだから。」

空気。真九郎は今になって部屋の隅に置いてある加湿器のような機械に気付いた。

「………ちくしょう。」

勉強になったでしょ、というふうな絶奈の様子を他所に、自分の迂闊さに歯噛みする真九郎だったが、身体が動かないのではどうにもならない。
嘲るように、こちらを見る絶奈を睨み付けながら真九郎の意識はそこで途絶えた。
0556名無しさん@ピンキー2014/11/23(日) 20:36:22.94ID:8sN1LYyH
「……ここは?」

真九郎が次に目を覚ました時には、先ほどの部屋とは違い、薄暗いの部屋でベッドの上で寝かされていた。
辺りを見回すと、周りには誰もおらず、さっきのことは夢なのかと思ったが、起き上ろうとしたときに自分の腕を拘束している鎖に気付き、夢ではなかったと思い直した。
どうにかして脱出しなければと思ったが、まだ身体の痺れもとれていないようだ。戦鬼の力も使えそうにない。
それに何故か先ほどから身体が熱くて、どうしようもない。頭もズキズキするし、何より下半身が疼いてたまらない。
(……痺れ薬以外にも何か入っていたのか?)
自らの身体の状態に戸惑う真九郎であったが、今はとにかくこの状況をどうにかしなければ……。


「紅くん、起きたー?」

真九郎が起きるのを見計らったのか、それとも偶然か、先ほどと変わらぬ姿で絶奈が部屋に入ってきた。
違うところと言えば、ルーシーが付いてきてないことぐらいか。

「ハロー、気分はどうかしら。」
「……俺をこれからどうする気だ?」

先ほどの絶奈の行為といい、絶奈の目的が分からない。自分を一体どうする気なのか。

「もう一度聞くけど、どうしてもうちに来る気はないのね?」
「絶対嫌だ。」
「………じゃあ、しょうがないわね。」

そう言うと、絶奈は自らのドレスに手を掛けると、一気に上半身をはだけさせた。

「えっ!?」
「どうかしら、私の身体は?」

シミひとつない美しい素肌。引き締まったくびれの上に存在する豊かな美乳。その頂にある赤い可憐な蕾。
ろくに女性経験のない真九郎には、目の前にある美しくも妖艶な裸体から目を離すことが出来なかった。
0557名無しさん@ピンキー2014/11/24(月) 04:28:03.91ID:xDnAM/4n
「ふふ、まったくこれだけ大きいと結構肩こるのよね〜。」

真九郎の視線に気づいているのか、見せつけるように乳房を両手で持ち上げてくる。
彼女の手の動きに合わせて、ぐにゅりぐにゅりと形を変える絶奈の美乳に釘付けになっていた真九郎だったが、ニヤニヤとした絶奈の視線に気づくと慌てて視線を逸らした。

「……吐き気がする。」
「まったく素直じゃないわね、でもここは正直みたいよ。」

絶奈は真九郎が拘束されているベッドに近づき腰を下ろすと、ズボン越しに軽く真九郎のモノを撫でた。

「くっ………。」

突然下半身から伝わった快感に思わず声が漏れてしまう。

「なんだ、ロリコンだと思ってたけど、しっかり反応してるわね♪」

真九郎の反応に満足しながら、そのままズボンを脱がせると、今度は下着越しに真九郎のモノを優しく撫で上げる。

「ピクピクしていて可愛いw。いったい私にどうして欲しいのかしら?」
「………黙れ。」
「ふふふ、そんな切なそうな顔して凄んでも、なんの意味もないわよ。」

反応してたまるかと我慢する真九郎であったが、強弱をつけ絶妙な力加減で擦りあげられることで、真九郎のモノはいつのまにか固く勃起していた。

「あら〜ご立派ね、さすが崩月の戦鬼というところかしら。」
「ふっ……くっ…あっ。」

真九郎のモノが勃起したのを確認すると、絶奈はいったん手を止め、真九郎を見る。

「本当は、もうこっちを可愛がってあげてもいいんだけど、やっぱりエッチするなら、これをしないとね。」

真九郎のモノから手を離すと、両手で真九郎の後頭部をがっちりと固定し、ゆっくりと顔を近づけてきた。
ぼんやりとする頭でも絶奈が何をしようとしているのか、直感的に理解できた。

(嫌だ!!したくない!!)

必死に頭を振って抵抗しようとするが、両頬を両手でがっちりと押さえつけされており、それも叶わない。
0558名無しさん@ピンキー2014/11/24(月) 04:30:41.67ID:xDnAM/4n
抵抗もむなしく、絶奈の唇がついに真九郎のそれと合される。
柔らかく弾力のある唇。その口内から漂ってくる甘い香りが、真九郎の意識を曖昧にさせた。
最初はペロペロと舐め、その後啄むように真九郎の唇を味わっていた絶奈だったが、次第に口内に侵入しようと舌で唇をこじ開けようとしてきた。
しかし、それだけは断固阻止しようと、真九郎は必死で唇を閉じる。

「ちょっと紅くん、口開けなさいよ。」
「………」

だんまりとした真九郎の態度に面白くないというふうに顔を歪ませた絶奈だったが、なにか思いついたのか、すぐニヤリと表情を変えた。

「へぇ〜、あくまでも抵抗する気なんだ。別にいいわ、こうするだけだし。」

絶奈は真九郎の頭を固定していた片手を外すと、真九郎の顎をがっしりと掴み、まるで万力のような力で締め上げてきた。

「……かっ…はっ!?」

あまりの握力に真九郎が我慢できずに、口を開けると、すかさず絶奈の舌が侵入してきた。
絶奈の舌が蛇のように口内を蹂躙する。無理やり、舌と舌を絡み合わされ、唾液を飲まされる。

(………なんだよこれ。)

口内を無理やり味わわれ、嫌なはずなのに自分のモノは、なぜか益々固くなっている。
自分の身体はどうしてしまったのだろうか。

「……ぷはっ……ふふ、どうしたの?だんだん固くなってきているみたいだけど。」
「………うるさい。」
「まぁ、いいわ。次はこっちね。」

真九郎の口から唇を離すと、絶奈は片手で乳房を持ち上げ、真九郎の口に押し付けてきた。

「吸いなさい。分かってると思うけど、もし噛んだりなんかしたら、コレ、握り潰しちゃうから♪」

いつのまにか下着を脱がされ、露わになっていた真九郎のモノををニギニギとしながら覗き込んでくる。
潰されてはたまらないと、言われるままに真九郎は乳房へと吸い付いた。

(………これは!?)

絶奈の乳首に口をつけた途端、先端から甘い香りとともに生暖かい液体が溢れてきた。

「気づいたかしら。今日は紅君のために特別仕様のおっぱいだから、好きなだけ楽しんでいいわよ。」

流れ出てきた液体を口の中に含むと、まるで今まで飲んだことがないような、まろやかで旨味のある極上のミルクを味わっている感覚に陥った。
自分には母乳を飲んでいたころの記憶は無いが、いくらなんでも甘すぎる気がする。それに飲むにつれて、どんどん頭がぼんやりとしてきた。
きっとこれにもナニカが入っているのだろう。早く吐き出してしまわなくては。
だが顔全体を包むように伝わるおっぱいの柔らかで温かい感触。口の中でコリコリと固くなってくる乳首。その先端からあふれ出てくる温かく甘い母乳。
全ての誘惑が自分の自制心を壊してくる。だめなのは分かっているが、もっと飲みたい。

「うんっ、いいわっ、紅くん、もっと強く吸って。」

絶奈の言葉を聞いているのか、聞いていないのか、最初はたどたどしく吸い付いていた真九郎だったが、いつのまにかおっぱいを吸うのに夢中になっていた。
先ほどまで真九郎の後頭部を拘束していた絶奈の手は、いつのまにか慈しむように真九郎の頭を優しく撫でていた。
撫でられていることに気づき、真九郎が顔を上げると、ちょうど絶奈と目が合った。
0559名無しさん@ピンキー2014/11/24(月) 04:33:06.12ID:xDnAM/4n
「我慢しなくていいのよ。紅君。好きなだけ甘えなさい。今まで誰にも甘えれなかったんだものね。辛かったよね。」

傍若無人、くされ外道の代名詞である普段の星噛絶奈からは、考えられないほどの優しく慈愛に満ちた声と表情である。
きっとこれも自分を陥落させるための演技なのだろうが、今はどうでもいい、もっと甘えたい。
自分はいったい何をしているのだろうか。まるで赤ん坊のようにおっぱいに吸い付いて。
でも、なんだろう。この懐かしい感触は。ずっと昔にこうされていたような。

「………お母さん。」
「はっ?」

……しまった。何を言ってるんだ。絶奈の方を見ると驚いたように目を丸くしている。
自分でも言って驚いた。こんな奴が自分の母親であるわけがない。似ても似つかない。
なのに…なのに…なぜもっと撫でてほしいと思うのだろう。

「………ぷっ、あははははwwそうでちゅよ、真九郎ちゃん、絶奈ママがもっと気持ちよくしてあげまちゅからね〜。」

片手で真九郎の頭を優しく撫で続けながら、もう片方で真九郎のモノを直接扱きはじめた。
モノの感触を確かめるように、クニクニと親指で亀頭を刺激し、裏筋を手の平で擦りあわせる。
度重なる刺激に真九郎のモノは一段と固く反り返った。

「ママのおっぱいを吸いながら、こんなに固くしちゃうなんて、悪い子でちゅね、真九郎ちゃんは〜」

真九郎の抵抗せずに受け入れている様子に対して、絶奈は小馬鹿にしたような視線を送った。
あからさまに馬鹿にされている。ただあまり気にならない。今はこの快感に溺れていたい。
最初は真九郎のモノの感触を確かめるような手つきも、今は絶頂に導こうというふうに、巧みにそして激しくなっていた。
亀頭からは我慢汁が溢れ、真九郎も限界に近づいていた。もう出てしまう。
0560名無しさん@ピンキー2014/11/24(月) 04:34:19.43ID:xDnAM/4n
「……はい、おしまい。」
「えっ!?」

いまにも真九郎がイキそうになる寸前で、急に扱く手を止められた。
快楽の渦にのまれていた真九郎は突然の快感の消失に、唖然する。
どうしてやめてしまうんだろう、もう少しでイケそうだったのに……

「そんな、残念そうな顔しないの……もっと気持ちいいことしてあげるから。」

絶奈は一度真九郎の寝ているベッドから降りると、近くに置いてあったボトルを開け、中に入っていたネバネバした液体を胸に塗りたくった。

「紅くんは、これが気になるみたいね。」
「………」

先ほど、真九郎が吸い付いていた乳房は、唾液と流れ出た母乳、そしてローションでテカテカといやらしく光っている。
そのまま絶奈は大の字に仰向けになっている真九郎の股の間に移動し身体を横にすると、真九郎のモノにふくよかな膨らみをぎゅっと押し付けた。

「君がある条件を呑んでくれたら、このヌルヌルしたムチムチおっぱいで、いくらでも挟んであげてもいいんだけどな〜。」
「………条件って?」

なんでもいい、早く気持ちよくしてもらいたい。気持ちよくしてくれるなら、何でもする。

「そうね〜挟んで欲しいんだったら、こう言ってもらえるかしら。『私こと紅真九郎は、悪宇商会最高顧問である星噛絶奈様に、永遠の忠誠と服従を誓います。』あぁ、ついでに愛も誓ってもらおうかしらね。」
「っ!?………だ、だめだ、それは出来ない……」

絶奈からのとんでもない提案に、どっぷりと快楽に飲まれていた意識が多少引き戻された。
紅真九郎は、どんなに情けなくても、どんなに頼りなくても揉め事処理屋なのだ。そんな提案に乗るわけにはいかない。

「………いいわよ、別に誓ってくれなくても。ただ、こうやってずっと焦らし続けるだけだから。」

絶奈は真九郎の迷いを察知したのか、挑発するように勃起した乳首の先端を、固く反り返った竿の裏筋にスリスリと擦りつけてきた。
押し付けられたコリコリとした乳首の感触が、真九郎の神経を直に刺激する。

「……くっ……うっ……」

それだけのことで、思わず射精しそうになる真九郎だったが、イキそうになると、絶奈は敏感にそれを感じて、イク寸前で止められる。
イキたいのに、イケない。与えられ続ける生き地獄のような快感の連続に、真九郎の決意は揺らいだ。
ちくしょう、もうイキたい。いや、だめだ。自分は揉め事処理屋なのだ。それに皆を裏切るわけにはいかない。でも出したい、出してしまいたい。
0561名無しさん@ピンキー2014/11/24(月) 04:35:31.23ID:xDnAM/4n
「いいのかな〜、もし君がさっきのことを誓ってくれるなら、このおっぱいを好きな時に好きなようにしてくれてもいいんだけどな〜」

目の前で真九郎を誘惑するように絶奈の巨乳がたぷたぷと揺れる。あの大きく柔らかいおっぱいに包まれたら、どんなに気持ちいいだろう。
頭の中では駄目だと分かっているのに、もう一度あのおっぱいを味わいたい。むしゃぶりつきたい、勃起した乳首を転がしたい、甘えさせてほしい、挟んでほしい、そして自らの欲望を吐き出してしまいたい。
自分にとって大切な人達の姿が脳裏に浮かんだが、それを押し流すように抗いきれない欲望が止めどなく、溢れてくる。………もう我慢できない。

「…………い…か……せて」
「えー、聞こえないわね〜。もっと大きな声で言ってもらえるかしら?」
「お願いだからイカせてください!!」
「……じゃあ、さっきの言葉を言ってもらえるかしら。」
「………紅真九郎は星噛絶奈様に、永遠の忠誠と服従と愛を誓います。だからっ、お願いしますっ!!イカせてください!!」

屈してしまった。紅真九郎は星噛絶奈に屈してしまった。もう後戻りはできない。

「は〜い、よく正直に言えました。じゃあ、たっぷりイッちゃいなさい、紅くん。」

絶奈は待ってましたとばかりに勢いよく胸で真九郎のモノを挟み込んだ。

(…す、すごい……柔らかい。)

あまりにも凶悪的な柔らかさ。挟まれているだけで達してしまいろうになる。
「ふふ、紅くん、もうイキそうなの。でも、ダメよ、もっと楽しまないと。」
絶奈はそのまま真九郎のモノを強く挟み込むと、そのまま上下にズリズリと擦りあげた。
(……やばい、気持ちよすぎる。)
上下左右からくるムチムチとしたおっぱいの感触に、頭がおかしくなりそうだ。
更に、絶奈はおっぱいから飛び出た真九郎のモノに口を寄せると、ペロペロと舐めだした。
亀頭に与えられるザラザラとした舌の感触と、竿に与えられる温かく弾力を伴った柔らかい刺激に、もう限界だった。

「………イキそうなのね、じゃあ、これで、イッちゃいなさい!!」

真九郎の限界を感じた絶奈は、両手でおっぱいを中央に寄せると、真九郎のモノをぎゅっと圧迫した。
それがとどめとなったのか、絶奈のヌルヌルとした谷間に、勢いよく射精してしまった。
射精した後も絶奈は更に搾り取ろうと圧迫してくる。
そのまま二度、三度射精してから、ようやく絶奈の胸から解放された。

「うわ〜、いっぱい出たわね……私のおっぱい、ドロドロじゃない。そんなに、気持ちよかった?」

絶奈は自分の胸を汚した精液を、手で弄りながら、真九郎に声を掛けたが、真九郎はそれどころではなかった。
絶奈のふくよかな谷間に射精してしまったのと同時に、自分の中で積み上げてきた大切なものがガラガラと音を起てて、崩れていくように感じた。
脳裏に浮かんでいた皆の姿が、まるで虫に喰われるように、どんどん消えていく。もう自分はダメになってしまった。

「じゃあ、これからよろしくね、紅真九郎くん♪」
「………はい。」

その後の事は、よく覚えていない。自分を拘束していた鎖も外されたが、なぜか逃げる気は起きなかった。
「キミだけ気持ちよくならないでよ」とか「キミは特別だから、コッチを使わせてあげる。」とか聞こえたような気もするが、もうどうでもいい。
ただ自分が、どうしようもないところまで堕ちきってしまったということだけは分かった。
0562名無しさん@ピンキー2014/11/24(月) 04:37:12.53ID:xDnAM/4n
数年後


「……嘘だろう。真九郎」
「…………バカ」
「そんな、こんなことありえません、真九郎さん!!」




「なんか煩い子達が騒いでるわね。ね〜『ダーリン』」
「………あぁ」
「ダーリンに会いに来たみたいだけど、鬱陶しいから、さっさと片付けちゃいましょうか?」
「…………あぁ」
「じゃあ、いきましょう、『星噛製陸戦壱式百四号』」
「……星噛製陸戦壱式百五号」
「星噛絶奈!!」「星噛真九郎。」





星噛家 婿入りEND
0564名無しさん@ピンキー2014/12/19(金) 00:15:43.66ID:gmBhUeMT
0567名無しさん@ピンキー2014/12/26(金) 00:52:41.19ID:ey5753Ev
「お久しぶりです。紅さん。」

「君は……」

「おぉ、覚えててくれましたか!そうです。魅空です。」

「どうしてここに?たしかイギリスの警察に捕まったんじゃ……」

「あちらでも私への対応に苦慮したみたいで、とりあえず仮釈放ということになっています。」

「(おいおい、大丈夫か、あっちの警察)それでいったい何の用なの?」

「はい、今から私と一緒にイギリスの実家まで来てください。」

「……はっ!?」

「釈放されてから一応実家に戻ったんですけど、そこで今回の件について説明させられたんです。そしたら両親達も紅さんに興味を持ったみたいで、一度連れてきてみなさいということなんです。」

「えっ、ちょっと待って。君どういうふうに説明したの?」

「どういうふうにって、「私のお婿さん候補を見つけました」って言ったんですけど?」

「おかしいよね、もっと説明すべきことがあるよね!!」

「イギリスへの旅費は私が出しますので気にしなくて大丈夫ですよ。紅さんはきちんと身なりさえ整えてもらえれば結構です。あと両親への挨拶の内容も考えておいてください。こういうのは最初が肝心だと思うので。」

「いやいやいや、勝手に話を進められたら困るんだけど。俺は君と一緒に行く気はないから。」

「なぜですか?納得できる理由を説明してください。」

「なぜって……だって、あんな事あったのに俺が行くと思う?」
0568名無しさん@ピンキー2014/12/26(金) 00:54:01.68ID:ey5753Ev
「あんな事って、私が人を殺したことですか?あなたが師事している柔沢紅香やあなたが手を組んでた星噛絶奈は、私に負けず劣らず人を殺してますよ?なのに、あなたは彼女たちと親しくしている。それっておかしいですよね?」

「えっ…それは…事情があって……」

「事情があったら人を殺しても良いということですか?ではその事情を説明してください。」

「(不味い。このままじゃ、言いくるめられるな……よし…)魅空ちゃん、ごめん。実は言うと俺、いま付き合っている人がいるんだ。」

「えっ、そうなんですか?」

「(嘘だけど…)うん、そうなんだ。だから君とは一緒に行けない。」

「………そうなんですか。ちなみに、その人とはもう一線を超えたんですか?」

「えっ!?いや、まだだけど。でも、大切な人なんだ。」

「……分かりました。」

「分かってくれ「では私とセックスしましょう」………はっ!?」

「ここの近くにはお洒落なホテルもありますし、よろしければ紅さんの部屋でも、私のマンションでもいいですよ。」

「君、俺の話ちゃんと聞いてた?」

「はい、話は分かりました。でも一線は超えてないんですよね?それでしたら裸を見られた私に優先権があるはずです。」

「いや、それはおかしい、というか裸を見たのは君が誘ったから……」

「確かに私が誘いましたけど、強制はしませんでしたよね。紅さんには選択権があったはずです。そしてあなたは私の裸を見ることを選んだ。でしたら紅さんにも責任はあるはずです。」

「まぁ、確かにそうだけど……というか君は良いの、そんな簡単に決めちゃって?」

「実家にいる母がよく言ってます。男女関係の問題の大半はお金かセックスで解決できるって……。だから紅さんとこうなるのも、しょうがないですよね。」

「(……だめだ、話が全く通じない…とりあえず逃げよう。)魅空ちゃん、ごめん、ちょっと用事を思い出したから、俺、帰…ら……し………」

「あっ、紅さん。言い忘れていたんですけど、私と一緒にサンダーボルトも釈放されたんです。………もう聞こえてないみたいですね。では、行きましょうか紅さん。あなたが天寿を全うできるように、ずっと大切にしてあげますから。」
0571名無しさん@ピンキー2015/01/06(火) 22:16:13.24ID:lOdmHG1l
乙 本を読んでからと思ってたら遅くなった
0575名無しさん@ピンキー2015/01/24(土) 05:42:39.89ID:mR0r0wIw
「……私の負けです。紅さん」

「…………」

「……紅さんが、こんなに強いとは思いませんでした」

「…………」

「……約束なので、仕方ないです。紅さんの彼女になってあげます」

「…………」

「……では、さっそくデートに「切彦ちゃん」………何ですか?」

「切彦ちゃん、わざと負けなかった?」

「……気のせいです」

「いや、明らかに手を抜いてたよね。……最後とか自分でナイフ放り投げてたし」

「……気のせいです」

「じゃあ、なんで決闘するのに、いつものホットパンツじゃなくて、そんなヒラヒラなスカート着てるの?」

「……偶然いつものが洗濯中で」

「………ここがラブホテル街の裏路地なのも偶然?」

「……偶然です」

「そんな偶然って…………切彦ちゃん、なんでナイフを持つの?」

「……ごちゃごちゃ、うるせえな。………なぁ、紅の兄さん、大人しく俺と付き合うか、ここでコマ切れにされるか、どっちが好みだ?」

「………これからよろしく、切彦ちゃん」

「……こちらこそ、紅さん」
0578名無しさん@ピンキー2015/01/25(日) 09:38:49.03ID:KkIcAcnA
>>576

勝敗の結果が舎弟か彼女かだから、いづれにせよ殺す気はないっぽいんだよな
何気に夕乃も軽い感じで戦鬼化してるし…作者の仕切り直しは嬉しいんだが
良くも悪くもぬるくなった感は否めなくなって来たな
0579名無しさん@ピンキー2015/01/25(日) 17:37:37.88ID:CbAkgO5e
確かに、まぁ毒は薄れた気がする
ただ漫画版から入る新規読者も多いやろうから、ある程度はしゃあない気もする
0580名無しさん@ピンキー2015/01/25(日) 17:40:55.43ID:95l21+Ye
久々に電波読んだらビックリした
鼻垂れ小僧時代だったから全く内容理解してなかったんだろうなぁ
0582名無しさん@ピンキー2015/01/26(月) 17:01:34.50ID:NnCHKo1U
ダッシュXの中でもダントツで紅が良かったと思うけど
俺の主観だからなんとも言えんがな
0583名無しさん@ピンキー2015/01/26(月) 17:28:53.74ID:ig0xX81V
>582
俺も良いと思うけど、そういう周囲の反応はさて置いて作者本人がなぁ
巻末文を読む限り、続巻に言及してないのが気にかかるところだよ
0584名無しさん@ピンキー2015/01/26(月) 17:34:40.11ID:NnCHKo1U
>>583
そう受け取ったか
俺としてはいつも通りだから何年も開けてたことは水に流してね、的なモノを感じ取ったが
0586名無しさん@ピンキー2015/02/01(日) 05:05:21.38ID:Y8r408ra
「新刊!」
このスレを数年ぶりに開いた私は驚愕した。

何軒か本屋を回ったが見つからない。
やっと見つけたとき、隣に並ぶ数冊のタイトルを見たとき、2度目の驚きが私を貫いた。
「新装版だと・・・」

長き空白期を経ても未だに支持する人々の熱い情熱と出版社の激甚なる労苦、何よりも不屈の闘志をもって執筆活動を続ける片山師に思いを馳せたとき、店員の不審気なまなざしを受けつつも、瞼を押し上げる熱いものを堪えながら天井を見上げて、店頭でしばし立ち尽くしていた。



読み終えた。



   ・・・・・・ロリコン




出版を巡る大人の諸事情を思うと、関係各所への深い同情を禁じ得ない。
(その程度のことで世間の目をごまかせるとは思えないよねぇ)


P.S.
今はテロとか大量XXだの連続云々の方がやばいんだろうなぁ。
中部地方の女子大生の蔵書にあったりして。
0587名無しさん@ピンキー2015/02/13(金) 21:34:39.92ID:sswsPriU
乙!
0588名無しさん@ピンキー2015/02/14(土) 01:14:45.35ID:8QdG8yue
0589名無しさん@ピンキー2015/02/18(水) 01:16:13.80ID:iOzqqFs3
本当だ、すんごい長寿スレなのね
歴史と時間の流れを感じるわ
0591名無しさん@ピンキー2015/03/26(木) 05:16:37.25ID:9/jhmP4C
最近ようやく片山が書いて新刊出たんだっけ?
0592名無しさん@ピンキー2015/05/10(日) 01:25:33.06ID:XOCQ2ktg
夢を見た。
未来の夢。
五月雨荘五号室、真九郎に寄り添うように座っている紫。
今より幼さの抜けた美しい女の顔。
だが、まっすぐな瞳は今と変わらない。
長い黒髪はそのまま、
しかし姿は幼い少女のそれではなく、手足の伸びきった若い娘。
少しふくらんだ胸と、しなやかな身体を白いワンピースに包んでいる。
紫は真九郎に微笑みかけ、その白い手を真九郎の顔へと伸ばす。
真九郎の好きな紫の甘い匂いが艶やかに立ち上った。

目を覚ました真九郎は夢の意味を考える間もなく、
枕元に夢の中で嗅いだのと同じ匂いと、よく知った気配を感じた。
いや、気が付いたから目を覚ましたのか。
「紫?」
気配は答えない。
「どうしたんだこんな時間に」
まだ夜中近いはずだ。
「なあ」
真九郎が布団から起き上がろうとすると、
突然跳びついてきた紫に押し倒された。
「…プレゼントはしかと受け取ったぞ」
真九郎の首っ玉にかじりついた紫は囁いた。

その日は紫の誕生日であった。
紫は真九郎と過ごすつもりであったが、
九鳳院の屋敷で盛大なパーティーが開かれ、
主賓である紫は抜け出すことができなかったのだ。
真九郎も九鳳院と確執がないわけではなく、出席するわけにはいかなかった。
誕生日プレゼントに露店で見つけた小さな指輪を用意していたのだが、
結局真九郎は騎馬に紫へのプレゼントを預けるだけで退散してきたのだった。
0593名無しさん@ピンキー2015/05/10(日) 01:26:39.16ID:XOCQ2ktg
「なあ、どうしたんだ」
「嬉しかった。嬉しかったのだ」
「指輪か」
真九郎は状況の認識ができていないながらも、
嬉しかったと泣きそうになりながら繰り返す紫が愛おしく、
小さな背中に腕を回した。
「私は紅紫でいいぞ」
「へ?」
「九鳳院は兄様が継ぐ。真九郎が九鳳院に入る必要はないぞ」
「……へ?」
「もちろん。入ってくれるというのなら私はそれでもかまわん。
お父様は私が説き伏せる」
真九郎はゆっくりと紫を引き離し、顔を覗き込む。
「なあ、紫。お前何の話を」
「ん?指輪だ」
「はあ」
「真九郎が私に結婚を申し込んだ話だ」
邪気のない満面の笑み。
「……」
「違うのか?」
途端に泣き出しそうな顔に。
百面相に動揺しながら真九郎は必死に状況の理解に努める。
つまり指輪を贈ったことで紫はプロポーズを受けたと勘違いをしたのだ。
「あのな、紫…」
真九郎の表情から紫は真実を悟ったらしい。
「私が悪かった。忘れてほしい。どうも勘違いをしてしまったようだ」
目を伏せる紫は、痛ましくさえ見える。
「私は真九郎に迷惑をかけてしまったな。すまなかった。…おやすみ」
紫は立ち上がり、部屋を出ようとする。
「紫、どうやってここまで来たんだ」
真九郎は布団から呼び止める。
他にどうすればいいかなんて真九郎には分からなかった。
「騎馬に…送ってもらったのだ。環が初夜は二人で寝るのだと教えてくれたから…それで…」
「下まで送るよ」
布団から這いだし紫を追う。
真九郎は何も言えずに紫の横を歩く。
紫も黙って下を向いたまま階段を下りる。
真九郎はプレゼントの選択を銀子や夕乃に相談しなかったことをひたすらに後悔していた。
0594名無しさん@ピンキー2015/05/10(日) 01:27:30.71ID:XOCQ2ktg
騎馬はいなかった。
五月雨荘の前の通りには野良猫が一匹座っているだけ。
部屋に戻り電話をかけるがつながらない。
「紫、泊まって…いくか?」
幸い今日は土曜日、翌日に学校はない。
紫は黙って小さくうなずいた。

来客用の布団を自分の布団の隣に敷きながら真九郎は初めて
紫の左手の薬指にはまった指輪に気が付いた。
紫色の小さなガラス玉でかたどられた花の飾られた指輪。
真九郎の小指にさえはまらないような小さな指輪。
真九郎の視線に気が付いた紫は慌てて指輪をはずそうとするが、
指が滑るらしくなかなか抜けないらしい。
焦って、涙目になって指輪を引っ張る紫を真九郎は思わず抱きしめた。
「ごめんな、紫。ごめんな」
「違う。真九郎は悪くない。私が勘違いをして勝手に浮かれていたのだ」
「ごめん」
「私が悪いのだ」
「…俺は紫が大事だ」
「うん」
「紫が必要だ」
「うん。それだけでいい。私も真九郎が大事で、真九郎が必要だぞ」
涙目の少女は微笑んで言った。
真九郎の頭は真っ白になる。
大きく息を吸い込む。
状況に流されてはいないか、冷静でないのではないか。
しかし、真九郎の中に昂った熱が退くことはない。
冷静でないからなんだというんだ。
分かっていたはずだ。
自分にとって誰より何より大切なのはずっと一人だった。
真九郎には世界が滅ぶとしても優先しなくてはならない存在がいた。
分かっていたはずだ。
相手は小学生で大財閥の令嬢で誰からも愛される美少女。
かたや自分は未熟な甲斐性なし。
彼女の未来を潰していいはずがないのに。
それでも真九郎の欲望は止まらない。
生きるために紫を求める。
「紫、その指輪外さないでいてくれるか」
紫は潤んだ瞳を見開く。
「うんっ」
真九郎は紫をかき抱き、二人は唇を重ねた。
0595名無しさん@ピンキー2015/05/10(日) 01:28:19.77ID:XOCQ2ktg
真九郎の年相応の激しい欲求は彼に紫をまさしく貪らせた。
幼い紫は息が続かず、一瞬二人の唇が離れると舌を垂らして喘ぐ。
だが、真九郎の左手が紫の後ろ髪を掻き揚げるように差し込まれ、
小さな後頭部を五本の指でつかむと、紫は下腹部がふわりと浮きあがるような感覚に、
無心で下半身を真九郎にこすり付けた。

紫の上に覆いかぶさっていた真九郎は上半身を起こし、
荒々しく紫の寝間着を脱がし始めた。
普段から着替えを手伝っているためか、意外と手早い。
自らの寝間着も脱ぎ捨ててしまう。
紫は真九郎の一物の初めて見る屹立した姿に
驚きと好奇と期待を併せ持った熱視線を送った。



翌朝、紅香からの電話で、まさか本当にやるとは思わなかったと、
半ば呆れられながら冷やかされ、真九郎は昨晩、騎馬が消えた理由に思い当り、頭を抱えた。
闇絵や環も気が付いているのかもしれない。何しろボロアパート、壁は薄い。
それなら銀子や夕乃が知るのも時間の問題だ。真九郎はさらに頭を抱える。
だが、いまだ布団の中で静かな寝息を立てる少女の笑みを見ていると全てがうまくいくような気がした。
十年後も二十年後もこうして彼女の幸せそうな寝顔を見ることができる予感がしたのだった。
0597名無しさん@ピンキー2015/05/13(水) 16:50:43.30ID:08t3KTXv
山本ヤマトはすっかりセラフに馴染んだなあ
片山がさっさと新刊出ねえからだぞ
0598名無しさん@ピンキー2015/07/31(金) 10:57:10.85ID:L01QoYoL
絶奈の同人誌が出て欲しいな。久々にこの人の絵見た

ttps://pbs.twimg.com/media/CLEb1sGUYAEiEM2.jpg:large
0599sage2015/08/27(木) 00:25:22.22ID:3rHMwS8Y
今更だろうが乙
0600名無しさん@ピンキー2016/01/23(土) 15:39:40.08ID:VwaTu39b
結局、一年待っても出なかったな
0601名無しさん@ピンキー2016/03/03(木) 09:31:37.92ID:sPCUsvqs
全く・・・・・・
0605名無しさん@ピンキー2016/10/21(金) 23:48:09.81ID:X3kHExaA
rodでさえ出たのに
0606名無しさん@ピンキー2016/10/25(火) 22:27:14.45ID:HyeWxnIc
みんなどうしたんだよ?ここはエロパロスレなんだろ?もっと弾けようぜ?
0607名無しさん@ピンキー2016/10/26(水) 13:39:18.97ID:lJq2OAkr
原作が出ないからだろ!あげ
0608名無しさん@ピンキー2016/10/26(水) 23:15:23.04ID:gJgv6h30
 これは、真九郎以外の五月雨荘の住人が所用で出払っている時のお話。
 環は空手の全国大会の出場者として、闇絵は旅に、紫は九鳳院での職務を
全うするために日本各地へと飛び立っていた。

「真九郎さん。真九郎さん」

 肌寒い秋の朝、真九郎の耳に優しい声が雨のようにしみこむ。

「もう、仕方がないんだから」

 ほほえみを浮かべた崩月夕乃は、未だに眠りこける世界で一番大切な
弟分の布団の中に躊躇いもなく、その身体を滑り込ませる。
 現在六時二十分。真九郎の起床時間は午前七時ジャストである。
 
「よいしょっと...」

 自分とは逆の方向に寝返りを打とうとした真九郎の身体をころりと
自分の向きへと転がし直した夕乃は、自分の胸を押さえ込む窮屈な
制服のボタンを全て空け、その柔らかな胸に真九郎の頭を抱え込んだ。

「んぅ〜...むにゃむにゃ...」

「か、可愛い...///」

 明日の命さえ危うい裏社会の荒浪に揉まれながらも、真九郎も自分も
奇跡的に今日まで生きてこられた。
 九鳳院の一人娘から端を発した最近の出来事はより大きなうねりを伴い、
かつての兄弟子との再会からの悪宇商会との小競り合いを経て、真九郎は
より強くなった。
 だけどその分、危うくなったとも夕乃は思う。
0609名無しさん@ピンキー2016/10/26(水) 23:16:01.76ID:gJgv6h30
「真九郎さん真九郎さん。ああ、真九郎さん」

 そう、真九郎の命は勿論だが、自分が真九郎を想う気持ちに歯止めがかけられない。
 真九郎の全てが愛おしく、夕乃の全てを知ったその上で自分と一生を添い遂げて欲しい。
 鉄火場を潜り抜ける度に凜々しく、激しさを増す少年の輝きに夕乃は既に骨抜き、
いや、メロメロになっていた。

「んー...なんだ、これ?」 

 強く抱きしめた頭の圧迫感に違和感を覚えた真九郎が目を覚ましかける。
 無論、自分の許可なく起きるなんてことを夕乃が許すわけもなく...
 
「んっ...はむっ...ちゅっ」

 さも当然のように真九郎の唇を普通に貪り始めたのだった。

「ん〜...すぅ...ん、むっ...すう〜」

「ちゅうぅうっ...ぷはぁっ、ちゅるるっ...」

 真九郎の呼吸のリズムを見切り、かつ目を覚まさない程度のキスの嵐を
夕乃は自分の持てる限りの技術を尽くして真九郎に施す。
 それと同時に、夕乃の利き手は真九郎の股間をまさぐり始める。
 八年前とは比較にならないほど大きくなった逸物をデリケートに
扱いながらも、その根元と先端を巧みに動かす手つきは既に熟練の域。
 あっという間に真九郎の愚息はパンパンに張り詰めた。

「イケない子ですね...真九郎さんは」

 イケないことだと分かっている。分かっているのだが...

 真九郎が悦んでいるのだ。眠っているとは言え自分のキスで感じている。
 変態じみた倒錯感が夕乃の身体を稲妻のように駆け巡り、自制心という名の
ブレーキを瞬く間に全て粉砕していく。

 首筋に紅い痕跡を残しながら、夕乃は更に真九郎の耳を舐め始める。
首筋から耳朶にかけ、白く透明な唾液の跡が線を引く。

 紅くかぶれる首筋に軽く歯を立て、真九郎を刺激する。
 その間も軽い愛撫で焦らされた彼の愚息は、もどかしさのあまり
ピクピクと動きながら、窮屈なズボンの中で愚図りだした。
0610名無しさん@ピンキー2016/10/26(水) 23:16:29.58ID:gJgv6h30
 ぴゅっ、ぴゅっ。
 パジャマにじわりと滲む、粘り気のある染みは徐々に大きく広がり始めた。
 布団の中にたちまち立ちこめる青臭い臭いの正体は言うまでもない。

 女の子のように喘いだ真九郎は射精の快楽に抗えず、遂には夕乃の前で今まで
処理しきれなかった白い欲望を、無意識のうちに吐き出し始めた。

「んんっ...あっ...ああ...ふぁあ...///」
 
「イッっちゃったんだ...」

 女のように喘ぎ、腰がかくかくと震える真九郎の痴態はこの上なく夕乃の
性欲に火をつけてしまう魅力を放っていた。
 理性に歯止めが効かなくなる状態に陥りそうな自分を無理矢理押さえつける。

 このまま腕力に物を言わせ、真九郎を強姦したい衝動に駆られる。
 しかし、そんなことをしてしまえば間違いなく真九郎は自分と絶交し、
あの忌々しい柔沢や眼鏡、そして彼が本当に好きな...

「!!」

 少女の顔がその脳裏に浮かんだとき、夕乃は真九郎の身体から自分の身体を
素早く剥がした。
 制服のボタンを全て留めたと同時に、真九郎が目を覚ます。この間僅か一分である。

「んん〜。よく寝た、って夕乃さん?」

「おはようございます。真九郎さん」

「ご飯、持ってきました。よかったらどうです?」

 何も知らない風を装いながら、夕乃は食器を取り出しちゃぶ台の上に置く。
0611名無しさん@ピンキー2016/10/26(水) 23:16:52.60ID:gJgv6h30
「んんっ?!」

 違和感の正体に得心してしまった真九郎が目に見えて慌てだした。

「どうしたんですか?」

「えっ、いい...いいいいいや?な、ななななんでも、ななないです」

 当然だ。
 真九郎の知る夕乃といえば古風な貞操観念の持ち主であり、加えて
目の前でスケベで卑猥なことをしようものなら(それがまきこまれたかどうかは
この際置いておくとして)鉄拳制裁を加える優しくてスパルタなお姉さんなのだ。

 ましてや、生理的な問題とは言え夢精なんて無様を頭の上がらない夕乃の
目の前で知られてしまえば、間違いなく怒られると真九郎は思っているだろう。

 きっと真九郎はどうすればこの危機を乗り越えられるだろうかとめまぐるしく
頭を回転させているだろう。無論、夕乃は真九郎を逃さないが、当の本人である
真九郎はそれを知らない。

「あ...あの、夕乃さん」

「ちょっと...なんていいますか、その...後ろを向いてて貰えないで...」

「真九郎さん。なにを隠しているんですか?」

「あ、そ、いえ...別に隠しているというわけでは、なくて...その」

 べったりと自分の股間にぶちまけられた精液の冷えた感触と夕乃の視線が
真九郎の股間を縮み上がらせた。
 素直に夕乃に全てを打ち明けられれば何も問題はない。
 だが、真九郎にも男としての面子とプライドがある。
 
「し〜ん〜く〜ろ〜うさ〜ん?」

「Hな本を持ってても怒りませんから。ね?こちらを向いて下さい」

「ぅぅ...む、無理なんですってばぁ!」
0612名無しさん@ピンキー2016/10/26(水) 23:17:12.93ID:gJgv6h30
 ここで真九郎を追い詰めるとかえってやり辛くなるのは分かっている。

 彼のことだ、おねしょよりも恥ずかしい夢精を家族として、また一人の
尊敬できる女性である夕乃に知られた暁には死よりも酷いことになる。

 下手をすれば一生崩月の敷居を跨げなくなってしまう可能性だって在る。

 きっとそんなことを考えているのだろう。

(ああ...真九郎さん真九郎さん...すっごくかわいいなぁ)

 自分を追い込んだ犯人はすぐそこにいるというのに、真九郎はなにもできない。

「夕乃さんっ。ごめんなさい!」

 ニコニコと笑う自分の顔の前で命懸けの目眩ましをした真九郎は脱兎の如く
自分の部屋の鍵を開け、五月雨荘の洗濯機の場所へと一目散に駆けていった。

「油断しちゃいましたね...」

 さて、真九郎が戻ってきたらどう説教してやろうか?

 そう思いながら夕乃は指にこびりついた真九郎の粘りのある濃い精液を 
口に運んだ。

「そろそろ...食べ頃かな?」

「うっ、なんか凄い悪寒がする...」

 紅真九郎が崩月真九郎になる日は、そう遠くないかも知れない。
 
0613名無しさん@ピンキー2016/10/28(金) 01:31:41.41ID:dOo23HN8
〜真九郎の嫁入り 前編〜

午後八時 崩月邸

 夕食後、稽古の汗を流すべく真九郎と夕乃は風呂に入っていた。
 旅館と同じ大きさの湯船に身体を寄せ合い暖め合う真九郎と夕乃。
 隙間無くその身体を抱きしめる夕乃はいつものように真九郎と睦み合う。

「あぁ〜...稽古の後のお風呂はいいですね〜」
「痛てて...お湯が染みるなぁ...」
「よしよし...痛いの痛いの飛んでいけ〜」
「う〜...」

 稽古の後に風呂に入り真九郎を全力で甘やかすのが、崩月夕乃の毎日の楽しみである。
 姉のように真九郎を慈しむ夕乃と、その背中を追いながらも過去の痛みを乗り越えて
男として成長する真九郎が夕乃に子を孕ませられる歳になると同時に、互いの身体を
求め合うようになるのは当然の流れだった。
 
「はい。今度は真九郎さんが私の痛みを取り除いて下さい」
「え〜...まだ痛いのに...」

 夕乃に甘える弟分のささやかな抗議を流した夕乃は、自分がそうしたように   
今度は真九郎に自分を抱きしめさせた。
0614名無しさん@ピンキー2016/10/28(金) 01:32:20.34ID:dOo23HN8
「夕乃さんの痛いの飛んでけ〜飛んでけ〜」
「ん〜。気持ちいいですよ〜真九郎さん」
「真九郎さん...聞こえますか?私の心臓の音」
「貴方に抱かれて、凄くドキドキして...イケない人ですね真九郎さんは」
「夕乃さんの方こそ、いやらしいムッツリスケベの変態の癖に...」

 大腿から臀部にかけて集中的にいやらしく撫で回す真九郎の手に身を委ねながら
夕乃はゆっくりとその股に徐々に鎌首をもたげる真九郎の一部を持って行った。
 全身を程良く抱きしめるその腕の強さに緩やかな快感を覚えた夕乃は
徐々に発情し始めた。
 真九郎も優に20cmを超えるその逸物をいきり立たせ、もどかしげに
夕乃の股にこすりつけながら懸命に腰を振りはじめた。
 
「夕乃さん...夕乃さん...。キスして、ください」
「真九郎さんは私の真九郎さんなんです...だから、いいですよ」

 とろけた目で夕乃を見つめる真九郎はとっくに出来上がっていた。
 夕乃の教育の甲斐あって、抵抗感無く自分からキスを求めるようになった
真九郎は教えられたとおりに夕乃を愉しませ始めた。
 
「んっ...んふぁ...ちゅっちゅっ、夕乃さん...」
「あぅ、あっあっあっ...気持ち、いい...もっと、もっとして...」

 自分の顔を掴み、唇を吸い続ける夕乃の舌が真九郎の口内を蹂躙する。
 絶えず熱い唾液を送り込み、ぎこちなく絡みつく舌を弄んでは
自由になった両腕で真九郎の性感帯である乳首も器用に刺激する。
0615名無しさん@ピンキー2016/10/28(金) 01:32:42.49ID:dOo23HN8
「ふぁぁぁぁ....///ゆぅ、の...さん。気持ち、いいです」
「気持ち、いいのに...気持ち、いいのに...」

 全身を愛撫された真九郎の身体に軽いオルガスムスが伝わり始める。
 しきりに腰と逸物をピクピク動かしながら、懸命に溜まった精液を
外に放とうと真九郎は懸命になっていた。

「駄目ですよ...まだ、まだ真九郎さんは我慢できる筈です」
「そ、そんなぁ....」

 まるで女のように喘ぐ真九郎にゾクゾクとした快感を覚えた夕乃は、次の瞬間
自分達が今まで溜め込んでいた性欲の箍が外れる音を聞いた気がした。

「夕乃さん!ごめん」
「あうううううっ?」

 堪えきれずに夕乃の股を割り開いた真九郎は、生殺しにされていた
自分の逸物を前戯もナシにそのまま夕乃の熱い膣へとぶち込んだ。
 より強い快感を求めようと腰を振る前に、夕乃の絡みつく膣内の
肉襞に絡み取られた剛直はあっという間に全体を刺激され、耐える間もなく
そのまま一週間もの間、お預けされていたその粘つくような濃い精液を
暴れ馬が暴れるが如く夕乃の子宮へと吐き出し始めた。
 
「あっあっあっあっ、駄目だ、ダメダメダメ...出る!中に出るッ」
「待って真九郎さん!まだ気持ちよ...ふぁぁぁ...///」
 
 真九郎の長い射精はおよそ三分もの間、夕乃の膣内を満たし続けた。
 入りきらなかった精液が浴槽の中に白い塊として浮き上がり続ける。
 真九郎の射精が終わるまで、夕乃は身体を振るわせながらじっと耐える。
 
0616名無しさん@ピンキー2016/10/28(金) 01:33:02.56ID:dOo23HN8
「はぁ...はぁ...」

 長い射精を終えた真九郎は体力が尽きたのか、正常位でつながっている
夕乃の中から自分の逸物を抜いた後、その大きな胸にしなだれかかった。

「し〜ん〜く〜ろ〜うさ〜ん!」
「どうして私の言うことが聞けないんですか?」
「だ、だって...夕乃さんが意地悪するから...」

 笑顔で怒る夕乃にしどろもどろになりながら言い訳する真九郎。
 夕乃としてはこのまま真九郎が精魂尽き果てるまで自分を犯すくらいの
気概を見せる所を期待するも、当の本人が稽古で精根尽きてしまって
いるのだ。これではなにも面白くない。

「はぁ...へばってしまうとは...仕方がないですね」
 
 くたくたになって椅子に座る事も出来ないほど消耗している真九郎を
抱きかかえて、そのまま風呂の床に横たえた夕乃がしたことは無造作に
真九郎の無防備なその腹に乗っかることだった。

「ぐええ...」
「ふふっ...もう逃げられませんよ?」

 近くにあった石けんを取り、念入りに手を洗う。その次に夕乃は
ローションのボトルを開け、ドボドボとお湯を貯めた洗面器の中に
無造作に突っ込み、ぐるぐるとかき回し始めた。

 既に真九郎は眠気にノックダウンされ、夕乃が何をしているかも
分からない状態へと陥っていた。
0617名無しさん@ピンキー2016/10/28(金) 01:33:24.08ID:dOo23HN8
「おねーちゃん。お風呂〜?」
 カラカラと引き戸を引く音とともに散鶴が浴室に入ってきた。
「散鶴。お稽古は終わったの?」
「うん。おかーさんとおじーちゃんはお酒飲みに行ったよ」
「そう。帰るのは遅くなるの?」
「うん」 

 なら好都合だ。
 散鶴の前でやるのは気が引けるが、絶好の機会であるのには変わらない。
 むしろ共犯者として引き込むなら、散鶴はこれ以上無い頼もしい味方である。
 夕乃は、きょとんとする幼い妹の耳に何かを吹き込み始めた。
 最初はイヤイヤと首を振る散鶴だったが、夕乃が放った最後の決め言葉に
心が揺れ動いたのか、先程とは打って変わった目つきで真九郎を見つめた。

「じゃあ、始めましょうか。ちーちゃん」

 夕乃の笑顔に釣られるように、妹である散鶴も満面の笑みを浮かべる。

「うん。おにーちゃんは今日からわたしたちのおよめさんになるんだよね」

 その決意に満ちた言葉は、真九郎の耳に届くことはなかった。

 後編へ続く。
0618名無しさん@ピンキー2016/10/28(金) 11:10:16.05ID:dV/HmO8P
乙です。
原作でも真九郎がある程度の年齢になったら、強制的に婿入りさせられそうな気がする
0619名無しさん@ピンキー2016/10/29(土) 01:03:00.50ID:rDDhU3xO
>>613を書いた者です。タイトルが真九郎の嫁入りとありますが、よく考えたら
やっぱりおかしいと思ったので、真九郎の婿入りに直して呼んで下さい。
0620真九郎の婿入り2016/10/29(土) 01:46:33.85ID:rDDhU3xO
〜真九郎の婿入り 後編〜
 
「おねーちゃん。本当にやるの?」
「勿論やります。いいですか?ちーちゃん」
「私もちーちゃんも真九郎さんが大好きです。そうですよね?」
「うん。だいすき」
「ですが、真九郎さんの周りには泥棒猫達がいます」
「そしてこのままだと真九郎さんは崩月からいなくなっちゃいます」
「そう...真九郎さんは、永遠に崩月の家を出て行っちゃうんです」
「ふぇぇ...おにーちゃん...またどっか行っちゃうの?」
「多分、このまま行けば紫ちゃんに独り占めされちゃいますね...」
 
 真九郎を崩月の家に取り戻そう。夕乃はそう散鶴に告げた。
 小さい散鶴にも真九郎がなんとなく女の人に好かれているのは分かっていた。
 しかし、真九郎と同じ位大好きな姉が言う言葉は幼気な少女の心を
恐怖で縛り付けた。

 まだ嫉妬や愛という感情を理解するには散鶴は幼すぎた。
 しかし、自分よりも真九郎の身近にいて、自分以上に思い人の愛を
注がれている一人の少女の姿が脳裏に浮かんだ。
 今まで数える程度しか見せない姉の深刻そうな表情が散鶴の中にある
真九郎が自分達の元からいなくなることへの恐怖を更に掻き立てる。

「紫ちゃんとおにーちゃんは...けっこんしちゃうの?」
「はい。ちーちゃん以外の人を好きになって結婚しちゃうんです」
「やだぁ!やだやだやだぁ!!」
「私だってそんなのイヤです。でも...真九郎さんは、私のこと...」
 
 認めたくない。
 しかし認めざるを得ないという夕乃の諦めたような表情に散鶴は絶望した。 
 自分よりも何倍も優れた姉が、自分の恐ろしい想像が実現てしまうとはっきりと
断言してしまったのだ。
 紫と真九郎が結婚して夫婦になってしまえばもうお手上げだ。 
0621真九郎の婿入り2016/10/29(土) 01:48:08.51ID:rDDhU3xO
「でも、一つだけ真九郎さんを引き留める方法があるんですよ...」
「ほんと?!」
「その方法は...真九郎さんを私達のおむこさんにしてしまえばいいんです」
「おむこさんにする?できるの?」
「はい。だけどそれにはちーちゃんの助けが必要です」
「やる!やるもん!」

 健気に姉の言うことに耳を貸す散鶴はあくまでも真剣だった。
 姉が何を考えているのかは分からないものの、今まで大好きな姉が
やってきたことが間違っていた所を見ていないことが幸いし、バカ正直に
その手助けをすることを約束してしまった。
 
 そして、物語は前編の終わりへとつながる。


「じゃあ...心の準備はできた?ちーちゃん?」
「うん。おにーちゃんをほねぬきのメロメロにするんだよね?」
「よくできました。えらいですね、ちーちゃんは」
「えへへ...///」

 真九郎が眠りから覚めていないのを確認した夕乃と散鶴は先程風呂桶に
貯めたローションの水溶液をゆっくりと真九郎の身体にかけていった。
 生まれて初めて触るぬるぬるした液体に面食らう散鶴だったが、その
滑らかでつるつる滑る感触が気に入ったのか、手に残った水溶液を自分の
身体にこすりつけて愉しみ始めた。

「じゃあ...まずは、お手本を見せるからそれをちーちゃんは真似すること」

 テラテラと光る蠱惑的な豊満な姉の裸に興奮を覚えた散鶴は、心臓の高鳴りを
抑えて姉が今からやろうとすることに全神経を傾けた。
0622真九郎の婿入り2016/10/29(土) 01:50:08.70ID:rDDhU3xO
「真九郎さん...私とちーちゃんだけの大好きな真九郎さん...」

 まず夕乃は未だに勃起が収まらない真九郎の逸物には目もくれず、
その下半身にまたがって、上半身の引き締まったその胸筋に倒れかかって
自分の胸を押しつけ始めた。
 形の良い夕乃の胸がたわみ、それに伴い真九郎の呼吸は荒くなる。
 夕乃の胸を使った愛撫は寸分の隙も無く、真九郎の身体全体を覆うようにして
円の軌道を描く。

「はい。お手本終わり。さ、ちーちゃん。って...あらあら」

 行儀よく床に座っている妹を真九郎の上にのせようとした夕乃は 
小刻みに身体を震わせてビクビクとしている事に気が付いた。

「お、おねーちゃん...おまたから、なんか勝手に出てきちゃった」
「大丈夫よ。それは女の子が感じている証拠。安心して?」

 未成熟な散鶴は愛液を股の間からこぼしながら真九郎にまたがった。
「んしょ...んしょ...」
 一生懸命になって姉のように真九郎を気持ちよくさせようとする散鶴だが、
いかんせん身体が小さい為か、どうしても真九郎の身体からずり落ちてしまう。

「む〜...」

 ころん、こてん。と転がりながらもなんとかずり落ちないように散鶴は
あることを思いついた。
 真九郎の自由な腕を掴んで身体を固定し、前後へと動き始めたのだった。
 こうすることでなんとか散鶴は姉の課題をクリアすることが出来た。

「よくできました。それじゃあ...次は...」

 頭を優しく撫でた姉が次にした事、それは真九郎の乳首を口に含む事だった。
0623真九郎の婿入り2016/10/29(土) 01:51:50.67ID:rDDhU3xO
「ちーちゃん。嚙んじゃだめだからね?飴を転がして舐める感じよ」

 簡単に忠告を済ませた夕乃は自分の半分ほどの大きさの真九郎の乳首を
口の中へと含み、歯と唇をつかって楽しく弄び始めた。

(おにーちゃんのおっぱい...おかーさんのより、ちっちゃい...)

 母の胸に抱かれて、母乳を飲んでいた要領で吸えば良いのだろうか?
 なんとなくやり方が分かった散鶴は、そのまま母乳の出ない男の胸に
勢いよくかぶりつき、衝動に任せて思い切り吸い始めた。

「ちゅうちゅう...ちゅぅううううううううう!!!」 

(ぷはぁ...息が続かないよぉ...)

 力任せの強引な吸引に真九郎が目を覚ましかける。

「おにーちゃんのおっぱい...おにいちゃんの...おっぱい...」

「ふふっ。真九郎さんってば大分感じ始めてきてますね?」

 しかし、真九郎が大好きな散鶴にとってその胸から母乳が出るか出ないかは
全くの些事でしかなかった。むしろ、大好きなお兄ちゃんが自分の手によって
気持ちよくなっているという満足感を更に膨らませようと散鶴はリズムをつけて
乳首への攻めを再開した。

「ちゅっ、ちゅっちゅ...ちゅるる...ちゅう...」

 色欲にとろけ、牝の顔をするようになった妹に満足した夕乃。
 大好きな真九郎のことをもっともっと気持ちよくさせたいと思う散鶴。
0624名無しさん@ピンキー2016/10/29(土) 01:53:44.01ID:rDDhU3xO
「ちーちゃん。どう?気持ちよかった?」
「...うん」
「もっと気持ちよくなりたい?」
「...なりたい、です」 

 淫らな笑みに加虐の色を滲ませた夕乃は、興奮して未だに真九郎の乳首に
むしゃぶりつく妹を引きはがして、計画の大詰めへと取りかかった。

「じゃあ...ちーちゃん...」
「真九郎さんにキスしてみる?」
「する...///」
  
 なんのためらいもなく、散鶴はその問いに即答した。
  
「はぁ...小さいちーちゃんがこんなにも性に積極的だというのに...」

 それに比べて未だに眠りこける真九郎のなんと罪作りなことか。

「ちーちゃん。キスはもうちょっと待ってね?」

「ええ...」

 期待に目を輝かせていた散鶴の笑顔が一瞬で曇ってしまった。
 これはますます、罪作りな真九郎に灸を据えなくてはならない。

「真九郎さん...真九郎さん。起きて下さい」

「いえ、もう起きているんでしょう?」

 その時、眠りに落ちているはずの真九郎の顔がぴくりと動いた。
0625真九郎の婿入り2016/10/29(土) 01:55:48.83ID:rDDhU3xO
崩月姉妹の献身的、かつ愛に溢れた前戯を受けた真九郎はとっくに
眠りから覚めていた。
 正真正銘の幼稚園児からうけるたどたどしい愛撫による背徳と、何度も
身体を重ね合わせてお互いの性感帯を知り尽くした夕乃のテク。
 その二つを良心で撥ねのけるには、真九郎にはあまりに酷な話であった。
 倒錯的でマゾヒスティックな心地を味わえる二人の愛撫に真九郎は
もうとっくに骨抜きにされてしまっていた。

(ど、どうする?このまま寝たふりで押し通すか?いや...でも)

 そんな子供だましは夕乃には通用しない。
 ここで起きてしまえばもう後戻りは出来ない。
 これからの日々、紫に顔向けが出来なくなってしまう。 

 数秒の逡巡の末、真九郎は意を決して目を覚ますことにした。
 心を鬼にし、あえて冷たく夕乃を見つめる真九郎。

 その冷たい視線に怯えた散鶴は、一目散に浴室から出ていってしまった。
 しかし、計画が破綻した夕乃は顔色一つ変えない。

「...夕乃さん。一体何やってるんですか?」

「やって良いことと悪いことがあるでしょう?」

 冷たい怒りを夕乃にぶつける真九郎に対して、夕乃の態度はあくまでも
冷静沈着だった。 
 それでも、真九郎は夕乃の事を怒ることが出来ずにいた。
 まだ年端もいかない散鶴とともに自分を籠絡しようとした怒りよりも、今まで
夕乃の思いと好意を蔑ろにしていたツケが回ってきたと素直に受け入れてすらいた。
0626真九郎の婿入り2016/10/29(土) 01:58:28.96ID:rDDhU3xO
 
「気持ちいいことは悪いことですか?真九郎さん」
「真九郎さんが悪いんですよ...」
「私の気持ちに気づいていながら、それを意図的に無視してばっかり」
「ずっと私は真九郎さんに振り向いて欲しかった」

 夕乃はハイライトの消えた目と抑揚のない口調で淡々と語り始めた。
 
「真九郎さん。私じゃ紫ちゃんに及びませんか?」
「私達家族じゃ、真九郎さんの家族の代わりになれませんか?」
「私はどうすれば、大好きな真九郎さんに受け入れてもらえるんですか?」

 それは、嫉妬や愛という感情に振り回される女の悲鳴だった。
 涙をこぼし、真九郎に見下げ果てた女だと見下され、軽蔑される恐怖に
耐えながらも、夕乃は必死に真九郎から目をそらさずに見据え続けていた。

「紫ちゃんに真九郎さんが惚れているのは分かります」
「でも、私は...私は紫ちゃんに負けたくない。誰にも貴方を渡したくない」
「それすらも、わかってもらえないんですか?」
 
 夕乃とて、今の自分のしていることがどれくらいまずいのかは理解している。
 年端もいかない妹を巻き込んで真九郎を籠絡しようとする魂胆はまさに
卑しい女の手練手管と全く同じものだった。

 しかし、そうでもしなければ永遠に真九郎は夕乃に振り向いてくれない。
 自分との縁を切るくらいのことをしなければ、紅真九郎という少年は
一生かけても己の本心を打ち明けてくれないということを夕乃は悟っていた。
 
0627真九郎の婿入り2016/10/29(土) 02:00:45.11ID:rDDhU3xO
「夕乃さん...」

 真九郎は人を愛することの業の深さを思い知らされた。

 紅真九郎は崩月夕乃には一生勝てない。その愛を拒むことが出来ない。
 何故なら夕乃の愛は、世界中の誰よりも真九郎を愛するが故のものだからだ。
 どのみち、ここまで追い詰められてしまえばもう逃げ道はない。

 紫はきっと自分に幻滅して、絶望するはずだ。
 自分のしたことがどれだけ紫の心を抉るのかは想像もつかない。

(紫...ごめん。ごめん...) 

 心の中で紫に真九郎は侘びた。もう後戻りは出来ない。
 引き裂かれるような心の痛みを感じながら、それでも真九郎は前に進む。

(俺は、夕乃さんを見捨てることなんか出来ない...)

 自分を受け入れてくれた家族と、自分が受け入れたかけがえのない人。
 その両方を天秤にかけて、真九郎が選んだのは夕乃だった。

「夕乃さん。俺はさ、最低の男なんだ」

「夕乃さんの必死の訴えを聞いているときでさえ、紫のことを考えてた」

「いや、それ以前に...自分が、どうしようもないくらいバカで...」

「とっくに...夕乃さんが好きになってたのに、それが怖くて...」

「また、俺が、俺のせいで...みんな...みんな...いなくなるのが怖くて...」

「自分の弱さを見せるのが、怖くて...」

 荒れ狂う己の感情の正体に向き合う余裕のない真九郎は、それでも
できる限りの誠意を持って夕乃に向き直った。
0628真九郎の婿入り2016/10/29(土) 02:02:00.12ID:rDDhU3xO
 
 バラバラになってまとまらない思考を無理矢理まとめながら、真九郎は
弱さを見せまいと後ずさる夕乃の身体を抱きしめた。
 震えるその体を強く抱きしめて、真九郎は言葉を続ける。
 
「夕乃さん。俺は、貴女を俺だけの夕乃さんにしたい」

「貴女を他の男なんかに絶対渡したくない。ずっと俺の...」

「俺の、俺だけの夕乃さんになって欲しいんだ...」

 心に決めた相手への想いを持ち続けながら、それでも真九郎は自分を選んでくれた。
 曖昧さをかなぐり捨て、自分の心の弱さをも全て曝け出した上での
血を吐くような真九郎の愛の告白は夕乃の心を揺さぶった。

「真、九郎..さん。ようやく、私の気持ちに応えてくれたんですね...」 
「夕乃さん...今まで辛い思いさせて、本当にゴメンなさい」
 
 ずっと真九郎に望んでいたことを他ならぬ本人が自らの意思で実行すると
自分に約束してくれた。それだけで夕乃の心は幸せに満ちあふれた。 

「今はまだ揉め事処理屋の仕事は辞められないけど」
「高校を卒業したら、崩月の家に戻るから....」
0629真九郎の婿入り2016/10/29(土) 02:03:08.93ID:rDDhU3xO
 夕乃にとって真九郎がかけがえのない存在であるように、真九郎にとっても
夕乃の存在は欠けてはならない大切な存在だった。

 つまり、とうの昔に夕乃と願いは叶っていた。想いは通じていた。 

「えっと...じゃあ一週間に二、三回は崩月の家に戻るよ」
「あああ...もう、嬉しくて嬉しくて涙が止まらない...」

 涙を流しながらも、真九郎と晴れて両想いになれた夕乃の笑顔はこれまで
真九郎が見てきた夕乃の笑顔の中でも最高に素晴らしいものだった。
 
「真九郎さん...キスして?」

「今日のことが夢じゃないって証を、私に刻みつけて...」

 目をつぶり、真九郎のキスを待つ夕乃。

 真九郎は、躊躇うことなく夕乃の唇を奪った。

 
 次回 夕乃の嫁入りに続く
0631名無しさん@ピンキー2016/10/30(日) 01:18:19.90ID:2DmJwmv/
〜散鶴の嫁入り 前編〜

「ふうぅ…っ♪」

 真九郎は躊躇うことなく夕乃の心を奪い去った。
 夕乃を慰めるように、そっと舌で愛撫するようなキスに夕乃はのめり込み、
真九郎も心から溢れる切なさと愛おしさのあまり、ほんの小さな声をあげた。
 
「あんっ...真九郎さん...」

 互いの唇を吸い尽くすような淫らな音を立てながら、恋人達は互いの
心の結びつきを強く深めていく。
 今まで経験したことのないような己の身を焼き焦がすような独占欲に
駆られた真九郎は、絶対に離さないと自分の心に誓った夕乃を更に強く
抱きしめる。
 そのあまりの変わりように、しかしそれは夕乃にとって驚くべきことだったが
同時にようやく真九郎が自分を受け入れてくれた証なのだと気が付いた。
 喜悦の声を上げる夕乃に愛おしさを感じる真九郎は、夕乃の耳元で囁く。

「夕乃さんのこと....夕乃って読んでもいいかな?」
「いいです...よぉ...だって私は...真九郎さんのお嫁さん、だからぁ...」

 自分に全てを委ねて、幸せにとろけきった夕乃の豊満な胸を押すように
真九郎は更にグイグイと鍛え抜いた肉体を押し付け、その唇を味わう。
 唇から歯の裏側までを真九郎と夕乃は嬲り抜いた。
 十分にも渡ったディープキスの余韻に浸る夕乃は息も絶え絶えだったが、
真九郎の方は意外なことにまだ余力を残していた。
0632名無しさん@ピンキー2016/10/30(日) 01:18:41.26ID:2DmJwmv/
「ぷはぁ...真九郎、さん...激しくて、素敵」
「はぁ...はぁ。もうダメだ...理性が保たない」
 
 暴発寸前の逸物を手でしごきながら、真九郎は夕乃の口元にそれを突き出した。

「夕乃...我慢できないんだ...。気持ちよく、して欲しい」

 生唾を飲み込む夕乃は、普段の数倍大きくなった真九郎の逸物に驚いていた。
 今まで真九郎と体を重ねたことはあれど、世間で言うところのフェラチオという
陰茎への重点的な愛撫は、生理的な抵抗感もありしてこなかった。

 しかし...今の夕乃にとって真九郎の逸物へフェラチオするのは抵抗感が
在るどころか、全く逆の感情...即ち、真九郎が望むだけしてあげようという
奉仕の感情だった。

「いいですよ...///真九郎さん。私の口で気持ちよく、なってください」

 興奮のあまり乳首とクリトリスを勃起させた夕乃は、真九郎の足下に傅き
意を決して、その陰茎の先端を口に含んだ。

「んっんっんっ...ちゅる...はむっ...」

 先程の散鶴との籠絡作戦で真九郎に施した技術が子供だましに思えるような
堂に入ったエロスを見せる夕乃のフェラは、今まで大和撫子と呼ばれてきた
夕乃の貞淑なイメージをぶち壊すようなドスケベぶりだった。

 ひょっとこのように口をすぼませ、亀頭からしみ出た真九郎のカウパー液を
精液の代わりに啜っては嚥下し、口から陰茎を吐き出したかと思えば、
手持ち無沙汰にブラブラと揺れる睾丸を口の中に含んでは飴を転がすように
丸ごと二つ頬張る。
0633名無しさん@ピンキー2016/10/30(日) 01:19:03.49ID:2DmJwmv/
「夕乃、もうイク...っから、胸で、はさん...で」
「ふぁい」

 真九郎の腰の動きがガクガクとしたものに変わるやいなや、夕乃は
今まで自分がしていた事を一旦やめて、真九郎のペニスを自分の大きな胸で
挟み込んで上下にしごき始めた。

「ふふふ...真九郎さぁん..私のおっぱい、どうですか?」
「ニュルニュル...っしてて、すごい締め付けと弾力、ぁぅ...」

 声を出すのも辛そうな真九郎は、勃起したペニスをビクビクさせながらも
未だに射精するのを拒んでいた。

 真九郎の性格からして、もっと気持ちよくなりたいから我慢するというのは
一番あり得ない選択肢だった。
 だとすれば、夕乃に思いつくのは...

「まけちゃ...う。ゆうの...さんを、まもらないと、いけないのに...」
「ゆうのさんに...まけた、ら...いらない...いらなく、なる」

 我を忘れ、軽い狂乱に陥った真九郎の哀切な叫びが耳に入る。
 
(真九郎さん...まさか、自分が要らない子だって思ってる?)
(だとしたら、崩月の家を出て一人で暮らしている理由は...それなの?)
0634名無しさん@ピンキー2016/10/30(日) 01:19:28.84ID:2DmJwmv/
 数ヶ月前、自分に対して真九郎が放った言葉の真意がようやく分かった。
 家族を失った真九郎は、自分の本質や本性が弱虫で臆病だということに
ある日唐突に気が付いてしまったのだろう。
 このまま行けば、きっと必要とされなくなる日が来る。
 だったら、いっそ家族をまた失うくらいなら...

(ごめんね...いままで私、真九郎さんのこと...なにもわかってなかった)

 ようやく真九郎の心の闇の正体を理解した夕乃は、何をすべきなのかを
はっきりと理解した。
 
「ぅううううっ!!気持ち良いのがっ止まらないっ!!」

 一層激しく腰を振る真九郎のペニスから白いマグマが吹き出しそうになる。
 すかさず夕乃はそれを阻止する為、睾丸とペニスの根元を片手で握りしめ、
その熱い奔流を瞬時にせき止め、もう片方の手は、更に真九郎の快感を引き上げる為
重点的に亀頭をしごく。

「なんで!イっ、うぁあああああ!」
「イキたいんだ、早く出したいんだ!意地悪しないでよぉ...」

 尻穴は緩み、口元はだらしなく弛緩し、目には涙を浮かべる真九郎。
 女の子のようにアンアンと喘いで体をくねらせるその姿は、夕乃の
心の中にある加虐心のスイッチを入れるのに充分だった。
 五月蠅く喚く真九郎を黙らせるべく、夕乃はデコピンを遠慮することなく
真九郎の睾丸二つに合計十発を見舞った。

「ひっ!いいぃいいぃいいいっっ!?」
「もうやらぁああああああああ!夕乃さんっ、助けて、助けてぇええ!」

 死にものぐるいで夕乃を撥ねのけようとする真九郎は暴れ馬のように暴れ、
夕乃はその身に宿る怪力で真九郎を半回転させ、屈辱的な体位、真九郎を
ちんぐり返しにしたのだった。

「真九郎さん。もう少し我慢してくださいね。あと少しですから」
0635名無しさん@ピンキー2016/10/30(日) 01:20:03.91ID:2DmJwmv/
 頭を床につけられ、両足を夕乃に捕まれた真九郎は絶体絶命のピンチに
陥っていた。
 更に間の悪いことに、いつの間にか風呂場に戻ってきた散鶴が興味深げな
視線を真九郎のヒクヒクと動く肛門に向けている。

「さぁ、ちーちゃん...おにーちゃんのおしりを可愛がってあげなきゃね」
「うん...///ばっちいけど、頑張る」

 散鶴は少し躊躇った後、遠慮無く真九郎の緩みきった尻穴の処女を奪った。
 抜き手の形に固められた幼稚園児の四本指が、ぬぶぬぶと真九郎のアナルへと
どんどん沈んでゆく。

「ああああああああ!!!!!やーっ!うぁああーっ!」
 
 手首まで沈んだ幼稚園児のフィストファックと夕乃によるだめ押しの喉奥
フェラに真九郎は遂に屈服した。
 ラストスパートにじゅこじゅこと夕乃の手コキにしごかれた真九郎のペニスは
ようやく射精できる喜びに打ち震えながら、自分を解き放った。

「ダメダメダメ!あああああ!!バカになるぅうううう!」

「もう気持ちいいことしか考えられないよおおおおおお!!」

「いくぅううぅうううううううううううううっ!!!」  

 真九郎のチンポから解き放たれたザーメンは夕乃の喉奥を素通りしながら
あっという間に食道を通過し、直接胃の中へとドボドボとなだれ込んだ。

「???!!!!〜〜〜〜〜〜〜」
0636名無しさん@ピンキー2016/10/30(日) 01:20:52.20ID:2DmJwmv/
 胃の中の内容物と真九郎のザーメンがカクテル状態になるまでミックスされる。
胃に収まらない分のザーメンは食道を逆流して、外に出ようと夕乃の穴という
穴に殺到しはじめた。
 両方の鼻の穴から白い液体が吹き出し、逆流した内容物が器官と食道に詰まり
命の危険に陥りながらも、夕乃は一歩も引くことなく真九郎のザーメンを
味わい続けた。 

「はぁっ、はぁっ...ゆう、のさん...もう、いいです」

 尊厳に関わる程の痴態を曝してしまった真九郎は、ようやく収まりかけた
それでもまだしごかれれば射精してしまうほどに、精液の詰まったチンポを
夕乃の口から引き抜いた。

「あああ....真九郎さんの...ざー、めん」 
 
 精液の鼻提灯を膨らませ、夕乃は全身をビクビクと震わせ床に倒れこんだ。

「ちーちゃん...ちょっとこっちにきなさい...」

 幽鬼の如くゆらりと立ち上がった真九郎は、あまりの光景に腰が抜けて
アワアワと慌てている散鶴の元へと歩み寄る。

 散鶴は体を震わせながら、知らず目を閉じて唇を真九郎に突き出す。

「なんのつもりなのかな?ちーちゃん」

「おにーちゃん...ちゅーして?」

「どうしてちーちゃんにちゅーしないといけないのさ?」

「...から。だもん」

「聞こえないな〜」

「ちづるもおにーちゃんのおよめさんになりたいんだもん!」

「えっ?」

「そうすれば、おにーちゃんはまた帰ってきてくれるんでしょ?」
0637名無しさん@ピンキー2016/10/30(日) 01:21:28.80ID:2DmJwmv/
 信じられない言葉が散鶴の口から飛び出した。
 まだ、散鶴は幼稚園生で小学生でもない。
 今、この子は一体俺に何を言ったんだ?非現実的な散鶴の告白に面食らった
真九郎はおしおきの手を止め、黙って散鶴の告白に耳を傾ける事にした。 

「おねーちゃんが、おにーちゃんは紫ちゃんと結婚するって言ってた」

「えぐっ...分かるもん。おにーちゃんは紫ちゃんが大好きなんでしょ?」

「そ、それは...」

「知ってるよ。おにーちゃんが家を出た理由」

「紫ちゃんが好きになったから出て行ったんでしょ?」

 否定できないことを遠慮無くズバズバと言う散鶴に真九郎はまたしても
逃げ道を潰されてしまった。
 夕乃といい、散鶴といい、崩月の女とはここまで情が深すぎるのかと
改めて自分の考えを改めた真九郎は、寂しくて泣き出しはじめた散鶴の体を
抱きしめ、自分の今の気持ちを、夕乃に伝えた自分の気持ちを散鶴に向かって
語りはじめた。

「ちーちゃん。俺はね、臆病で弱虫なんだ」

「確かに紫が好きなのは事実だけど、家を出た理由はまた別なんだ」

「怖かったんだ。師匠や冥理さん、夕乃さんとちーちゃんに見捨てられるのが...」 

「そんなことしないもん!だっておにーちゃんは家族だもん」

「...ありがとう。ちーちゃん。俺のことそう思ってくれてたんだ」

「でも、俺はそうやって信じることが出来なかった」

「だから、傷つかないように一人でいることを選んだんだ」

 散鶴の言葉を聞いた真九郎は深い安堵に包まれた。

 やっぱり自分が帰るべき家は崩月なんだ。

 そう確信できた真九郎は、妹の不安を取り除くことにした。 
0638名無しさん@ピンキー2016/10/30(日) 01:22:16.27ID:2DmJwmv/
 
「でも、夕乃さんのおかげでようやく目が覚めた」

「やっぱり、俺はここにいたいんだ。皆と一緒に家族になりたい」

「おにーちゃん...じゃあ、ちづると結婚してくれるの?」

「いいよ。ちーちゃんとは夕乃さんと結婚した後に結婚してあげる」

「やったぁ!」

「でも、まだ俺にもやらなきゃいけないことが沢山あるんだ」

「だから、また昔みたいに一緒に暮らすのには時間が掛かる」

「それでもいいかな?我慢できる?」

「うん。おにーちゃんとまた一緒に暮らせるなら我慢する!」

 しかし、散鶴は一つ失念していた。

 自分が真九郎に一体何をしてしまったのかということをだ...

「さてと...ちーちゃん。今度は悪い話があるよ...」

「お、おにーちゃん?や、やだよ...なんか、こわいよぉ...」

「ふ、ふふふふ...そうだよ、ちーちゃんは今からお仕置きされるんだ」

 未だにがちがちに勃起しているペニスを見せつける真九郎。
 いつも助けてくれるのに、今はフェラチオでアクメを決め恍惚の表情を浮かべ
床に倒れ込んでいる姉。、
 そして自分は真九郎のお仕置きを受けなければならないという絶望的な状況に
崩月散鶴は胸を高鳴らせていた。

「きゃっ?!」

 これからどんな風にいじめられて姉のように気持ちよくされてしまうのだろう?
 これが世に言う、幼女が性に目覚める五秒前という現象である。
0639名無しさん@ピンキー2016/10/30(日) 01:22:37.31ID:2DmJwmv/
「ちーちゃん...まず、ちーちゃんは何をしなきゃいけないのかな?」

「ご、ごめんなさい...おにーちゃん...」

「そう、おにーちゃんにごめんなさいだよね。ちなみにその理由は?」

 散鶴を自分の膝に乗せた真九郎は、説教を続けながら散鶴の恥丘に手を這わせ
まだ皮もむけていない未発達なクリトリスの近辺をくまなく愛撫している。

「おにーちゃんのおしりの穴に、お手々を入れて遊んだからです」

「自分の身体の真ん中からメリメリってお尻が裂けるんだよ?」

「痛かったなぁ...ちーちゃんはそんなことされたいと思う?」

「や、です...」

 至極当然なことを言いながら、良心のリミッターを夕乃によって粉々に
粉砕された真九郎は、良識も同時に捨てさせられてしまった。
 真九郎は散鶴にされたことと同様に、自分の人差し指を今度は散鶴の尻穴に
いれて、散鶴の小さな身体を弄びはじめた。 

「ほら、ちーちゃん。鏡見てご覧よ」

「見える?ちーちゃんは今夕乃さんの前でおまたくちゅくちゅにされて」

「おしりにも指が刺さってる、インランな女の子になっちゃったんだよ?」

「いんらん?」

「ちーちゃんは夕乃さんが嫌ってるふしだらな悪い女になっちゃったんだ」

「あっ、あっ、あっ...やぁぁぁ...///」

 体の芯から熱くなった散鶴は真九郎の指の動きに物足りなさを感じた。
 確かに真九郎の愛撫は気持ちよかったが、羽根で軽く触れるようなタッチよりも
姉が真九郎にされていた激しい愛撫をされたいと散鶴は思い始めた。、
0640名無しさん@ピンキー2016/10/30(日) 01:23:05.45ID:2DmJwmv/
「ちーちゃん。ちゅーしよっか?」

「うん...///」

 そんな不満を見抜いたのか、真九郎は小さな身体を軽々と抱き上げ、
自分が一番キスしやすい高さに散鶴の唇をもってきた。

「苦しくなったら、軽く俺のこと叩くんだよ?いいね」

「はい...///」

 目を閉じた散鶴は真九郎に全てを委ねた。

「じゅるるるるるっ〜ちゅううう!ちゅぱっ!はむっ、じゅろろろっ!」

「ん〜〜〜!!んむぅ〜〜〜むーっ!むーっ!」  

 夕乃にしたディープキス以上の激しいキスを散鶴に施す真九郎。
 幼稚園児ならば五秒と保たないそのキスに、しかし散鶴はなんとか
必死になって食いついていた。それどころか貪欲に快感を貪ろうと、真九郎の
右手を自分の股間に持ってきてクリトリスを擦り出す始末だ。

「ぷはぁ...そんなに気持ちよくなりたいなら...」

 再び床に寝転がった真九郎は、そのペニスをこれ見よがしに散鶴に見せつける。
0641名無しさん@ピンキー2016/10/30(日) 01:23:30.00ID:2DmJwmv/
「さ、ちーちゃんの好きなように使って良いよ?」

「ごくり...」

 食い入るように真九郎のペニスを見つめる散鶴は意を決して、そのペニスの
上に自分の股間をあてがい、またがった。
 俗に言う素股の体位をとった散鶴は夕乃がまだダウンしていることを
確かめた後、ゆっくりと動き始めた。

「とんだエロビッチ幼稚園児だな...ちーちゃんは」
  
「おにーちゃん?気持ちいい?」

「ああ。すっごく気持ちいいよ。さすがちーちゃんだね」

「えへへ」

 ズリズリと前に後ろになれた感じで真九郎のペニスをしごく散鶴。
 その腰使いはともかく、真九郎の目を引いたのはそのお腹だった。

 イカの腹のようにぷっくりと膨れた白雪のようなすべすべのぷにぷにの
もち肌にほおずりしたい衝動に真九郎は駆られた。

「ちーちゃん。ちょっといいかな」

 丁寧に断りをいれた真九郎は、散鶴のお腹に自分の頬を当てた。
 そして、そのままその肌触りと弾力を堪能しはじめた。

「やぁん...///おにーちゃんのエッチ...」

「あああ...ちーちゃん...ちーちゃん。なんて可愛い妹なんだ...」

「おにーちゃんはおねーちゃんとちーちゃんの旦那様になってくれる?」

「勿論だよ!」

「不倫や浮気なんかしない?」

「勿論しないよ!」

 まさにロリコンここに極まれり、世も末である。
0642名無しさん@ピンキー2016/10/30(日) 01:23:56.97ID:2DmJwmv/
 ただ、真九郎の名誉の為に補足を加えておくと、彼の今の状態は某財閥の
真性のロリコン御曹司のような、男の風上にも置けないクズ野郎とは異なり、
夕乃の過激な攻めによって、一時的に理性が吹き飛んでしまった事による
暴走状態である。


「じゃあそんなおにーちゃんにごほーびをあげます」 

「えいっ!」

 頭を小さな胸に押しつけられた真九郎は躊躇うことなく、目の前にある
小さなサクランボを口に含み、子供がそうするようにちゅうちゅうと音を立てて
吸い込みはじめる。

「ふあぁああ...///」

 真九郎は左胸の乳首にむしゃぶりつきながら、残る右乳首を右手の三本指で
強くつまみ、残りの左腕を用い、指の先端を大陰唇の内側へと押し込む。
 三カ所の愛撫を同時にされたことにより散鶴は体を震わせるほどの快感に
襲われることになった。

 ごつい指がクリトリスを擦り、タコの吸盤の如く吸い付く真九郎の口と舌の愛撫。
そして、散鶴の一番の性感帯である右乳首への集中した攻め。
 それらが全て散鶴がイク一歩手前の絶妙な手加減で行われているのだから、
その快感に曝される当の本人にとっては溜まったものではない。

「ちーちゃんはまだ子供だから、「せっくす」はできないんだ」

「だから、今はこれで我慢してね」

 そういうなり真九郎は散鶴の体を四つん這いにし、その尻穴をほぐす。
 ニチニチという音をあげながら、散鶴の括約筋は真九郎の人差し指に敗北した。
0643名無しさん@ピンキー2016/10/30(日) 01:24:21.10ID:2DmJwmv/
「おにーちゃん...ひりひりするよぉ...///」
 
 ぷちゅっ、くちゅんっ!つぷぷ...くちゅくちゅ、ぐちゅうっ!

「あっ、ひぃん!はうう...///あっあっあっ...はううううう?」

 真九郎の人差し指と中指による散鶴のアナルへの肛淫。
 その効果はまさに抜群。
 ズボズボと尻穴をほじくられる巧みな緩急の快感に目の焦点はずれ、
その小さな尻穴は中々くわえ込んだ真九郎の指を離そうとせず、むしろ
もっと奥まで指をくわえ込もうと、きゅっきゅっと締りを強くし続ける。

「ひああっ...やあぁあ...っくぅぅ...んっ」
 
 息も絶え絶えになりながらも一生懸命に腰をふりふりする散鶴のあまりの
可愛さに真九郎はノックアウト寸前に陥っていた。
 メスイキまで秒読みという段階で真九郎は散鶴に指の挿出を繰り返しながら、
その桃のような尻にスパンキングという名の往復ビンタを加えはじめた。 

 ぱんぱんぱぱぱん!ずちゅっずちゅずちゅんずっちゅん!!!

「ひっぎっ、うぐっ!ひぃいっはひぃいっひあぁあああああっ」

「おにーちゃん...なんか来るよぉ...なんか来ちゃううう!!!」

「ちーちゃんっ!ちーちゃん!」
0644名無しさん@ピンキー2016/10/30(日) 01:24:54.28ID:2DmJwmv/
 そして、遂にその時がやってきた

「イくイくイくイくイくイくイくイ...いぃいぃいい!!!」

 嬌声とも宣言ともつかぬ声をあげた散鶴は全身を震わせる。 

「み、見ないで...やぁあ...おもらししちゃってるぅ...」

 しょわああああ、と立ちこめるアンモニアの臭いとグスグスとベソをかく
散鶴の泣き顔。
 見開いた瞳が快楽一色に染まり、半開きになったままの口から舌が飛び出す。
 指を引き抜いた真九郎は、メスアクメを決めた小さな妹を優しく抱きしめ、
その唇に優しいキスをする。
 飛び出した舌を吸い取り、慌てて戻そうとする散鶴の動揺を感じ取り、
更に強く口内を蹂躙しはじめる。

「あぁぁっふあぁ...あぁああああ...っ。おにーちゃ...ん」

 薄れゆく意識の中、散鶴は真九郎に抱きしめられていた。

「ちーちゃん。よく頑張ったね。偉い偉い」

「うん...」

「気持ちいいことは暫くお預け」

「ちーちゃんが大人になったらまたしてあげる」

「約束だよ?」

「約束する」

 大好きな兄と姉とまた一緒にいられる嬉しさをかみしめながら、
小さな少女は夢の中へと堕ちていった。
0645名無しさん@ピンキー2016/10/30(日) 01:31:43.40ID:2DmJwmv/
次は夕乃さんで、その次は紫と夕乃の後日談になります。お楽しみに
0646名無しさん@ピンキー2016/10/30(日) 09:11:43.08ID:eh9vzprT
真九郎 羨ましい( ^ω^)・・・
俺もちーちゃんみたいな妹欲しいんだけど、どうすればいいかな
0647名無しさん@ピンキー2016/10/31(月) 01:30:37.20ID:37N0OYug
この調子でこのスレに人が戻ってくればいいのにな...。
やっぱりあれなのかな?みんな紅に飽きちゃったのかな?
0648名無しさん@ピンキー2016/10/31(月) 01:35:34.12ID:37N0OYug
 伊南屋さんがいた頃が懐かしいと思うこの頃なんだけどさ、夕乃さんのssを
書いている人に作って欲しい作品があるんだ。カップリングは九鳳院竜士と
鉄腕+ゲオルギフでそれはもうクッソ濃厚なハードゲイ路線の奴を書いて欲しい。
 幼稚園児を性の対象として見做すアンタなら書けるはずだ。やってくれ
0649名無しさん@ピンキー2016/10/31(月) 08:49:56.88ID:HT+78mUb
まぁ、結構時間が経ってるから人が少ないのはしょうがないんじゃないかな。
でも他の作品とのクロスオーバー物とかは、いまでも更新している人がいて、
結構見ている人も多いみたい。
ロム専が多いのかもしれんね
0650名無しさん@ピンキー2016/11/14(月) 00:52:01.46ID:bzIdgMTY
〜夕乃の嫁入り 後編〜

 午後十時 崩月邸 夕乃の部屋


「ん...」

 真九郎が目を覚ますと、そこは崩月邸の来客用の寝室だった。
 どうやら、風呂場での乱痴気騒ぎのあと散鶴共々のぼせてしまったらしい。

「あ、真九郎さん。気が付かれたんですね」
「ええ。まだ頭がフラフラするんですけど...意識ははっきりしてます」

 時計に目をやると午後十時を五分ばかり過ぎていた。
 十月とは言え夕乃はそのメリハリのついた肢体を強調するような服装、
薄手の長襦袢しか着ていなかった。 
 真九郎はここでようやく、風呂場で起きた出来事が夢ではなく現実であると
はっきりと理解した。
 
「真九郎さん...///」

「夕乃さんは甘えん坊さんだね。ほら、もっと体寄せて?」

「はふぅ...///真九郎さぁん...大好き。愛してる」

 甘い声に幸せな笑顔を浮かべた夕乃が真九郎の胸に飛び込んできた。
 心の底から安らいだ夕乃は夢中になり、恋人の胸板に耳を押しつけ、
その鼓動に酔いしれていた。 
 真九郎も、ことここに至っては夕乃の好意から最早逃げようなどとは
考えもせず、ひたすらに自分に世界で一番嬉しい愛情をもたらしてくれる
最愛の女の想いの全てを受け入れようと懸命になった。

「夕乃さん...俺のこともっとぎゅっと抱きしめてよ」

「だぁめ...夕乃って呼んでくれなきゃ...してあげないもん」

「じゃあ、夕乃..。頭を撫でながら俺のこと抱きしめて?」

「嗚呼...いいですよ。いくらでも愛してあげますからぁ...」
0651名無しさん@ピンキー2016/11/14(月) 00:52:54.56ID:bzIdgMTY
 柔らかく、まるで母の温もりを思い出させるようなその豊かな胸に
顔を埋めた真九郎は夕乃の愛撫に身を委ねながら、ゆっくりと自分の腕を
夕乃の体に巻き付ける。
 一方の夕乃も母が子を慈しむように真九郎の全身をなで続ける。
 布団の上に座りながら、二人は体を揺らしながらこの至福の一時を
いつまでも味わい続ける。

「どうして俺は、夕乃さんのことを避け続けてたんだろ...?」

「こんなにも暖かくて幸せな気持ちにしてくれるのに....」

「それは真九郎さんは恥ずかしがり屋で弱虫さんだったからですよ」

「自分の気持ちに蓋をして見栄や嘘を優先するから私を避けたんです...」

「それは...」

 その一言は、真九郎の心の中にある闇だった。

 大切な家族に最も見せてはいけない自分の恥部。

 強さを求め、力を手に入れたはずの人間がその力を恐れるというジレンマに
陥りながらも、分不相応なまでの『揉め事』を完璧に処理し、多くの人を
救ってきたにも関わらず、真九郎自身の心は未だ脆弱だった。
 紫という理解者を得た後も、真九郎はその弱さを受け入れられていなかった。


「夕乃、さん。俺は弱虫なんだ...」

「本当は戦いたくなんかないんだ。戦うとなると足が震えるんだ...」

「でも戦わなければ、俺は...俺は、なにもなくなっちゃうんだ」

「崩月の皆に失望されたくなくて...」

「まだ俺が皆の家族でいられるうちに...崩月の家を飛び出したんだ...」

「ようやく...打ち明けてくれましたね..ありがとう、真九郎さん」

「うん...」
0652名無しさん@ピンキー2016/11/14(月) 00:53:18.55ID:bzIdgMTY
 真九郎の自分を抱きしめる力が強まったことを夕乃は感じ取った。 
 ここが崩月夕乃にとっての一世一代の大一番。
 真九郎の心の闇を理解せずして、何が真九郎にとっての一番の女か?
 
(私には、真九郎さんの闇を晴らすことは出来ないかも知れない)

(けど、隣に並び立って貴方の手を引いて一緒に歩いて生きたい)

 上手く全てを伝えられるかどうか分からない。失敗するリスクもある。
 しかし、それでも夕乃は真九郎が自分を都合の良い逃げ道にするのには
耐えられなかった。
 何故なら、真九郎の持つ心の弱さに立ち向かう強さこそが、夕乃を
初めとする彼に惹かれた人間達にとって、無視できない程の眩しい
光なのだから。
 
 だからこそ夕乃は真九郎が自分の弱さを言い訳にするのを許さなかった。 

「真九郎さん...私はうじうじ悩む真九郎さんが嫌いです」

「えっ...な、んで...?そんな、こと言うの?」

 夕乃の放ったその一言で、歪ながらも己が傷つかないように武装してきた
真九郎の心が遂にひび割れを起こした。
 自分のことを大好きって言ってくれたから...そんな人だから恥を忍んで
自分の弱さを打ち明けたのに...
 やっぱり夕乃も、強くない自分が嫌いなのか...

 真九郎の瞳が絶望に黒く濁る。
0653名無しさん@ピンキー2016/11/14(月) 00:53:45.98ID:bzIdgMTY
「嘘つき。やっぱり...俺なんかいなくても良かったんじゃないか...」
 
 抱きしめた真九郎が戦慄きながら体をガタガタと震わせるその変化にも
夕乃は平然と自分を崩すこと無く向き合っていた。
 
「真九郎さん。血のつながりがなくても私達は家族です」

「たとえ真九郎さんが逃げ出したとしても、何度でも見つけ出します」

「口だけならなんとでも言えるよ...」

「そうかもしれませんね。でも、真九郎さんは必ず戻ってきます」

「どうやってそれを証明するのさ...」

 夕乃に見捨てられる恐怖に怯えながらも、それでも気丈に振る舞う真九郎。
 どうせ、夕乃も都合良く自分を利用しようとする腹つもりなんだろう。
 そう高を括った真九郎の想像は、次の夕乃の一言で脆くも崩れ去った。

「だって、真九郎さんの隣には...いつも私が側にいるんですから」

「は?いや...それは、答えになって...」

「これが私の答えです。自分の弟の手を離す姉がどこにいるんですか!」

 その一言に、真九郎は救われた。

「いい年してベソかいている弟の手を引いて一緒に家に帰るんです」

 答えになっていない、ただの夕乃の意地が真九郎の心の闇を晴らした。

「私が好きになったのは、崩月の角をぶん回すあなたじゃありません!」

「強がっている癖に本当は誰よりも寂しがり屋の甘えん坊な真九郎さんです」

「さぁ、正直に答えなさい!崩月真九郎!」

 それは、とても強い微笑みだった。
0654名無しさん@ピンキー2016/11/14(月) 00:54:10.73ID:bzIdgMTY
「うっ....ううううううっ....」
 
 ダメだ。
 もう...この温もりを知ってしまえば、揉め事処理屋なんて到底出来ない。
 毎日命懸けで雀の涙の金を稼ぐような仕事が本気で馬鹿らしく思える。
 離れたくない。夕乃と一緒になりたい。

 かつて抱いた強さへの憧れが、愛する夕乃への想いに塗り潰されていく。
 
「お、姉ちゃん...」

「はい。夕乃は、真九郎さんのお姉さんで、将来のお嫁さんですよ?」

「本当に、もう...一人にしない?」

「大丈夫ですよ。真九郎さんはもうとっくに崩月家の一員ですから」

 真九郎が吐き出した最後の闇を夕乃は打ち消した。
 一度開け放たれた心の扉はもう二度と閉まることはない。
 
 この瞬間、紅真九郎は本当の意味で崩月家の一員となった。

「おかえりなさい。真九郎さん」

「ただいま」

 愛する人の胸に、ようやく真九郎は飛び込むことが出来た。

 最愛の人の帰宅に、夕乃は涙ぐみながらも今まで自分に寂しい思いを
させた真九郎に対して説教をはじめた。
 それは今までの修羅場に比べれば、取るに足りない小言ではあるものの、
真九郎を萎縮させるには十分な説得力があった。
0655名無しさん@ピンキー2016/11/14(月) 00:54:37.11ID:bzIdgMTY
「もうっ!一年もの間、弟の癖に生意気にもプチ家出なんかして!!」

「大体おじいちゃんは散鶴と真九郎を甘やかしすぎなの!」

「一人でなんでも出来ると思ったら大間違いなのよ?真九郎」 

「ごめんなさい。本当は背伸びしたかっただけなんだ」

 今日まで誰かに心を曝け出して甘えることなく過ごしてきた真九郎にとって
今の夕乃はまさにその辛さを全て忘れて受け入れてくれる存在だった。
 夕乃や崩月の家を守る為なら、例え自分の五体が砕け散っても今まで
忌避し続けてきた戦いに意味を見いだすことが出来る。

「いい?真九郎。貴方は私と一緒に崩月を継ぐ身なのよ?」

「内弟子程度の実力でいい気になるんじゃありません!」

 そう、今の真九郎にとっての最優先事項は夕乃を守ることだった。
 強くて格好良い自分を夕乃に好きになって貰って、ゆくゆくは一人前の
崩月の戦鬼となって、誰にも壊せない幸せな家庭を築き上げるのだ。
 
0656名無しさん@ピンキー2016/11/14(月) 00:55:00.32ID:bzIdgMTY
「夕乃さん...俺を受け入れてくれて、ありがとう」

「我が儘ばっかりして、迷惑かけ続けてたのに...」

「ううん。そんなことはもういいのよ」

「でも、真九郎さん。崩月に戻る前にやるべき事があるでしょう?」

 夕乃の笑顔に真九郎は遂にこれからのことを考えることを放棄した。

「まず手始めに揉め事処理屋の仕事はもうやめなさい」

「うん」

「揉め事処理なんてしなくても私とおじいちゃんで貴方を強くします」

「本当に?」

「ええ。だから真九郎さんは無理しなくて良いんです」

「また全身の骨が砕けるけど、その分強くなりますから...」

「夕乃さんよりも強くなれるかな?」

「真九郎さんならきっとなれますよ。だから一緒に頑張りましょう?」

「それなら、うん。なんとか辞められるよう努力する」

「よしよし。いいこいいこ」

 自分が救い出した紫に対して負うべき責任や、いつまでも変わることのない
幼なじみとの関係、そして師匠格の紅香への義理。

 今まで自分が命懸けで作り上げてきたものが無価値であるといわんばかりに、
まるでそんなものはどうでも良いと言わんばかりに、真九郎は夕乃の言葉に
夢中になって耳を傾けていた。
0657名無しさん@ピンキー2016/11/14(月) 00:55:25.23ID:bzIdgMTY
「次に、悪宇商会の人達と村上さんとは縁を切りなさい」

「あんな関われば害しか無い人でなしと関わる必要はありません」

「確かにそうだけど...」

「斬島さんや星嚙さんのことを真九郎さんは誤解しています」

「忘れたんですか?」

「貴方が彼女達や悪宇商会に関わってどんな目に遭ったのか?」

 夕乃の懸命な説得に真九郎は頭を悩ませていた。

 確かに星嚙絶奈は正真正銘の悪党だが、切彦は..いやいや、初めて会った時

自分は彼女に腹を切り裂かれ、活け作り一歩手前の状態まで追い込まれた

じゃないか...。

 そういうことを加味して中立的に彼女達と彼女達が働く場所のことを

改めて考えると、自分がいかに紙一重の状況で助かったのかを改めて

認識し直した。

 Killing Floorでの一件もそう、理津の件もそう。

 大体、悪宇商会のせいだということで全部片がつく。

 だからこそ、夕乃の懸念を無視できない自分がいるのだ。

 しかし、

「でも、銀子は悪者じゃ...」

 夕乃の洗脳に、真九郎の理性が警鐘を鳴らす。

 自分と真九郎の間に強固な絆を構築している最中の夕乃にとって紫以上に

村上銀子という部外者は殺したくなるくらいに目障りな存在でしかなかった。
0658名無しさん@ピンキー2016/11/14(月) 00:55:52.74ID:bzIdgMTY
「じゃあ真九郎さんは村上さんが攫われたら一々救いに行けるんですか?」

「それは...できる限り...」

「じゃあ紫ちゃんが同じ時に攫われたらどっちを優先するんですか?」

「そ、それは....」

「そんな状況になって、果たして真九郎さんは冷静でいられますか?」

「あ...ああ...」

 自分の放った一言に、真九郎が頭を抱えて蹲る。

 きっと頭の中では苦渋の決断の末、紫を救いに行く為に銀子を見捨てた

自分の浅ましさを恥じているのだろう。

「ね?だから今のうちに、村上さんとは距離を置くべきなんですよ?」

 真九郎がこの説得を聞き入れなくても別にいいと夕乃は思った。

 壊すのに手間取る星嚙や斬島ならともかく、なんの力も無いただの一般人、

それも非力な女に恐怖という名の釘を打ち付けるのはいつでも出来る。

「銀子さんならいい人を見つけて、幸せな家庭を築けます」

「あの人には真九郎さんより上手にラーメンを作れる人がお似合いです」

「そっか...その方が銀子にとって幸せだよな...」

「はい。悪宇商会の人達と縁を切るよりも遙かに簡単な事ですよ?」
0659名無しさん@ピンキー2016/11/14(月) 00:56:18.17ID:bzIdgMTY
 
 いやしくも自分と張り合って真九郎を横取りしようとした泥棒猫の

息の根を止めることが出来る。そう思うと心が躍った。

 夕乃の愛の本質は、ただ一人の人間を狂おしく愛する独占欲。
 
 その為に夕乃は自分の気持ちを押し殺し、愛する人の為に尽くしてきた。

 そして、その努力が実って真九郎は自分に己の全てを打ち明け、身も心も

委ねてくれたのだ。

 もう絶対に自分と真九郎の間にある運命の赤い糸は断ち切らせはしない。

 もし、そんなことをする輩がいれば崩月の力を用いて相手を殺してやる。

 夕乃の腹はもうそこまでくくられていた。

 自分以外の他の女、一部の例外は除くとして...数年程度仲良くしただけで

おこがましくも恋人気取りをする幼なじみや、容姿を餌にして真九郎を

悪の道に引きずり込もうとする悪漢悪女などもってのほか、論外である。 

「でも、夕乃さん。俺には、俺には紫の未来について責任があるんだ」

 そして、夕乃にとって最後の難関が遂に訪れた。

 自分よりも先に孤独だった真九郎の心を癒やし、その心を射止めた

手強い恋敵、九鳳院紫の存在だ。

 おそらく真九郎は今自分が言ったことをそのうち必ず実行するだろう。

 だが、今まで自分に流されるだけだった真九郎があの少女のこととなると

目の色を変えて必死になって自分に刃向かっている。
0660名無しさん@ピンキー2016/11/14(月) 00:56:39.97ID:bzIdgMTY
 
 自分よりも先に紫が、真九郎を「強い男」に変えたという事実。

 それが夕乃にとってはこの上なく不愉快だった。

 真九郎を導いたのが紫という事実のあまりの悔しさに夕乃は涙を流す。

「真九郎さんの、大馬鹿...なによ、私のことを夢中にさせといて...」

「それで最後には紫ちゃんを選んで、私を端に追いやるのね...」

「弱い癖に毎日危ない橋を渡って...どb黷セけ私を心配bウせれば...」

 真九郎はボロボロと大粒の涙を流す夕乃の肩を優しく抱きしめる。

「夕乃さん、紫の未来に対して俺には責任があるんだ」

「何も知らない顔して紫を捨てられる段階はもうとっくに過ぎ去った」

「だから、言ったのにぃ...」

「崩月の力を使って私から離れる真九郎さんなんかよりも」

「寂しがり屋の甘えん坊で私だけを...」

「私だけを見てくれる真九郎さんが好きなんですって...」 

「うううっ....うあああああーっ!うあああああああ!!!」

 言われることを覚悟して、その上で尚真九郎の口から直接言われた

その言葉の残酷さに、夕乃の自尊心は大きく傷つけられた。

『俺の命に賭けても、紫を孤独になんか絶対させない』

 結局真九郎にとっての一番は紫で、自分は二番でしかない。
 
 もう真九郎の心の中での格付けは済んでいて、もし紫と自分の二人のうち

一人しか助けられないという状況に陥ったら、間違いなく真九郎は

紫を助けて自分を見捨てるんだろう。
0661名無しさん@ピンキー2016/11/14(月) 00:57:04.90ID:bzIdgMTY
(そう...ですよね)

(紫ちゃんは本音で、私は手練手管で...ふふふ、ふふふふ...)

(私は卑しい女、だから...だから真九郎さんは、私なんかよりも)

 しかし、真九郎の出した答えは夕乃の想像の斜め上だった。

「ごめんね、夕乃さん。俺の為にいっつも苦しんで...」

 優柔不断で自分の気持ちを偽った笑みを浮かべる真九郎はもういない。
 
 そこには夕乃と同じように腹を括った真九郎がいた。

「俺は、俺の守りたい人の為にしか戦わないことにした」

 夕乃が歪んだ形で真九郎を守ろうとしたように、真九郎も歪んだ形で、

それでも必死に自分を守ってくれる夕乃のその想いに応えようとする。

「そして、その守りたい人っていうのは...」

「夕乃さんと紫とちーちゃんの三人だけだ」

 夕乃を真剣に見据えながら、真九郎は自分の本音を吐き出した。

「あとはもうどうでもいい。好きに生きて、好きに死ねば良い」

「これが、今まで戦ってきた中で俺が出した答えなんだ」 
 
「これ以上は...もう背負えない」
0662名無しさん@ピンキー2016/11/14(月) 00:57:35.77ID:bzIdgMTY
 大好きな人にお前だけを愛すると言われなかった無念と、ようやく

真九郎が自分のことを守るべき大切な存在として認めてくれた嬉しさの

板挟みになりながらも、夕乃はそれでも必死に真九郎の愛を自分だけの

ものにしようと最後の悪足掻きをした。 

「イヤです!真九郎さん!お願いだから私だけを愛して下さい!!」 
 
「紫ちゃんにも、ちーちゃんにも貴方を渡したくなんかないの!」

「真九郎さんのお嫁さんになるのが夢だったんですよ?!」

「貴方は人殺しの家系の末裔の穢れた私を初めて愛してくれた人..」

「卑しくて、独占欲が強くて...一人でいるのが寂しくて...」

「そのくせ上品ぶってお姉さん気取りのウザい女で...」

 夕乃が自分を傷つける言葉を吐く度に、真九郎は夕乃を抱きしめる

腕の強さを少しずつ強めていった。

 支離滅裂になりながらも、どうしようならない運命の中にいる

自分を呪って、傷つけ、それでもなお愛する男の前で醜い本心を

曝け出して愛を叫び続けた女を、真九郎はより一層幸せにしたいと

思うようになった。
0663名無しさん@ピンキー2016/11/14(月) 00:57:58.23ID:bzIdgMTY
「夕乃さん」

 涙を浮かべ、唇を震わせる夕乃に覆い被さった真九郎はそのまま

自分の唇を夕乃に重ねた。

 固く結んだ唇をこじ開け、緩んだ歯の間から様子を伺う夕乃の舌を

引っ張りだして、その上に自分の想いを乗せる。

「ああ...んっ、んふぅ...ふぁぁ...」

 蕩けるような心地のあえぎ声が真九郎の耳をくすぐった。

 弛緩する夕乃の体を抱きかかえた真九郎は、そのまま立ち上がる。

「や、いや...真九郎さん、わ、私の、私のこと...嫌いになんか」

「ならないよ。俺は夕乃さんになら何されても許しちゃうよ」

「流石に夕乃さんが他の男といちゃついてたら怒るけどね」

「だったら...」

「うん。でも、俺はお姉ちゃんの言うことを聞かない悪い子だから」

 お姫様だっこをされた夕乃は先程までの包容力はどこへやら、本当に

お姫様のようにか弱く、好きな男に嫌われるのを恐れている普通の

女の子になっていた。
0664名無しさん@ピンキー2016/11/14(月) 00:58:27.97ID:bzIdgMTY
 先程までとは立場が逆になったことに戸惑う夕乃の動揺を見抜いた

真九郎はそのまま夕乃をモノにすべく一気にたたみかける。

「ねぇ、夕乃さん?」 

「夕乃さんは紅夕乃になってくれないの?」

「ぁぅ...///」

 麻薬のように心に浸透する魔法の言葉。

 仮に将来、真九郎と散鶴と紫の四人で一緒に住むことになったら、

きっと散鶴も紫も甘えたい盛りだから、一生懸命真九郎にアピールを

仕掛けてくるだろう。
 
 ダメだ、しっかりしないと真九郎に良いように丸め込まれてしまう。

 しかし、そう思えば思うほど余計に夕乃は真九郎の言葉を疑うことが

出来ず、どんどん真九郎の言葉を信じてしまう。

「もし、なってくれたら...」

 必死になって自分を保とうとする夕乃だが、真九郎はその苦悩を

軽々と飛び越え、夕乃を陥落させるべく更に言葉を紡ぎはじめる。

「夕乃さんのこと、一番愛して可愛がってあげるのになぁ...」

「ううっ。ダメ...ダメです。そんなご都合主義、認めま...」

「して欲しいこととかなんでも聞くし、二人きりでデートだってするよ?」

「はうぅ...///」

「それに...」

「ちーちゃんや紫よりもいーっぱい俺の子供を産んで貰いたいなぁ...」

「そ、そんな...それじゃあまるで私が都合のいい女じゃありませんか...」
 
0665名無しさん@ピンキー2016/11/14(月) 00:58:49.32ID:bzIdgMTY
 
 ブンブンと頭を振って一瞬だけ脳裏に浮かんだ、真九郎と紫と散鶴との

夢のハーレムライフで一番の寵愛を受ける自分とその腕に抱かれている

真九郎との間に出来た愛する我が子。

「だ、ダメですよ。ま、まだ真九郎さんも私も大人じゃないのに...」 
 
「だ、大体、真九郎さんはどう責任を取るおつもりなんですか?」

 夕乃の最後の抵抗に、真九郎は悩むことなく即答した。

「崩月夕乃さん。一度しかいいません」

「はい」

「一生に一度のお願いです。俺の子供を...産んで下さい」

「!!!」

「どんなことしても夕乃さんを幸せにします」

「ちーちゃんと紫以外の女の子には、もう手を出しません」

「だから俺の一生に一度のお願いを、聞き届けてくれないでしょうか?」

 それは、まさに愛の告白だった。

 恋人の階段をすっ飛ばして、恋敵の誰よりも早く結婚まで辿りついた

夕乃の心中はまさに天にも昇る心地だった。
0666名無しさん@ピンキー2016/11/14(月) 00:59:12.72ID:bzIdgMTY
「はい。こちらこそ末永くよろしくお願いします」

「うふふ...。今日はまるで夢みたいな事ばかり起きますね」

「本当に嘘じゃないかって、私疑ってるんですよ?」

 申し訳なさそうに頭を掻く真九郎は抱きかかえた夕乃を降ろした。

 布団の上に寝かされた夕乃は、嬉し涙を流し、真九郎の告白を快諾した。

「真九郎さん。もう一回確認しますよ?」

「はい」  

「私が正妻で、ちーちゃんと紫ちゃんは側室さんなんですよね?」

「はい」

「ちーちゃんと紫ちゃん以外の女の子には手を出さないんですよね?」

「で、できる限り...そ、その善処します」

「出したら、その女を半殺しにしますからね?」

「浮気も不倫もしませんっ!」

「よろしい」

「え、えっと...」

「私が一番真九郎さんのちょ、寵愛を受けられるん...ですよね?」

「はい」

 思っていたのとは違う展開になってしまったが、真九郎にとっての

一番が自分だということが明確になり、更には真九郎と両想いであることが

分かっただけでも夕乃にとっては大収穫だった。
0667名無しさん@ピンキー2016/11/14(月) 00:59:54.36ID:bzIdgMTY
「まだ、紫がどうなるか分からないですけど...」

「でも、俺頑張りますから」

「夕乃さんと紫とちーちゃんを護れる男になります!!」

「はい。その意気ですよ、真九郎さん」

「これからは一人で悩まずに私に相談して下さいね。旦那様?」

 そうだ。もう誰にも遠慮することなく真九郎を独占できるのだ。

 まずは明日の朝、法泉と冥理に事の次第を告げて真九郎が絶対に

崩月から今後逃げ出さないようにする必要がある。

 その次は紫を説得し、最後に紅香に話をつける事になるはずだ。

(ふふっ...もう逃がしません。逃がしませんからね、真九郎さん)  
 
 心の中で黒い笑みを浮かべる夕乃と苦笑いを浮かべた真九郎。
 
 そして...

「だめー!おにーちゃんの一番はわたしなのー!!」

 ふすまを開けて真九郎の胸に飛び込んできたのは散鶴だった。
0668名無しさん@ピンキー2016/11/14(月) 01:00:20.85ID:bzIdgMTY
「ち、ちーちゃん?い、いつの間に?」

 驚く姉に向き直り、弱気な瞳に強い嫉妬を滲ませた散鶴は夕乃に

対して宣戦布告をした。

「おねーちゃん!おにーちゃんはわたしのなの!」

 そして夕乃が惚けている間に、散鶴は再び真九郎にキスをした。

「ち、ちーちゃん!?」

「あらあら、散鶴ってばまだ五歳だっていうのに...お盛んねぇ」

「おう真九郎!ようやく夕乃のこと受け入れる気になったか」

「し、師匠?!そ、それに冥理さんまで!!」

 いつの間にか帰ってきた法泉と冥理がニヤニヤと笑いながら、しかし

心からの祝福を込めた笑みを浮かべ、夕乃と真九郎をそれぞれ抱きしめる。

「真九郎君。そそっかしい娘だけど幸せにしてあげてね」

「い、いつからお母さんとお爺ちゃんそこにいたの?」

「いつからってなぁ?そりゃあ勿論、最初からだな」

「そうねぇ。真九郎君が夕乃のことお姉ちゃんって言った辺りからよ?」

 どうやらこの二人には何もかもお見通しだったようだ。 

「あはは...参ったなぁ。バレちゃったよ」
0669名無しさん@ピンキー2016/11/14(月) 01:00:48.67ID:bzIdgMTY
 上品に笑う冥理に抱きしめられた真九郎の隣では、夕乃と散鶴の仁義なき

姉妹喧嘩が勃発し、それを法泉が面白そうに見守っている。

「おねーちゃんのうそつき!さいしょからだましてたんでしょ!」

「う、嘘なんか言ってないわよ。結果的に目的は達成したじゃない」

「ううう...妹を出し抜いて一人だけ特別扱いなんてひきょうだよぉ...」

「ハハハハハ。散鶴、出遅れちまったなぁ」

「お爺ちゃんは黙って!ね、ねぇちーちゃん?泣かないで?」

「えぐっ、えぐっ。おねーちゃん...なんか、きらい...」

「紫ちゃんに言いつけてやる...っ!」

「ちーちゃん...」

「あっちいってよぉ!バカぁ!」

「し、真九郎さぁん...」 

 大事な妹からの拒絶に夕乃はおろおろするばかりでどうにもならない。

 だったらここは自分の出番だな。と思った真九郎は夕乃の裏切りに

心傷つき、泣き出しそうになりながらも、必死に涙を堪える散鶴を抱き上げた。
0670名無しさん@ピンキー2016/11/14(月) 01:01:09.96ID:bzIdgMTY
「ちーちゃん、ちーちゃん。お話聞いてもらえるかな?」

「やだやだやだぁ!!おにーちゃんのお嫁さんにしてくれなきゃやだぁ!」

「そんな事言うと夕乃さんがちーちゃんのおしりぺんぺんしちゃうよ?」

「やだあああああああああああ!!!!」

「あーあ。今夕乃さんがすごーく怖い顔でちーちゃんの後ろに立ってるよ?」

「怖いだろうな〜、痛いだろうな〜夕乃さんのおしりぺんぺん」

「ふぇええええええ....」

 すっかり怯えきった散鶴は泣くのも忘れて、自分を抱き上げている

真九郎の体に抱きついて自分の身を守ろうとした。

「ちーちゃん。お話聞いてくれるよね?」  

「うん...あの、お尻...叩かない?」

「叩かないよ。夕乃さんも俺もそんなことしないよ」

 その一言にようやく落ち着きを取り戻した散鶴はずっと気になっていた

自分に対する真九郎の本心を聞く覚悟を決めた。
0671名無しさん@ピンキー2016/11/14(月) 01:01:31.10ID:bzIdgMTY
「ぐすっ、おにーちゃんはわたしよりおねーちゃんがすきなの?」

「うん。でも、ちーちゃんも夕乃さんと同じ位大好きだよ?」

「でも、わたしは愛人で、おねーちゃんは正妻なんでしょ?」

「今のところはそうなるかな?でも、ちーちゃん」

「?」

「ちーちゃんはまだ小さいし、これから色んな人と出会う筈だよ」

「もしかしたら俺よりもいい人がちーちゃんを好きになるかも知れないし」

「ちーちゃんが他の誰かを好きになる事もあるかもしれない」

 まだ散鶴の人生は始まったばっかりだ。

 夕乃や自分はこれからの人生を大人として過ごす事になる時期にある。

 社会に出、職を得て毎日働くことになるだろう。

 でも、散鶴は小学校を卒業すらしていない。

 今の散鶴にとっては、真九郎と仲良くすることよりももっと多くの人と

出会って触れあって、色々な形の関係を築くことが何よりも重要なのだと

真九郎はわかりやすく説明した。

 それでも散鶴は納得がいっていない様子だったが...
0672名無しさん@ピンキー2016/11/14(月) 01:01:55.32ID:bzIdgMTY
「もしちーちゃんが高校生になっても俺の事を好きでいてくれたら」

「その時は、責任をとってちーちゃんをお嫁さんにするから」

「だから、その時までちーちゃんは友達を沢山つくること。いい?」

「約束だよ?おにーちゃん」

「うん。約束する」

 心の底から安らいだ表情を浮かべた散鶴と指切りを交わした真九郎は

傍らに控える冥理に散鶴を預け、正面に立つ法泉に向き直った。

「師匠、冥理さん」

「崩月の家を飛び出した不祥の弟子ですが、ようやく覚悟が決まりました」

「夕乃さんを俺に下さい。俺は夕乃さんのことを愛してます」

 今まで自分を育ててくれた二人の親に深く頭を下げた真九郎だが、

当の二人は表情を変える事なくその続きを無言で促す。

 そして、真九郎の後に続くように夕乃もまた母と祖父に向かって 

深々と頭を下げ、自分の本心を言葉にして二人に伝える。
0673名無しさん@ピンキー2016/11/14(月) 01:02:23.67ID:bzIdgMTY
「おじいちゃん、お母さん。私は真九郎さんと結婚したいんです」

「崩月の家の宿命とか、裏十三家の血筋とかそういうのじゃなくて」

「私は真九郎さんを幸せにしてあげたい。この人と一緒になりたいんです」

「真九郎さんとの仲を認めて下さい。お願いします」

 将来の義理の息子とその傍らに立って歩いて生きたいと望む自分の娘。

 本人達が好き合って結ばれたいというのなら、母親としてそれを祝福しない

訳にはいかない。
 
 しかし、『崩月』としての答えはまた別である。

「真九郎、崩月の一人娘と添い遂げる上でだ」

「崩月を継ぐという事の意味をはき違えちゃいねぇよな?」

「人殺しの業を後世まで伝える義務もある」

「いざとなれば家族を守る為、多くの人間を殺す必要も出てくる」

「真九郎、お前に...その覚悟はあるのか?」

 崩月の一員となる以上、許されざる業の継承者としてこれからの人生を

真九郎は生きていかなければならなくなる。

 人殺しを生業とする家業で多くの人達を殺めてきた崩月家が買った

怨みの総数は数え切れないほどある。

 その技術を継承するということは、かつて自分の家族と多くの罪無き

人達の命を奪ったテロリストと同じ存在にまで成り下がる事に他ならない。

 おそらく、ここが真九郎にとっての最後の分水嶺。

 引き返すも引き返さないのも自由に決断できる最後の瞬間だ。

「俺は...」

 一瞬だけ脳裏に浮かんだ幼なじみの笑顔に詫びて、真九郎は改めて

法泉に向き直る。
0674名無しさん@ピンキー2016/11/14(月) 01:02:45.60ID:bzIdgMTY
「俺は引き返しません。どんなことがあっても夕乃さんを守ります」

「ちーちゃんも、冥理さんも、師匠も。俺が絶対に守ります」

 手放したモノの価値を悼みながら、それでも真九郎は止まる事無く

前に進む事を決意した。

 人でなしに墜ちながらも、それでも真九郎は自分が出来る事を選びとる。

「夕乃さんやちーちゃんに人殺しなんか絶対させない」

「だから、師匠。俺に崩月の業を教えて下さい」

「俺が、俺の護りたい人達を護る為の技を教えて下さい!」

「その言葉に、嘘はないな?」 

「ありません」

「...わかった」

「そこまで覚悟を決めてんなら徹底的にお前を鍛える」

「もう一本お前に角を移植してから、また修行を一からやり直す」

「夕乃!」

「はい!」 

「子作りはほどほどにな」

「...はい」

「あと、初孫の名前は俺につけさせろ」

「わかりました。でも変な名前にしないで下さいよ?」

「おう。ちゃんとお前が納得する名前にしてやらぁ」
0675名無しさん@ピンキー2016/11/14(月) 01:03:05.22ID:bzIdgMTY
 十数年前に産んだ娘がまさか学校を卒業する前に結婚相手を見つけ出すとは

予想外だったな、と愛する孫娘を茶化す父の姿を見て冥理は涙ぐんでいた。

 真九郎も引き取ってきた時に比べれば、随分成長したなと懐かしく思える。

 生きる意味も無く、ただ死にたくないからという理由で生きながらえていた 

あの少年が崩月の家を出た途端、途方もない大事に巻き込まれながらも、

なんとか切り抜け、己の人生に生きる意味を見いだしたというのが、冥理と

法泉にとっては本当の我が子のように嬉しく思えた。

「真九郎君。夕乃。本当におめでとう。祝福するわ」

 だから、二人が幸せになれるなら私達親は結婚を認めよう。

 それが冥理と法泉の親としての答えだった。


「真九郎。夕乃との結婚は俺も冥理も反対はしねぇよ」

「好き合った女と男同士、末永く幸せになればいい」

 法泉はそう言い残し、客間から立ち去っていった。
0676名無しさん@ピンキー2016/11/14(月) 01:03:35.34ID:bzIdgMTY
 背を向けて立ち去る一家の大黒柱に真九郎と夕乃は深く頭を下げた。

 そして散鶴も渋渋ながら自分が出る幕はないと悟ったのか、泣きべそを

かきながらふすまを開け、祖父の後を追うように自分の部屋へと戻った。

「真九郎君。紫ちゃんは夕乃より手強いわよ?」

「お母さん...」

「夕乃、選択を間違えないようにしなさい」

 事の顛末を全て知りながら、あえて言葉にすることなく立ち去った法泉の

懸念を冥理は真九郎と夕乃に伝え、その場を後にする。

 言わんとすることは分かっている。

 だがしかし、ここで紅真九郎は退くわけにはいかない。

(だって、俺が...俺だけが紫の味方なんだから) 

 アイツと出会って、初めて自分の心の弱さと向きあえた。

 あの小さな手を取って、俺は自分の殻を破ることが出来た。

 今度は俺の番だ。アイツを本当の意味で九鳳院から出してやる。

 誓いも新たに真九郎は前を向いた。
0677名無しさん@ピンキー2016/11/14(月) 01:03:59.42ID:bzIdgMTY
「真九郎さんの気持ちは嬉しいです...でも私は鬼の娘ですから...」

「くれぐれも他の女に手を出すときは気をつけて下さいね?」

「私、相手の女が真九郎さんの子供を孕んだら殺しますからね」

「物騒なこと言わないでよ...夕乃さんの手が血で汚れるなんて嫌だよ」

「本気です!」

「真九郎さんは無意識のうちに女をその気にさせる天才なんですから!」

 口元に浮かべた苦笑いを夕乃が咎める。

 分かってるさ、自分が下した決断がどれだけ酷いかくらいは。

 でも、それでも...俺は貴女のことを愛してる。

 だから、これだけは言わせて欲しい。

「夕乃さん」

「なんですか、真九郎さん」

「貴女より弱い俺だけど、いつか必ず貴女を護れる位強くなります」

「だから俺の手を離さないで下さい。いつまでも俺に嫉妬して下さい」

「ずっと俺のことだけを見つめていて欲しい」

「俺が好きなのは、ありのままの夕乃さんだから」

 言われた側から臆面も無くいけしゃあしゃあと夕乃をくどく自分に

内心あきれながらも、それでもこれが俺の本心なんだと開き直る。

 夕乃も真剣な自分の警告をここまで逆手に取られては、最早呆れを

通り越し、真九郎に惚れ直すしかないと観念したのだった。

 ありのまま。なんて、そんな上手いことを言われてしまえば

 信じたくなってしまう。いや、絶対に信じ切ってみせる。

 それが、夕乃の真九郎に対する愛なのだから。
0678名無しさん@ピンキー2016/11/14(月) 01:04:22.15ID:bzIdgMTY
「ええ。その約束、確かに守ります。それに、信じてますから」

「真九郎さんが世界で一番愛しているのはこの私だって」

「ありがとう。大好きだ、夕乃さん」
 
 本当に、本当に長い長い遠回りだった。

 迷い続けた分、明日からはまた新しい世界がきっと開けるだろう。

 でも、夕乃の心の中には、なんの苦労もなく真九郎を手に入れる

紫に対しての反感は未だに残っているわけで...

「やっぱりちーちゃんは認めても、紫ちゃんは認められません!」

「真九郎さん。負けませんからね!」

 ぷくーっ、と頬を膨らませる最愛の人を真九郎は抱きしめる。

「夕乃さん。明日、市役所に行って婚姻届取りに行こうか」

「本当ですか?!」

「デートしよう。揉め事処理屋の仕事は...キャンセルでいっか」

「やったぁ!!」
0679名無しさん@ピンキー2016/11/14(月) 01:04:38.94ID:bzIdgMTY
 明日は学校だが、もうそんなのどうでもいいや。

 今は楽しめるだけ、自分に与えられた青春を満喫しよう。
 
 命短し恋せよ若人。難しいことはとりあえず後回しでいこう。

「夕乃さんは可愛いなぁ。よし!決めた」 

「これからは徹・底・的に夕乃さんを甘やかす!」

「きゃ〜〜〜〜!真九郎さん大好き!もう最高です!」

 そして、夕乃と真九郎は二日間不眠不休でお互いを貪り合った。

 余談だが、散鶴はその後二週間真九郎と夕乃と口を利かなかったそうな。

「おにーちゃんとおねーちゃんなんかはぜちゃえ...」 

 妹の口から飛び出た辛辣な一言に夕乃と真九郎は頭を悩ませることに

なったのだが、それはまた別の機会にということで。


 最終回 紫の嫁入りに続く
0680名無しさん@ピンキー2016/11/17(木) 21:15:55.07ID:vUQ3KXV1
更新乙です
夕乃さんやちーちゃんはどうにかなったけど、紫は説得が難しそう
どうなるか注目ですね
0681名無しさん@ピンキー2016/11/24(木) 23:10:56.27ID:V3Gh3kBt
〜紫の嫁入り 前編〜

4日後 学校


「真九郎さん。お昼食べましょう」

「そうだね。屋上行こうか」

 何のことはない日常の1ページ。

 それが音を立ててビリビリと破かれる瞬間に立ち会ったとき、

人は呆然と立ち尽くすしかない。

「嘘...なんで、紅君が崩月先輩と付き合ってるの?」

「え、崩月先輩あんなのが趣味なのかよ...」

「嘘、だろ...」 

 学校一の大和撫子と付き合っている相手は影の薄いパシリ生徒。
 
 そんな奴いたっけレベルの存在感の相手に対して、愛おしそうに

手を絡め、体をすり寄せる夕乃のデレっぷりときたら...
0682名無しさん@ピンキー2016/11/24(木) 23:11:19.08ID:V3Gh3kBt
「夕乃さん。恥ずかしいよ...皆の目もあるから控えめに...」

「イヤです。自重するのはもう辞めました。聞きません」

「これからは爛れた二人だけの青春と愛の性活を過ごすんです!」

「『お姉ちゃん』お願いだから、自重しよ?ね?」

「!!」

「も、もう...仕方ないですねぇ...真九郎がそう言うなら」

 風呂敷に包んだ三重の弁当箱が持ち主の感情を素直に反映する。

嬉しげに揺れる弁当箱と幸せそうに微笑む真九郎。

 羨望と嫉妬と、あと危険な視線を一身に集めながら真九郎と夕乃は

廊下を歩き、誰もいない屋上へと上がっていった。
0683名無しさん@ピンキー2016/11/24(木) 23:11:37.24ID:V3Gh3kBt
屋上

 フェンスの近くにあるベンチに腰掛けた真九郎の膝の上に夕乃が乗っかる。

 決して小さくはないが、その温もりをより味わう為、真九郎は

自分の正面へと夕乃の座る向きを変える。

「我慢、出来なくなっちゃったんですか?」

「ううん。我慢する必要なんかもうないんだ」

「夕乃さん、だっこ」

 真九郎にまたがる夕乃はその頼みに即座に応じる。

 自分の左胸に真九郎の耳を押しつけ、その上から真九郎が安心して

眠れるように頭から腰までを滑らかな手つきで撫ではじめる。

 柔らかく、そして温もりたっぷりの夕乃の胸に顔を埋める真九郎。

 その顔はとても幸せそうで安らいでいた。

「はふぅ...幸せぇ...」 

 二人のうち、誰が呟いたか分からない言葉の続きは真九郎のポケットから

鳴り響いた携帯電話の着信音で掻き消されそうになった。
0684名無しさん@ピンキー2016/11/24(木) 23:11:57.96ID:V3Gh3kBt
「...」

 その瞬間、夕乃の目からハイライトが消えた。

 真九郎のポケットから携帯電話を取りだし、電話をかけてきた相手を

確認する。

 案の定、その相手は村上銀子だった。 

 通話ボタンを押し、黙って自分の耳に真九郎の携帯を押し当てる

「...もしもし」

「...」 

「真九郎...ふざけてるの?」

「...」

「はぁ...仕事の資料渡すから新聞部の部室に今すぐ来なさい」

「...」 

 ナンダ、コノオンナハ...

 そうだ、そう言えばこのオンナは真九郎がもう誰の恋人になったのか

まだ知らないんだった。

 なら、思い知らせてやらなければ...
0685名無しさん@ピンキー2016/11/24(木) 23:12:23.85ID:V3Gh3kBt
「夕乃さん。銀子には手を出さないでね」 

「真九郎さん...でも...」

 通話ボタンを切った真九郎は、恐ろしい威圧感を撒き散らす夕乃に

怯えることなく普通に釘を刺した。

「ちゃんとお別れは自分の口で伝えなきゃ意味が無い。そうでしょ」

「これが俺の一応最後の仕事だからさ。ちゃんとしたいんだ」 

「分かりました。真九郎さんがそう言うなら、従います」

 渋々ではなく、笑顔で真九郎を信じる夕乃に真九郎は危うさを感じた。

『浮気したら、その女を半殺しにしますからね』

『私、相手の女が真九郎さんの子供を孕んだら殺しますからね』

 あの日に夕乃が自分に打ち明けた事が、現実問題として絶対に、

必ず起るという懸念がまさに的中するところだった。
0686名無しさん@ピンキー2016/11/24(木) 23:12:45.53ID:V3Gh3kBt
「全く、真九郎さんは罪作りな人ですね」 

「夕乃さんには負けるよ。可愛くて純粋で男タラシの罪作りな夕乃さんには」

「なっ。私はそんなふしだらでもなければ男タラシでもないですっ!」

「そうかなぁ?サッカー部の主将が夕乃さん好きだって噂、有名だよ」

「私はあんな人好きでもなければ、眼中にもないですっ」

「そっかぁ。そうだよね。夕乃さんは俺だけの女なんだから...」

 夕乃の背中に爪を突き立て、今まで夕乃にも見せたことのない

独占欲を見せ始める真九郎。

 夕乃は真九郎を縛り、真九郎は夕乃を縛り付けて離さない。

 ついにここまで真九郎の心を独占するのに成功した夕乃は心の中で

狂喜した。

 紫や散鶴は例外として、現在真九郎と一番相性が良いのは間違いなく

自分であるという確信が夕乃にはあった。

「じゃあ、村上さんの所に行く前にお昼を食べちゃいましょうか」

「今日のお弁当は結構美味しいわよ」

「ありがとう。夕乃お姉ちゃん」
0687名無しさん@ピンキー2016/11/24(木) 23:13:15.69ID:V3Gh3kBt
 「はい。あーん」

「あーん」

 昼間から豪勢な夕乃の手作りの料理を頬張る様を本当に嬉しそうに

眺める夕乃は、更に甲斐甲斐しく自分の箸で鮭の切り身を真九郎の口に運ぶ。

 真九郎も夕乃と付き合う前は、こうした『女の夢』というものに対して

抵抗感を抱いていたものの、いざ心を通わせ恋人として付き合い始めると

なかなかどうしてこれがとても心地良い。

 自分の食べる様を見て恋人が嬉しそうに笑ってくれる。

 それだけで胸と心の空白が瞬く間に埋められ、癒やされていく。

 本当にこの人は自分を愛してくれているんだと確信できる。
0688名無しさん@ピンキー2016/11/24(木) 23:13:44.50ID:V3Gh3kBt
「ふふっ...美味しいですか」

「うん。夕乃さんの料理はいつも美味しいよ」

「ふふーん。そうでしょうそうでしょう」

「なんて言ったって真九郎さんへの愛が一番籠もっていますから」

「じゃあ、今度は俺が夕乃さんのお弁当つくってあげる」

「まぁ。じゃあその時はちーちゃんと一緒にピクニックに行きましょうか」

 食べ盛りの真九郎が夕乃の手作り弁当を平らげるまで僅か15分。

 その間に夕乃も自分に作った弁当を素早く食べ終える。

「ごちそうさまでした」

「はい。おそまつさまでした」

 雲が散らばっているものの、よく晴れた気持ちの良い晴れの日の午後。
 
 重箱を片付ける夕乃を見遣りながら、真九郎は空を見上げた。

「どうしたんですか?空なんか見上げて」

「え。ああ。今日の夜は星が綺麗かな〜って」

「そうですね。今日の夜は月も星もよく見えるはずですよ」

 適当な話題を夕乃に振りながら、真九郎はこれから訪れる幼馴染との別れを

想像し、心を痛めた。 

 しかし、これから自分がやろうとすることに銀子と銀子の家族までも

巻き込む訳にはいかない。

 
(銀子...)

 
0689名無しさん@ピンキー2016/11/24(木) 23:14:02.64ID:V3Gh3kBt
放課後 新聞部部室


 最後のHRの終了後、真九郎はいつものように新聞部の部室へ向かう。

 誰も部員がいない部室のたった一人の主は、いつもの場所にいた。
 
「遅い。何してたのよ」

「悪い。夕乃さんと一緒にお弁当食べてたんだ」

「はぁ...また崩月先輩?」

「また、ってなんだよ」 

「不潔」

「......」

 その主は、果たして真九郎の変化に気が付いていただろうか?

 夕乃のことを不潔と言い放ってパソコンの画面に向き直った彼女は

好きな男が自分が最も嫌う女に奪われたと言う事に....

「銀子、今回の仕事の前にさ...これ、今まで払ってなかった情報料」

「...なに、って...。え?ちょっと、これどうしたのよ...」

「?」

 まるで信じられないものを見るかのように真九郎を見つめる銀子。
 
 何事もなかったように平然としている真九郎。

 この状況でそれが手遅れだと気が付いたときには、既に打てる手が

ないという現実が待ち受けていることを受け入れられない自分がいた。
0690名無しさん@ピンキー2016/11/24(木) 23:14:19.52ID:V3Gh3kBt
「ん?46万円ものツケをどう一括払いする算段をつけたかって?」

「えーっと杉原さんの一件で使ったヤクザの組があるんだけどさ...」

「そこの内部でちょっとしたゴタゴタがあったんだ」

「で、そのゴタゴタをなんとかしてくれって俺に直接連絡が来たんだよ」

「アンタ...なに勝手なことを...」

「ああ、銀子が心配してるようなことはしてないよ」

「で、その揉め事を解決して50万貰ったんだ」

 今まで真九郎のやろうとすることの真意が分からなかった事はなかった。

 誰にも害されることのない強さを得る為に、紅香に弟子入りした。

 九鳳院という巨大なシステムに虐げられている紫という少女を守る為、

彼は九鳳院に弓を引き、自分はその助けになるべく手助けした。

 だが、今回の一件は全く真九郎の真意が見えない。

 確かに真九郎にもそれなりに伝手はあるのだろう。
 
 しかし、それはあくまでも小さなものであって、そんな数十万もの大金を
 
気前よくポン、と渡すようなパイプや組織とはつながりが....
0691名無しさん@ピンキー2016/11/24(木) 23:14:40.93ID:V3Gh3kBt
(あった...)

(一つだけ、あった)

 脳裏に浮かぶ、世界の裏を牛耳るどす黒いまでに大きなあの組織。

 不幸なことに自分はそこに務める悪党どもを知ってしまっている。

「まさか、真九郎...アンタ、悪宇商会と手を...」

「組んでないって。はぁ...誤解を招いて悪かったよ」

「奥さんが浮気している現場に依頼人を連れて行く」

「それが今回引き受けた俺の仕事だよ」

「後は、奥さんや間男が逃げないように見張るのも仕事に入ってたっけ」

「尾行と証拠写真と実働と時給を全部合わせたら結構な額になったんだよ」

「そ、そう...」

 釈然としない心を無理矢理納得させた銀子は真九郎が抱えていた

借金を一応、清算したのだった。
0692名無しさん@ピンキー2016/11/24(木) 23:15:00.70ID:V3Gh3kBt
「これ、今回の資料」

「うん。ありがとう」

 必死になり震えを隠そうとする銀子だったが、それは無理な話だった。

 いつもと変わらぬ風を装っている真九郎だが、その背後から漂ってくる

血腥い鮮血の匂いが、自分の知っている幼馴染がもう引き返せない所にまで

足を踏み入れていることを教えている。

 もう、自分では引き上げることが出来ない所まで真九郎は墜ちている...

「別れた元旦那のストーカー行為を止めさせて欲しい...」

「行動パターン...動機は親権と復縁による遺産の...」

「依頼内容、対象者を二度と家族に危害を加え...って何すんだよ銀子」 

 慌てて依頼者からの依頼書と資料を取り上げた銀子は、いつもなら

絶対しないような作り笑いを浮かべ、真九郎の興味の矛先をずらしはじめた。

「や、やっぱりこの依頼はなし!アンタじゃ経験不足よ」

「ええっ?ストーカーとか嫌がらせとかはそれなりに経験して...」

「割の良い仕事だと思ったんだけど、やっぱり危険すぎるわ」

「相手は柔道の有段者で元外人部隊の100kg超の黒人よ」

「アンタみたいなもやし、すぐに粉々にされるのがオチよ」
0693名無しさん@ピンキー2016/11/24(木) 23:15:27.81ID:V3Gh3kBt
この時ばかりは、依頼者の所持する圧倒的暴力が頼もしく思えた。

 だが、銀子はあまりにも簡単な事を失念していた。

 真九郎が『崩月』だということを..

 そして、崩月はあと一人この学校にいるという事を....

 心の整理がつかない中、必死に真九郎に何が起ったのかを頭を

フル回転させた銀子が辿りついた、考え得る限りで最悪の結末。

 待って、なんて一言も言わせない無慈悲な真九郎の言葉が銀子へと

一斉に襲いかかった。

「銀子、あのさ」

「今回の仕事が終わったら、暫く揉め事処理屋は休業するよ」

「なんで...?」

「俺、崩月を継ぐことにしたんだ」

「うそでしょ...」

 幼馴染に抱いていた淡い恋心が粉々に粉砕された。

 好きな人がいた...

 その人は、頼りなくてとても脆い心の持ち主で、でもとても優しい人。

 素直になれないけど、いつかきっと素直な気持ちで彼に自分の想いを

伝える筈だった。

 なのに...どうしてどうして彼は私をおいてどこかに行ってしまうの?!
0694名無しさん@ピンキー2016/11/24(木) 23:15:45.60ID:V3Gh3kBt
「なんでよ!!アンタあれだけ暴力が嫌いだったじゃない!!」

「揉め事処理屋を辞めるなら一緒にラーメン屋やっていこうって...」

「それなのに!どうして!!」

「どうして...私のこと、待ってくれなかったのよ...」

「銀子は、何も悪くないんだ。悪いのは全部俺だよ」 

「意味わかんないわよ!」

「大体何度も言ったようにアンタに揉め事処理屋なんて向いてないのよ!」
 
「アンタもう一杯辛い思いしたじゃない!」

「何度も危険な目に遭って、その度に死にかけて私がッ...」

「私とッ...一緒に日の当たる世界で、一緒にラーメン屋をやってこうって」

「銀子...」

 喚き、錯乱する幼馴染と距離を取り、指一本触れようとしない真九郎。

 銀子は気が付いていないが、恐るべきは真九郎の冷静さである。

 一時期は家族、兄妹同然に育った仲の幼馴染の嘆きに対して悲痛な

表情を浮かべるどころか、眉一つ動かさないまでの冷淡さは、普段の

優柔不断な真九郎を知る人物の目から見れば大事に値する。
0695名無しさん@ピンキー2016/11/24(木) 23:16:10.64ID:V3Gh3kBt
 なぜなら、それは...

 真九郎が日の当たる世界を拒んだことに他ならないからだ。

 人の命が蝋燭の灯火のように軽く吹き消され、血と怨嗟と暴力の

屍山血河の世界こそが自分の身の置き場。

「分かった...崩月先輩に誑かされたんでしょ、ねぇ!」

「ならお気の毒様ね、アンタじゃ無理よ。器じゃないわ」

 銀子はそれでも、それはもう見ている方が目を覆いたくなるような

醜態を曝しながら、真九郎にすがりつくことをやめなかった。

 なんとかして好きな男の目を幼馴染として覚まさせてやりたい。

 いや、違う。

 今の銀子を突き動かしているのは、真九郎への恋心ただ一つ。

 だって、自分はまだなにも真九郎に想いを伝えていない。

 これからゆっくり真九郎と仲を深めて...それなのに...。

 銀子の慟哭を受け止めながら、真九郎は断固たる決意を以て

自分がどこへ向かうのかを彼女に伝える。
0696名無しさん@ピンキー2016/11/24(木) 23:16:29.31ID:V3Gh3kBt
「銀子の言いたいことは痛いほど分かる」

「でも、さ...」

「サラリーマンとか畑を耕す自分を俺は想像できないんだよ」

「まぁ、例外としてラーメン屋は選択肢にはいってたけどね」

「じゃあ、いまからでも...」

「それは無理だ」

 自分を覗き込む真九郎の瞳には、今までの真九郎を構成していた

要素以外の...昔からの真九郎を知っている銀子が忌避してやまない

決定的なものが映っていた。

 そう、暴力への渇望と上に昇り詰めてやるという飽くなきまでの野心だ。

「銀子」

「自分の器なんて、後から大きくするもんだろ?」

「あ、あああ...」

「それに、夕乃さんのことを悪く言うのはやめろ」

「正直に言うと、銀子のそういうところは好きじゃなかった」

「そ、そんな...」

 メラメラと燃える真九郎の野心の熱気に当てられた銀子は力なく

ぺたん、と床にへたりこんでしまった。 

 いつの間にか夕日は沈み、月と星が顔を覗かせる。
0697名無しさん@ピンキー2016/11/24(木) 23:17:06.56ID:V3Gh3kBt
「...絶交よ。アンタなんか、もう...顔も見たくない」

 もう、真九郎の心の中に自分はいないという絶望的な事実に気が付いた

銀子は真九郎を睨み付け、絶交宣言をした。

 今の銀子の目には、真九郎がかつて自分達を攫った人身売買組織と

全く変わらない存在にしか見えなかった。

「...銀子、俺は必ず大きくなる。誰にも負けない位強くなる」

 沈鬱な表情を浮かべた真九郎の本心は、果たしてどこにあるのか。

 しかし、真九郎を失った悲しみと怒りが彼女から正常な判断力を、

そう、銀子の武器である判断力を奪ってしまっていた。

 ここで、真九郎を新聞部の部室から外に出してしまえば、もう自分は

夕乃から真九郎を取り返すことが出来ないということに気がつけないほどに。
0698名無しさん@ピンキー2016/11/24(木) 23:17:23.80ID:V3Gh3kBt
「帰ってよ!この人でなし!!」

「私利私欲の為にこれから多くの人を傷つけ、殺しまくるんでしょ!」

「出てって!出てけってばぁ!!」

 銀子に背を向け、感情任せにその拳に叩かれている真九郎。

 分かっている。

 自分のエゴで...紫以上に銀子を優先できるかと問われ、即座に紫を

選んでしまった時から、こうなることは予想が出来ていた。

 既に死んでしまった家族以外で、自分をよく知る幼馴染をこんな形で

傷つけ、切り捨てるようなそんな形でしか別れを告げられなかったのか?

 もっとましな別れ方はなかったのかと自問せざるを得ない。

 だが、事ここに至っては、もう何も言うまい。

「行かないでよ...ねぇ」

 銀子が言いかけた言葉を最後まで聞くことなく、真九郎は勢いよく

新聞部の扉を引き、そのまま部室を後にした。

「待って!待ってぇええええ!真九郎ぉおおおおお!!!」

 長い廊下を歩く真九郎の背中に、短い悲鳴だけが追いかけてきた。

 真九郎は、足を止めることなくそのまま星領高校を出て行った。
0699名無しさん@ピンキー2016/11/24(木) 23:17:42.25ID:V3Gh3kBt
 高校から五月雨荘に戻るまで、携帯電話が鳴り止むことはなかった。

 着信履歴100件とメールが156通。

 我ながらよくもまあここまで酷いことを幼馴染みに出来た物だと

乾いた笑みを浮かべるしかなかった。

 メールの内容を見ると、まだ間に合うから裏社会の闇に染まる前に

とっとと縁を切りなさいからに始まり、最後はお願いだからちゃんと私の

話を聞いて、こんな形でアンタと別れるのはイヤという内容で終わっていた。

 乗り継ぎの電車が来るまでの間、夕乃は銀子から来るメールと電話の

着信音に悲痛な表情を浮かべていた。

 真九郎もこれ以上無いほどの後味の悪い別れ方を銀子とした為、

今も絶えず後悔の念に苛まれ続けている。

 でも、後悔はしてもやりなおそうとは思っていない。 
0700名無しさん@ピンキー2016/11/24(木) 23:18:05.33ID:V3Gh3kBt
「正直な話、心が痛いですよ」

「銀子の俺への想いが分からないわけじゃなかった」

「だけど、いつかはこうなることはわかりきっていたのに...」

「もう、良いじゃないですか。真九郎さん」

「真九郎さんには私とちーちゃんと紫ちゃんがいます」

「もっと欲を言えば貴方には私だけを見ていて欲しいんです」

「でも、村上さんにはその覚悟がなかった。腕力も無ければ覚悟もない」

「それで好きな人が別の人とくっつくのは納得いかない」

「なんて、今更喚かれても、私は真九郎さんを手放す気なんかありません」

「だって私は貴方に恋した瞬間から、貴方を生涯の伴侶と決めたんですから」 
 夕乃の発言のその根底には一歩間違えれば、自分がこうなっていたかも

しれないという一種の諦観と、なんとしても真九郎を奪った相手から

なにをしてでも必ず奪い返すという怨念めいた憎悪が見え隠れしていた。

 真九郎を初めて好きになった八年前から夕乃はその覚悟を胸に、

真九郎の側にいた。彼を想い続け、行動に表して自分の気持ちを伝え続けた。

 だから真九郎は夕乃を好きになった。

 今回の銀子の失恋は、ただ今のままの心地よい関係に甘んじて夕乃ほど

真剣に真九郎に向き合わなかっただけの結果でしかない。
0701名無しさん@ピンキー2016/11/24(木) 23:18:25.63ID:V3Gh3kBt
「次は〜○○〜○○行の電車が...」

 あれほど鳴り響いていた携帯電話のバイブレーションがいつの間にか

鳴り止んでいた。

 ホームに滑り込んできた電車が口を開け、乗客達を吐き出し始める。

「じゃ、また明日学校で」

「ええ。愛してます。真九郎さん」

 電車に乗った夕乃を見送りながら、真九郎は漫然と、もう村上家の

敷居をまたぐことは出来ないと思っていた。

 しかし、これで銀子はもう自分がらみで命の危険に晒されることは

なくなった。

 たとえそれが自分の自己満足だったとしても、銀子には自分が歩くことを

やめた日向の道を、彼女を幸せに出来る誰かと一緒に歩くという権利を

取り戻したことがせめてもの救いだったな。と、自分をごまかしながら

真九郎は五月雨荘へと歩き出し始めた。
0702名無しさん@ピンキー2016/11/24(木) 23:18:45.51ID:V3Gh3kBt
五月雨荘

 紅真九郎が五月雨荘の自室に戻ったのは午後六時を少し過ぎた所だった。

 おんぼろになったドアを開け、自分の部屋に入ると、そこには

小さな天使がいて、自分にほほえみかけていた。

「真九郎!遅かったな。お帰りっ!」

「ああ。ただいま紫。一週間ぶりだね。元気だった?」

「うむ。真九郎に会えなかったのは寂しかったが、それも吹き飛んだ」

「そっか。ほら、おいで。だっこしてあげる」

 左手は紫を離さないように、右手で紫を愛するように真九郎は

その小さな身体を包み込んだ。

「し、真九郎...///どうしたというのだ?」

「どうしたって、何が?」

「そ、その...て、照れる。と、とにかく照れるのだ!」

 小さな手と足をパタパタと暴れさせる紫は、珍しいことに顔を

赤らめながらも、嬉しそうな表情を浮かべ、真九郎が離れるまでその体に

自分を押しつけながら、抱きついていた。
0703名無しさん@ピンキー2016/11/24(木) 23:19:08.41ID:V3Gh3kBt
「真九郎。今日はどうしたというのだ?」

「なにか良いことでもあったのか?」

「いや、むしろ逆...かな。だから、紫に...それを、忘れさせて欲しい」

 紫の笑顔に、銀子の泣き顔が重なり真九郎は声を詰まらせた。

 紫も今まで笑顔だった真九郎が泣き出しそうになるのを見ていられず、

とっさにその涙をハンカチでぬぐい始めた。

「銀子ぉ...銀子......」

 もう二度と取り返しのつかないことをしてしまった罪悪感に耐えきれず、

真九郎は遂に泣き出してしまった。

「ごめん...。ごめん、ごめんなぁ...」

「ううむ、こ、困った。おい、真九郎。泣くな」 

「私は泣いている真九郎よりも、笑っている真九郎の方が好きなのだ」

「...でも、泣きたいほど辛いなら、いくらでも私が受け止めてやる」

「さぁ真九郎。好きなだけ私の胸で泣くが良い」

「そして、泣き止んだら私にお前の悩みを聞かせてくれ」
0704名無しさん@ピンキー2016/11/24(木) 23:19:29.68ID:V3Gh3kBt
七歳の紫に、今の真九郎が抱えている途方もない大きさの悩みを

正しく判断できるわけがなかった。

 崩月を継いだ上で、交わることのない表と裏の禁を破り、九鳳院の

一人娘を奪い取ろうとする、そんな大それたことに自分が愛する女を

巻き込もうとするのだ。

 折角、蓮丈が紫を奥の院から出す決断を下したのに、その決を

翻して、また紫が昔に逆戻りする可能性だって捨てきれない。

 しかし、それ以上に恐ろしいのは紫が自分が近い将来そうなってしまう

という可能性を踏まえた上で、真九郎に己の未来を委ねることだった。

 紫の未来を奪いたくない、でも紫を奪われたくない。

 それが真九郎を苦しめ続ける。

 実現しない可能性の方が大きい無謀な企みのせいで、既にかけがえのない

友を失ってしまったのだ。

 誰でも良い、自分を止めてくれ!

 そう思いながら真九郎は紫の胸で泣き続けた。
0705名無しさん@ピンキー2016/11/24(木) 23:19:56.51ID:V3Gh3kBt
 午後7時 五月雨荘

 一時間近く泣き続けた真九郎は、泣き疲れてそのまま紫の胸に

抱きつきながら眠りに落ちてしまった。

「うんしょ、うんしょ。ううむ重いな、真九郎の体は」
 
 布団を敷き、その上に真九郎の体を引きずりながら乗せ、学生服を

剥ぎとりパジャマに着替えさせる。

(しかし、どうして真九郎はあんなに泣いていたというのだ?)

 九鳳院紫にとって紅真九郎は相思相愛の相手といえる。

 紫には真九郎が必要で、真九郎には紫が必要である。

 紫が困っているときに真九郎は手を差し伸べてくれたし、また真九郎が

困っているときには紫が手を差し伸べて今まで上手くやってきた。

 どんな窮地に陥っても決して諦めずに、弱さを見せることなく悪漢や

変えられない宿命と戦ってきたあの真九郎が感情を露わにして、TVに

出てくる女のように泣きわめいたことに紫は内心驚いていた。

(そう言えば環が言っていたな。真九郎は女に弱い男だと)

(そして、真九郎より強い女は...うう、一杯いるではないか...)

 小さな頭をひねりながら、紫は真九郎が泣きわめいていた理由を

探っていた。

 もし、環の発言が正しいとすれば紫には真九郎を泣かせた相手の見当が

いくつもつく。
0706名無しさん@ピンキー2016/11/24(木) 23:20:22.04ID:V3Gh3kBt
一番怪しいのは言うまでもなく夕乃で、二番目に怪しいのはやたらと

威圧感はあるが自分を奥の院から出してくれた恩人の紅香である。

 3,4に環や闇絵が続くものの、あの二人はなんだかんだ言って

真九郎には優しい気がするから外しても良いだろう。

 となると、真九郎を泣かせた犯人は...

「夕乃だな。やはり夕乃はとんでもない女だ」

 崩月夕乃。

 紫の恋敵にして、とうとう真九郎の恋人になった女。

 幸い、まだ真九郎は眠り続けている。

「...よし、夕乃に電話するか」 

 ちゃぶ台の上に置かれた真九郎の携帯電話を片手に取り、紫は

夕乃の家の電話番号を引っ張り出し、躊躇うことなく発信ボタンを押した。

「はい。崩月です。どちら様ですか....」

 五秒後、おどおどとした声が紫の耳に飛び込んできた。

「む。私だ。九鳳院紫だ」

「あぅ...」

「その声は散鶴だな。夕乃はどうした?」

「ううう...」

「今すぐ夕乃を呼んでこい!真九郎のことで話がある」

「あの、どんなご用...ですか?」

「良いから早く夕乃を呼べ!お前では話にならん!」
0707名無しさん@ピンキー2016/11/24(木) 23:20:42.93ID:V3Gh3kBt
  夕乃とは対照的にどこまでもうじうじした散鶴の泣きべそに苛立つ

紫だが、散鶴もそれは同じで真九郎とは対照的に威圧的で偉そうな

紫に反感を覚えていた。

 はじめはいつも自分に対して威張っている紫に対するちょっとした

仕返しのつもりだった。

 真九郎はもう紫だけの真九郎ではないと、つい口を滑らせてしまった。

「紫ちゃんはおにーちゃんからなにも聞かされてないんだね」

「おねーちゃんと私はもうおにーちゃんのおよめさんなんだよ」

「なんだと?!今の発言はどういうことだ散鶴!」

「おにーちゃんは私の家に学校を卒業したら戻ってくるもん!!」 

 紫も七歳だが、散鶴は更にそれより二歳年下の五歳である。

 小さい頃に年上のお兄さんとの結婚の約束をガチで信じ込んでしまう

純粋無垢なお年頃なのである。

 そして、本当に性質の悪いことに真九郎はその場の雰囲気に流され、

八割ほどは本気だったが、散鶴のことも受け入れるつもりだった。
0708名無しさん@ピンキー2016/11/24(木) 23:21:07.36ID:V3Gh3kBt
「おにーちゃん、おねーちゃんにコクハクしてたよ」

「世界で一番おねーちゃんがダイスキですって!」

「う、嘘だ!真九郎がそんなこと夕乃に言うはずがない!」

「嘘じゃないもん!」

「嘘だ!」

「嘘じゃないもん!」

「嘘だ!」

「嘘じゃないもん!」

 受話器越しに怒鳴り合う小学生と幼稚園児。

 傍から見ればほほえましいことこの上ないが、彼女達はまがりなりにも

九鳳院と崩月の直系の娘達である。

 たとえそれがまだ善悪や対人関係の複雑さに責任を持てない歳であっても

そのやりとりが周囲にばらまく影響は計り知れない。

 あまりにも見苦しい紫の反発に、ついに頭の中にあるリミッターが

吹き飛んだ散鶴は、姉とよく似た黒い微笑みを浮かべながら電話の向こうの

紫に怒濤の口撃を仕掛けていった。
0709名無しさん@ピンキー2016/11/24(木) 23:21:36.40ID:V3Gh3kBt
「なっ、何を言うか!真九郎と私は相思相愛で...」

「でも今すぐケッコンは無理だよね」

「そっ、それは...」

「うっ、ぐすっ...だ、黙れ散鶴!し、真九郎が一番好きなのは、この...」

「おにーちゃん、おねーちゃんを下さいっておじいちゃんに言ってたよ」

 散鶴の最後の一言で心をくじかれた紫はへなへなと崩れ墜ちた。

 そして、とどめの一撃が紫に突き刺さる。

「ふふふ...おにーちゃんはおねーちゃんの恋人。だから...」

「紫ちゃんはもうウワキ相手だね」
 
「あああああああああ!!!!」 

 あまりのことに耐えきれなくなった紫は壁に自分の携帯を投げつけ、

粉々になるまで机の上に置いてあった文鎮で叩きまくった。

「む、紫?おい、何やってるんだ!」

 紫の絶叫に何事かと跳ね起きた真九郎は、畳の上で粉々になった

小さな携帯電話に絶句した。
0710名無しさん@ピンキー2016/11/24(木) 23:21:58.54ID:V3Gh3kBt
「うわああああああん!夕乃と散鶴の大馬鹿ものーっ」

「何してるんだ紫!どうしたんだよ!」

 この時、真九郎は紫が自分と夕乃の間にあったことを知った事に

気が付いてしまった。

 そして、紫の大号泣にいかに自分が浅はかで最低なことを崩月家の

皆に対してしでかしたのかを自覚した。

 ボロボロと大粒の涙を流す紫は顔をグシャグシャにしながら、懸命に

残酷な真実を告げた携帯電話を原形を留めなくなるまで破壊し続ける。

(ああ...そうだよな。俺、やっぱり最低じゃないか...)

「離せ〜!離すのだ真九郎!」 

「夕乃と真九郎が結婚するなんてありえない!あり得ないんだ〜!」
 
 何も知らない紫の悲痛な叫びに、真九郎は心を引き裂かれながら、

それでも懸命に紫が自分から離れないように、抱きしめ続けていた...
0711名無しさん@ピンキー2016/11/24(木) 23:22:19.81ID:V3Gh3kBt
〜夕乃の視点〜

 明日の真九郎さんのお弁当の仕込みをしているときに、電話が鳴った。

 おそらく電話の主はおじいちゃんの友達か、町内会の人だろう。

「ちーちゃ〜ん。お電話出て〜」

「はーい」

 散鶴はどうせ人見知りだから、電話を取ったらすぐに涙目になって私に

バトンタッチするだろう。そう思っていた。

 でも、珍しいことに散鶴は五分たっても私の元に戻ってこなかった。

 おかしい。

 人見知りなあの子が私に電話の応対を任せずに、見知らぬ他人の話を

五分近く聞いていられるわけがない。

 真九郎やおじいちゃんならともかく...

「まさか...!」

 見知らぬ他人ではないが、散鶴が知っている他人なら心当たりがある!

 私は慌てて廊下に飛び出し、電話へと走っていった。

 角を曲がってそのすぐ目と鼻の先に、妹は確かにいた。

 だけど、状況は既に手遅れだった。
0712名無しさん@ピンキー2016/11/24(木) 23:22:41.31ID:V3Gh3kBt
「ふふふ...おにーちゃんはおねーちゃんの恋人。だから...」

「紫ちゃんはもうウワキ相手だね」

「散鶴ッ!」 

 妹を押しのけ、電話の受話器を取る。

「紫ちゃん?!紫ちゃん!!」

 今一番知られたくない相手に、よりにもよって真九郎とのことを

バラしたのが自分の妹だなんて、正直な話、信じたくなかった。

 受話器の向こうから聞こえて来たのは、無機質な雑音だけ。

 おそらく紫は今頃ショックを受けているはずだ。

 昔の真九郎ならいざ知らず、銀子を捨てて精神的に不安定になっている

今の真九郎であれば、紫を説得できない可能性も在る。

「くっ!」

 時計を見ると、時間は七時過ぎ。

 今から駅まで行けば30分程度で五月雨荘に着けるはずだ。

(行かなきゃ!真九郎さんと紫ちゃんのところに...)

 そう思った私は、急いで玄関の方へと向かおうとした。

 でも...
0713名無しさん@ピンキー2016/11/24(木) 23:23:20.84ID:V3Gh3kBt
「おねーちゃん!行っちゃダメ!行っちゃやだよぉ!」

 妹が、あの泣き虫だった妹が賢明に通せんぼうをして、私の目の前に

立ちふさがった。

「ちーちゃん...良い子だから、ね?そこをどいて」

「やだぁ!」

「おねーちゃんは...私とおにーちゃんだけのおねーちゃんなんだもん!」

 その言葉に、私は何も言い返せなかった。

「ぐすっ、ぐすっ...」

「紫ちゃんは、紫ちゃんのお家で仲良く家族で住めば...いいのに...」 

「どうして私から、大好きな人をとっていっちゃうの?」

「不公平だよぉ...ずるいよぉ...」

 紫の家のこと、彼女の出自のこと、彼女がそう遠くないうちに

迎えるであろう恐ろしい未来のこと。

 この時ばかりは、私は何一つ伝えなければならないことを何一つ

目の前の妹に伝えられない自分を呪いたい気分だった。

 何より恐ろしいのは、この国の誰よりも高貴な家柄にいて、誰よりも

高貴な血筋を受け継いでいるのにも拘わらず、九鳳院紫という少女は

人ではなく、人の形をしている『道具』でしかないという事実だ。

 そして、散鶴はそのことをまだ理解できない。
0714名無しさん@ピンキー2016/11/24(木) 23:23:45.16ID:V3Gh3kBt
 理解できないが故に、散鶴の抱いている感情は最も正しい。
 
 人権すらない『道具』を人として扱い、この先の人生を共に過ごす事が

どれだけのリスクと危険を犯さなければならないのか。

 それを自覚できないまま真九郎は紫を、これから彼女が独り立ちが

出来る歳まで守っていく役目を担おうと言うのだ。

 紫と散鶴を天秤にかけたとしても、絶対に散鶴を選ぶのが夕乃の本心。

 しかし散鶴の視点から見れば、崩月がわざわざ抱え込まなくてもいい

リスクを抱え込み、毎日が命を狙われるような危険な日々を過ごす羽目に

なるのは絶対に看過できない。

 なぜなら、真九郎は紫が要るにもかかわらず、既に夕乃と散鶴を

選んだからだ。もう、そのことに対して真九郎は言い逃れは出来ない。


 九鳳院(恋人)を取るのか、それとも崩月(家族)を取るのか。

 今、崩月夕乃は大きな岐路に立たされていた。

  
 〜紫の嫁入り 中編(仮)に続く〜
0716名無しさん@ピンキー2016/12/01(木) 01:05:51.58ID:qO1WsCuS
〜紫の嫁入り 中編〜

 
 散鶴の涙に大きく自分の心を揺さぶられながらも、夕乃はそれでも

懸命になって、なんとか妹を説得しようと試みた。

 だが、どう考えても今すぐに散鶴を説得できる力を持った言葉や

想いが中々浮かばない。

 どうにかして、一刻も早く真九郎が紫を失って立ち直れなくなる前に

五月雨荘へと行きたいのに、夕乃の足は全く動かない。
 
(何をしてるんですか!妹なんて後から説得すればいいじゃないですか)

(ダメ!散鶴を放っておけば、きっと真九郎さんみたいになっちゃう)

(自分は大好きな人に選んでもらえなかった悪い子だって苦しんじゃう!!)

 いまの夕乃が思っていたことは、まさに散鶴にとってその通りだった。
0717名無しさん@ピンキー2016/12/01(木) 01:06:09.89ID:qO1WsCuS
 内気で人見知りの妹。

 まだ物事の分別がつかないけど、あの子は自分によく似ていてどこか

危ういくらいにまで思い込む癖がある。

 これは散鶴自身の純粋さの裏返しともとれるし、同時に一番の弱点でもある

 だから自分と異なる他人と打ち解けられない。打ち解けられないけど、

やっぱり一人は寂しい。でも他人は怖い。

 そんな悪循環の中に現れたのが紅真九郎。

 どこか散鶴に似ていた真九郎は、同時に孤独だった散鶴にとって、

一番近い心の距離に踏み込んできた初めての他人だった。

 家族同然の他人だが、母や姉と同等の愛情を注いでくれる初めての異性に

孤独を打ち明けられない『子供』が恋するまでに時間はかからなかった。

 だから、夕乃は今まで自分と一緒の時を過ごしてきた時間と思い出を

踏まえた上で、素直に正直に自分の気持ちを散鶴に打ち明けた。
0718名無しさん@ピンキー2016/12/01(木) 01:06:36.75ID:qO1WsCuS
「ちーちゃんは私よりも真九郎さんを幸せにしたい?」 

「...うん」

「そっか。真九郎さん、優しいもんね。独り占めしたいよね?」

「...うん...」

「でもね、ちーちゃん。それはお姉ちゃんも紫ちゃんも同じなんだよ」

「同じじゃ、ないもん...」

「お姉ちゃんは私のお姉ちゃんで、紫ちゃんは他人だもん」

「お姉ちゃん、言ったもん。私とちーちゃんだけのおにーちゃんって」

 くすん、と鼻を啜りながらも散鶴はあくまでも夕乃と自分だけが

真九郎の側にいる資格があるのだと、その意思を姉に伝えた。

 夕乃もその気持ちを痛いほどに分かっている。

 だが、それではダメなのだ。
0719名無しさん@ピンキー2016/12/01(木) 01:07:00.28ID:qO1WsCuS
「ちーちゃん。ちーちゃんは何が怖いの?」

「紫ちゃん」

「どうして?」

「だって...乱暴だし、いつも偉そうで...上から目線でイヤなんだもん...」

「でも、でも...おにーちゃんはそんな紫ちゃんが私より好きで...」

「おねーちゃんまで...紫ちゃん好きになったら、一人に、えぐっ」

「わたし...一人になっちゃうよぉ....!」

「やだやだやだぁ!紫ちゃんにお兄ちゃん取られるのはイヤなのぉ!!」 

 ようやく散鶴の口からその本心が飛び出してきた。

 まだ家族と離れることが出来ないうちに、自分をおいて大好きな

大好きな兄と姉がいなくなる恐怖に散鶴の心は耐えられなかったのだ。
0720名無しさん@ピンキー2016/12/01(木) 01:07:21.39ID:qO1WsCuS
 その上、自分と同じ歳くらいで大人のように振る舞い、自分の全ての

何段階も上を行く紫が、真九郎が夕乃を愛するのと同じ次元で互いの将来を

誓うという事実をどうしても散鶴は認められない。認めたくなかった。

 だって、それを認めてしまえば...自分は一生紫や夕乃のおこぼれに

あずかりながら、指をくわえて真九郎の側にいることしか出来なくなると

もう分かってしまったからだ。

 だけど、それはあくまでも散鶴の心の問題でしかない。

 夕乃の心は最初から最後までぶれることなく一徹している。

 その証拠に妹を見つめていた眼差しから一切の温もりが消え去った。

「ちーちゃんの気持ち、よーく分かった」  

「うん」

「でもね、私はちーちゃんほど弱虫じゃないですよ」

「ひぅ...お、おねーちゃん?」
0721名無しさん@ピンキー2016/12/01(木) 01:07:52.30ID:qO1WsCuS
そう、崩月夕乃は最初から自分が真九郎に最も相応しいと思っている。

 好きな男を自分の手元に縛り付ける為にはなんだってする。

 流石に大切な家族を犠牲には絶対させないが、それ以外のことなら

真九郎を自分の側から離さない為なら何だってする覚悟がある。

 真九郎が望むなら、七面倒くさい表と裏の利権が絡み合う紫と自分との

事実上の重婚にだって目を瞑るくらいの寛容さはある。

 しかし、それを邪魔するのなら誰であれ殺す。

 真九郎の心を開いたあの日、彼が自分の胸に飛び込んできた喜びは

一生心に残る自分だけの宝物だ。

 なぜならそれは九鳳院紫でもなく、村上銀子でもなく、この自分こそが

初めて紅真九郎の心を開き、全てを手に入れた証なのだから。

 その自負と八年間の燃え滾る激烈な恋慕の前には、散鶴の心痛など、

単なる負け犬の負け惜しみでしかない。いや、それ以下だ。

 だから、夕乃は目に狂気を滲ませながらも、いずれ自分を超えて見せろと

心の底から大切に思う妹へと発破をかける。
0722名無しさん@ピンキー2016/12/01(木) 01:08:13.21ID:qO1WsCuS
「散鶴。真九郎さんの側にいたければ崩月の修行をちゃんとしなさい」

「いつまでも弱虫の貴女には何も魅力なんか生まれっこありません」

「修行したら、おにーちゃんは私のこと好きになってくれる?」

「もうとっくに真九郎さんはちーちゃんのこと、大好きになってますよ」

「そっか...えへへ」

「だから、私と貴女とで紫ちゃんに見せつけてあげましょう」

「崩月の娘は九鳳院に負けないくらいいい女なんだ、って」

「だから、これからは紫ちゃんに怯えないで前を向きなさい」

「約束よ?」

 散鶴は無言のまま頷き、姉が握った拳の先から出た小指に自分の

小指を絡ませ、大好きな姉を見送る。

「行ってらっしゃい。お姉ちゃん」

「行ってきます」

 玄関を飛び出し、風のように走り出す姉の背中を見ながら散鶴は

いつか自分も姉のように強くなりたいと思い始めていた。

「そう、だよね...いつまでも、弱虫じゃダメだよね...」

 だから、もし紫が崩月の家に来たらちゃんとさっきのことを謝ろう。

 その上で、改めて紫に宣戦布告をしよう。

 紫ちゃんには負けないもん、と...
0723名無しさん@ピンキー2016/12/01(木) 01:08:37.27ID:qO1WsCuS
午後八時

 一方、九鳳院紫は騒ぎを聞きつけた闇絵と環の取りなしによって

一旦二人が落ち着くまで、それぞれ預かるという形で引き離されていた。

 紫は闇絵、真九郎は環。

「ううう...真九郎のバカ、大馬鹿ものぉ...」
  
 ポロポロと涙を流しながら、闇絵に抱きしめられた紫はぼんやりと

今までのことを思い出していた。

 柔沢紅香によって奥ノ院から連れ出され、初めて外の世界を知ったこと。

 自分の人生を大きく変えてくれた紅真九郎と出会ったこと。

 真九郎といる内に、自分の中にある何かが大きく変わったこと。

 沢山の人間と触れあう内に、もっと世界を知りたくなったこと。

 危険な目に遭いもしたが、その度に真九郎が自分を助けてくれたこと。

 人は一人で生きていけないが、同時に愛がなければ孤独のままだ。

 これが、九鳳院紫が外の世界で学んだ一番の教訓だった。

 辛いこともあれば、楽しいこともあった数ヶ月だと思う。

 だが、それが揺らいできている。
0724名無しさん@ピンキー2016/12/01(木) 01:08:57.08ID:qO1WsCuS
 崩月夕乃。

 かつて飛行機事故で家族を失った真九郎を自分が生まれる前から
 
8年もの間、ずっと真九郎と寝食を共にし、絆を育んでいた女。

 そして、その崩月の力に紫は何度も窮地を助けられてきた。

 だから、婉曲な見方をすれば紫は夕乃に恩を受けていることになる。

 その夕乃こそが、今回の紫が我を忘れて取り乱すような事態を

引き起こした張本人だからこそ、紫はどうしても真九郎に対して

自分の本心を打ち明けることが限りなく不可能になってしまったのだ。
0725名無しさん@ピンキー2016/12/01(木) 01:09:24.25ID:qO1WsCuS
 九鳳院紫は紅真九郎を愛している。

 それは生を受けたときから、光当たることなく一生を終える宿命の紫に

生きることの素晴らしさや、自分では抗うことの出来なかった運命を

意図も容易く、我が身を省みることなくぶち壊してくれたただ一人の

男だからだ。

 恋はとても素晴らしい。紫の母親は彼女にそう言い残して死んだ。

 紫もそう思う、と彼女は心の中で母に答えを返した。

 誰かを好きになることで、前を向いて生きる気力が湧いてくる。

 真九郎を好きになることで、もっと彼のことを知りたくなる自分がいる。

 この恋は、今まで自分が体験してきたどんなことよりも、素晴らしく

また大きな変化を自分と真九郎にもたらしてくれた。 

 にもかかわらず、真九郎は中々自分に振り向いてくれない。
0726名無しさん@ピンキー2016/12/01(木) 01:10:16.10ID:qO1WsCuS
 理由は分かっている。

 真九郎ほどいい男は他にいない。

 自分の他にも彼と一緒に添い遂げたいと願う女が沢山いることも

理解している。

 夕乃、銀子、切彦...環と闇絵はまぁ、アレだが。

 とにかく付き合ってみれば分かるが、紅真九郎は魅力的だった。

 しかし、だとすれば...

(私は、真九郎の一体なんなのだ?)

 護衛対象?好きな女?それとも放って置けない存在?

 真九郎を好きなままでいられた時なら、考えなくても良かった

面倒くさいことが、次から次へと頭の中に浮かんでくる。

(分からない!分からないのだ!どうすればいい、なぁ?!)

 真九郎!

 だが、その心の声が本人に届くことはなかった。
0727名無しさん@ピンキー2016/12/01(木) 01:10:45.58ID:qO1WsCuS
「少女よ。君は...恋は素晴らしいと話していただろう?」 

 いつまでも泣き続ける紫を見かねたのか、闇絵は少しだけ紫の中にある

懊悩を解きほぐしてやろうかと思い、その腰を少し上げた。

 紫も、その鷹揚な態度にいつもの自分を若干取り戻したのか、

どうしても晴れない自分の心のもやもやを少しずつ打ち明け始めた。

「うむ。だが、いまは...どうしてもやりきれなくて辛いのだ」

「ふむ、なぜかね?」

「その理由は...ええい!私にも、なぜだか全くわからん」

「真九郎の朴念仁!どうして私の気持ちに気が付いてくれんのだ」

「ふっ。まだまだ青いな」

「なにぃ!」

「青いさ、少なくとも自分の心に嘘がつけない時点で君は幼い」

「?私は七歳だぞ」

「そう。そして君の恋も君と同じ歳のようにまだ青く、未熟だ」
0728名無しさん@ピンキー2016/12/01(木) 01:11:05.54ID:qO1WsCuS
「どうしてだ!!なぜ、闇絵はそんなことを言える?」

「君の倍ほど生きていれば、いくらでもそういうことは言えるさ」

「楽もあれば苦もある。山もあれば谷もある」

「君も少年も、今が一つの山場といえるな」

「歩け。考えろ。そうして答えをいくつも出して人は前に歩くのだ」

 紫が答えを返す前に、闇絵は薬缶からマグカップに紅茶を注ぎ

紫にそれを勧める。

「少女、それを飲んで、落ち着いたら部屋に戻るがいい」

「少年とて好きな女に喚かれ続けたら気が滅入るだろう」

「うむ。そう、だな。ありがとう、闇絵」
0729名無しさん@ピンキー2016/12/01(木) 01:11:34.33ID:qO1WsCuS
 
 家を飛び出し、電車を乗り継ぎ五月雨荘の最寄り駅に着いたのが午後八時。

「真九郎さん...」 

 そしてこれから紫に対し、自分の中ではっきりとさせたいことを頭の中で

整理しながら、夕乃は五月雨荘へと急いでいた。

 真九郎が巻き込まれた紫のいざこざの一応の顛末を夕乃は知っている。

 紫は現当主の温情で一応、奥ノ院を出、九鳳院の一員として現時点は

扱われている。また社会を学ぶという名目で小学校に通っている。

 しかし、それはあくまでも一時的な物でしかない。

 紫の存在意義はつまるところ、子供を産む九鳳院の道具。

 あの柔沢紅香とて、紫の一生に対して最後まで責任を負うつもりは

おそらく無かっただろうと夕乃は推察する。
0730名無しさん@ピンキー2016/12/01(木) 01:11:52.23ID:qO1WsCuS
 真九郎はそういう物事の裏を見ないで、ただ単に紫という少女の

境遇があまりにも哀れで、助けられずにはいられないという理由で

無謀な賭けに出て、奇跡的に成功したに過ぎない。

 だから夕乃は紫に九鳳院の道具としてではなく、一人の自分という

『個』としての本心とこれからどうしたいのかを見定めなければならない。

 もし、真九郎を自分だけの便利屋かなにかと勘違いしているなら

即刻真九郎から引き離さなければならない。

 紅香も、紫とその母親との依頼を完全な形で果した以上はまた九鳳院と

事を構えて、紫を九鳳院から奪おうなどと考えていないはずだ。

 色々なことを考えている内に、夕乃の足は五月雨荘の前で止まっていた。

 腕時計を見ると、時間は8時23分。

「......」

 真九郎の部屋には明かりが灯っていない。

 どうやら長い話し合いになりそうだと、夕乃は心の中で嘆息した。
0731名無しさん@ピンキー2016/12/01(木) 01:12:15.79ID:qO1WsCuS
「真九郎...戻っているのか?」 

「ああ」

「そうか」

 環と闇絵。

 二人のそれぞれの助言を得た紫と真九郎は部屋に戻り、どちらが 

言うまでもなく、互いの体を寄せあう。

 最早ここまでくれば余計な考えや言い訳は不要だった。

 ただ、言葉を重ね、互いの想いを一つにすれば良い。
0732名無しさん@ピンキー2016/12/01(木) 01:12:40.34ID:qO1WsCuS
「真九郎。さっきな、散鶴から電話があったんだ」

「散鶴の奴、真九郎が自分と夕乃の男だと私に言い放ったんだ」

「うん」

「それでな、散鶴は真九郎が夕乃に愛の告白をした」

「崩月の家の人間はそれを祝福したとも言っていた」

「それは、本当なのか?」

「ああ。本当だよ」

「ッ...嗚呼、恋が敗れるというのは、こうも辛いのか...」

「紫、でも俺は、紫が好きなんだ!」

「信じてくれ!俺は、お前が...お前が俺を救ってくれたから...」
0733名無しさん@ピンキー2016/12/01(木) 01:13:09.93ID:qO1WsCuS
「ああ。勿論だ」

「ふふ、信じるとも。真九郎は私に嘘をついた事は一度も無いんだからな」

「聞かせてくれ、真九郎。夕乃をどうして選んだのかを...」

「...俺は、ずっと悩んでた」

「最初は夕乃さんに押し倒されて、そこから体の関係でずるずるいって」

「幸せだった。愛しているって、俺が大好きだって、そう言ってくれたから」

「でも、耐えられなかった...」

「夕乃さんが、他の男と一緒になるのが凄くイヤになったんだ!!」

「他の男に抱かれて幸せな顔してる夕乃さんを想像したくなかった!」

「俺に世界で一番愛しているって言ってくれる人を失いたくなかった!!」

「分かってる!分かってたんだ全部。紫の気持ちも夕乃さんの想いも!!」

「夕乃さんを抱いている時でも、お前の顔がいつも脳裏によぎった」

「でも止められなかった...」

「止められなかったんだよ!!苦しかったんだ!」
0734名無しさん@ピンキー2016/12/01(木) 01:13:30.11ID:qO1WsCuS
「なぁ...紫。俺は、どうすりゃいいんだよ」

「...ごめんなぁ。真九郎。お前はそんなに私を想ってくれていたのか...」

「つくづく私は果報者だな。お前に謝るのは私の方だ。すまぬ」

「はぁ...しかし夕乃は本当に重くて面倒くさい女だな」

「そんなにガチガチに縛れば真九郎が潰れてしまうではないか」

「でもな、真九郎。私は今、あまり怒っていないのだ」

「自分でも意外なことに、心が落ち着いている。なぜだか分かるか?」

「.......」

「お前の口から私と『別れる』という言葉が出てこなかったからだ」

「夕乃の色仕掛けは卑怯な手だが、それはまぁ許す」

「そういうことを真九郎に出来なかった私が悪かっただけの話だ」

「紫...」
0735名無しさん@ピンキー2016/12/01(木) 01:14:13.52ID:qO1WsCuS
「真九郎。お前はまだ、私に恋をしているか?」

「ああ。ずっと恋しているし、もうとっくに惚れてるよ」

「そうかそうか。ふふん、夕乃の奴め。詰めが甘いな」

「まぁこの調子だと、真九郎にあやつも泣かされた筈だ」

「そして、真九郎が夕乃を泣かせられるたった一つの理由、それは」

「この私だ!」

「む、紫...お、お前...どうして、そんなことが分かるんだ?」

「女の勘と真九郎と私が両想いという事実がなによりの証だ」

「は、ははは...敵わないなぁ、紫には」

「うむ。当然だな」
0736名無しさん@ピンキー2016/12/01(木) 01:14:35.46ID:qO1WsCuS
「だが、な...真九郎。今から聞く質問には真剣に答えてくれ」

「お前と出会ってからの数ヶ月、大変な事が沢山あった」

「竜士兄様のこと、理津のこと、切彦のこと、そして夕乃とのこと」

「その度に私もお前も窮地に陥りながら、なんとか切り抜けてこられた」

「真九郎の言葉とその想いに私は何度も救われた」

「だから、真九郎」

「真九郎が私に掛けてくれた言葉を、私は信じてもいいんだな?」

「ああ。その全部が俺の本心だ」

「そうか。なら、もう私は...何も怖くない」

 紫はそこで一旦言葉を切り、ドアの向こうを凝視した。

「そこにいるのだろう。夕乃。話をしよう」 

 意を決した真九郎と紫が見守る中、遂に最後の扉が開かれた。
0737名無しさん@ピンキー2016/12/01(木) 01:15:01.69ID:qO1WsCuS
午後九時


「こんばんは。紫ちゃん」
 
「こんばんはだな。夕乃」

 静かに扉を開け、真九郎と紫の部屋に入ってきた夕乃は真九郎を

一瞥することなく、ただ紫だけを見つめていた。

「真九郎さん。私は今から紫ちゃんとお話しをします」

「貴方がいると言いたいことも言えないので、外で待っていてください」

「分かりました」 

「真九郎。話が終わったら電話するからな」

「自分の携帯を壊したのは一体誰ですかね?」

「し、しまった!」

 慌てる紫に笑いかけた真九郎は、そのまま部屋を出ていった。
0738名無しさん@ピンキー2016/12/01(木) 01:15:22.22ID:qO1WsCuS
「ねぇねぇ真九郎君。紫ちゃん一人にして大丈夫なの?」

「夕乃ちゃん。今までに無いくらいヤバい感じで極まっちゃってるよ?」

「分かってます。でも、俺は夕乃さんのこと信じてますから」

「まぁ、真九郎君がそういうならいいんだけどさ〜」

 廊下で事の顛末を見守る環と二、三言葉を交わした真九郎は、二人の

話し合いの邪魔にならないよう、五月雨荘から出て行き、夜の街中へと

歩き出していった。

 真九郎が五月雨荘の門から出て行ったのを確認した紫と夕乃は

小さなちゃぶ台を挟み、顔をつきあわせた。

 紫と夕乃の最終対決、まず先に口火を切ったのは紫だった。
 
0739名無しさん@ピンキー2016/12/01(木) 01:15:46.11ID:qO1WsCuS
「夕乃よ。真九郎とのことを話す前に一つ聞かせて欲しいことがある」

「なんですか?」

「夕乃は私のことをどう思っているのだ」

「どう思ってるって、それは...」

「恋敵か?それとも表と裏の因縁ある家系の子供か?」

 答えにくい質問をする物だと、夕乃は心の中で苦笑した。

 夕乃個人としては、紫の事を真九郎を巡る恋敵として認めている。

 が、

「その聞き方であれば、恋敵でしたね。昔は」

「真九郎を手にした今は?」

「それが...分からないんです」
0740名無しさん@ピンキー2016/12/01(木) 01:16:07.05ID:qO1WsCuS
「真九郎さんを手に入れた後、貴女のことを伝えられました」

「貴女を手に入れる為に、私に自分と名字を一緒にしろと」

「私の懇願を最後まで撥ねつけた上で、貴女を捨てられないから、と」

「最後まで貴女の未来に対して責任があると、貴女を案じていました」

 紫の質問に淡々と答えながら、夕乃は真九郎が自分に言い放った

言葉をかいつまんで紫に伝えた。

 紫も真剣な表情で夕乃の一言一句を聞き漏らすまいとしていたが、

やはり真九郎と両想いだということが、よほど嬉しかったのか、時折

微かな笑みを浮かべていた。

 それがまだ紫が真九郎を諦めないという心から来ているのか、あるいは

既に自分と真九郎の心は一つなのだと勝ち誇る心から来ているのかを

夕乃自身が知る術はなかった。
0741名無しさん@ピンキー2016/12/01(木) 01:16:25.87ID:qO1WsCuS
「そうか...。夕乃よ、だとすれば私は貴女に謝らなければならないな」

「すまぬ。私のせいで夕乃の心を深く傷つけてしまった」

 紫は真九郎の本心が本当だった事に安堵しながらも、同時に自分の

せいで夕乃の恋が成就とはほど遠いものになったことを薄々感づいていた。

 自分が他人の人生の足を引っ張ったことに対する責任の取り方を

紫はまだ知らない。

 だから、精一杯の気持ちを込めて紫は夕乃に頭を下げた。

「よして下さい。そんなこと言われたってちっともうれしくありません」

 頭を下げた紫を見つめながら、まるで苦虫を噛みつぶしたかのような

表情を浮かべた夕乃は、遠慮無く紫の謝意を否定した。

 私のせいで、という紫の言葉に腹立たしさを感じたのもあるが、

やはり一番は、最後まで真九郎と自分の恋路の邪魔した紫への

冷たい怒りが夕乃の癇に障って仕方がなかった。

 心の中から湧き上がるどす黒く、冷たい衝動に己の心を委ねながら

夕乃は言葉を選ぶことなく、紫を痛めつけ始めた。

 紫も、先程までとは異なる異様な雰囲気に包まれた夕乃に思わず

萎縮しながら、懸命にその怒りを受け止めようと姿勢を正した。 

 おそらく、これが夕乃の心の闇。

 そう見当をつけた紫は腹を括り、夕乃と向き合う覚悟を決めた。
0742名無しさん@ピンキー2016/12/01(木) 01:16:51.98ID:qO1WsCuS
「もっと簡単にいきましょうか。私は、貴女のことが憎いです」

「好きか嫌いか、と聞かれれば...そうですね、やっぱり嫌いです」

 曖昧に濁された質問の答えを、あえてはっきりと断言した夕乃の瞳には

情の一欠片も残されていなかった。

 人間味を一切廃しながらも、半端でない程の強烈な怨みの感情が

紫の無防備な心を叩き潰そうと一斉に襲いかかる。

「後から出てきて、私が生涯の伴侶と決めた真九郎さんを掻っ攫い」

「関わらなくてもいい事にまで首を突っ込ませ、死なせかけた」

「貴女が奥ノ院にずっといれば、真九郎さんは私だけを見てくれた」

「これが私が貴女を憎む理由」

 夕乃の放つ恐ろしい負の感情の前に、紫は恐怖の涙を流した。

 だが、心の底では夕乃が自分を憎む理由も理解できていた。

 真九郎が家を出て一人で暮らす前は、夕乃が真九郎にとっての

心の支えだったのだろう。家族を失った真九郎が在りし日のように

心からの笑顔を取り戻すのはとても困難な事だったはずだ。

 それは、真九郎の心の闇に踏み込んだ自分が一番分かっている。
0743名無しさん@ピンキー2016/12/01(木) 01:17:12.14ID:qO1WsCuS
「嫌いな理由というのは、これは私の個人的な感情ですけど...」

「同族嫌悪的な感情を私は貴女に感じています」

「同族、嫌悪?」

「私は、あまり自分を夕乃と似ていると感じたことはないが?」

 やっとのことで絞り出したその声は夕乃の耳に届くことはない。

「愛する人の為に、自分を捨てられるか、あるいはどれだけ尽くせるか」

「!」

「また、自分以外の女に真九郎さんを絶対に渡さないという覚悟」

「今の貴女は否定するかも知れませんが、じきにそうなります」

 紫は今この時ほど、相手の嘘を見抜く己の直感力の高さを恨んだことは

なかった。

 自分に対して、あらんかぎりの否定の言葉を投げつける夕乃の顔が

いつの間にか能面から一人の女に戻り、悔し涙をボロボロと流している。 

 真九郎無しの人生なんて考えられない。

 なのに、なんで真九郎は、私だけを見てくれないのだろう。

 考えていることは同じでも、真九郎と紫によって夕乃にもたらされた

事実はあまりにも残酷過ぎた。
0744名無しさん@ピンキー2016/12/01(木) 01:17:56.87ID:qO1WsCuS
「でも、一番は、私よりも先に真九郎さんの心を手に入れたから」

「これが私が貴女を嫌う理由ですね」

「そうか...」

 そう、夕乃に言われなくても全部理解しているのだ。

 自分が奥ノ院の宿命から逃げたせいで夕乃は苦しんでいる。

 真九郎の心の痛みも、弱さも、悲しみも全部受け入れて、共に歩く

未来の為に必死になって、夕乃は真九郎に尽くしてきた。

 そして、その努力が実るあと一歩というところで、自分が

真九郎の心を癒やしてしまった。

 結果、皮肉なことにそれが真九郎が紫を好きになる決定打となった。

 紫もこの偶然に巻き込まれたことで、真九郎への恋が芽生え、自身の

運命すら変えることになったのだ。

 夕乃でなくても、こんな酷い仕打ちがあっていいものだろうか。
 
 いや、そんな道理はどこを探しても見当たらない。

「単刀直入に言わせて頂きます。紫さん、真九郎さんを諦めて下さい」

「あの人と名を同じくするのは私だけでいいんです」

 故に夕乃は、目の前にいる全ての元凶から真九郎を取り戻そうと

必死になっていた。
0745名無しさん@ピンキー2016/12/01(木) 01:18:24.14ID:qO1WsCuS
 例え、紫の心が砕けようと夕乃が止まることはない。

 何故なら今の夕乃は恋に狂ってまともな精神状態ではないのだから。

「貴女が真九郎さんと添い遂げようとすると、また軋轢が生じます」

「わかりやすく言うと、九鳳院の九割が今度は真九郎さんの敵になります」

「崩月を預かる身としては、これ以上の厄介は抱え込みたくありませんが」

「まぁ貴女の二番目のお兄さんは喜々として真九郎さんを嬲るでしょうね」

 九鳳院竜士。

 かつて自分を犯そうとした、実の兄にして卑劣漢。

 あの一件の後、外国に留学という名目で九鳳院から放り出されたが、

どうでもいいプライドだけが肥大したろくでなしが、自分をボコボコにした

真九郎に対して抱く感情と言ったらただ一つしか無い。

「そんなこと!」

 夕乃の言う自分と真九郎が迎える最悪の未来も絶対に起きないという

保障も可能性もどこにもない。

 否定したいのに、今の自分にはそれを覆すことができない。

 紫は夕乃の言葉に虚勢を張るしかなかった。 
0746名無しさん@ピンキー2016/12/01(木) 01:18:50.57ID:qO1WsCuS
「いいえ。今度ばかりはそうなります」

「だって、貴女が人質に取られれば真九郎さんは何も出来なくなるからです」

「そうなる前に、貴女は現実を知るべきでは?」

「くっ...だが、そ、そうなるとはまだ決まったわけでは...」

「なら、今度は自分から進んで九鳳院の役目を果すと?」

「私としても、それが一番いいなぁとは考えましたけどね」

「でも、貴女。死にたくないでしょう?」

「正確に言えば、真九郎さんと死で引き裂かれるのが怖くて堪らない」

 何も出来ない自分の非力さをあざ笑うかのように夕乃は紫の選択肢を、

一つずつ理詰めで潰していく。

 紫が考えて、実際に彼女が今からでも実行できる解決策を否定する。

「ううっ...ど、どうしてそんな事ばかり夕乃は私に言うのだ...」

「言ったでしょう。私は貴女のことが憎くて嫌いなんだって」

「......」

「どうしたんですか?黙っていては話が先に進みませんよ?」

 これ以上無いほど卑怯なやり方で、夕乃は徹底的に紫を否定し続けた。
0747名無しさん@ピンキー2016/12/01(木) 01:19:12.14ID:qO1WsCuS
「夕乃は、卑怯だ!」

「私だって本当は九鳳院みたいな所に生まれたくなかった!」

「普通の家庭に生まれて、普通の家族と普通に過ごしたかった!」 

「友達を作って!好きな人に恋をして!楽しいこと一杯やって!」

「家族が一人も欠ける事無く、全員で仲良くしたかった!」

「そんなことを叫んでも、現実は変わりませんよ?」 

 夕乃は酷薄な笑みを浮かべながら、紫の心の叫びを一蹴し続ける。
 
 だが、紫は未だに真九郎のことを諦めない。

 それが、夕乃の心を更にかき乱し、苛立たせる。

 紫の心をへし折って、二度と崩月に近寄らせないようにするつもりが、

いつのまにか、その瞳の中にある嘘偽りのない想いに絆されそうになる。

(いえ、そんなことはありえません...)

(だって、私は...真九郎さんは『裏十三家』なんですから...)

 頭を振りながら、これ以上紫を否定しないでくれと心で泣く自分を

無理矢理に心の奥底に封じた夕乃は、最後の仕上げとばかりに

紫に向き直って、トドメを刺しにかかった。
0748名無しさん@ピンキー2016/12/01(木) 01:19:44.44ID:qO1WsCuS
「貴女は九鳳院で私は崩月の一人娘」

「そして真九郎さんは私達崩月が育て上げた戦鬼」 

「いずれ、あの人は近いうちに望もうと望むまいと人を殺める筈です」

「どこかの財閥と関わったばかりに...なんてことでしょう」

「夕乃...お前....!!」

 遂に一線を越えた発言をしてしまった夕乃に対して、今まで否定

されるがままだった紫も、冷静さをかなぐり捨てて激昂した。

「さぁ、それでも貴女は変わり果てた真九郎さんを愛せますか?」

「貴女を救う為に、貴女の家族を殺そうとする殺人鬼を」

 声を詰まらせながら、それでも懸命に夕乃は虚勢を張り続けていた。
0749名無しさん@ピンキー2016/12/01(木) 01:24:40.72ID:qO1WsCuS
夕乃が真九郎を信じるように紫もまた真九郎のことを信じている。

 優柔不断ですぐに泣くが、本当は誰よりも弱さに逃げずに立ち向かう

勇気を持つ男。紫にとって真九郎はそんな男だった。

 だから、迷うことなく自信を持って答えを出せる。

 自分は真九郎を信じるという、たった一つの真実を。

「私は...真九郎が人を殺そうとするなんて想像したくない」

「だが、私は...」

「自分が助かりたいが為に家族を見捨てるような選択はしない!!」

「真九郎が私を救う為に、家族を殺すというなら私が死ぬ!」

「どんな真九郎でも私が好きになった真九郎はたった一人だ!」

「断じて、易々と人を殺すような殺人鬼ではない!」

「真九郎は変わらない!だから!私は真九郎を愛し続ける!」

「夕乃!お前もそうだろう?!そんな真九郎が大好きなのだろう?!」
0750名無しさん@ピンキー2016/12/01(木) 01:25:04.63ID:qO1WsCuS
 完敗だった。

 ここまで堂々と高潔に、純粋に真九郎への想いを叫ばれては、もう

これ以上、夕乃が紫を否定することは出来なくなってしまった。

 紫は目をそらさない。

 この会話が始まってからずっと、ずっと現実から目をそらさずにいる。

 おそらく、この子は真九郎がこの先、人を殺めたとしても、たとえ

真九郎が自分を拒絶したとしても、きっと真九郎から離れないだろう。

「うっ...うううっ...も、もうイヤ...」

 先に、音を上げたのは夕乃だった。

 最初から分かっていた。

 外道に徹し、真九郎のことを諦めさせようとしても、紫は決して

真九郎を諦めないということも、自分がそんな紫を無自覚のうちに

好きになっていたということも....。

 夕乃が心の底から真九郎を嫌いになれないように、紫の事も心の底から

嫌うことが出来ないことなんて、最初からわかりきってたことなのだから。

「諦めてよぉ...私から、真九郎さんを...大好きな人を奪わないで...」

「夕乃...もういい!もういいんだ!」
 
「夕乃が望むなら、私は真九郎にとっての一番でなくてもいい...」

「紫ちゃん...」

 涙をぬぐい、ようやく曇りなき瞳で紫と相対する夕乃に紫は

更に自分がどうしたいのかを、熱意を込めて語り始めた。
0751名無しさん@ピンキー2016/12/01(木) 01:25:23.28ID:qO1WsCuS
「夕乃!私は九鳳院だ。それは変えようがない!」

「だが、九鳳院以上に真九郎が大事なのが私の本心だ!」

「真九郎がいれば、私は何でも出来る。不可能だって可能にしてみせる」

「いや、それ以前に私は、私の力で真九郎の力になってやりたい!」

 真九郎が自分を未来へと導いてくれた。

 ならばこそ、今度は自分が真九郎の望む未来へとその手を引いていきたい。

 夕乃も、紫も、その心の根底にあるのはそれだけだった。

 ただ、その想いが強すぎて、誰とも分かち合えないと思い込んでいた。

 しかし、もう二人の間にあるわだかまりは既に溶けていた。

 今ここにあるのは互いを認める素直な気持ちと心だけだった。 
0752名無しさん@ピンキー2016/12/01(木) 01:25:44.14ID:qO1WsCuS
「夕乃。私を真九郎の側にいさせてくれ!」

「どんな形でも良い!私は真九郎の側にいるのが一番の幸せなんだ」

 そうだ。私は今までなにを遠回りしていたんだろう。

 たとえ真九郎と結ばれなくても、ずっと、どんな形であっても

愛する人を支えたい。そう思っていたはずだったのに.....。

「紫ちゃん。今の言葉に嘘はないですか?」

「無い!」

「一人の女として、私にそれを死ぬまでずっと誓えますか?」

「誓う!」

 一番でなくてもいい。ただ愛する者の側にずっといたい。

 紫の言葉に夕乃の心は、遂に陥落したのだった。

「頼む夕乃。この紫の一生に一度のお願いだ」

「私から、私が愛する紅真九郎を奪わないでくれ!」
0753名無しさん@ピンキー2016/12/01(木) 01:26:22.11ID:qO1WsCuS
 畳に手をつき、頭をつけた土下座をする紫を起こしながら、夕乃は

僅かに残った涙をぬぐい、最後に残った心の闇を綺麗に清算した。

 真九郎は結局自分だけを見てくれなかった。

 けれど...

「...完敗ですよ。はーぁ、本当に負けました」

「ゆ、夕乃?」

「貴女の気持ち、本当に分かりました」

 今なら、紫の気持ちが分かるかも知れない。

 だって、こんなに素敵な女性ならいつまでも一緒に居たくなる筈だ。

 臆することなく心の闇に踏み込んできて、いつの間にかその闇を

綺麗に晴らして、前へと進む力と決意を与えてくれる。

 そんな九鳳院紫という少女に崩月夕乃は心惹かれてしまったのだ。

「紫ちゃん。いつか私と一緒に真九郎さんと暮らしませんか?」

「ほ、本当にいいのか?!」

「ただ、真九郎さんの一番目の奥さんの座は譲れません」

「それでもいいなら、私は、崩月は貴女を家族に迎え入れます」

「夕乃〜!」
0754名無しさん@ピンキー2016/12/01(木) 01:26:37.99ID:qO1WsCuS
夕乃の豹変に戸惑いながらも、紫は自分が認められた嬉しさを

隠すことなく夕乃へとぶつけた。

 夕乃も紫に対して抱いていた心の闇がなくなった今、目の前の

少女に対して、かつて真九郎に対して抱いていた庇護欲のような

感情がわき上がってくることを自覚した。

「私は、なんていうか...不器用で、感情的ですけど」

「貴女と上手くやっていけるように、ちゃ、ちゃんと努力します」

「だから、もし貴女さえ良ければ...」

「私を姉のように思ってくれても構いません」

 これから先、どれくらい紫と一緒に過ごせるのかは分からない。

 だけど...

「貴女を嫌う理由も憎む理由も、もう無くなりましたから」

 紫との関係を一新するのなら、姉妹という関係が一番だと夕乃は思った。

「ほ、本当に良いのか?夕乃」

「わた、私の気が変わらないうちに早く返事をして下さい!」

「ああ。夕乃がこれから私の姉になってくれるなら大賛成だ!」

「よろしく頼む。夕乃!」
0755名無しさん@ピンキー2016/12/01(木) 01:27:06.49ID:qO1WsCuS
「さて、そうと決まれば騎馬に連絡せねば」

「何を連絡するんですか?」

 床に散らばる携帯電話の残骸を見遣りながら、紫に何気なく尋ねる。

 これから私も真九郎さんのように、紫ちゃんに振り回される毎日を

送るんだろうなぁ。としみじみと思いながら物思いに耽る夕乃が

真九郎の部屋の電話に手をかけたその時...

「決まっておろう。真九郎を九鳳院の近衛隊に入れるのだ」

「はぁ?!」

 事もなげに、さらりととんでもないことを紫は言い放った。

「何をそんなに驚いておるのだ、夕乃?」

「驚きますよ...大体、そんなこと急に言われたって...」

「ふくりこうせいとやらは九鳳院は世界で一番しっかりしているぞ?」

「ダメです!まだ真九郎さんは崩月流の修行が終わってません」

「それに、近衛隊に真九郎さんが入れば一緒にいられる時間が減りますよ」

「なに?!そ、それはイヤだ。ううむ、やはり崩月の修行が先かぁ」

「そ、そうですよ」
0756名無しさん@ピンキー2016/12/01(木) 01:27:25.80ID:qO1WsCuS
紫は実に残念そうな表情を浮かべながらも、お父様に真九郎のことを

認めさせるには実に良い機会だったのだがなぁ。と未練がましく

夕乃に抗議していた。

 確かに今の真九郎の実力なら、そこそこ通用はするだろうが

九鳳院とて、最終学歴が中卒の近衛兵を置いておきたくないだろう。

 せめて、真九郎が卒業するまで保留するというのが妥当な判断だろう。
 
「この話は、これでおわ...」

「そうだ!なら、夕乃が近衛隊に入るのはどうだ?」

「私?いや、だって私」

 いきなり自分に矛先を向ける紫に対して、夕乃はその意思はないと

説明しようとした。しかし...

「花嫁修業にはもってこいの場所だぞ?」

「給料も良い。人脈も出来る。暇なときはいくらでも休暇が取れるぞ?」

 どのみち、高校を卒業したら崩月の修行の傍らで就職活動も始めなければ

ならないだろう。

 しかし、何度も面接を受けるのも骨折りだし、崩月を名乗り続ける以上、

命を狙う輩に絡まれる不安もある。

 そういうことを踏まえれば、紫の申し出はとてもありがたい。
0757名無しさん@ピンキー2016/12/01(木) 01:27:48.35ID:qO1WsCuS
 
「...ちなみに育児休暇って取れますか?」

「まぁ、そこは応相談という奴だ。働き次第だろうな」

 いずれ真九郎も揉め事処理屋からの転職を考えるはずだろう。

 そうなった時、真九郎と一緒に紫を守りながら働くというのも

刺激的で悪くないかもしれない。

「それなら、少し待ってて貰えませんか?」

「うむ。決心がついたら私に教えてくれ。騎馬に話は通しておく」

 相容れない表と裏であるにも関わらず、彼女達は笑い合っていた。

 まるでこれから先の人生には幸せなことしか訪れないのだというように、

紫と夕乃はいつまでも笑い続けていた。

「あとの問題は、九鳳院の遺伝的な問題だけだな」

「...紫ちゃんのお兄さん達からお世継ぎが産まれればいいですね」

「うむ。そうなれば、私も真九郎の子供を安心して身籠もれる」
0758名無しさん@ピンキー2016/12/01(木) 01:28:04.97ID:qO1WsCuS
真九郎の夢に付き従う身として、これから降りかかってくる困難が

どれだけ無理難題であろうとも、きっと乗り越えて見せる。

 何故ならここにいるのは愛の力で運命を変えてきた者達だからだ。

「色々、大変になりますけど頑張りましょうね。紫ちゃん」

「ああ。これから迷惑をかけるが、私も夕乃と真九郎の支えになって見せる」

 この世界は残酷で救いがない。

 だから人は誰かと寄り添うことで、幸せを得る為に戦う決意を決められる。

 これは、いつか来る終わりの時まで愛を叫びながら生きた者達の物語。

 どこまでもまっすぐに自分の意思を貫いた彼等の未来は...果たして


〜紫の嫁入り 後編に続く〜
0760名無しさん@ピンキー2016/12/03(土) 01:29:00.53ID:5yZqAU9F
伊南屋さーん。たまにはここに戻ってきてss書いて欲しいです。
0768名無しさん@ピンキー2021/02/11(木) 23:58:39.47ID:yU9sJcMw
まさか電波が漫画化とはね
レスを投稿する


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