「はい!ストロベリーの良い香りがするんですよ」
丸っこいボールみたいな入浴剤。バスボムっていうんだっけか。
手に取って鼻に近づけると、確かに甘酸っぱい美味しそうな香りがした。
淡いピンクとパープルが綺麗なマーブル模様を描いている。「僕のお気に入りなんだ」と那月が春歌にくれたらしい。
「それで……あの……」
「ん?どーした?」
「な、那月くんが、し、『翔ちゃんと一緒に入ってね』って……」
「はあっ!?」
言い終わると同時に、春歌の顔がトマトのように赤くなる。
那月のヤツまた妙なことを――と、拳を握りしめてから、この案は悪くないなと思い直した。
「あ、も、もうお風呂湧いてるので!翔くん先に入ってください!」
「いや、お前も来い」
「へ?」
きょとんとした表情で、俺の目を覗き込む春歌。
その白い手にバスボムを握らせ、帽子を置いてスカーフを取る。
「……い、一緒に入るっつってんだよ!」
「え……えー!?」
「えーじゃない!ほら、ついて来い!」
慌てふためく春歌の腕を掴んで、俺は浴室へ早足気味に向かっていった。