……森に1人で暮らしていたって…そりゃ世間知らずなワケだ。
「……でもそういう街には当然、人間やドワーフが一緒に住んでいると思うけど?」
「わかっているわよ。ドワーフなんて不潔だし、汗臭いし、もう最悪。大嫌いよ」
よほどドワーフの事が嫌いなのかアリスは鼻をフンと鳴らせて言った。
そして思い出したかのように
「言っておくけど、人間も同じくらい嫌いだからね」
俺を指さして言った。
その人間の所有物で街まで行こうとしているクセに!

そうして馬車を走らせること数時間、先の山道で激しい言い争いが聞こえてきた。
見通しの悪く、状況がわからない。俺は馬車を止め、周囲を警戒した。
「な、何!?どうしたの!」
荷台で休んでいたアリスが飛び起きた。
「しっ……わからない……けど、気をつけて。物音を立てるな」
その時、金属がかち合う音と共に絶叫が聞こえた。
「っ!誰かが襲われている!」
俺は荷台に飛び乗り、隠してあったマスケット銃に火薬と弾を込め、柵状で固めた。
続いて剣、投擲ナイフ、ダガーが吊してあるベルトを締め、
最後にマスケット銃の薬包が入ったポーチをベルトに装着させた。
「君は銃を扱えるか?」
「そ、そんなの使った事ないわ!た、戦った事なんてない」
「わかった。君は隠れていろ、俺が戻らなかったらすぐ森へ帰るんだ!」
俺はそう言い残して、山道を登って争っている声の方角へ走っていった。
木々の間から覗くと襲われているのは2人、人間の女性と男性だ。
その容貌から神官戦士と魔法使いだろう。対するのは10人。
こちらは山賊か盗賊らしい。装備がバラバラだ。
『グリエルド、私が前衛をつとめます。貴方は後方へ』
男性の方は傷を負っているようだ。馬車や馬がないことから街から逃げてきたのか?
『クソアマが!ぶっ殺してやる』
『街を占拠した盗賊旅団《バルモルダ》から逃げられると思ってンのかよ!』
街を占拠だって?それにバルモルダと言ったら大陸南部で
悪名高い獣人の大盗賊だ。あのまま街に行っていたら……と思うとゾッとする。
盗賊達と女性が対峙した。女性の武器は両先端がニードル状になっている槍だ。
いくら槍でもあの人数相手にはキツイだろう。

続く予定。ここは戦闘描写もありですか?