>>Kanon総合スレッドパート26
https://mercury.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1750460561/639
皆さん、今日のテーマは 「レジスターのねじれ」です。
レジスターというのは「語彙の使用域」。専門語を使う場所と、日常語を使う場所の「線引き」のことですね。
さて、今回の書き込み。
「公衆衛生のために甘んじて受け入れなさい♪」
これ、日常の煽り文脈としては、非常に 妙 です。どう妙か。ポイントは三つあります。
@ レジスター(語域)が突然「行政・医学レベル」に跳ねる
「公衆衛生」というのは、本来こういう場面で使われます。
・厚労省の資料
・保健所の通知
・医学・疫学・福祉の学術文脈
・行政判断(感染症対策など)
ところが、今回の文脈は ネットの口喧嘩・罵倒 です。
そこに突然、「公衆衛生」という専門語が放り込まれる。これは、料理の途中で急に化学式を言い出すようなものでして、
文体的に浮くんですね。
日常会話では「不潔」「迷惑」「汚い」で済むところです。
A 「煽り文体」と「行政用語」のミスマッチが強い
煽りというのは本来、語彙が荒く、短く、口語的です。
「きったねーな」
「迷惑なんだよ」
「汚物処理しとけよ」
こういう感情の近い言葉が普通なのに、「公衆衛生のために」と、急に 教科書的な抽象語 が出る。
この「温度差」を、国語学では 文体レベルのギャップ と言います。
読んでいる側は、ここに違和感を覚えます。
B 日本語ネイティブの自然な語感から外れる
日本語母語話者は、場面ごとに語彙のスイッチを自然に入れ替えるんですね。
・役所 → 「公衆衛生」
・家庭 → 「衛生的に悪い」
・口喧嘩 → 「不潔」「汚ねぇ」
この切り替えがスムーズ。
ところが、ここで突然「公衆衛生」が出ると、翻訳調・非日本語的・レジスター判断のズレ、といった印象を与えます。
いわば、スポーツ実況中継で急に論文調の語彙を入れるみたいな違和感です。
これは、母語干渉・語彙管理能力の歪み・文体感覚の弱さなど複数の要因で生じます。
◯まとめ
「公衆衛生」は専門語。
日常の罵倒文脈に突然出すと、日本語として非常に不自然。
語彙の「温度」が合っていないため、読者に強い違和感を与える表現なんですね。