SOUL CATCHER(S)でエロパロ
0001名無しさん@ピンキー2013/11/21(木) 15:34:54.48ID:EC9VYa+e
SOUL CATCHER(S)の女の子達を皆それぞれ自分勝手に指揮するスレ。

自由に指揮してOKですが基本を守ることは大前提。

何かアブノーマルな要素を加えたい?
指揮者は周りの人間に気を使わなければならない存在です。
十分に注意して人の心と向き合いましょう。

男同士の絡みを指揮したい?
当スレの題材とは異なる曲目なのでご遠慮ください。
0078汝がこゑ 3/62014/09/14(日) 15:43:49.86ID:hF3SQDB8
「ちぇっ…」
やや不愉快な気分になりながらもカップに残ったお茶を飲み干そうとした神峰は、急にあの雨の日の
出来事を思い出した。同時にさらりと触れるだけだった唇の感触も。
そういえばあの時、邑楽はどうしてあんなことをしたのだろう。
彼女の性格上軽い気持ちでふざけてやったとはとても思えないのだが、だとしても真意そのものが
本当に分からずにいる。
あれが現実にあったことだったのかさえ分からなくなっていた。
さすがに真正面から聞く訳にもいかず、あれから数日、話のいい切り出し方が分からないこともあり、
まともに顔も合わせられないままでいる。
邑楽も同様なのだろう。心の中にいる少女も神峰を一切見ずにそっぽを向いているが、やはり何かが
引っ掛かっているのか、時折頬を染めてちらちらとこちらを伺っているような表情をしている。
心が見えても、見えるだけじゃ意味がない。まだ上手く読み解けないでいる神峰はこういう時に本当に
窮することになるから、自分のこの能力が嫌いなのだ。
「参ったなあ…」
こんな時は考えが纏まる筈もない。分かってはいるが自ら混乱に巻き込まれるのも嫌なので必死に
何かいい答えはないかと足掻き続けるばかりだ。
そんな神峰を眺めて何を思うのか、刻坂は相変わらず下衆いニヤニヤ笑いを続けている。

次の日の放課後、神峰は音楽室で一人ピアノの練習を続けていた。まだまだ簡単な曲すら手こずって
いるのだが、落ち着いてさえいれば何とか最後まで弾けるようにはなっている。
気が付けば、日が落ちかけているのか室内は少し暗くなっていた。
「神峰、いるの?」
少し休もうと立ち上がりかけた時、足音と共に背後から邑楽の声がした。
「あ、ハイ。邑楽先輩が作ってくれたプログラムやってたんスけど、やっぱムズイッスね」
邑楽はさらりと肩にかかった髪を払って、いつものように隣に座った。
最初から何事もなかったような顔をして。
「そう、感心なことね。こっちのパート練習はもう終わったんで、あんたの進捗状況を見てあげるつもり
だったけど、まだそこまでは至ってない感じかな。もうちょっと練習を重ねないとね」
まだ拙い神峰の弾き方がもどかしく感じるのだろう、白い指がうずうずしているのが分かった。
「楽器は何でもそうだけど、練習を重ねて身体で覚え込まないと上達しないものよ。じゃあ、参考の為に
比較的スローテンポな曲を弾くから、まずは指の動きをよく見ておいて」
手早く前に置かれた楽譜の曲名には見覚えがあった。
「あ、ドビュッシーの夢想ッスね。前にCMで聴いたことあるス」
「そう、この曲はスローだけど運指は比較的難しいからあんたはもう少し先ね」
0079汝がこゑ 4/62014/09/14(日) 15:45:04.15ID:hF3SQDB8
呼吸を整えると、邑楽の表情が演奏者のものに変わる。
しなやかな指が鍵盤の上で踊り、快い分散和音を奏で始めた。
指先に目が釘付けになりながらも、神峰は何故だか昨日モコが美しい声で朗読していた詩の一遍を
思い出していた。

汝がこゑの したたる露
汝がこゑの ただよふ香

静やかな表情でピアノを弾く邑楽の横顔には音楽と共にあることの喜びが溢れている。同時にこんな
時だから見える素の感情が垣間見えていた。それが奏でる曲に溶け込んで得も言われぬ音色を生み
出している。
モコがあの美しい声で恋を諳んじるように、邑楽は指先で音色で心の内を曝け出す。今、ピアノが奏でて
いる音はそっくりそのまましたたる露、ただよふ香となっていた。

ああ、そうか。

その時、神峰の中で何もかもがパズルのように合致する。
経験のないことだったとはいえ、初めから迷ったり、悩む必要のないことだったのだ。
「あの。すんません、邑楽先輩」
意を決して、神峰は演奏中の邑楽に話し掛けた。こんな風に心を乱す行為は奏者にとってタブー中の
タブーなのは分かっていたが止まらなかった。額に滲んだ汗が頬を伝い落ちる。
「なに」
何事もないように、邑楽は短く言葉を返す。
「あの、邑楽先輩。この前の雨の日のことッスけど」
瞬間、完璧に奏でられていた旋律がやや乱れた。
「…あれって、そういうことだったんスよね」
気を取り直したのか、何とか演奏を続ける邑楽の横顔はわずかに震えていた。そして曲が終わって
からようやく言葉を返してくる。
「……うん…」
鍵盤の上に置かれた指が、何故か痛々しく見えた。
「率直に言うんなら、嬉しかったス。だけどどうしてオレだったんスか」
「…それがあたしなのは、嫌?」
縋るような眼差しを向けて来る様子はひどく儚くて、答えひとつで脆く崩れてしまいそうだった。それが
分かるからこそ何とか上手い言葉を選びつつも、つかえながら懸命に話す。
「…いや、そうじゃなくて…邑楽先輩がどうとかじゃなくて…オレなんかにそういう気持ちを持ってくれて
いるのはすっげー有難いんスけど、元々あんまり人とコミュニケーションを取るのが上手くないせいで、
人に対して猜疑心が強くなっている面倒な奴なんス、オレ」
0080汝がこゑ 5/62014/09/14(日) 15:47:10.52ID:hF3SQDB8
邑楽の心の中の少女が涙を溜めながらも、真剣に神峰を見ていた。これまでになかったことの連続で
テンパりかけていた神峰はそれでやや平静を取り戻す。
そうだ、この人に関しては少女の様子を見ていれば間違いがなかった。余計なことを色々と考えていた
せいで分からなくなっていたのだが、知るべきことはたった一つだったのだ。
邑楽は首を傾げながら答える。
「その猜疑心の強いあんたの前に現れたのが、あの馬鹿正直な刻坂だった訳よね。それってすごい
奇跡だったと思う、お互いにね。刻坂のことだから一度心を許したあんたのことを全面的に信じてきた
でしょ。あいつのことなら、あんたも信じていけるって思っている筈だしね」
黒く澄んだ瞳をもう逸らすことなく、邑楽は言葉を続けた。その口調に一切の迷いもない。
「それと同じように、あたしもあんたを信じて、先行きを見守っていきたいの。そして信じて欲しい。望んで
いるのはただそれだけよ。それは嫌?」
その時、本当にこの人は綺麗な心を持っていると思った。なので余計に答えを慎重に選びながら神峰は
更にどもりそうになる。
「嫌、じゃなくて畏れ多いっつーか、光栄っつーか…ひたすらメッチャ嬉しいッス」
人の心が見えるせいで猜疑心が強い分、嘘偽りのない心をまっすぐに向けてくれる人は子供の頃から
誰よりも大事にすることに決めていた。
人生の糧になる友人や生涯を共にする女性なら尚のこと。
刻坂が真っ先に腹心の友人になってくれたように、邑楽もまた紆余曲折後に信頼を勝ち得た後は驚く
ほど真摯な感情と剥き出しの好意を向けてきた。それもまた奇跡の一つなのだろう。
とん、とんと鍵盤を叩くように邑楽の指が神峰の手の甲の上で翻る。再びどもりがちになりながらも、
ようやく間近で見つめてくる邑楽の顔をまともに見ることが出来た。意志の強そうな黒い瞳とウェーブの
かかった髪が改めて綺麗だと思った。
「音楽に関しちゃまだド素人も同然なオレからすれば、邑楽先輩は雲の上の存在なんス。綺麗だし、
ピアノもクラリネットもメチャ上手だし。だからそんな人が何でオレになんかって、ホント分かんなくて」
「……理屈、じゃないの。あたしは、不器用でも必死で頑張ってみんなの為にいつも奔走している今の
あんたがいい。それだけなの」
「そう、ッスか」
「うん」
鍵盤を叩くように動いていた白い指が、くるりと神峰の指に絡んできた。そのまま力を込めてくるのが
いじらしく思える。心に留めたのが、この人で良かったと温かい思いが胸に満ちていく。
「あたしはあんたがいればいい」
「オレなんかで良ければ、喜んで」
0081汝がこゑ 6/62014/09/14(日) 15:48:00.17ID:hF3SQDB8
絡められた指に神峰から力を込めると、邑楽は少し驚いたような顔をしたがすぐに心の中の少女と
全く同じに頬を染めて顔を伏せた。
「……うん」
絡め合っている指先までが妙に熱く感じ、急に気恥ずかしい気持ちになってしまった。そのま二人とも
しばらくの間、何も言えないまま時だけがゆっくりと過ぎていく。

「あ、あの…あのね」
すっかり暗くなった音楽室には緩やかな沈黙だけが続いていたのだが、先に口火を切ったのは邑楽
だった。どんな顔をすればいいのか分からない分、この慈愛のような暗がりは有難い。
「え?」
「時々、で良ければお弁当作っても…いいかな?」
照れ隠しなのか、ぼそぼそとした声が妙に可愛らしい。
「え、あ、ああ…そりゃもう大歓迎ッス。邑楽先輩の作ったモンは何でもすっげー美味いんで」
「良かった…じゃ、いつでもいいから好きなものとか、嫌いなもの教えてね」
「んー、タ」
タコさんウィンナー、と言いかけた神峰の言葉はもう続かなかった。周囲も見えないほどの暗がりが
邑楽の気持ちを大胆にしたのか、唇を塞がれたからだ。
身じろぎする度に細い髪が頬に乱れかかってくるのを感じながらも、この甘やかな時間に身を置く
心地良さに次第に酔い始めていた。確かめるように唇を噛み合わせながらもおずおずと腕を回して
くる邑楽の感情が痛いほど伝わってくる。
心のリミッターの外れた今は、声なき声が絶え間なく熱く狂おしい思いを訴え続けていた。
この人が零すこゑは、この世のどんな美辞麗句もとても追い付かない。

その後、神峰の弁当の毎回のクオリティーの高さに、吹奏楽部の面々が一同に下衆いニヤニヤ
笑いを浮かべて、これはもう愛妻弁当だとしきりに噂したことは言うまでもない。




0086その手は離さない 1/42014/09/28(日) 00:29:47.44ID:4Kb/DlBo
その日、クラリネットのパート練習を終えた頃のこと。
後片付けをしていた邑楽に数人の女子が何やらもじもじとした様子で話しかけてきた。とはいえ互いに
どう切り出せばいいかと困っているようで、肘でつつきあっている。
「…メグ先輩」
「んー、何?」
振り返りもせずに言葉を返しててきぱきと作業をひなしていた邑楽だったが、女子たちは口籠りながらも
無邪気に尋ねてきた。
「今日も音楽室に行くんですか?」
「え…?」
内心音楽室でのことが色々とばれているのかと焦ったのだが、女子たちの口は止まらなかった。
「神峰、結構真面目に毎日ピアノ練習してるんで、やっぱ気になるのかなーって」
「え、あたしもう付き合ってるのかと思ってた」
「あたしも」
「お弁当も作ってやってるみたいだしね」
「…ちょっと!」
放っておいたらいつまでも喋っていそうな彼女たちに呆れながら、邑楽は溜息をついて腕を組んだ。
「それの何が悪いの?」
その言葉に、彼女たちはたじろいだ。
「あたしはクラリネットパートを一番に考えてる。何をするにもパートのあんたたちのことはないがしろに
しているつもりはないわ。だけど時間に余裕があったら、それはあたしの自由にさせて欲しいの。神峰は
まだあたしの助力が必要なんだし」
一週間ほど前から付き合いの始まった神峰とのことは、別に特別隠しだてすることでもない。元々交際
禁止を謳う部ではないのだから堂々としていればいい。ただ、まだ神峰の立場も部内では不安定なの
だし、こんなことで不要な雑音が出ないとも限らない。今は非常にデリケートな時期なのだから浮かれて
いられないのだ。
「分かったかなあ」
「…はい」
先程まで雀が群れるようにかしましかった女子たちは、あくまでも毅然としている邑楽に威力をそがれた
のか、急に大人しくなった。
「…ごめんなさい。あたしたち、ずっとメグ先輩と頑張ってきたのに、なんかマンツーマンで指導されてる
神峰が羨ましくて」
「分かればいいの、じゃ、あたしもう行くね」
0087その手は離さない 2/42014/09/28(日) 00:30:37.59ID:4Kb/DlBo
何かと噂にしたがるのが女の子というものだけど、ここは堂々としていればいいんだと心に決めて邑楽は
スカートを翻した。元々それなりに覚悟があったからこそ、この恋は始まったのだから、何も気にする
ことはない。
肩に零れる髪を払い、きっと前を向いてドアへとまっすぐに歩いていく邑楽を見送りながら、女子たちは
放心したようになっていた。
「やっぱメグ先輩かっこいいなあ…」
「神峰、いいなあ」
年齢的にも恋に恋をし恋に憧れる時期なのか、女子たちの口からは再び止まらぬ憧憬と羨望が溢れ
出した。

「あ、来た」
音楽室のドアを開けると、時折一緒に神峰に指導している御器谷が顔を向けて笑った。肝心の神峰は
というと神妙な面持ちで鍵盤を叩いている。まだわずかの心の余裕も持てないようなのが微笑ましくて
つい目元が緩む。
しかしのんびりとした御器谷の声が現実に引き戻した。
「遅かったね、恵」
「あたしだって忙しいの、忍、あんたと違ってね」
「うん、そうかなあ…」
噛み合っているのかどうか分からない、いつもの会話をして普段の定位置に座ると、ようやく邑楽の
存在に気付いた神峰が顔を上げて笑った。
「…邑楽先輩、今日はどうッスか」
「まだまだだけど、精進はしているみたいね。少し休みなさい」
「はい!」
大分手が痛そうなのは。すぐに見て取れた。一人でいる時も神峰はここでずっと可能な限り練習を
続けているのだろう。運指はまだぎこちないものの、音そのものは大分滑らかに出るようになってきて
いる。
「神峰君は熱心だよ、恵に言われた通りにきっちりこなしている」
まるで自分のことのように、御器谷は嬉しそうだ。
「当たり前じゃない。あたしは自分の経験から初心者でも出来る適正な練習を課しているの。これで
上手くならなきゃおかしいでしょ、ねえ神峰」
「そうッスよ、最近我ながら結構いい調子で進んでると思うんで」
神峰も御器谷につられるように笑顔を見せたが、やはり手は痛いのだろう。何となく不愉快な気分に
なって、やや強い語調になってしまう。
0088その手は離さない 3/42014/09/28(日) 00:31:32.69ID:4Kb/DlBo
「調子に乗らないの。あんたみたいな初心者が同じ動きを反復していたら、腱鞘炎を起こすんだから。
大体、休憩もろくに取ってないでしょ」
「あ、はあ…」
そこで、思い出したようにぱん、と御器谷が大きく手を叩いた。
「じゃあ、神峰君。何か飲み物買って来るから少し休もうか。何がいい?」
「あ、じゃあカフェオレを…」
「恵も一緒でいいよね、ちょっと待ってて」
「あ、ちょっと」
二人に気を利かせたつもりなのか普段の卑屈さはどこへやら、御器谷は颯爽と音楽室を立ち去って
しまった。これは当分戻って来ないつもりだと悟る。
「…んもう…」
二人きりにされたことで何となく気まずい気分になっていたのだが、神峰の方はまだ呑気に鍵盤の
上で指を動かしている。
「神峰、手」
ぶっきらぼうに顔を向けると、びっくりしたような表情が飛び込んできた。
「はい?」
「痛いんでしょ。ちょっと見せてみなさい」
「あ、でも」
「指揮者がこんなことで手を痛めて指揮棒を振れないなんて事態、有り得ないでしょ。あんたはもっと
自分の価値を知りなさい。自分にどれだけの期待がかかっているか分かんないの?」
そう言ってもまだ反応は鈍かったが、気にせず無理矢理に手を取ると、見慣れた神峰の手はやはり
熱を帯びて少し腫れを持っていた。ピアノを長く続けている邑楽だからこそすぐに判断を下す。
「やっぱりね。神峰、あんたは今後三日ほどピアノ禁止よ」
「んー…そうッスね。残念だけど」
真剣に心配している邑楽に比べて、神峰の方はといえば顔を赤くして目も合わせない。下を向いて
何か言いたげにしているのだが、苛立っているせいかそれすらも腹立たしく思える。
「もう、神峰!」
「あの…」
視線を逸らしてしばらくもごもごと続きを言い淀んでいた神峰の口が、やがてゆっくりと動き出した。
「オレ…前より邑楽先輩のこと、すっげー好きになった」
「え?」
0089その手は離さない 4/42014/09/28(日) 00:32:35.53ID:4Kb/DlBo
「こんなことがなかったらずっと勝手に憧れてただけだったかも知れないんで、なんか夢みたいで…
で、思ってた以上に邑楽先輩がオレのことを考えてくれてるからもうそれだけで一杯一杯なんス」
「神峰…?」
下手をすればお節介と思われかねないほど、邑楽は常に人を気遣い行動する。もしやつい過ぎたことを
したのではと危惧したのだが、別に神峰は嫌がってもいないようだ。
だが、一体何を言いたいのかさっぱり分からない。
首を傾げて様子を伺う邑楽にまだ視線を合わせようとしない神峰は、更に重くなっている口をやっとと
いう感じで開く。
「なんで…手、離して貰えないッスか」
熱を持っている手が、するりと離された。
「あたし、迷惑だった?」
「……じゃなくて」
元々それほど口の上手くない神峰のことだ、どういえば一番なのかしばらく考えあぐねているように俯き、
脂汗を流している。これから一体何を言い出すのかと気を揉みながらも、邑楽はただ黙って見守るばかり
だった。
そうして互いに無言のまま五分ほど経った後、遂に神峰が心に溜まっていたことを吐き出した。
「オレだって一応健全な男子なんで、こんな感じで好きな人と二人っきりでいたらヤバい気分になる…
ってことッス」
それまで伏せていた顔を上げて、縋るような真剣な目をして見つめてきた表情に、邑楽はそれこそ魂を
掴まれたような気がして尚更何も言えなくなった。
一応付き合っている間柄で、キスも何度かしたことがある。けれどそれ以上のことはまだ何も考えられ
なかった。神峰自身の生真面目な性格や、まだ予断を許さない吹奏楽部内での立場もあって欲求にも
ブレーキをかけがちになっていたのだろう。
しかし、神峰がその性格ゆえに劣情が湧き上がるのを許せずに余計に悩む羽目になってしまったのなら、
やはり責任は自分にある。
いや、そんなことは全て只の綺麗事だ。この年下の男の一挙手一投足が気になり始めてから、傘の下で
キスをしたのがきっかけで付き合い出した時からもう分かっていたこと。これから訪れる筈の出来事の
何もかもひっくるめて、他の誰でもない、神峰と経験するのでなければ絶対に嫌なのだ。
「神峰」
別にこれから仲を深めていくのは不自然なことじゃない。互いに何も知らない分、道のりは遠いだろうが
得るものは大きい筈だ。この男とならば。
その為にも、二度とその手は離したくなかった。
だから次の一歩を踏み出す為に、言葉で背中を押してみる。互いに好意を抱いているのだから、もう
ここから引き返す必要もない。
「あたしもそういう気分」
愛しい、可愛い、全ての思いを込めてもう一度神峰の手を取ると、頬に押し当てた。何故だか感極まって
しまって、流れ落ちてくる涙が熱い。
再び、日の暮れかかる音楽室には長い沈黙が訪れた。




0090名無しさん@ピンキー2014/09/28(日) 00:34:10.04ID:4Kb/DlBo
ジャンプ系でずっとエロ書いてきたけど、この二人はなんか色々と時間かかるわー
0091名無しさん@ピンキー2014/09/28(日) 21:14:27.93ID:VWbmYsbc
>>90
いつも萌えをありがとうございます
ゆっくりな所がこの二人にふさわしく思います
0093crescendo(クレシェンド) 1/22014/09/29(月) 00:42:04.41ID:W2wE6oDG
「えーと…」
「ストップ。神峰君、今はドレミはひとまず忘れようね。どうしても出て来るかも知れないけど、それは
階名だから」
色々なものがまだ覚えきれていず頭を抱えている神峰の隣で、御器谷は冷静に言い放った。
まず当面の君に必要なものはこれだけあるよ、と机上に広げた御器谷自作のテキストはかなりの量に
上った。普通なら纏めて一抱えすれば重くてよろめいてしまう程に。
ようやく譜面が読めるようになった程度で技術だけでなく知識も初心者な神峰にとっては、それは見た
だけで圧倒されてしまうものだろう。
子供の頃から音楽教育を受けている訳ではないから大変だとは思う。それでも神峰なら石に齧りついて
でも、この自己流の勉強について来てくれると確信していた。

神峰が腱鞘炎を起こしかけている、と邑楽から聞いた。
幸いにも今日は割と神峰の為に割ける時間があるので、理科室の使用許可を貰っての勉強再開で
ある。テキストの中から幹音名とシャープ・フラット別の派生音名一覧表を抜き出し、指で示しながら
説明を続ける。
「まず肝心なのは英米式なんで、これはしっかり覚えよう。コードネームには必要なものだから」
「んー…なんか激ムズッすね」
「うん、でも慣れれば簡単だし」
「えーと…変ハがC♭で…」
ぶつぶつと口の中で音読するように呟きながら、一覧表に赤ペンで覚えやすいように書き込みを入れて
いる神峰の横顔は真剣そのものだ。
刻阪はこの目の前にいる少年が世界的指揮者となった未来が見えると言う。邑楽にも見えてきた
らしい。自分にはまだ良く分からないが、それでも子供の頃から大事に思っていたそを託したことで
以前にも増して自分の持てるもの全てを教えたいと思った。それが神峰の飛躍の一助力になれるなら
本望だと。
御器谷は考える。
音楽知識だけなら何とかそれなりに備えてはいるが、自分にはそれだけだ。今後厳しい音楽の世界で
生きていくことはきっと難しい。それなら可能性のある者に賭けてみるのは逃げではないだろうと。
それに、邑楽の存在もある。

「ねえ神峰君」
髪を掻きむしりながら必死で覚えようとしている神峰に、御器谷は唐突に話し掛けた。
「何スか?」
「恵の話を、してもいいかな」
0094crescendo(クレシェンド) 2/22014/09/29(月) 00:42:34.38ID:W2wE6oDG
その瞬間、眉間に皺を寄せていた神峰の表情がぱっと変わってわずかに頬が染まる。その顔を見ると、
あ、二人とも幸せでいる。関係は順調に進んでいる。良かったと不思議な安堵が胸に広がって温かい
気持ちになった。
「恵はね、昔から本当に可愛くて利発な子だったよ。だから出来ないことなんて一つもなかった。勉強も
良く出来たし運動神経も良かった。当然恵のことが嫌いな子なんていなくて、それがボクの密かな自慢
だった。ボクのイトコはこんなにすごいんだぞって、誇らしかった」
「へえ、じゃああんな感じでずっと変わらずに大きくなったんスね」
昔話に興味を持ったのか、神峰の目が輝いた。
「そうだよ。だけど、そんな恵でも無理なことがあった。以前君にも言った5年連続ダメ金のことだ。その
責任はボクにあるとはいえ、向上心をなくした恵を見ているのは辛かったよ。だから君にはとても感謝
している。君じゃなかったら…恵も、ボクも、ずっと救われなかった」
「ちょちょっと、そんな…」
急な話の流れに、神峰はついて行けないのか混乱しているようだ。あたふたしながら言葉を選んで
いるのが微笑ましい。
「そんなの、邑楽先輩や御器谷先輩に…えーと、元々の自力があったからッスよ。だからオレみたいに
無茶な指揮をしても対応出来るし、自分で解決策を見つけられたんじゃないッスか」

違う。

この一直線で素直な、嘘もつけない後輩のただ一つの嘘が何故だか見抜けた。
神峰は確実に指揮をしている最中だけでなく、普段から見えざる何かが見えている。だから的確に
各人のコンプレックスや欠けているものを見出し、それを指揮に乗せて巧みに指摘しながら引き上げて
いく。あたかも浄化するように。
何者にも勝る自力があってもどうにも出来なかったのは、音羽や奏馬を見ても明らかではないか。
しかし、それを口にしたところで神峰にとっては単なる結果論だし、堂々巡りになるだけだ。
「…そうかも知れない、けどね」
御器谷は頭の中を巡っていた思いにその一言で蓋をした。やはり子供の頃から誰よりも大切で、一番に
守りたいと思っていたイトコをこの頼もしく誠実な後輩に託して間違いはなかったと思えた。これから
先は恐らく広い世界へ羽ばたく二人の後姿を見送るだけになるだろうが、それもまた誇らしい。
「神峰君」
丸椅子を引いて座り直すと、ぐっと間近で顔を覗き込んだ。
「え、は、はい」
「恵はね、君のことがとても好きだよ。だから頼むね」
その時、神峰の目には今ここにいない邑楽の姿が傍らに見えていたのかも知れない。その姿は誰も
見たことがないほど美しいものに違いなかった。
その証拠に、はにかみながら返事をする神峰の眼差しは妖しく揺れている。
「それは、俺も…」




0095crescendo(クレシェンド) 2/22014/09/29(月) 00:44:10.29ID:W2wE6oDG
>>91
あざす
ホントにすぐエロいことにはなりそうもないんで、気が済むまで書きたいように書くよ
0096名無しさん@ピンキー2014/09/29(月) 01:41:50.36ID:W2wE6oDG
間違い間違い

× 子供の頃から大事に思っていたそを
○ 子供の頃から大事に思っていた彼女を
0098誰でもない時間 1/32014/10/20(月) 01:13:09.43ID:on9ZOVCM
吹奏楽部に入部した新入生たちが落ち着いてきた頃のこと。
その日は初夏と勘違いしかねない暑さで、夕方になっても気温が下がらなかった。

放課後、神峰は刻阪に連れられて馴染みだという楽器店に立ち寄っていて、スワブやクロス等の
手入れ道具を選ぶのを漠然と眺めていた。
そして時々周囲をぐるりと見回す。
楽器店は何だか不思議で異世界にいる感覚に陥る。
様々な楽器がずらりと並んでいるのは壮観で、高額な商品も珍しくないだけにどことなく威圧感が
ある。そんな感覚のせいかこの空間は妙にひやりと冷たく感じた。以前なら特に用事もなかったので
立ち入らなかった場所だ。
「神峰?」
ようやく普段使いしているクロスと新商品のポリシングガーゼを購入した刻阪は、神峰の様子に首を
傾げた。
「え?ああ…なんかまだこういうとこ、慣れなくてさ」
「それはあんまり気にしなくていい」
楽器は取って食いやしない、と刻阪はからりと笑う。
そんなものなのかな。
楽器には何か宿っていそうな気がするのは、決して間違ってはいないのだろう。怖いと感じるのは
また別の問題として。
だから知らず知らずにみんな真摯に楽器と向き合い、自分なりの音を導き出すのだ。

「さ、出ようか」
「そうだな」
促されて店を出ようとした時、入り口のドアが開いて別の客が入って来た。
「あっ」
聞き慣れた声がした。
無意識に顔を向けると、そこには驚いた顔で邑楽が立ち尽くしている。急に顔を見たせいで何を言えば
いいのか分からずにいるうちに、空気を読んだのか刻阪がさりげなく声を掛ける。
「偶然ですね、邑楽先輩」
「……あんたたちも買い物?」
「はい。でももう終わりましたので、帰ろうかと」
「そ、う…」
何か言いたげに視線を彷徨わせていた邑楽は、それでも当初の目的を忘れることもなく足早に店の
奥へ消える。背中でリズムを取るように波打つ豊かな髪が綺麗だった。
0099誰でもない時間 2/32014/10/20(月) 01:14:15.69ID:on9ZOVCM
目で追っていた神峰の肩を、とん、と合図のように二・三度刻阪の指が叩いた。
「チャンスじゃないか、お前は邑楽先輩と帰るんだな」
「え?」
刻阪はやや悪戯っぽい声で告げてから、じゃあまた明日な、と入り口に向かいながらひらりと手を
振った。
かなわないなあ、と溜息をつく。ある程度面白がられている面はあるが、応援してくれているのは
やはり有難い。
恋の一つすらこれまで経験がなかったこともあり、こういう後押しがあると行動に移しやすいのは確か
だったのだ。
「ありがとな、刻阪」
もう姿が見えなくなった友人に、改めて感謝の言葉を呟く。

「邑楽先輩」
楽譜の収められている棚の前にいる邑楽に声をかけると、何冊か手に取っている途中だった彼女は
心底驚いたように振り向いて目を見開く。
「え…なんで」
「なんでって」
「あんた、もう帰ったんじゃなかったの?」
真っ赤な顔をして、それでも毅然と言い放った邑楽は何だかとても幼く見えた。瓜二つの心の少女も
全く同じように拗ねた顔で、それでもじっとこちらを見つめている。
「なんか、刻阪に置いてかれたんで」
「…ふーん、仕方がないわね」
そんな短い遣り取りはあったが、後は何となく余計な言葉などかけるのは憚られる気がして、ただ
側でどんなものを選ぶのか眺めているだけになった。普段こういった姿をあまり見ないだけに新鮮で、
颯爽とした身のこなしやツバメの羽のように軽い腕の動き、端麗な横顔から醸される表情の変化を
余すことなく眺めているだけで幸せな気持ちになる。
「……あんたって、変な奴…」
見られることは慣れていないのか、居心地悪そうにそう吐き捨てながらも、邑楽もまた満更でもない
気分なのは少女の様子を見ていれば分かった。
心の中の少女は、ややはにかんだようにもじもじしながらも神峰に笑いかけている。
夕刻の店内には他に客もなく、佇む二人の様子は特別不審がられることもなかった。

程なくして邑楽は一冊の楽譜を選んだようで、レジに向かいがてら素っ気なく言葉を掛けた。
「偶然会ったんだし、仕方ないから一緒に帰る?」
徹底してどこか気まずそうな表情は、単に繕っているだけ。
それが今は分かるから、基本的に過剰に猜疑心の強い性質の神峰も彼女に対しては自信を持って
答えられた。
「はいッス」
0100誰でもない時間 3/32014/10/20(月) 01:15:01.33ID:on9ZOVCM
店を出ると空は既に夕暮れの色をしていた。
そろそろ街も帰途を急ぐ人で賑わうのだろう。そんなことを思いながら、足早に歩く邑楽の後をついて
行く。
忙しなく歩く邑楽の歩幅に合わせて間隔を一定に保つのは苦ではない。無駄なことは何も言わずに
こうして歩くのは既に二人の間で当たり前のことになっていた。つかず離れず、それでも心だけは決して
離れずにいる感覚が妙に楽しい。
ちらり、と邑楽の中の少女が振り向いて顔を赤くした。
やはり黙ってはいてもそれなりに背後が気になっているのだろう。本当に可愛い人だ、と思った。
そうしているうちに二人は駅前の道を通りかかる。この近辺はターミナルもあって人通りが特に多い。
うっかりはぐれて見失わないように慌てて距離を詰める。
「邑楽先輩」
だが、行き交う人たちが様々に発する言葉や物思う心が、急に聴覚視覚の巨大なジャングルのように思えて
息が詰まりそうになった。
ここで離れてしまったら二度と会えないような気がして、溺れてしまいそうな勢いで必死に目の前の邑楽に手を
伸ばす。
「邑楽先輩」
背中で揺れる髪に手が触れた途端、気配を感じたのか邑楽は不意に立ち止まって振り返った。
「…なに」
その顔は、先程の少女以上に真っ赤だった。
「置いてかれたら、悲しいッスよ」
「そんな訳、ないじゃない」
もごもごと一言二言呟いた後、そっぽを向いたまま鞄を持っていない片手を差し出してくる。これは、
繋いでもいいということだろうか。こんなに人がいるところで?
迷っているうちに急かすような声が掛かる。
「ほら、はぐれないでよ」
「あ、はい」
雑踏の中、繋いだ手が熱く感じた。
少しずつ、少しずつ、ゆっくりでもこの人と確実に繋がっていく。やはりそっぽを向いたまま再び歩き
出してはいても、歩みは少し緩やかになった。周囲の人の流れに逆らわず歩く二人の手はもう離れる
ことはない。
とうに日はとっぷりと落ちて、誰も二人のことは気にせず、二人が誰かも知らない。
誰でもない人たちの中の只の二人になって、誰でもない時間を泳ぐ。
突然、邑楽が呟いた。
「…あたしは」
「え?何スか?」
怖い、と聞こえた気がしたが、空耳だったかも知れない。
どんなことがあっても、この手を離しさえしなければいい。それが一番シンプルなコミュニケーションで
あり、また今の二人には必要なものに感じた。




0101名無しさん@ピンキー2014/10/20(月) 23:07:26.12ID:hx05qp5K
しばらく来てない間にこの大量投下…
もどかしさがこの2人らしくていい
あざす
0102幸福の傍観者2014/10/25(土) 03:21:37.60ID:i95rNj92
日曜日のシネコンは家族連れやカップルで大混雑していた。
ほとんどが前日に封切りされたハリウッド大作目当てなのだろう。

刻阪はその映画が観たいと前々からモコにねだられていたこともあって、二週間ほど前に席を予約して
出掛けていた。
映画は前評判通りとても面白かったし、普段音楽漬けで日を送っていることもあっていい気分転換にも
なっている。こんな日があるのも、たまにはいいものだ。
「あー、面白かったねー」
シネコンから出た途端、モコは大興奮で目をキラキラさせながら早口で感動した場面について色々と
話し始めた。
「モコ、あまり喉を酷使するなよ。少し休もうか」
「うん、何か飲みたくなっちゃった」
この日の為に買ったという、可愛らしいワンピースの裾を翻してモコはおどけて見せた。
心から可愛らしいと思える少女を眺めながら、刻阪は今ここにはいない友人をふと思い浮かべた。
席を予約する段階で神峰も映画に誘ったのだが、困ったような顔で断られてしまった。神峰にも何か
用事があったのだろうが、寂しい気持ちはやはりどこかに残っていた。
しかし、もしかしたら用事というのは。
そんな埒もない考えがふと頭の隅をよぎる。

二人で出掛ける時はよく入るコーヒーショップで、まだご機嫌が続いているモコはクリームたっぷりの
ラテを注文して、先に窓際の席に着こうとしていた。
「あっ」
小さな声が上がったのは、刻阪も注文した品を持って席に向かっていた時のこと。
「響」
モコは短く名を呼んで、焦った様子で手招きをしてきた。
「何だよ、モコ」
「今ね、そこで神峰さんを見たの」
モコは窓一枚隔てた外を指差している。
「ええっ?」
驚きはしたが、別段有り得ないことではなかった。
「一人でいたのかい?」
「うーん…女の人と笑ってた。あたしあの人なんか見覚えがある」
「そうか」
意外なところで見た、と言わんばかりのモコに対して刻阪は冷静なものだった。以前の神峰ならいざ
知らず、今は共に楽しむ為に時を過ごす相手がいる。自分たちが観たあの映画を彼等も観たのかも
知れない。
別にお前たちの邪魔はしない。これからもずっと上手くやっていけるといいな、と既に影も形も見えない
友人にせめてものエールを送る。
「あ」
甘いラテを一口飲んで何とか落ち着いたのか、急に閃いたようにモコが目を輝かせた。髪を束ねて
いるリボンが身振りの度に揺れるのが愛らしい。
「神峰さんの好きな人、あの人だったんだ」




0104Metamorphose(メタモルフォーゼ) 1/62014/10/27(月) 00:33:24.61ID:KK8q5zKv
日曜日のシネコン。
スクリーンに映し出される場面は既に佳境に入っている。
ストーリーの巧みさに引き付けられながらも、邑楽は隣で一心に見入っている神峰の様子が気になって
ちらちらと眺めていた。
神峰は食い入るように画面を見つめたまま、身じろぎもしない。持ち込んだドリンクも脇のホルダーに
セットしたままだ。そのうちにラストが近付いてくると、登場人物に感情移入したのか涙が頬を伝っていく
のが分かった。
普段は友人や後輩たちと賑やかに話題になった映画を観るのが当たり前になっていたけれど、大切な
相手とこんな風に静かに鑑賞するのも悪くない。上映されている間中ただの一言の会話もなかったのに、
不思議と充実した時間を過ごせた気がした。

今日の映画は邑楽から誘ったものだ。
元々は単館上映だった日本の無名監督の作品だったが、評判がとても良かったので上映館が増え、
ここのシネコンでも観られるようになった。しかし、それもあと一週間で終了する。だから観るのであれば
今しかなかったのだ。
前日封切りされたハリウッド大作にも興味はあったものの、それは二週間後でも一ヶ月後でも観る
機会がある。どちらを選ぶかと言われれば明白だろう。
映画のストーリーは単純そのものだ。
一人の男が幼少時に出会った初恋の相手をただ一心に思い続け、彼女の為だけに生涯の全てを
費やして守り続ける究極の純愛の物語だ。普通であれば凡庸そのものの内容になりかねないところ
だが、愚直なまでの男の生涯を丹念に情感豊かに綴った脚本、主役を含めた役者陣のリアルな熱演、
主役の男の心情を繊細に表現した音楽が口コミで評判を呼び、既に映画関係の賞を数多く受賞して
いる。

「超感動作だっていうから、観ない?」
さりげなくを装って神峰を誘ったのは二週間と少し前だ。神峰にも色々と用事があったので結局今日の
この日になってしまったが、それでも予定を合わせてくれたことが嬉しい。

映画が終わり、シネコンから出た後もしばらく神峰は無言だった。
それでいて何か言いたそうに邑楽を見ていたり、溜息をついたりと落ち着きがない。
「…もうお昼過ぎたね、何か食べようか」
「あ、そうッスね…」
先導して歩き出す邑楽に慌てて並んで歩きながらも、やはり何事か考えているような様子のままだ。
そんなにもあの映画に感動したのか、と立ち止まってじっと澄んだ瞳の奥を見つめると何故だか困った
ような顔になった。
0105Metamorphose(メタモルフォーゼ) 2/62014/10/27(月) 00:34:48.23ID:KK8q5zKv
「そんなに、映画良かった?」
「…あ、ああ…すっげー感動して、なんかまだ頭がついていかないんス」
「そう、そんなに感動したんなら誘って良かった」
「邑楽先輩」
急に声を張り上げた神峰は、口籠りながらも言葉を続けた。
「映画…あんな風に一生ずっと誰かを思い続けられるのって、難しいけど何より大事なことだって思って…
オレはそれが出来るのかなって思いながら観てました」
「神峰?」
ぎのシネコン前は行き交う人でごった返している。繁華街も近いから尚更だ。人の流れを完全に
遮断した二人を見知らぬ人々が迷惑そうに見遣りながら通り過ぎていく。
「ちょっと前なら主人公の気持ちは良く分からなかったかも知れない、でも今は…すごく」
二人の側を急いで通り過ぎた誰かが、神峰に荷物を乱暴にぶつけていく。
それでようやく我に返ったのか、神峰は一瞬周囲を見回してから邑楽の手を取った。
「行きましょう、ここじゃ邪魔になっちゃうんで」
「あ、神峰」
それがただ焦っているだけだったとしても、普段あまり見ない強引さにときめいてしまったのはやはり
欲目なのだろうか。握られている手が妙に熱くて、それもまたドキドキした。
「ねえ神峰」
「何スか」
「どこに行くの」
「わからない…」
その口調に、神峰自身の中に今までにない変化が訪れているのを感じた。迷っている訳でも動揺でも
ない、しかしまだ明確に形を成さないものが心を占めているような様子が心に引っ掛かった。
それでも、それは決して不快なものではない。
「……あたしは」
聞こえていないのか、神峰は何も言わない。
「どこにでも、ついて行く」

5分ほど歩いただろうか。
ようやく通行人を気にせず落ち着いて話せる場所だと思ったのか、神峰はファッションビルの脇にある
小道に入って行った。
シネコンの通りからも繁華街からもやや離れたその小道の奥の突き当りには、誰かが住んでいるのか
小さな家が並んでいるのがちらりと見えた。しかし人の気配はせず静まり返っている。それが今の神峰の
テンションに合ったのだろう。
0106Metamorphose(メタモルフォーゼ) 3/62014/10/27(月) 00:35:43.47ID:KK8q5zKv
小道に入った途端それまで強引だったのが嘘のように、いつものどこか人の顔色を伺うような雰囲気に
戻る。そして、やっちまったとがりがり頭を掻いた。
「乱暴にひっぱり回して、申し訳なかったッス」
「うん、それはいいけど…何か言いたいことがあったんでしょ?」
「ええ、まあ…」
その目には一体何が見えているのか、しきりに視線を泳がせながらも言うべきことを頭の中で纏めて
いるようだ。この可愛い男が真剣に何かを考えて思い巡らせる顔を見るのは好きだったので、邑楽は
特別急かすこともせずに見守るだけだ。
「怒らないで、くれますか?」
ふうっと大きく息を吐くと、汗ばんだ額を片手で拭って空を見上げる。つられて邑楽も見上げてみると
ビルの狭間で細長く切り取られた青空に、飛行機雲が白く残っていた。
「なんかこうやって邑楽先輩と一緒にいるのがすげー信じられないほど嬉しいのに、その分不安に
なったりするのは何なんスかね」
間近で見つめて来る顔は真剣そのものだ。
「…不安?何がよ」
「早く一人前にならなきゃ邑楽先輩に呆れられる、置いてかれたくないって気持ちかなあ。とにかく今の
ままじゃいけないってもどかしいンス」
「馬鹿ね」
邑楽はあっさりと両断した。
「あんたが情けないのはもう分かってる、でもそれでいいと言ったのはあたし。あんたは自分の未来
だけ目を向けてればいいの」
青空を横切る飛行機雲は綺麗に消え失せている。時の流れには誰も逆らえないが、決して恐れること
なく突き進めばいい。それが一番神峰らしいのだから。
「本当は、邑楽先輩にそう言って欲しかったのかも知れないのかな」
気が抜けたように神峰は壁に頭をもたれさせて、疲れたような声を出した。神峰が不安を感じていると
いうのなら、全く同じことが邑楽にも言えた。
今はまだ指揮者として人間として未熟にも程があるこの男だが、いずれ近いうちに飛躍的に才能を
伸ばして世界を目指すだろう。その時に置いていかれるのはきっと邑楽自身だ。その予感が甚だしい
からこそ不安に気付かない振りをしながらも恐れていたのがこれまでの姿だった。
互いに不安を抱いていたなど随分と滑稽なことだ。まだまだ相手を図りかねている部分があるなら、
更なる相互理解が必要な証拠でもある。それを重ねていけば、きっと今後も幾度となく迷い続けるに
違いない二人を救うのだろう。
邑楽も、このまま呑気に置いていかれたりはしない。
「馬鹿ね、あんたは」
0107Metamorphose(メタモルフォーゼ) 4/62014/10/27(月) 00:36:25.60ID:KK8q5zKv
うなだれている神峰の髪を撫でて抱き寄せ、宥めるように背中をさすってやると、おずおずとだが腕を
回してきた。その力が少しずつ強くなる。こうして抱き合っている時でしか感じない神峰の匂いに、頭が
くらくらした。
薄いシャツ越しにも確実な筋肉の張りが分かって安堵出来るから、こうしているのは好きだった。この
男とこうしているのは自分だけだという喜びがある。
「邑楽先輩、オレ…」
「あんたが好き。それでいいじゃないの」
「はい、それは有難いんスけど…ちょっとヤバくなった」
「は?」
微妙にトーンの変わった神峰の声が耳元で聞こえた。
「二人きりなのは、マジでヤバいんで」
とは言いながらも、腕の力は全く緩まない。なのに声の熱さは増していく。以前も言っていたことを
繰り返すからには、今がまさにその状態ということなのだろう。
これまで仄めかしながらも抑えていただろうに、今日は明確な欲情をあからさまにしてくる神峰がやや
怖いと思った。
しかしもっと怖がっているのは神峰当人なのだろう。それまで自制出来ると思っていた衝動がどうしよう
もなくなったなら、とひどく怯えている。
「…一緒にいるとやっぱり舞い上がって、自分が分からなくなるんス。どうかしたら、メチャクチャ邑楽
先輩に嫌われそうなんで」
「それは、多分ないけど…」
頬が火照ったように熱い。
急に、それまで感じていた神峰の匂いがやたらと生々しいものとなった。
それでも決して逃げてはいけないと覚悟を決める。もとよりこの男とならとどうなってもいいと願って
いたことなのだ。
今この時のリアルな感触を確かめるように再び髪を撫でると、背中に回っていた片手を引き寄せて
両手で包み込む。
「いい?あたしを見くびらないで。あんたに価値を見出してるのは冗談でも何でもないの」
言いながら引き寄せた片手を胸の膨らみにぴたりと押し当てる。あまりのことに驚いて声も出ない
神峰に構わず、言いたいことだけを全部言い切った。
「あたしの心はここ。あんたの目には何が見えてても、ここにいつもある。だからあんたの心もちゃんと
見せてよ」
「オレの、心…?」
「そう、あたしの目にも見えるような、あんたの気持ちを知りたい」
0108Metamorphose(メタモルフォーゼ) 5/62014/10/27(月) 00:37:40.14ID:KK8q5zKv
胸に押し当てた大きな手の感触がじんわり熱っぽく感じて、身体の芯まで痺れてきそうだった。今日の
朝までは意識していてもどこか漠然とした感覚だったのに、こうして二人きりの空間で身体を密着させて
いると、目の前にいる神峰の存在が妙にエロティックなものに感じて仕方がない。
普段の神峰の捉えどころのない淡々とした雰囲気は完全に変化している。
神峰からすれば、邑楽もまた同じく淫靡で扇情的な匂いを発散しているのだろう。
「… あ ん た は い や ?」
じっと目を凝視しながら一語ずつ念入りに言葉を発すると、まだどこかに戸惑いを残していた目の
奥で一つの確かな色が結ばれた。そして前触れもなく唇を塞がれる。当たり前のように口腔内に差し
入れられる舌に夢中で応えているうちに、身体に灯った熱が堪らない痺れを更に誘発させ、次第に
足に力が入らなくなっていく。
これまで聞こえていた小道の外の雑踏の喧騒さえ、もう分からなくなっていた。
どれだけの間そうしていたのか、名残りを残して唇がわずかに離れた後で吐息のような声がふわりと
かかる。
「嫌、なんかじゃないッスよ、邑楽先輩。むしろずっとそうしたいって思って…」
「ん…でないとあたしが困る」
こうして心が通っている実感があるだけで、とても幸せな気持ちだった。
少し歩けば繁華街がある。
いつ誰が乱入してきてもおかしくない場所にも関わらず、互いにしっかりと腕を回して抱き合い、鼻を
擦り合わせるほど近くで囁いていると奇妙な高揚感に身体も心も囚われた。
もうここでどうなってもいいと。

「なにしてるの?」
突然、二人きりで築き上げた時間は切り裂かれた。
幼い声にはっとして顔を向けると、不思議そうに二人を見上げて首を傾げている小さな男の子がいた。
偶然見慣れないものを小道の入り口で発見して入り込んだのだろう。
「えっ」
「ぎゅーで、ちゅーしてるのって、こいびとどうしってことだよね」
「あ、うんそうだよ」
「おにいちゃんは、おねえちゃんのことすき?」
そんな無邪気な質問に、抱き締めている腕の力をわずかも緩めることなく神峰ははっきりとした声で
答えた。
「大好きだよ、もちろん」
「そっか、よかったぁ」
何を納得したのか、男の子は急に満面の笑みになってそのまま小道を駆け抜け、賑やかな表通り
へと飛び出して行った。母親か友達が近くにいたのだろうか。また誰かが来るかとしばらく警戒していた
のだが、以後はもう無粋な乱入者などなかった。
0109Metamorphose(メタモルフォーゼ) 6/62014/10/27(月) 00:38:38.77ID:KK8q5zKv
それでも、何となくそれまで危険な領域まで盛り上がっていた雰囲気がそがれた気がして、二人とも
ただ互いの温みと匂いを確かめ合うだけになっていた。今はまだそんなに急がなくても、これで充分に
思える。
しかし。
またこういう状況に陥ったのなら、その時はきっと欲求のままに何もかもかなぐり捨ててしまうに違い
ない。そんな危うさもどこかで感じていた。
「ねえ神峰」
寄り添ってぼんやりと表通りを往く人達を眺めている間、神峰のシャツの胸に顔を埋めている邑楽は
ぽつりと呟いた。
「あたしがどれだけ幸せなのか、分かる?」
その答えなのか、ゆっくりと慈しむように髪を撫でてくる神峰の手がするりと頬にかかる。既に慣れた
筈の温かさではあったが、今はとても胸に沁みた。




0111名無しさん@ピンキー2014/11/08(土) 01:46:51.38ID:eTec1U7i
>>110
あざす

小説読んだ
神峰と刻阪がコンビニで買い食いしてるというので、そのネタだけで書いてみた
0112甘党男子の操縦法 1/22014/11/08(土) 01:48:11.36ID:eTec1U7i
週に何度か、普段より十五分早い登校をする。
家を出てすぐの四つ角の先に、大きな屋敷がある。周囲を威圧するほどの立派な黒塀がそびえている
のだが、その脇に屋敷を外界から区切るような道が伸びていた。
日当たりが良く道幅もそこそこ広いその道は近所の子供たちにとって格好の遊び場所になっていた。
邑楽も幼い頃は毎日日が暮れるまで夢中で友達と鬼ごっこや影踏みをして遊んだものだ。大通りと
違って滅多に車が通らず、周辺住人たちは子供たちに優しかったことも、安心して遊べた理由だ。
その道で、少し大人になった今の邑楽はわくわくしながら待っている。
抑えきれない恋心を抱えながら。

「邑楽先輩、今日も早いッスね」
ここを待ち合わせ場所にしてから、神峰は約束を気に掛けているのかいつも息を切らせて走って来る。
その姿を見るのが好きだった。
「当たり前じゃない」
いつものようにさりげなくを装いながら、邑楽は抱えていたサブバッグから小さな包みを取り出した。
これが十五分早い登校の理由である。
「はい、どうぞ」
「うわー、邑楽先輩の弁当、いつも楽しみなんスよ。今日は何かなあって」
一つ年下の可愛い男は弁当を受け取る時に毎回盛大に喜んでくれる。これが犬だったら千切れる
ほど尻尾を振っていることだろう。無邪気で大きな犬にじゃれつかれている想像をして、照れ隠しに
ぼそぼそと呟く。
「…期待に添えてればいいんだけど」
「そんなこと…あの、中見てもいいッスか?」
「え?」
「邑楽先輩が作ってくれる日は、昼になるのが待ちきれないんで」
目をキラキラさせて宝物のように弁当を抱いている神峰に、嫌とはとても言えない。それほど期待して
いてくれるなんて、嬉しいような不思議なくすぐったい気持ちだ。自然と顔が熱くなるのを必死で隠し
ながらも答えを吐き出す。
「それはいい…もうあんたにあげたものだし」
「あざす、んじゃ早速」
邑楽の葛藤を知ってか知らずか、大きな犬と化した神峰はそそくさと包みをほどいて弁当箱の蓋を
開いた。その途端、弾けたように叫び出す。
「うわー!すっげーすっげー。メッチャ美味そーだなあ!」
「ちょ、声大きいって」
慌てて制止させようとするのだが、神峰の興奮はなかなか収まりそうになかった。
ちなみに、普段も今日も特に変わったおかずを入れている訳ではない。身体のことを考えていつもの
ように野菜中心で、出来るだけ品数を多くしているだけだ。
「ほうれんそうの胡麻和えとタコさんのウィンナー、すっげー好きなんス。あとこの卵焼き!」
「もう、騒ぎ過ぎ…」
「あ、でも邑楽先輩ホント料理上手いんで、感激してる。なんかいつも一方的に負担かけさせてるのが
心苦しいッスけど」
0113甘党男子の操縦法 2/22014/11/08(土) 01:49:33.43ID:eTec1U7i
無邪気にはしゃいでいるのに急に殊勝なことを言い出すのは神峰の癖だと、最近ようやく分かって
きた。やはりまだ気持ちの片隅に臆病でネガティブな部分がわずかに残っているのだろう。それを
払拭するように、さらりと笑い飛ばした。
「あんたはそんなこと、何も気にしなくていい。あたしがしたいだけなんだもの。美味しいって言って
くれればそれでいい」
「…はい!」
本当に昼まで待てないのか、ウィンナーを一つ頬張って満足そうに笑う表情がやたら幼く見える。
「もう、あんたってば」
「あ、そうだ邑楽先輩!」
やたら名残り惜しそうに弁当箱の蓋を閉めた神峰は、急に思いついたように尋ねてきた。
「この卵焼き、いつもすっげーふわふわしてて甘いんで超大好きなんスけど、どうやって作ってるの
かなーって」
「あ、それは」
答えかけて、ここで時間を取り過ぎていることに気が付いた。二人きりでいるのは確かに楽しいが、
揃って遅刻をしては何もならない。
「…それは後で教えてあげる。それより神峰、あたしがちゃんとあんたの身体のこと考えてバランス
良くお弁当を作ってるんだから、コンビニの買い食いは出来るだけやめなさいね」
神峰が再び弁当箱を包み終えてカバンに入れたのを目の端で確認すると、いかにも先を急いでいる
というように邑楽は大通りへと出て行った。
「あ、待って下さいってば!」
慌てて神峰も後を追って来る。きっちり邑楽の数歩後をキープしながらも弁解のように呟いた。
「暇な時に刻阪と行ってるだけッスよ、新作スイーツとか気になるんで。特にプリンとかロールケーキ
とかついつい」
「もうっ!」
何だかそんな戯言の全てが煩わしくて足を止め、邑楽はくるりと振り向いて神峰の身長に合わせる
ように少しだけ見上げた。
「プリンだったら、あたしが作ってあげるから」
「え…マジスか…え??」
「そ。もういいでしょ」
そんなことをしているうちに始業時間も迫っているのか、通りには鳴苑の生徒たちが目立つように
なってきた。
顔が熱いのを周囲に気付かれないように、邑楽も二度と後ろを振り向くことなく黙ったまま登校の歩を
進めるばかりだ。
それでも。
振り向かなくても分かる。
神峰がとても嬉しそうにしていることだけは。
それだけで、今日も一日楽しくなりそうな気がして嬉しくなった。



0115恋の孵化 1/42014/11/20(木) 23:03:56.08ID:Gs+EgmlO
その日も良く晴れていたので、昼休みは屋上に行きたくなった。
「いい天気だなあ…」
弁当を抱えて屋上のドアを開くと、心地良い風が吹いた。空には薄い雲が一筋浮いているだけだ。
このところ色々なことがあったので季節の移ろいには気付くこともなかったが、慌しかった春も過ぎて
空気が夏の色を帯びようとしている。
「ホントに、いい天気だ」
その場で大きく伸びをしてから、神峰は定位置になっている場所まで行って腰を下ろした。抱えていた
弁当を開くと色とりどりのおかずが目に飛び込んできた。
「うわ、すっげ…」
少し前から週に一度なり二度、神峰の弁当は邑楽が作るようになった。適当に購買で買ったパンで
済ませてしまうのは身体に悪い、というのが邑楽の主張する理由だったが、今ではそれを楽しみにして
いる自分がいる。邑楽は料理上手で部内でも有名なだけに彩りもおかずの配置も綺麗で、味ときたら
もう絶品としか言いようがない。
わざわざ作るのは大変だからと辞退しようとしたこともあったが、おかずはまとめて作り置きしているし
アレンジも利くからいいのと押し切られた格好だ。それでもやはり細々とした手間がかかっているのは
普段鈍い神峰でも分かる。
だからお返しとして世話好きで優しいあの人が喜んでくれることをしたいのだが、今のところは何も案が
浮かばない状態だ。

それにしても。
女の人はみんなあんな風にどこも柔らかいのだろうか。

天気が良く過ごしやすい屋上で一人思考を巡らせていると、つい普段から悶々と考えていることが
頭をもたげてくる。
神峰を好きだと言ってくれたあの人は、まっすぐな心と同じようにどこもかしこも綺麗だ。艶のある髪、
滑らかな頬、なまめく唇、そして胸の膨らみの温みと柔らかさが掌にまだ感触を残している。
あれは、この間映画を観に行った帰りのことだった。
カットソーと下着越しの感触だったとはいえ果実のような膨らみの柔らかさは魅惑的で、直に触れて
いたならどれほど素晴らしいかとその後も度々妄想するほどだった。
あの狭い道で二人きりで身を寄せていた時間はそれほど長くなかったが、もしももう少し触れていたい、
一緒にいたいという欲求に負けていたならどうなっていたか分からない。
当たり前のように交わすようになったキスだけでは、もう気持ちも欲求もはちきれそうになっている。
「贅沢な悩みだろうな…」
そればかりは今悩んでいても仕方がない。
一旦堂々巡りの考えにけりをつけて、弁当を食べようと箸をつけ始めた時。
0116恋の孵化 1/42014/11/20(木) 23:04:36.66ID:Gs+EgmlO
「あ、神峰さんいた、やっほー!」
屋上の出入り口で、モコが手を振っているのが見えた。その後ろから刻阪もついて来ていた。
「ほら、やっぱりここだった」
「ねえねえ神峰さん、お昼一緒していいかな」
屈託のないモコがちっゃかり隣に座って、可愛らしいピンクの包みを開いた。小さな弁当箱の中には
お菓子のようにカラフルなおかずがぎっしり並んでいる。それがいかにもモコらしくて、何となく鬱々と
していた気分が晴れていくのが分かった。
不躾でごめんな、というように小さく動作で詫びる刻阪もその隣に陣取る。一人だけで終わらせるつもり
だった昼休みの時間が急に賑やかなものになった。
「うん、天気がいいからおいしー」
モコの無邪気な様子を眺めているだけで空腹感が増して、つられるように神峰も食べ始めた。やはり
どれも本当に美味しい。弁当箱一つ分のおかずに一体どれだけ気を配っているのだろうと気になって
しまうほどの完成度だ。しかも、卵焼きの甘さがちょうど良いのが驚きですらある。
「ねえねえ神峰さん」
そんな時、いきなりモコに話しかけられた。
「え?ああ…何?」
早くも弁当を食べ終え、最後のプチトマトをフォークで刺したモコは、まるでインタビューでもするように
プチトマトを突き出してきた。
「この間の日曜日、あたし神峰さんを見たよ」
「あー、うん」
「んふふ、神峰さんあの綺麗な人と一緒で楽しそうだった」
「うん、すごく楽しかったよ」
以前封切り直後の映画を一緒に観ようと誘われた時、既に邑楽から誘われて承諾していた。ただし
別の映画で、その上に色々と予定があったのでたまたま同じ日になってしまった。だからどこかで二人と
出会うかもとは思っていたが、やはり邑楽と一緒にいるところを見られていたようだ。
とはいえ、あえて秘密にしている訳でもないので気楽なものだ。
「いいなあ幸せそうで」
モコは邑楽と以前面識がある。なのにこの間のことを軽く尋ねるだけで済ませ、素直に羨ましがって
いる様子が本当に恋に恋をしているようで可愛らしい。
「神峰」
ゆっくりと弁当を食べ終えた刻阪が、モコの背後から声をかけてきた。
「お前は、上手くいっているようだな。良かった」
普段から比較的平静な刻阪の心は今こうしていても凪いでいるように穏やかなままだ。きっと不器用な
神峰の恋をこれからも何かと応援してくれることだろう。それは本当に嬉しいし有難い。
0117恋の孵化 3/42014/11/20(木) 23:05:54.21ID:Gs+EgmlO
けれど、そんな親友にも決して言えないことがある。
それが今後増えていきそうな気がして、神峰は心の乱れを気付かれないように必死に取り繕いながら
言葉を返した。
「まあ…お陰様で、かな」
そんなちっぽけな気鬱を知ることもなく、今日の空はあくまで澄み渡って青く美しい。本来ならば悩む
必要のないことまで抱え込んでしまうのは悪い癖だと自嘲しながらも、頭の中で思い浮かべているのは
やはり見惚れるばかりに美しい人の姿だ。
それを自覚すると、今すぐに会いたい気持ちが湧き出して止まらなくなった。

その日は吹奏楽部で合同練習があった。
合同では音合わせを重視するだけに、全パートリーダーが納得する結果が得られるまでは何時間でも
かけるのが当たり前になっている。時間はかかっても音が綺麗に合った瞬間は場の空気感が見事に
変わる。神峰もその瞬間を待ち侘びて懸命に指揮棒を振るい、全ての音の流れが最善なものになる
よう奮闘を続けた。

結果的に二時間半ほどで満足のいく結果を迎えることが出来、合同練習はつつがなく終了した。
それぞれ楽器の掃除や手入れをして粛々と帰宅の準備が進む中、神峰はパートメンバーと楽しげに
談笑している邑楽の姿を意識的に追っていた。これから言わなければならないこと、やることがまだ
あったからだ。
決して見失う訳にはいかない。
「邑楽先輩」
帰り支度をして教室を出たところで、ようやく声を掛けることが出来た。幸いにして、もう時刻は夜に
差し掛かっていたので教室にも廊下にも他に人はいなかった。周辺の暗がりと異様な静けさが妙な
胸騒ぎと不安な気持ちを誘発させる。
「あ、お疲れ様」
「あの、ちょっといいッスか?」
「…うん」
一体何があるのかと、邑楽は首を傾げている。
「今日も、弁当すっげー美味かった。あ、弁当箱は洗っておきましたんで」
言いながら、後ろ手に持っていた弁当箱の包みを差し出した。黙って受け取った邑楽はまだ不審な
表情をしているが、弁当の評価は気になっていたのかほっとしたように笑った。
「そう。美味しかったんなら、良かった」
「……それでですね」
果たしてこのタイミングで言っていいものか、これまで何度も色々なパターンをシミュレーションして
きた筈だったのに、いざ目の前にすると全部吹き飛んでしまった。一大決心をしなければ言えない
ことででもあるように、足が震える。
「邑楽先輩、この間のことなんスけど」
0118恋の孵化 4/42014/11/20(木) 23:07:52.18ID:Gs+EgmlO
唐突な言葉に、邑楽はくっきりと形作られた目を見開いていた。とはいっても別段怒っている様子は
ない。じっと息を詰めて静かに神峰が次に何を言い出すのか待っている。その表情がとても綺麗で
見惚れそうになる。
「あの時言ってた、オレの気持ちを邑楽先輩にも見えるようにするにはどうすればいいのかって」
「…神峰?」
「あれからずっと、どうすれば分かって貰えるのか考えてたんス」
違う、本当はこんな曖昧にぼかされたことを言うつもりではなかった。もう姑息なシミュレーションも
意味を成さない。ただ目も眩むばかりに欲情していたあの時のように、言葉すら不要になるほどの
激情に突き動かされたかった。
元々上手い言い回しなど得意ではないだけに、感情の上っ面だけを浚うような浅い言葉しか出ない
のがひたすらもどかしい。
内心慌てふためいている神峰の頬を、綺麗な指が撫でた。
「神峰、あんたはバカね」
とてもとても穏やかな声で、邑楽は呟く。
「あの、邑楽先輩」
「今更、何の理屈がいるの?あたしはずっとあんたを待ってた」
頬をするりと撫でる指が髪に絡まり、一筋巻きつけるとそのまま戯れるように引き寄せてきた。何の
躊躇もない流れるような動作に一瞬にして美しい蜘蛛の糸に絡め取られているような錯覚を覚え、
胸の中が甘くとろりとしたもので満たされていく。
愛しく狂おしい思いが今にも溢れてしまいそうで、腕を回してきつく抱き締めると華奢な身体が震えて
小さな吐息が漏れた。
「邑楽先輩、ホントにすっげー好きだ…」
神峰の気持ちを見透かしたように、しばらく黙って抱き締められていた邑楽はやがてさらりと腕を振り
ほどくと夕闇迫る教室の扉を開いた。
「だったら…ね」
振り返った表情はこれまでに見たこともないほどひどく艶然としていて、あまりのなまめかしさに息を
呑むしかない。つい先程望んだように、言葉も不要な激情の刻が今二人に訪れている。
神峰は誘い込むように微笑する邑楽の艶やかな口元に目を奪われながら、ふらりともう誰もいない
教室へと立ち入った。
その先は、誰も邪魔など出来ない。









途中、番号を間違えた

ところで時系列的には、おジジイ主催のスプリングコンサートの後ぐらいで想像して書いてる。
0119名無しさん@ピンキー2014/11/21(金) 22:57:36.93ID:+OqZ0zyn
そして前編・とつけるのも忘れた
この勢いがあるうちに、エロ突入の後編も書く
0121名無しさん@ピンキー2017/04/17(月) 05:15:33.73ID:pqJfp6qW
唄方幸乃と御器谷忍のエロパロです。
0122美しい少年のための円舞曲(幸乃×忍)@2017/04/17(月) 05:16:25.47ID:pqJfp6qW
「あの……」

御器谷忍はバスクラリネットの入ったケースを片手に待ち合わせていた少女に声をかけた。
彼女は道立呂旋高等学校の唄方幸乃である。
鳴苑高校があの全国大会で見事金賞に輝いた時
彼女はさりげに舞台裏で忍とメアド交換をしていた。
都会に遊びに行くと言うのでそのついでに
バスクラリネットの練習に付き合って欲しいとの事だった。
他校の生徒と練習を重ねる事は、決してマイナスではない。
承諾した彼だったが、彼女がモーションをかけた神峰を誘うつもりはなかった。
彼女と彼が会ったら、従姉の恵がどうなるか推して量るべしだ。

「あれから神峰君に付きまとっていない?」

誰もいない鳴苑高校の音楽室で基礎となる曲を
通しでやった時、忍は休憩の前に幸乃に聞いた。

「ううん、神峰君とはあれから会ってないけど……
 えっ、忍ちゃん、ひょっとして男の子が好きなの? そっち系?」

「なっ!? 違うよ! そっち系って何!?
 ボクが言いたいのは、君がもし神峰君と、その……
 付き合う事になったら、悲しむ人がいるから……それで……」

「ふーん、なるほどね……神峰君って案外モテるんだ。
 でも神峰君って可愛いよね。本気で狙っちゃうのも悪くないかな?」

忍の顔にみるみると焦りが見えてきた。
それを見て幸乃は面白がっている。

「でもぉ、忍ちゃんがお願い聞いてくれたら諦めてもいいかなぁ」

「え……ボク……?」

「そう……ふふっ……」

幸乃は隣に立っていた忍にすり寄った。
忍は思わず後ずさりするも、いつの間にか窓際まで追い詰められていた。
彼女は彼の胸板に、自身の豊かな柔乳を
押し付けて、彼の脚の間に膝を割り込ませて寄り添う。
0123美しい少年のための円舞曲(幸乃×忍)A2017/04/17(月) 05:17:42.73ID:pqJfp6qW
「あのっ、これは……!」

「ふふっ、本当に可愛い顔ね。忍ちゃんって……♪」

忍は一瞬何が起こったのか分からなかった。
気づいた時には幸乃の顔が鼻先が擦れ合うくらいに
近づいていて、彼の唇に柔らかな感触が訪れていた。

「ん……、んん……」

忍はキスをされた驚きと共に息苦しさを覚えて大きく鼻で息を吸う。
蠱惑的なくらいに甘い女の子の匂いが鼻を犯して幸福感を与えてきた。
どうして幸乃はキスを? ……そう思っている間に
彼の口内へと彼女のやらしい舌が蛇のように侵入してきた。
それはねっとりと動き回った後で彼の舌を見つけて
執拗に奥から引きずり出そうとする。
おずおずと彼が舌を伸ばすと、交尾するように絡めてきた。
繋がった二人の口内に、互いの唾液が流れていく。
それをこくこくとゆっくり飲みながら、互いの口の味を交換し合った。

「んっ……♪」

幸乃はキスをしながら剥き出しの白い太腿で忍の股を上下に擦る。
忍の敏感な所はズボン越しに女の肉を感じ、ゆっくりと兜を持ち上げていく。
戸惑う彼の反応を味わいながら、彼女は
彼のシャツのボタンを一つまた一つと取っていった。

「へぇ……可愛い顔して結構鍛えてるのね」

はだけたシャツから覗く引き締まった肉体に
口を離した幸乃はうっとりとして眺め、手で愛で撫でる。
口内を蹂躙された忍は、口端からだらしなく唾糸を垂らして放心しかかっていた。

「あの、止めて下さい……。こんなボクのつまらない体なんか見ても……」

「あら、恥ずかしい? じゃあ……」

幸乃はにこりと微笑むと、その場でカッターシャツを脱ぎ始めた。
忍は逃げる場所すら与えられず、ブラジャーの下で
窮屈そうに自己主張している豊かな女乳に釘付けになった。
同じ年頃の女の子の下着姿を見るのは初めてだ。
甘い匂いが一層濃くなり、それは挑発的に理性を萎縮させてくる。

「はぁい、これでおあいこでしょ♪」

忍は生で見る女の子の艶姿に思わず帆を立たせた。
それはもう隠しようがないくらい膨らんで、幸乃の太腿をぐいぐい押している。

「ふふっ、おっきくなっちゃった? ほんとぉに忍ちゃんて男の子なんだぁ♪」
0124美しい少年のための円舞曲(幸乃×忍)B2017/04/17(月) 05:18:55.74ID:pqJfp6qW
幸乃は柔らかな笑みを浮かべて、その自己主張しているものを布越しに優しく撫でた。

「わたしね、忍ちゃんの事も気に入っちゃったんだよね。
 忍ちゃんがわたしと付き合ってくれるなら、神峰君にアプローチはしないわ」

「そ、それは……あうっ……!」

幸乃はそのまま、突き破らんばかりに布地を引っ張っている箇所のジッパーを外す。
押さえつけられていた忍の男性自身が、勢い良くその剥き出しの身を震わせて出てきた。
あまりマスターベーションをした事のない彼のそれは
被った包皮の内から籠った臭いを発していて
何かを期待しているかのようにひくひくと頭を振っていた。

「ふふっ、すっごぉい。忍ちゃんのオチンチン、おっきいね♪」
「そんな、ボクのなんて……」

忍の言葉も聞かないうちに、幸乃はその活きの良いぺニスを
軽く握り、その恥熱を手のひらにじんじんと感じていた。

「でもお腹より鍛えてないんだね。
 皮被ってるし、怖いくらいおっきいのに……可愛い♪」

幸乃はしばらく鼻をそれに近づけて嗅いでいたが
段々と吐息が荒くなったかと思うとそれをつぷといきなり頬張った。

「んふ……んむっ……♪」

「あうっ……!」

忍は初めて味わう異性の口淫に思わず腰を引いた。
しかし、幸乃は忍の引き締まった尻肉に手を回してすがり付き
チュパチュパと貪欲にぺニスを舐め嬲った。
まるで乳汁を欲しがる赤ちゃんのように、夢中で忍の童貞をしゃぶっている。

「ちゅぱ、ちゅっ、んん……おっきいよぉ……
 はふ……ん……エッチな味、すごぉい……ちゅぷ……むふ、ん……♪」

幸乃の舌がぺニスを責める度、忍は理性が
太陽の下にある氷のように融けていくのを感じていた。
マスターベーションとは全く違う甘い切なさに、彼は犯されていく。
口はだらしなく開いて唾液を口端から漏らして快楽に喘いでいる。

「ふふっ、忍ちゃん、気持ち良さそうだね?
 わたしのフェラ、気に入ってくれた?」

唾液まみれのぺニスを甲斐甲斐しくしごきながら幸乃は笑っている。

「もっと気持ち良くしてあげる♪」

幸乃はその豊満な美巨乳を下から支えるように
持ち上げて、その魅惑の谷間に忍のを柔らかく包んだ。
石のように硬くなっているそれを、彼女の乳肉は優しく圧迫する。
0125美しい少年のための円舞曲(幸乃×忍)C2017/04/17(月) 05:19:42.33ID:pqJfp6qW
「おっぱい、好き?」

幸乃は上目遣いに忍を見ながら、その白く巨きな乳肉を
外側から内へと押し付けるように動かした。
豊満な乳のもたらす、優しくも小悪魔的な快感に、忍は身震いして喘いだ。
柔らかな牝の乳は、芯に溜まる男の欲望を一層熱く濃くさせてくる。
上下に擦れる度に彼の皮帽子がめくれ、籠った臭いを散らしながら翻弄される。
その快感は理性すらも圧迫して身動きを許さない。

「ああっ……!」

忍は仰け反った。
乳間から覗いていた膨れた先端を、幸乃はいとおしそうに舐め始めたのだ。
剥き出しになっている敏感な彼のを、彼女は飴のようにコロコロと舌先で転がした。
雁首に彼女の厚く美しい唇が寄り添い、甘く締めつける。
口腔に囚われた先端は蛇のような舌に存分に嬲られた。
乳は男の欲望を煽るように忙しく動いて射精を促す。

「ちゅっ、んん……ちゅぱ、ちゅぷ♪」

「ああっ、幸乃さん……!」

口と舌と乳の波状攻撃に抗えず、幸乃の熱い口腔に忍は濃縮したその種を迸らせる。
視界がちらつくほどの性感に酩酊した彼は、歓喜の喘ぎを吐いて乳間で精を漏らしていた。
彼女は口腔で受け止めきれず、ポトッポトッと忍の精を乳肌に落とした。
口一杯に広がる青臭い淫らな味に悦びながら、彼女はそれをすすり飲んだ。

「あはぁ……お口の中、忍ちゃんのでいっぱぁい……♪」

幸乃は口端からだらしなく精液をぶら下げながら
舌の上に溜まっている精液を忍に見せつけた。
美少女の舌を汚している自分の濃精を見て
そのアンバランスに魅惑的な美しさに彼はぞくぞくとした。
何をされたのか分からないまま終わったからか
それとも迎えた口内射精に満足していないのか
彼のものは依然として反り立ったままだ。

「忍ちゃん、初めて?」

幸乃は肉根の根元に手を添えながら幹部にまとわりつく残滓を舌で掬い取っていく。
敏感な彼のは、美少女の淫らな舌が這う度に頭を揺らして反応する。

「うん……」

「そう……。ねぇ、……これさ、わたしの中に入ったら……どうなると思う?」

幸乃はそう言って忍の赤黒い膨張にキスをした。
彼の返事を待たずに、彼女はにこりと笑って剥き出しのそれの上に跨がった。
やらしい涎を垂らした肉根の先が、美少女の花弁に口づけをする。

「ん……」

幸乃は腰をゆっくりと落としていく。
忍のはそのまま柔らかな肉色の門をくぐり、長い胴体をその中に隠していった。
口内とは違う、温かく柔らかな肉の感触に、無垢な忍は身悶えた。
0126美しい少年のための円舞曲(幸乃×忍)D2017/04/17(月) 05:20:39.36ID:pqJfp6qW
「んっ、ああっ、やっぱり、いいっ……♪」

天に向かって喘いだ幸乃は、汗ばんだ己の乳房を揉み慰める。
指の合間より見える薄桃色の乳首が悩ましくも愛らしい。
やがて忍のを根元まで咥え込んだ彼女は
見事なプロポーションの肉体を見せびらかすようにして彼の腰上で軽やかに跳ねる。
豊かな乳房が淫らにたゆみ、彼女の強い興奮を表している。
彼女の中は数合のうちに妖しい痴汁を溢れ満ちさせた。
無数の肉襞が無垢な美少年の分身を淫乱に責め立てていく。
彼女のはその根元をきゅうきゅうとしきりに締め付けて、更なる射精を求めた。
彼の鈴口が、雁首が、竿が、裏筋が、初めて味わう魔性の媚肉によって
魅了され、一切の理性が泥のように蕩けていった。

「ああっ、ああっ……!」

腹筋が締まり、四肢に強張りが走った直後
ビュグンビュグン、と甘い痺れと共に先程のような律動が起きた。
無理やり膣内でいかされた忍のは、若い白蜜をたっぷりと相手の肉孔にまぶし散らしていった。

「ああっ……すごい。忍ちゃんのがお腹の中で
 ビクンビクンして、エッチなお汁……沢山出しちゃってるよ♪」

幸乃は自らの乳首をちゅっ、ちゅっ、と吸いながら授精の悦びに酔いしれた。
その間も、忍の射精は終わる様子がなかった。
何度か身震いする度に先端が魚のように跳ねて
根元から一層熱く濃い精を惜しげなく彼女へと捧げた。

「ん……ちゅっ、ふふっ……まだカチカチ……♪ 体力あるんだね、忍ちゃんて♪」

幸乃が腰を上げると、ぬるんとべとついた体液を纏ったぺニスが押し出された。
それを美味しそうに舐めしゃぶりながら
彼女は硬度の変わらない雄の頼もしさにときめいた。
すっかり舐め拭った後、彼女はそのまま床に仰向けになり、彼の前でその美脚を開いた。
見せびらかすように開いた恥花からは、
卑猥な恥悦の残滓がとろとろと漏れ滴っている。
阿呆のように開いた肉穴から外を窺うように垂れているそれは
この上なく淫らで、忍は思わずぺニスを跳ねさせて興奮した。

「さぁ……今度は忍ちゃんの番よ。わたしの体に二回戦決めちゃってぇ♪」

「でも……ボクたち、こんな事は……」

卑屈精神の塊である忍は、勃起したぺニスを両手で隠して理性にすがった。
どこまでもやらしい幸乃の肉体をこれ以上犯せば、深みに嵌まるのは目に見えている。

「そ、それに……ボクのなんか使わなくても
 他にもっと気持ち良くしてくれる男子が……」

童貞を卒業したのに煮え切らない忍に、幸乃は少し苛立った。
彼女は大会で見せたあの雄々しい御器谷忍をもう一度見たかった。
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