キムタクは公園内の遊歩道を反時計回りに歩いている
なぜ反時計回りかというと、その前は時計回りに歩いていたからだ
そしてその前は反時計回り、さらにその前は時計回りだ
もう一時間近く歩いている
長くベンチに座っていたのだが、夕方が近づくにつれ秋の冷え込みが身に染みて、じっとしているのが辛くなったのだ

ふと、視線を感じたキムタクは顔の向きは変えないまま、帽子のツバの際から視線だけを動かし周りを見回した
どうせまたベビーカーを押した自意識過剰な奥様方が通報でもしたのだろう
もはや恒例行事となりつつある職務質問の返答内容を脳内でシミュレーションしながら制服警官の姿を視認しようと目を動かす

しかし彼の方を見ていたのは警官ではなかった